野望の「二の目」 ◆gry038wOvE





 アクマロはゲーム開始時と同じ三途の池で休みながら、考える。
 さて、これからどうしたものか。
 彼のデイパックの中にある名簿では、腑破十臓の名には既に横線が引かれていた。
 要するに、彼はもう死んでしまったわけで、この事実は変えようが無いのだ。
 とまあ、それほど簡単に受け入れられる問題でもない。
 彼にとっては、二百年に渡る野望を果たすのに必要不可欠な人材をこんな処で落としてしまったということ────。


 それを聞いてから何度も、同じことを思った。



(……弱りましたなぁ、十臓さん。こんな処で死なれてしまっては……)



 よもや、十臓がこんなにも早くいなくなるとはアクマロにとっても予想外であったのだ。
 彼の太刀は確かなもので、油断などする筈も無いから不意打ちも効かないだろう。
 しかし、ここにはシンケンジャー、ドウコク、ほか仮面ライダーやらノーザやらプリキュアやら……多数の異形の者たちが、その祭典であるかのように何十人と参加している。
 ゆえ、十臓の死もいま改めて考えれば納得できてしまう範疇。
 計画の中途にあった自分や十臓を殺し合いなどに呼び寄せた主催側の二名には怒りさえ湧く。


 だが、何も積極的に彼らを殺すため動こうというわけでもなかった。


 彼らもまた、ここに殺し合いという地獄を作り上げたわけだ。巻き込まれる側からしてみれば厄介だが、アクマロのように歪んだ思考の者には、それを引き起こしたい気持ちもわかる。
 ただ、アクマロ自身がそれを一部分しか味わえていないのは不服の極みでもあった。
 どうせなら、主催者側につきたかったというのが正直な感想でもあった。



(殺し合いで優勝すれば願いが叶う────その甘言も念頭に入れときましょうか)



 十臓と共に地獄を作り上げる計画は、早くもアクマロの知らないところで潰えた。
 が、主催者はそれほどの連中をこの場に引き寄せ、武器を奪い殺し合いをさせるような者たちである。
 その力は外道衆以上と見えるし、組織的に動き、首輪などをつけてアクマロ達を上手に管理している。
 六時間で十八人の死亡者を出すほど殺し合いは迅速に進んでいるわけで、参加者として呼び寄せた人選もとてつもない。
 そのうえマップにはこのように三途の池まで用意し、外道衆に対するフォローや準備は万端。そういえば、「そうるじぇむ」をつけた参加者にはそこに首輪を取り付けるなどとも言っていた。
 それだけ、参加者の特性に関しても強い理解があるわけだ。
 ならば、アクマロの思考等も判るのではないだろうか────



(ともすると、優勝すれば我もその御仲間に入れていただける可能性も、無きにしも非ず────)



 願いの発現を行うとするなら、十臓の蘇生も一つの手であるし、十臓を使わずともこの世に地獄を出現させることもできるかもしれない。
 ……が、それよりもまた別の行動だって考えられる。
 主催陣に協力し、今後も殺し合いを開催すれば、何時か地獄を見ることが出来るのでないか。
 現に、この殺し合いの欠片の姿はまさに地獄絵図であった。
 アクマロが見たいのは本当の地獄であるが、この殺し合いの主催共に協力すれば、それも何時か見つけ出すことができるのではないだろうか……?


 その圧倒的な力を考えれば、そんな思惑も浮かび上がってくる。
 そう、アクマロは数百年と生きても現れなかったような集団に、惚れこんでいたのである。
 もしかすれば、こんな事をわざわざ開催する主催側が、アクマロの計画に何時か乗ってくれる可能性もありうる。




(……しかし、生き残るというのも難儀なものですな。ソレワターセの力はあるものの、残り四十余名の参加者を葬るというのは……)



 明らかに簡単な条件ではない。
 ましてや、十臓があっさりと死ぬくらいであるということは、アクマロが長時間生き続けられるという可能性は薄い。
 改めて、自分が六十六人に一人の勝者となるのは恐ろしく難しいだと、自信も失せる。
 ソレワターセことスバルを利用したところで、放送で彼女の名が呼ばれれば、アクマロはほぼ完全に「詰み」状態だ。



(ん……)



 と、アクマロは再考する。
 そうだ、アクマロなら殺し合いを開いた時にどうするか。
 開く側の視点に、今の彼は既になっている────



 そうだ、殺し合いの状況下にある参加者たちを監視するし、音声も拾う。



 主催者の加頭やサラマンダー男爵、またその協力者等は、ほぼ間違いなくアクマロ達の動向を監視しているであろう。
 アクマロならば、その地獄を見つめたくなるに決まっている。
 地獄を見て、味わいたくなるほどに愉しむ。その思考におよそ間違い無し。
 相手方がこちらの様子を見ているのなら、熱心に頼み込むこともできるわけだ。


 アクマロは、咄嗟に自らが所持している首輪の一つを眺めた。
 二百年の長きに渡り三途の川に沈んでいた彼は、こうしたもののメカニズムには詳しくは無い。
 が、おそらく音声や映像を拾っているとするなら、それを行うのは参加者共通で取り付けられているこの道具だ。
 ……彼は試しに、その首輪に対して声をかけてみた。首元にあるよりは、こちらの方が伝わりやすいだろう。



「あー、この殺し合いの主催者の皆さん。聞こえていますか?」



 何処かでアクマロの独り言を聞いている者に、アクマロは問いかけた。
 例え受け入れられなくとも一向に構わない。ただ、主催陣がアクマロを仲間に入れてくれることがあるというのなら、というだけだ。
 あくまでこれは、一つの可能性。
 叶えられれば良いが、叶えられなければ今までと同じように行動するのみである。



「……知ってのとおり、我はこの殺し合いを至高の地獄絵図として愉しんでおります。
 ……が、十臓さんが死んだ今、我が野望は潰えたも同じ。
 そこで、今は我も皆さんに御力添えすることによって、何時の日にか!
 この世に地獄をば、出現させて見せましょうかと思う次第……。どうにか、我をあんたさん達のお仲間として拾ってはいただけないでしょうか?」



 至高の地獄を得るために、彼は声を張り上げ、延々と必死でのたまっていた。ただの独り言にしか見えず、通常なら恥ずかしいはずのこの行動も一切苦痛ではない。
 もし、万が一にでも、この戯言が主催者の耳に留まり、アクマロを拾う可能性を考慮に入れてくれるというのなら、それはアクマロにとっては殺し合いを抜ける最大の歓喜となるだろう。
 成功すれば殺し合いをもっと広く見つめられる。
 今できる限りの地獄を見られる。




 …………が、待てども待てども返事は来ない。




(……なるほど、やはりそう甘くはありませぬか)



 アクマロ自身、もし主催者側だったらば、きっとそう簡単に参加者を自分たちの側に引き込まないだろう。
 それでは殺し合いの意味がない。
 殺し合いにもルールはある。そう、この参加者たちを易々と手放さないという不動のルール。
 でなければ、主催者としては何も楽しめない。


 与えられた参加者が殺し合い、狂い合い、傷付け合い、混沌とする。恐怖や苦痛に塗れ、互いを疑い、善良だった人でさえ外道に堕ちる。


 その愉しみを得るには、参加者全員を最後の一人になるまで殺し合わせるしかない。
 まあ、アクマロが自らの技量を主催側に示し、更なる功績をあげれば、「殺されるには惜しい」と考え拾われる可能性はある。
 何せ、味方としてつければ、アクマロは幾らでも殺し合いを円滑に進める方法が思いつくような存在だ。
 これからの行動次第で、主催に認められる可能性は低くは無い。



(しかし、徹底しておられるようで、やる気は出てきました。
 あんたさん達の御仲間になり、今後も永年殺し合いを見つめる為に、我はあんたさん達の望む通り、殺し合い最後の一人となりましょう)



 だが、その機会を待つのも一向だが、彼はそういう考え方に意向した。先ほどのように待っても来ないということは、待つよりもあらゆる手を使い殺し合いをするのみ。
 アクマロでも、スバルほかあらゆるものを利用して殺し合いはできる。
 得意の策略さえあればゲームの覇者となることも夢ではないのではないか。
 そういう希望も持ちつつ、彼は再びこの場を後にする。

 おおよそ、目的も纏まったし、ここで立ち止まるのを止め、志葉家に向かおうと考えたのだ。
 首輪も再び、デイパックに仕舞い込む。




 ただ一つ、どういう形であれ、「地獄」を待ち望みながら────







【1日目/昼前】
【C-4/三途の池付近】

筋殻アクマロ@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に大火傷
[装備]:削身断頭笏@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×5、ランダム支給品2~10(アクマロ1~2、流ノ介1~3、なのは0~2、本郷0~2、まどか0~1)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、
    ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー

[思考]
基本:主催側につき、また何度も殺し合いを開く。その為に知略を尽くして優勝する。
1:休みながら志葉家へと向かいつつ、首輪について調べて見る。17時頃に志葉屋敷でスバルと合流する。
2:基本行動方針を果たせるならば、殺し合いの途中で拾われる形でも良い。
3:ドウコクに関してはひとまず放置。
4:条件が揃うならばこの地で裏見がんどう返しの術を試みる。
 (ただし、これに関しては十臓という条件が潰えた為、主催側についてから再び機を待つ形でも良い)
5:仮面ライダースーパー1から受けたこの借りを必ず返す。
[備考]
※参戦時期は第四十幕『御大将出陣』にてシタリから三味線を渡せと言われた直後。
※アインハルトが放った覇王断空拳の音を聞きました。
※何処かで主催側がアクマロたちの行動を監視、盗聴していると考え、それは首輪によるものである可能性が高いと考えています。



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最終更新:2014年05月20日 22:01