『ヒナ・まつり』



[登場人物]  肉蝮根元陽菜ヒナ





 天気は晴れ。
それだというのに、雨粒の降りそうな不穏さが胸をかすめて離れなかった。
もっとも、渋谷を囲む巨大バリアーが傘代わりを果たしてくれる為、天気模様など杞憂なのだが。



 ──タ、タ、タ、タ

   ──タ、タ、タ、タ

「ネモはさっきからスマホとにらめっこ。なにやってんの~?」

「TwitterだよTwitter。アカウント名で呼ばないでよっ!」

「そっかそっか、ツイッターね~~。……わたしの根元陽菜暴行記録もデジタル移行時かな」

「……バカ! そもそもヒナちゃんはSNS絶対やらせちゃいけない人間なんだからっ!!」


 アカウント名『ネモ@MSA-003MSK-003』。
プロフィール欄は『高校3年/声優志望🎤✨ 時々オタ活報告/日常つぶやき』とある。

ヒナちゃん係こと根元陽菜は、渋谷区道玄坂一丁目──東急ホテル周辺にて、現代の若者らしく歩きスマホをしていた。
お行儀の悪い所作ではあるが、万一『通行人』にぶつかった際は、ヒナがどうにかしてくれるため心配は無用なのだろう。
目の前に現れよう障害をアウトオブ眼中にしてでも、ネモにはTwitterを進める必要があったのだ。

時代は、────『SNS最先端時代』。
二〇〇八年に次世代を担うべく登場したTwitterは、いまやポケットの核兵器だ。
ボタンひとつで、ある者は幸福と名声を手にし、ある者は山肌を駆ける雪崩のように一瞬で全てを失う。
不特定多数という名の核燃料を持つSNSは、衣食住や呼吸よりも、現代人の鼓動を支配する存在となっていた。

つまりは、「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ」との精神か。
貞子vs伽椰子の宣伝映像がビルの大型スクリーンに流れる中。
かくしてネモは。Twitterを武器に。このバトル・ロワイヤルへ抗う決意を固めていた。
いかにもミーハー系女子高生らしい、ネモの【対主催戦法】といえよう。

──トレンド欄の「#渋谷」に目を痛くしながら、対主催デジタル担当大臣は文字を打ち続ける。



『ネモ@MSA-003MSK-003 三分前』
『妹とデートなう。に使っていいよ^^ #渋谷

『ネモ@MSA-003MSK-003 三分前』
『朝の渋谷~~。なんかエモエモ』

『ネモ@MSA-003MSK-003 一分前』
『てかヒナちゃん色んな意味でエグいって!!笑 煎じ茶レベルのエグみかっ! #渋谷


『ネモ@MSA-003MSK-003 一秒前』
『【拡散希望】ほんとにっ渋谷!! 渋谷渋谷渋谷で!! なうっ!!!! 渋谷なうっ!!!!! #渋谷 #Shibuya #シブヤ #Now



「この執拗な渋谷いますアピールはなにがしたいんだろう」

「……Twitterの人ってヒナちゃん並みのIQしかいないの? 全っ然拡散されないし~~っ!」

「わたしのクローンばかり集まるSNSとは、この世の終わりだ」



──とはいえ、小心者であるネモには、大々的にバトロワのことを打ち明けられなかったもので。
察してアピールのスタンスで、彼女はSNS戦略を全うするのだった。


同時刻、渋谷のどこかのマンションでは、同じくピンク髪の女子高生が、暴露系YouTuberに相談を持ちかける一方。
ネモはTwitter上で、自らの危機を淡々と訴える次第。
四角いアイコンから発せられる精いっぱいの危険信号は、果たしてどこまでの人間に届くものか。
そしてまた果たして、『SNS』というコンテンツはバトル・ロワイヤルという地獄をも覆せるのだろうか。


「……………あっ、……」

「ん? ……あ!」


「知り合いですか?」──画面に浮かんだその一文の下。
Twitterが自動で紹介してきた『三嶋瞳』のアカウントに、ネモは思わず顔を曇らせる。
皮肉を込めて、フォローと彼女の著書宣伝ツイートをRTした後、ネモはヒナの手をしっかり握って歩き出した。



 ──SNSの真価は、如何に──。




「ていうか何このフォロワー数……五万って……。トネガワの仲間だったり、銃を楽々使いこなせたり、……あの子何者なの?」

「え? 瞳はやさしいよ。わたしの給食運んでくれて、ヨダレをふいてく……、」

「bot並みに一字一句同じ人物評やめてっ!!」


「てかさ~ネモ。なんでわたしと手つないでくるの? ……もしかしてぇ~~百合ってやつ~?」

「ヒナちゃんみたいなのからその単語出ると恐怖だよ……。違うってば。管轄内に置かないと何しでかすか分からないじゃん」

「いやいやネモ。そんなわたしを猛獣扱いしなさんなって。──」

「──ひとりでも大丈夫! 任せなよ、大船だよっ!!」

「あぁそう。……田村さん、『タイタニック(沈みかけの船)』嫌いな映画って話してたなぁ」

「へぇ~わたしも映画館キライだね。起きた瞬間、新田が文句言ってくるから」

「…………」



東急ホテル前。
眠くなるほど薄暗い、辺りのカゲロウが妙に気味悪かった────。




   ミーン、ミンミーーン────

 ミーン、ミンミーーン────……


………………
…………
……





 ミーン、ミンミーーン────……


   ミーン、ミンミーーン────



……
…………
………………










………………
…………
……



 バス停のベンチにて。私たち二人のみ。
……別に、行き先なんて決まってるわけじゃないんだけどね。
ただ、ぼ~んやりとさ。
何の意味もなく座って、時間を無駄遣いするのもたまにはいいなぁ~っていう日常の一ページ。
なんだかヒナちゃんと私、二人だけが世界に取り残されたみたいな──そんな終末を彷彿する静けさだった。


「……」

「ふんふふん~~」



「…………」



……なんだろ。
このキモチ。

ヒナちゃんは、半端なくマイペースで超能力使いってこと以外、いたって普通の女の子なはずなのに。
出会って数時間も満たない、「干したイクラかっ」てくらい濃密じゃない関係のはずなのに。


──どうして私は、
──ヒナちゃんを見ると、胸がドキドキとしちゃうんだろ。



「…………っ///」


……はは、なんだそれ。異色なアオハルかっていう。
まぁ確かに、ヒナちゃんの顔は子役みたいにそこそこ整ってるしー、ダメな妹を抱えるみたいでかわいいとは思うけど。
でも、これは恋とかじゃなくて、
ただの情とか保護本能とか、そういう……いや違う。
違うのかも。



──ヒナちゃんと指を絡めた瞬間、
──頬があんなに熱くなっちゃうのはなんでだろう──。



「……」

「ていうか陽菜、なんで手握ってくるの? 距離感だいぶバグってるよ」

「……うぇっ!?/// い、いや……。(……普段あんな感じのくせに、痛いトコにはやたら鋭いなぁ……)──」

「──いや普通にするでしょ? 友達と手つなぐとかさ……? 陽キャの子はそれくらいやるよ。私もあーちゃんと手つないで登校するしっ。──」

「──(あーちゃん、ド嘘ごめん……)」

「陽キャ? あぁ、休み時間に机くっつけて変な山手線ゲームしてるあーゆー奴らのことか。斎藤さんゲームとか」

「えぇ……ヒナちゃんって案外冷笑系なの?」

「ま、いっか。普通ならそれでいいよ。──」


「──ふんふふ~~~ん」

「…………」



 ……いや、ほんとにもう、わけがわかんないや。
このドキドキ感。

これって、男子と恋仲展開がなさすぎた反動なのかな?
それとも、妹系ギャグキャラってジャンルが私の脳に未知すぎるせい?
……いやまさか、クロから借りたギャルゲの悪影響で、同性への見る目が変わっちゃった、とか──?!


──ヒナちゃんのサラサラした髪を、撫でてみたくてたまらないっ──。
──リップなんて知らずのくせして、その唇がやけにやわらかそうで、見てるだけで胸がくすぐったくなる──。
──そのほっぺを、指先でそっと押してみたい────っ。

──ヒナちゃんと、もう少しだけ距離を近づけてみたい…………。



フシギな思いが、一秒ごとに増していくこの時間だった。



「…………」


って、何考えてんだ私!
なんだか、恥ずかしくなるようなことばっかり考えちゃう今の自分だよ~……。
まぁ思うだけで留めてるから、別にこっぱずかしくなっちゃう必要はないんだけども、

……ないんだけどもさ。


もしヒナちゃんの力に、『人を惹きつける力(マインドコントロール)』があるとするなら──。
……そうだったら完敗だよ。
悔しいけどね。



──もう私は、思うだけじゃ足りなかった────。



 チュッ──



「…………え?」


「…………っ///」



「ほっぺが湿った。……陽菜、これも陽キャなら普通なの?」

「…………そだけど? べ、別に深い意味とかないし! 『義理』ってやつなんだからさっ!///」

「イタリア人みたいなスキンシップだな」

「……そういうヘンなとこに知識あるの、底知れないわ~。もうヒナちゃんはバカだな~~」

「バカ?」


「……。////」




 『義理』。
ギリギリな────本命の、義理。

……ライン越えしちゃって、正直もう全身から湯気でそうなくらいなんだけども……いいよね。別に。
ヒナちゃんも、まるでこれも日常のひとコマみたいな顔で、全っ然、表情変えないんだし。
……だから、いいよね?
うん、普通だよ。
普通の行動。



「……陽菜…………」

「んー?──」


「──あっ」



……ほんとに、ヒナちゃんは無表情のまま。
──若干ほっぺ、赤くしててさ。

──顔はクールぶってるくせに、内心は絶対、ドキドキでさ…………。




もう、

もうさ。


あえて、繰り返しもう一回言うよ。





──私は決して、百合女子じゃない────。






 ──んちゅっ


「え?! ひ、陽菜///……、」

「ちゅっ……あぅっ…、んちゅ、はぁ、っ! ……んんっ……んんっ…………///──」


「──ぷはっ……///──」


「──もうヒナちゃん、バーカ。……イクラの匂いしかしないんだからっ///」

「よ、陽キャの冗談はわたしには荷が重すぎだよ……陽菜……、──」


「──す……ん…………、ちゅっ……///」

「んっ……んん……あっ/// んんっ…………///」




 ……ははは。
ヒナちゃんは面白いなー、ちょっとした『冗談』で、こんな取り乱しそうになってて。
もし私がHなゲームやアニメの声をやったら、どんな顔をするのかな?

……クロ以外には言わないと思ってたけど、
その時は最初にヒナちゃんに教えてあげるね。



「んんっ……っ……/// あぁ、ぁ……! ……ヒナちゃ……………んんっ………/// ……ちゅ……」

「……っ///、……んんっ、ん…………!///」





──みゃー姉は分かってないよ。
──いちばん近くにいる妹が、どれだけかわいいってことを……。


────『私に天使が舞い降りた』──。



………………
…………
……





「はぁ、ふうっ……! はぁ、はぁはぁ……はぁ…………。──」



「はぁはぁ、はぁはぁ……ぁぁ、ぁああっ……!! んふ、ぁあ、はぁはぁ……!──」


「──ぁああ、ぁああ……はぁっ! はぁっ!!──」


「──はぁっ……!!!──」





 スコスコスコスコ……


   スコ、スココ…………



      コ……




「──畜生ッ抜けねぇッ!!! ふっざけんな死ねゴラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!」



 明かりを拒絶したホテルの一室。
薄暗いベッドルームで唯一光を放っていたのは、根元陽菜の自撮り写真──スマホの画面だけだった。
指紋まみれの液晶に映るツイート文。屈託ない笑顔のネモと、無表情のヒナ。
二人の肩が寄り添う、眩しいほどのツーショット。

──スマホは怒りのまま壁に叩きつけられた故、──女子二人組の顔には、亀裂が大きく走り裂く。


「……クソ、ワンチャン抜けるモンだと思ったが……あれだな。──」

「──どんなに旨そうな食品でも、作ったヤツが商業高校生なら買う気失せるっていう、そういう現象だぜ……。あー! クソがっ!──」

「──クソっ!! あぁああああああああああクソクソクソクソッ!!!!!!! リアル障害持ちにしてやろうかッ!!? 股ビッチ共がッ!!!!!!!」



 Twitterの『知り合いですか?』機能は酷たるものである。
回想して数時間前、ラーメン屋にてヒナが撃退した血飢の災厄────肉蝮。
高木さんのスタンガンで意識を落とした後、目を覚ましたヤツは、ホテルのベッドの上で『モーニングルーティン』を始めていた。

朝食前、モーニングルーティンの『オカズ』は──百合妄想で。
普通は忌々しく思う人間など、たとえ女子であろうと、そういう目では見ないものだが、肉蝮はある意味で大らかなのだろう。



どぅくどぅく─

 にぎっ、にぎっ──


光らない『ゴールデンボール』から急分泌された光悦の源。
二つの肉球体から伸びる棒は、文字通り『茎』のごとく硬化していく。
乱れ打つ本能のまま、それでいてつまらない仕事をこなすような義務感で、肉蝮はベッドを揺らし続けたものだが、
──鬼畜的欲求を持つ肉蝮でさえ、さすがに萎えてしまったようだった。

爆発しかけた衝動を数十分も吐き出し続けたが、残ったのは空虚な呼吸と汗のみ。
結果としてヤツは報われることがなく──。


「クソクソクソクソクソッ!!!!! クソッ!!! クソッ!!! クソッ!!! クソッ!!! クソッ!!! クソッ!!! 糞ッ!!!!!!!──」


「──どうしてくれンだよッ?!!!! クソ野郎がァアアアアアアアアッ!!!!!!!!」



──身勝手な義憤のまま室内を荒らし続ける肉蝮に、フカフカなマットレスはヒビ割れたが如く泣いていた。


 ただ、すすり泣きたい者はなにもベッドだけではない。
仮に、スリルを求めて廃墟探索を行ったとして。
静寂に包まれた無人の建物の中で、扉越しに突然、怒号が響いたとしたらどう思うだろうか。
誰もいないはずの一室から響く、絶叫。
いつ自分がその声に気づかれるかも分からない、邪悪の咆哮。

場面を変えて『二〇〇二号室』。
──つまり、このホテルの廊下を通りかかった瞬間、誰もが同じ絶句と、心臓を鷲づかみにされるような高鳴りを味わうことになるのだ。



 ホテルの廊下。ボロボロになった備え付けのタンス傍にて。
自身の胸に手を当てたまま、血だまりでそっと仰向けになるサラリーマン──飯沼がいた。
今際、助けたかった女を救えた事もあってだろう。彼の死に顔は、痛々しい刺し傷に反比例して安らかであった。
血だまりの泡ぶくはもう弾けない。
床に落ちたヒビの入ったメガネも、もう拭く必要はない。
メガネのレンズが、飯沼の口元を静かに映す。
数ある死者の中の一粒でしかないにせよ、勇敢に散ったその姿を、レンズが額縁めいて収めてくれた。


そんな動くはずのない身体が、ビクっ────と。

理科の実験で電流を流されたカエルの脚のように、不意にひとつの反応が現れる。
無論、それは幻覚である。
比喩であり、生者の錯覚でもある。


ただ、それでいて、──Living Dead。
本当に動き出したわけでないにせよ。
飯沼の身体は、確かに、



「……ンだぁてめぇ!? 俺がムカついてるって時に死んでンじゃねェよ?!! キモッ!!!」



──肉蝮の心臓を握りつぶすが如し凶悪なまなざしで、震え動かされていた。



「エンガチョ!! エンガチョ!! 俺の都合を考えろっつうの! 死体は葬式で十分だ! ……もう~~怒ったぞッ!!! 怒ったかんなッ!!!!──」

「──その汚ェ顔、ふっ飛ばしてやるッ!!!!!」



 メガネを容赦なく踏み潰した肉蝮は、死体の後ろ襟へ掴みかかる。
まるで大便を箸で持ち上げるように、心底嫌そうな顔をしたヤツは、そのままズルズルと飯沼を引きずり出した。

革靴が床をこすり、生気のない足がだらりと伸びる。
動くたびに血の線が二本、床に描かれていく。
その姿勢はまるで壊れたテディベアのよう。ただ顔だけをうつむいたまま、飯沼は引き摺られていった。

『死こそが救い』との言葉が常々漂う、世知辛い現代ではあるが、飯沼にとってはまさに『死んでいて正解』という今。
帰巣本能のように二〇〇二号室へ戻った肉蝮は、もう片方の手でカーテンを乱暴に開け放つ。
邪魔な硝子をダイナミックに蹴り壊した後、向かうは解放されたベランダへ。


吹き込むのは、吸い心地のいい澄んだ空気。
植物が光合成によって放つ酸素が、都会の高層階に清浄をもたらしてくれる。
鼻息荒くその空気を破壊しつくす肉蝮は、成人男性の重みを片手一本で持ち上げると、宙づりになった死体の脚を下界へ向けた。


力点。
──肉蝮は今、飯沼の顎から首にかけての位置を握っている為、そのまま、


────ボギッ、と。



「あ、折れた。…………ぶふっ!!──」

「──ぎゃははははははははハハハハハハハハハははははは!!!!! ぎゃっはっはっはははははははははははははあ!!!!!!!! ──」

「──どうだァ?!!! テメェにはできるかぁッ?! できねぇだろッ!!!! シュワちゃんはコマンドーじゃ腕力で首へし折ったが……俺は指二本で十分なんだよッ!!!!」


顔の穴という穴から血泡をブクブク吹き出していく飯沼。
ガニ股の股座から、ジュワジュワとアンモニア臭い湿りが目立ってく。
喉仏まで伝って零れ落ちていく血脈には特に関心も見せず、肉蝮は、見るも無残な飯沼へシンプルに一言。


「『KU・BI・GAっ!! O・RE・TA~~っ!! アイム・パーフェクト・リーマン』! ──」

「──……俺作の『死体で一言』、松っちゃんにウケるかなぁ……」


全く面白くない大喜利を惜別代わりに、肉蝮は死体を乱暴に投げ落とした。

下へ──、
 下へ──、
  下へ──、

糸を断たれたマリオネットは重力の腕に抱かれ、地面へと吸い込まれていく──。



………………
…………
……



 そのちょうど真下、円山町の遊歩道。
並び歩く二人の少女──ヒナと、そして根元陽菜。
スマホの画面に夢中なネモの視界の端にて、


────バァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァンッッッッ。




「わあああぁっっ!!?」

「…………え……?」



「…………………………ぇ、」





地面にぶち撒かれたサーモンピンクの脳漿。
飛沫のように弾ける、真っ白なイクラ。




「……ぃ、いぃ……っ、──」

「ね、ネモっ……」



二度ほど強くバウンドして、ようやく静かになった落下物は、到底『人間』の様態とは言い難い残骸だった。
だが、それが『人間』である点は、どうしようもなく明白だった。
──その明白さが何よりも残酷だった。



「ひいッ!!!──」



ゴアグラインドのような絶叫が、ロックンロールめいて円山町(フロア)を震わせていく──。



「────いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッあああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」













【肉蝮@闇金ウシジマくん 第一回放送通過】
【根元陽菜@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 第一回放送通過】
【ヒナ@ヒナまつり 第一回放送通過】




【1日目/F6/東急ホテル/11F/2002号室/AM.05:58】
【肉蝮@闇金ウシジマくん】
【状態】全身打撲
【装備】シャベル
【道具】魔道具諸々@メムメム
【思考】基本:【マーダー】
1:快っ……感────。……あ~ハ●カンでかきてーなァ。
2:ムカつく奴、キモい参加者は血祭りにする。
3:それでいて、自分を理解してくれたヤツ、あと女の参加者には『好意的』にしよっかな~。
4:↑……行為的ともいうけどな。ブフッ! なんつって~。
5:知らねぇリーマン(飯沼)、メムメム、丑嶋ニキにはご冥福をお祈りします(泣)。天国でも楽しくシコってりゃいいんじゃないかな。
6:ジジイ(兵藤)、クソガキ二人(ネモ、ヒナ)、こいつらは俺の拳がおかしくなるまで殴ってやるッ!!
7:皆殺し後、主催者の野郎とスマブラをする。
8:言っとくがトネガワァ!! 俺はスマメイトでレート2100超えたからな?!!


【1日目/F6/東急ホテル前/AM.05:58】
【根元陽菜@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】恐怖(激)、精神動揺(激)
【装備】ダーツx15
【道具】なし
【思考】基本:【対主催】
1:誰か誰か誰か誰か、誰か助けてッ誰か助けてッ、
2:もう嫌ッ、嫌嫌ッ、私を救って、

【ヒナ@ヒナまつり】
【状態】精神動揺(軽)
【装備】なし
【道具】根元陽菜暴行記録ノート、いくらの瓶詰
【思考】基本:【静観】
1:ネモ(陽菜)…………。
2:Twitterを使ってバトル・ロワイヤルを打破。早くこの渋谷から抜け出す。
3:瞳にはまた会いたい。




前回 キャラ 次回
082:『あたしのあした 084:『マルあげよう
074:『やりなおしカナブン 肉蝮
067:『颯爽と走るトネガワくん ネモ
067:『颯爽と走るトネガワくん ヒナ
最終更新:2025年10月28日 19:18