Lの季節/手ごたえのない愛◆7pf62HiyTE


Act 3 一つの真実


 ここで読者諸兄にアクマロが見つけたものが何かを明かそう。
 それは女傑族の腕輪と呼ばれるものだ。だが、腕輪自体は別段何の意味も無い。重要なのは腕輪に嵌められた3つの丸薬である。
 それは惚れ薬となっており、飲んだ者が最初に見た異性に惚れてしまうという強力なものだ。
 どれぐらい強力か――て早乙女乱馬が服用した時、どう考えても恋愛対象外ともいうべき老婆であるコロンを見てしまった事で彼女に一目惚れをしてしまった。
 無論、正気に戻った後、ショックのあまり気絶したのは言うまでも無い。
 なお、異種族に聞くのかという疑問に関しても答えておこう。結論から述べれば有効と考えて良い。
 というのも、その辺のタコが飲んでしまった事で一応人間の範疇に含まれるであろう八宝斎に恋に落ちてしまったという事例が存在するのだ。
 それぐらい強力な惚れ薬なのだ、この状況をひっくり返す一手としてはこの上ないだろう。

 余談だが、本郷は早々に確認はしているが、その効果を信用していたわけではないし、仮に信用できるものであっても人の心を歪ませる薬など使うつもり等皆無であったのは言うまでも無い。


 では、以上を踏まえアクマロが何を仕掛けたのかを改めて見ていこう。
 頃合いを見てノーザの所に戻るがその前にあらかじめバナナパフェに丸薬を『2つ』仕込んでおく。何故『2つ』なのかは後で説明しよう。
 その後、早朝というタイミングを利用して食事休憩を持ちかけ、何とかして食事させる状況へと持っていく。時間的にも今までずっと戦っていたことからもそういう話に持っていく事自体は問題無いだろう。
 そのタイミングを利用しごくごく自然な流れでノーザにパフェを、自身にシンケンジャーのクッキーを食べる状況を作り出す。
 なお、シンケンジャーのクッキーを自身が食べるのはその流れからノーザが自然にパフェを食べる状況を作る為だ。
 そして何食わぬ顔で食事を勧めていく。ノーザがパフェに違和感を覚えてもそういう変わったパフェであり、バカとも言うべき涼村暁の好物なんだからと説明すれば何の問題もないだろう。
 勿論、その状況に違和感を覚えさせない為に世話話でもして自然に事を進めるのも忘れない。
 だが、これにはもう1つ狙いがある。確実に自身に惚れているのを確認する為だ。
 ノーザが自身に惚れるのであれば、今までとは違うリアクションを取る。それを確かめる為の世話話というわけだ。

 実際にノーザがどうしたのかは前述の会話の通り。途中からノーザはアクマロに協力的となっている。そして確定的なのはソレワターセの実をアクマロに渡した事だ。
 ノーザの性格上、切り札とも言うべきソレワターセの実を渡す事などまずあり得ない。それはアクマロ自身もよく理解している。
 だが、もしアクマロに惚れていて彼に尽くすのであればほぼ確実に渡してくる筈だ。だからこそその指針として利用したのである。

 さて、ノーザに惚れ薬の効果が効いている事を確信したアクマロは機を見計らい、ノーザを負傷させる。これについては先程拾ったナナシの刀を刺す事で容易に実行できた。
 あまりにも簡単に事が進んだので若干拍子抜けだが、それだけ惚れ薬の効果が強力でノーザの警戒心も消えていたという事だろう。
 だが、それで済まないのがソレワターセだ。主であるノーザが負傷して逆上するのは明白だ。そして確実に下手人であるアクマロを消すべく動く筈だ。
 しかし、それもアクマロは計算に入れている。というよりそう来る事を確信していた。
 当然だがアクマロは自身が返り討ちに遭わない様に距離を取る――だが自身がすべきなのはそれだけで良い。
 後は勝手にノーザが愛するアクマロを守るべく行動を起こすのは明白だからだ。
 そう、ノーザが間に入り庇う可能性が限りなく高いと考えていたのだ。

 そしてアクマロの計算通りにノーザもソレワターセも動いてくれた。全てはアクマロの掌の上で踊らされていたというわけだ。
 後は、致命傷を負ったノーザをソレワターセに吸収させれば全ての事が済む。


 なお、ノーザに惚れ薬が効くのかという疑問を感じている者もいるだろう。
 結論から言えば効くと考えて良いだろう。ノーザが幾ら人工生命体とはいえ、植物をベースにしている。そして植物にだって性別は存在している。
 つまり、外見から考えてもノーザは女性であるという事だ。
 また、アクマロは人間とは違う外見ではあるがこちらは男性と考えて良く、ノーザ自身も『アクマロ君』と君付けで呼んでいる事から男性と認識しているだろう。
 人間で無くても効果があるのは先に説明した通り。故に――ノーザに惚れ薬が作用したという事だ。

「いやはや……ここまで上手く事が運ぶとなると少々後が怖いですなぁ」

 ソレワターセがノーザを完全に取り込んだのを確認しそう呟く。
 その言葉の半分は嘘であり同時に半分は本音である。
 自身の計画通りに事が運ぶ事については殆ど疑いはなかったものの、絶対という確証もなく、不確定要素がどう作用するかも未知数であった。
 それ故に、ここまで成果を上げられた事に半ば驚愕していたという事だ。

 そんな中、ノーザを取り込んだソレワターセは未だに震え立ち尽くしたままである。
 よく見れば彼女のバリアジャケットは消え失せ全身はどこもかしこも機械部分が露出する程ボロボロとなっていて所々は火花すら飛んでいる。
 当然、ソレワターセ自身もボロボロなのは言うまでも無い。
 同時に彼女の顔を見ても表情といえるものは本当に何も無い。ソレワターセが持っていた筈の主人に対しての忠誠心すらも――

「ふむ……やはり全て思いのまま……とはいきませんでしたか……」

 ソレワターセの様子を見る限り、自身の攻撃によるダメージが相当に酷いのは見てとれる。
 このまま放置してはソレワターセ自体永くは保たないだろう。
 だが、それはアクマロの望む所では無い。折角ノーザすら取り込んだ手駒をこの手に出来るのだ、是が非でも手に入れなければならないだろう。

「少々勿体のぅございますが……早速使わせてもらいましょうか」

 そう口にしてある物を投げ込む。

「ソレワターセ、姿を現せ……これでよろしいのですかな?」

 投げ込んだのはノーザから渡されたこの地にある最後のソレワターセの実、これを既にボロボロとなり使用に耐えられないソレワターセを今一度蘇らせるというのだ。

「ァァァァァァァ……」

 ほんの僅か抵抗するそぶりを見せたものの、新たなソレワターセは既存のソレワターセを取り込みボロボロだった身体をほぼ元通りの状態とする。
 とはいえ、素体となっているスバルの身体のダメージが治療されるわけではない。それでも新たに投入された実により震えが止まるのを確認する。

「さて、誰に従うべきかはおわかりですかな? スバルはん」
「ハイ……アイスルアクマロサマ……」

 アクマロの問いに恐ろしい程素直に答えるソレワターセである。

「では、まずは取り込んだ者共の首輪を出してもらえますかな?」

 そのアクマロの指示に従い、取り込んだ参加者の首輪――合計7個あるそれらを出す。

「ほぅ、こんなに取り込んでましたとは……」

 脱出の為には首輪解除が必須、その為に首輪のサンプルは欲しいところではあった。それをこうまで簡単に7個も確保できた事は都合が良い。

「ノーザはんもこういう使い方をすべきだったと言うのに……さて、次の指示でございますが……我を守る……これは言うまでもございませんが、十臓はんを守る為にも動いてもらいましょうか」
「ハイ……」
「十臓はんの姿形に関しては説明しなくても構いませんな」

 何しろ、十臓の情報は流ノ介を取り込んだ事で確保している。説明の手間が省けたのはありがたい。
 余談だが、スバルが取り込んだ情報を引き出す事に関しては完全に失念していた。事が上手くいきすぎた事に加え、迅速に動くべきと判断した事によるミスである。

「ならば結構、それでは他の参加者共を襲い、この地を嘆きと悲しみに満たして貰いましょう……特にシンケンジャー、血祭ドウコク、仮面ライダー共、そしてプリキュア共に対して……」
「ハイ……」
「移動にはその機械の馬をお使い下され……」

 と、ここまで口にして気付いた。今のスバルを見たところ手持ちの武器も防具も失っている。幾らソレワターセの力があるとはいえこのままではすぐさま倒される可能性もある。

「お待ちなされ……コレを……」


――Cyclone――


 そう音声を発生したガイアメモリをスバルへと投入する。
 先の戦場より回収したT2ガイアメモリが1つサイクロン、その中に内包された疾風の記憶が全身を巡り――
 その身体をサイクロン・ドーパントへと変貌させたのだ。

「後はスバルはんのお好きな様に――そうですなぁ……夕刻17時頃、志葉家の屋敷で落ち合いましょうか」

 その言葉を聞いた後、サイクロン・ドーパントはバイク――奇しくも自身と同じ名を冠したバイク、本郷猛の愛機サイクロン号にまたがり走り――いや、
 自身が持つ疾風の力で空へ高く舞い上がり――空中に道を形成しながら大空を走り出した――

「行きましたなぁ……さてと……」

 最後にデイパックから全ての丸薬が抜き取られた腕輪と説明書きを取り出し、自身の持つ削身断頭笏で瞬時にバラバラに切り刻んだ。事が済んだ以上、証拠を残す必要は無いというわけだ。

「そういえば、ノーザはんの所持品どうなりましたかなぁ……全部は消し飛んでいないとは思いますが……捜す余裕は流石にありませんなぁ」

 その通り、こうしている間にも一連の騒ぎを聞きつけた連中が駆けつけてくる可能性が高い。
 消耗した今という状況で連戦は避けたいところ、早々にこの場から撤収すべきである。

 それ故に、足早に移動を始める。当面の目的地は志葉家の屋敷、
 十臓の目的がシンケンレッド志葉丈瑠との決着であるならば高確率でそちらに向かうだろう。
 道中短くは無いが休み休み移動しつつ首輪を調べながら行けば良い。

「さて、プリキュア共も仮面ライダー共もどう動きますやら……」

 実の所、ノーザをここで退場させた事については全く別の狙いもある。
 ほぼ確実にキュアサンシャイン、仮面ライダースーパー1は自分達に反撃を仕掛けスバル奪還を狙う事は明白だ。
 だが、ここで彼等の視点となって考えてみよう。
 恐らく放送でノーザの名前が呼ばれる事は確実、それを聞いた段階でどう思うだろうか?
 あの状況からのノーザの退場、それを踏まえれば自分達の勢力が何かしらの理由でボロボロになったと推測する筈だ。
 言い換えればこの機を利用すればスバル奪還の可能性すら高まるのだ、何しろ主人であるノーザが既にいないのだからだ。
 恐らくは絶望の中から希望を抱く事となる。
 しかしそれはすぐさま絶望に変わる。周知の通り、今のスバルの主人はアクマロとなり未だ健在だ。
 それだけではなく、運良く浄化できた所でスバルが元に戻りはしないだろう。
 そう、スバルにも『アレ』を仕込んでいるのだから――それが解除されない限りスバルは自分を裏切る事は決して無い。説明書きを信じるならば最低でも待ち合わせの時間まではまず大丈夫だろう。
 無論、想定より早く解除された所で救いにはなりはしない――何故なら、

「望まぬ殺戮を強いられ、愛する者までその手にかけたスバルはんがその重みに耐えられるとは思えませんからなぁ……シンケンジャーも仮面ライダーもプリキュアもそんな彼女を本気で救えると思っているのですかな?
 もう、今の彼女は十臓はんや太夫はんと同じ――はぐれ外道と同じなのですからな」

 そう口にしつつ歩き出す――

 クレーターの中心に残されたものに気付く事無く――

「それにしても……何故スバルはんはあの方向に向かったのでしょうかな?」


【1日目/早朝】
【B-7/森】

【筋殻アクマロ@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に大火傷
[装備]:削身断頭笏@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×5、ランダム支給品2~10(アクマロ1~2、流ノ介1~3、なのは0~2、本郷0~2、まどか0~1)、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、
    ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー

[思考]
基本:地獄をこの身で味わう為、十臓と共に脱出を試みる。
1:休みながら志葉家へと向かいつつ、首輪について調べて見る。17時頃に志葉屋敷でスバルと合流する。
2:裏正、太夫の三味線の確保及び十臓を探す。
3:ドウコクに関してはひとまず放置。
4:条件が揃うならばこの地で裏見がんどう返しの術を試みる。
5:仮面ライダースーパー1から受けたこの借りを必ず返す。
[備考]
※参戦時期は第四十幕『御大将出陣』にてシタリから三味線を渡せと言われた直後。
※アインハルトが放った覇王断空拳の音を聞きました。





Interlude

 御覧の通り、これがこの殺人劇の真実である。
 纏めてしまえばなんてことは無く、アクマロが惚れ薬を駆使しスバルとノーザの行動を誘導しノーザを謀殺したというだけの話なのだ。
 しかし、読者諸兄はそれでも疑問に感じている事だろう。あまりにもアクマロに取って都合の良い展開だと。
 これについては1つ捕捉させて欲しい、
 そもそもノーザとアクマロの方向性は一見似ているが決定的に違う部分が存在している。
 それは愛情についてのスタンスについてだ。
 ノーザは元々管理社会ラビリンス出身故に愛情などのプラスの感情を全く考慮していない。それが元でプリキュア共にしてやられているのだが殆ど学習していなかったと考えて良い。
 一方のアクマロは外道と称していながらも愛情の感情をちゃんと考慮している。
 元々同じ外道衆の1人である薄皮太夫自体がそういう愛憎が元で外道になっている事からも愛情も方向を変えれば嘆きや哀しみを引き出す1つのスパイスであるのはよく理解している。
 いや、それを別にしてもアクマロのスタンス自体が特殊ではあるのだが――これについては後で説明しよう。

 話を戻すがノーザは惚れ薬を服用した事でアクマロに惚れてしまった――のだがここで1つ問題がある。
 前述の通り、ノーザにはそういう愛情という感情が存在していない。それ故に自身の中に湧き上がった感情が何か全く気付いていなかったのだ。
 そう、知らず知らずの内にアクマロに愛情を抱いていたという事に気付かずに――
 そして恋は盲目という言葉もある通り、自身がおおよそあり得ない言動をしていてもその異常性に気付く事は決して無い。

 さて、ノーザ視点で今一度あの瞬間を振り返ってみよう。
 自身が刺された事でソレワターセがアクマロを仕留めるべく動く、これ自体は本来のノーザにとっては望む行動の筈だ。
 しかし一方でその時のノーザは正常では無い、アクマロを仕留めさせる事は決してあってはならないのだ。
 それ故に2つの行動が明らかに相反する事は明白だ、
 ここから待避してソレワターセにアクマロを仕留めさせるべきか、
 ソレワターセに止める命令を出しアクマロを守らせるか、
 そのどちらが最善なのかがノーザにはわからなかったのだ。
 更に言えばソレワターセの行動はあまりにも早く一瞬の遅れが命取りとなっていた。

 判断が遅れたノーザは思考する間もなく――唯々湧き上がる衝動のまま――本来の姿に戻らずそのまま飛び出しソレワターセの攻撃を受けたのであった。

 その時点での彼女は何を思っていたのだろうか――?

 これはもう既に触れている通り、アクマロが無事だった事に安堵していた。
 無論、これは惚れ薬によって根底から歪められた感情だ、その感情を知らず理解も出来ないノーザにとっては決して知る事の無い真実ではあるが――
 他人の心を歪め続け弄んだ魔女の結末としてはあまりにも皮肉が効いている、その魔女自身の心が知らず知らず歪められていたのだから――

 真偽はどうあれ真実はたった1つ、ここでノーザは退場した、それだけは間違いない。

 だが――それでもアクマロに都合の良い展開だとお思いだろう。
 実際問題その通りなのだ、この作戦には穴が幾つもある。

 まずそもそもの前提としてノーザが都合良く惚れ薬を飲んでくれるのかという根本的な問題がある。
 実際は御覧の通りだったが、ノーザにしては油断しすぎな展開でもある。
 勿論、ノーザとてアクマロが下手に動く事は無いとタカをくくっていた部分はあったし、毒薬程度など通じないと確信していたという事情はある。
 まさかあのタイミングで恋愛感情を抱かせる惚れ薬で惚れさせるなんて事ノーザに予想など出来ないだろう。
 漠然と洗脳する薬ならまだわかる、しかし惚れさせるなんて展開を愛情を理解できないノーザに予想出来るわけもなかろう。
 だが、仮にそうだとしても少々油断をしすぎていた部分はある、とはいえこれまでノーザに都合良い展開が続いていた事を踏まえ慢心していた以上これも仕方ないだろう。
 それでも慢心せず、アクマロの思考を入念に推察し迂闊な行動を取らなければ違う結末もあったであろうに――


 もう1つの問題が惚れ薬が確実に効くという保証があるのかという問題だ。
 実は先程は説明を省いたがその惚れ薬が作用していなかった事例が存在する。
 天道あかねがその薬を服用した際、女性化した乱馬ことらんまには反応しなかった事例が存在するがそれを言いたいわけではない。
 そう、実はその時に雄豚であるPちゃんをその目で見ている――のだが、これまた反応しなかった。
 Pちゃんの正体が響良牙なのは読者諸兄には語るまでもないが、あかねはその事実を知らない。つまりあかねにしてみれば愛玩動物レベルの扱いでしか無いのだ。
 つまり、例え異性であっても愛玩動物じゃ反応しないという事になるわけだ――まぁその一方で先に述べた通り雌タコが八宝斎に惚れているという事例もあるから実際の所はいまいち不明瞭なのだが――

 ともかく、そういう事例もある以上、本当にノーザがアクマロに惚れるという確証など何処にもなかったのだ。
 ノーザ自身外見が女性とはいえ植物から作られた人工生命体に過ぎず、アクマロに至っては只の化け物なのだから――
 知性のある生命体だからそういう感情を抱けた――という推測も出来るがここまでくると妄想の域に入ってしまう。

 実際、作用したのが現実とはいえ、都合が良い展開では無いかと思うだろう。
 何故、アクマロはその惚れ薬を頼ったのか?
 それはアクマロが外道であるにも関わらず、人の情を頼ってしまう傾向があったからだ。
 そもそもの裏見がんどう返しの術自体、十臓の家族に対する情を利用したものでしかない。
 察しの良い方ならわかると思うが十臓が本気で外道に墜ちているなら今更家族に対する情で動くわけもないだろう。
 そんな十臓を信じたい者もいるだろうが、それは楽観視しすぎな話ではある。
 要するにアクマロはその時点で楽観視してしまっているのだ。そんなアクマロだからこそ今回も確実に上手くいくと判断し事に及んでしまったという事だ。

 それに――実の所、アクマロの策が都合良く行ったのにはもう1つ理由がある。勿論、それもある程度はアクマロの机上の空論通りではあるが――
 そして同時にそれはノーザの犯した最大の失敗でもあるのだ。

 それを語るのは――もう1人の登場人物について触れていこう。





Act 4 もう一つの真実 ~手ごたえのない愛~


 まず、最初におことわりしておきたい事がある。
 今現在のスバル・ナカジマの状態についてだ。
 ソレワターセに憑依されていこう種々様々な参加者を取り込み強化されている。
 恐らくはグロンギ、仮面ライダー、シンケンジャーの力を取り込んでいるとお考えの方も多いだろう。
 更に言えば鹿目まどかを取り込んだ事により世界を書き換える程の力を得てしまったと危惧する者もいるだろう。

 結論から先に言っておこう。それはない。

 そもそも当然だろう、安易に他の参加者の思考を歪め洗脳するは言うに及ばず、無尽蔵に取り込む事で無限の強化を行うなどゲームバランスを崩しすぎである。
 当然、制限がかけられてしかるべきポイントであろう。

 と、これだけで終わらせるのもどうかと思うのでそれとは別の視点で振り返ってみよう。
 まず、勘違いしている方も多いが取り込んでいるのはあくまでもソレワターセであってスバルそのものでは無い。
 つまり、強化されるのはあくまでもソレワターセであり、スバルはその宿主状態でしかないという事だ。
 わかりきっている事だが、スバルの肉体が変貌する事などまずあり得ない、例え外見が変化してもそれはソレワターセの変化であってスバル自体の変化ではないという事だ。
 ソレワターセとスバルの神経がリンクしているわけだが肉体を決定的に変貌させるという事はないのである。
 浄化さえしてしまえばスバルの身体は元通り、そんな単純なレベルなのだ。まずそれをご理解いただきたい。


 では、前述のものを取り込んで強化されるかどうかについて触れていこう。
 結論から言えばやはりない。まず、肉体を取り込んだだけでその肉体になるなんてファンタジーなど無い。
 多少は強化されるだろうが、ソレワターセ自体がプリキュアの攻撃にも耐えうるのだから決定的なまでに強化される道理もないだろう。
 つまりグロンギの肉体を取り込んでもグロンギになりはしないという事だ。また説明は後述するがアマダムやダグバのベルトの欠片で変貌する事もない。
 それから仮面ライダーを取り込んだからといってその力を手に入れられるという事も無い。
 まず、仮面ライダー1号は最初期の改造人間だ。それ故に単純なスペックだけならば下の方とも言える。むしろ単純なスペックだけで勝負するならばまだスバルの方が強いだろう。
 そんなものを取り込んでも大した力になどなりはしないという事だ。
 ちょっと待て、仮面ライダー1号は強いだろう。そうお思いの方も多いだろう、だがそれは単純なスペックでの話では無い、ショッカー等の様々な悪の組織と戦い続け時に敗北しても何度となく特訓をして強くなったのだ。
 そして何より――それを支えていたのは正義の心、あるいは魂なのだ。
 つまり、仮面ライダーの力の源はその心であり魂なのだ。
 だが、そもそもそういうプラスの感情を下に見るラビリンスのソレワターセがそれを力にすると思うか? それ以前に特訓すら無駄だと断じる連中なのだ、そんな力を取り込めるわけもなかろうて。
 同様の理由からシンケンジャーのモジカラも得られはしない。モジカラ自体は血筋によるものではあるがその力を最大限に発揮するには特訓や精神的な要因が必要だ。
 それを踏まえればソレワターセがその力を使いこなせないのもご理解いただけるだろう。
 説明が遅れたがグロンギのベルトの力による強化も外的要因よりも精神的な面によるものが強い、それ故に操られていて自我を失っているスバルが変貌する事も無い。
 唯一例外的なのはなのはを取り込んだ事による膨大な魔力だ。これはそれをよく知るスバル自身が宿主になっている事もあり十二分に扱う事が出来る。
 もっとも、その魔力も先程ノーザを仕留めた事で完全に使い切った。既になのはの肉体が存在しない以上、その魔力が回復する事は決してあり得ない。
 そしてまどかについても触れておこう。確かに彼女が契約して魔法少女になったならば膨大な力が得られるだろう。
 だが、それは暁美ほむらが何度も同じ時を繰り返し彼女に因果を集中させたからに他ならないし、その真実は契約主であるインキュベーターですら気付くのが遅かったのだ。
 話を戻すが、幾ら契約後の彼女の力が膨大でもこの時点のまどかは何の力も無い普通の少女だ。
 9歳のなのはを取り込んでも19歳時点の彼女の力を得られるわけではないのと同様に、その時点のまどかを取り込んでも大した足しにはなりはしないだろう。
 インキュベーターの契約システムが無いのに彼女の因果を力に変換できる道理など何処にもない。
 また、魔法少女あるいは魔女のシステムは思春期の少女の純粋な祈りあるいは希望、つまりはその魂を力に変えたものである。
 インキュベーターは感情を持たないからこそそれを冷徹なまでに客観的に捉える事ができそういうシステムを構築できた。
 しかし、何度も繰り返すがソレワターセはマイナスの感情はともかくプラスの感情がもたらす力を全く考慮していない。これではまどかの魂に宿る力を解放する事など不可能だ。
 先に何かしらの方法でそのシステムを取り込めたなら万に一つの可能性もあっただろうが、もう時既に遅し、今更取り込んでも彼女の魂などもうどこにもないのでどちらにしても不可能なのだ。

 そういうわけなのでここまで多くの参加者を取り込んでもそこまで大きな力にはなっていないのである。そして今後についても概ね同じであろう。
 ちなみに先程取り込んだノーザに関しては元々ソレワターセに近い存在故に高い融和性を誇るがそれでも強化レベルとしてはそこまで大きくはない事を付記しておく。

 むしろ取り込んだ事による影響は、精神的なものが大きいだろう。
 つまり取り込んだ肉体がもつ情報、あるいは記憶ともいうべきか、それが大きな影響を及ぼしているという事である。

 シャンプーの持つ乱馬への愛情、
 ゴオマの持つ凶暴性と狂気、
 まどかの持つ救済の精神
 なのはの持つ不屈の心、
 本郷の持つ正義の魂、
 流ノ介の持つ殿への忠誠心、
 そしてノーザの持つ不幸に導く悪意、

 これらを全て取り込んでいる事がむしろ問題なのだ。


 ここでスバルの精神状態を振り返っていこう。
 シャンプーに対し望まぬ殺戮をさせられた事でスバルの精神は大きく摩耗した。
 止めたいとも願おうとも決して叶わず操り人形として戦わされる状態だ。
 そこにゴオマの持つ凶暴性と狂気を取り込んだのだ。
 自己を破滅に導いても破壊をもたらす狂気――それは不幸にもスバルに適合していた。
 自身が壊れても構わないわけなのだからその狂気はスバルにとって都合が良かった。
 ソレワターセ及びノーザにしてみればそれはあまりにも都合が良すぎた。
 そのお陰で運良く、不幸とも言うべきかなのはを取り込む事に成功した。

 だが、それこそが最後のスイッチだ。スバル・ナカジマにしてみれば高町なのはは何よりの恩人であり全ての希望とも言える存在なのだ。
 それを自身の手で摘み取り、あまつさえ取り込んでしまい同一化してしまったのだ。
 支配への抵抗を放棄し、狂気に身をゆだねてしまったばかりに最悪の結果を導き出した――
 どんなに願おうとももう取り返しのつかない致命的な失敗だ――

 スバルの精神は完全にぶっ壊れてしまった。既にスバル・ナカジマという精神など残骸でしかない。
 残ったのは氾濫した記憶情報だけでありそれをソレワターセが操作しているだけである。

 と、流ノ介を取り込んだ所まではご理解いただけただろう。ではここからアクマロの動きを振り返る。
 とはいえそれ自体は簡単だ。実はあのときアクマロはスバルにも惚れ薬を飲ませていたのだ。
 先程ノーザに2つ飲ませたと説明したがその理由は確実に一日玉以上を飲ませる為だ。
 1つだけの場合効果が一瞬しか保たない一瞬玉しか飲まない可能性がある。
 だが、最大の問題としてコロンすら素で判別がつけられない物である以上、誰にもどれがどれかを鑑別する事が出来ないのだ。
 そこでアクマロは考えた。2つ飲ませれば確実に最低でも一日玉を飲ませる事が出来ると。
 そして余ったスバルに最後の1つを飲ませたと。こちらが一瞬玉の可能性もあるがこちらはある意味上手くいけば良かった程度のものでしかない。

 さて、シャンプーを取り込んでいるわけなのでスバルはそれが惚れ薬である事に気付いていた。愛情という物を知らないソレワターセが毒薬で無いと判断したならば飲む流れに不思議は無い。
 そしてアクマロをその目で見た事でアクマロに惚れてしまったというわけだ。
 その後アクマロがノーザを刺すという凶行、彼女を主とするソレワターセは彼女を守るべく動く――
 が、ここで取り込んだ記憶が大きな力となる。
 元々ソレワターセの支配力が強くてもプリキュアの精神力で破れる存在だ。取り込んだ者達がそうそう簡単に屈すると思うか?
 取り込まれた6人はそれぞれ思考するベクトルは若干違うが皆ノーザを仕留めるべく動く筈だ。
 シャンプーにしてみれば乱馬の障害であり、本郷達4人にしてみればスバルを狂わせ哀しみをもたらす存在であり、ゴオマにとっても只の敵でしかないのだ。
 要するに無計画に参加者を取り込むと共に彼等の心の強さを甘く見た事がノーザの最大の失敗というわけだ。
 それに加え、惚れ薬の効果でアクマロに対する愛情により彼を守ろうとする状態だ。
 そう、スバルの矛先はアクマロへの被害を最小限に抑えノーザへのダメージを最大限に発揮する方向に向けられたのだ。


 それがその結果でありもう1つの真実なのだ。そしてノーザを取り込み、新たに植え付けられたソレワターセにより愛するアクマロを主人として彼女はさらなる戦いに赴くという事だ。
 ちなみにノーザを取り込んだからといってそれが行動に大きな影響を及ぼす事は無い、彼女の悪意がスバルを支配しようとしても、同じ様に取り込まれた本郷やなのはがそれを阻止するからだ。
 逆を言えば今のスバルを支えているのは惚れ薬による歪められた手ごたえのない愛でしかないのだが――

 そしてアクマロの推測通りスバルを救う事は限りなく不可能に近い。浄化しても惚れ薬の効果が消えない限りアクマロへの忠誠は消えないからだ。
 ちなみにスバルが服用したのは一日玉(必然的にノーザが残り2つを服用した事になるがこれ以上は触れない)、その持続時間は効果を信じるならば丸1日、
 無論制限により短くはなるが最低でも――その効果が切れるのは2度目の放送以降である。
 が、実の所それとは別にしてもスバルは救えない。何故なら先の攻撃でスバルの身体は生命活動に支障を起こす程のダメージを受けている。
 つまり、今の彼女が生き長らえているのはソレワターセのお陰なのだ。そんな状態でソレワターセを浄化すれば――スバルは死ぬ。
 更に言えば戦闘機人である彼女に普通の治療は使えない。
 そういう技術が無ければ彼女を治療する事は不可能――どちらにしても八方ふさがりという事だ。

 唯一の救いは先の攻撃と首輪を出した際にいくつかのものを排出したという事だ。
 彼女のデバイスであるマッハキャリバー、先の攻撃でリボルバーナックル共々破損状態となり使えないと判断され排出された。当然ソレワターセの支配からは脱却している。
 次になのはのデバイスであるレイジングハート、こちらはカートリッジこそ消費済みだが破損は無い。
 そして――ダグバのベルトの欠片とアマダム、但しこちらは激闘により排出された時の衝撃で粉々に砕け風と共に散った――
 もしかすると、スバルの凶行をこれ以上繰り返させたくない彼女達の願いがそれらを解放したのかもしれない――




 それでも彼女達の愛など手ごたえの無い愛に過ぎない――


 物語の決着を着けるのは舞台を降りた者ではなく舞台上にいる者――


 自分でカタを着けるしかないという事だ――


「……ティア……」


 それが彼女に残った最後の――


【B-7/上空】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身に生命活動に致命的なダメージ、
    ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収、惚れ薬によりアクマロに惚れている、サイクロン・ドーパントに変身中

[装備]:T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、サイクロン号@仮面ライダーSpirit
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:愛するアクマロ様のしもべとして働く。
1:アクマロ様に従い、十臓を守ると共に他の参加者(シンケンジャー、仮面ライダー、プリキュアを主に)を仕留める。その為に南西に移動中。その後17時に志葉屋敷でアクマロと合流
2:ティア……
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
 また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収したことで、彼らの情報を得ると共にその姿にコピーすることができます。但し、その力までは得られません。
※一日玉の効果でアクマロに惚れています、最低でも12時以降までは解除はされません。同時にソレワターセを浄化してもこちらは解除されません。
※生命活動に致命的なダメージを受けており、その命をソレワターセで繋いでいます。つまりソレワターセを浄化しただけではスバルはそのまま死にます。






Epilogue


 最後にもう1つだけ――
 スバルの向かった方向は丁度南西――何故彼女はそこに向かったのか?
 偶然と言えばそれまでではあるが――果たして本当にそうだろうか?
 そこには彼女の相棒ともいうべきティアナ・ランスターがいる。彼女に惹かれているのではなかろうか?
 もしかするとサイクロンメモリとティアナの持つトリガーメモリの運命的な力で引き合っているのかも知れない。
 運命論はともかくとして、スバルとしてはティアナに自身の命を終わらせてもらう事を望んでいるのかも知れないのだろう――
 恩人すら手にかけた自身を断罪する者として――

 だが、ティアナもまた修羅の道を進んでいる――

 しかしスバルとティアナには決定的に違う所がある。
 スバルは唯々流されるままに堕ちていっただけだが――
 ティアナは自ら堕ちる事を選んだのだ――

 堕ちる事が正しいと言うつもりはない。だが、唯々流されて全てを諦めた者が強い決意で諦めず道を歩む者の前に立つ資格などあるのだろうか――

 相棒に対する愛情すらも――手ごたえはない――





[全体備考]
※ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ゴオマのアマダム@仮面ライダークウガ、女傑族の腕輪@らんま1/2、ナナシ連中の刀@侍戦隊シンケンジャーは破壊されました。
※バナナパフェ@超光戦士シャンゼリオン、彦馬のクッキー@侍戦隊シンケンジャー、カートリッジ@魔法少女リリカルなのは、ソレワターセの実@フレッシュプリキュア!は全て消費しました
※マッハキャリバー(破損状態)@魔法少女リリカルなのは、リボルバーナックル(右手用、左手用共に破損状態でマッハキャリバーに収納中)@魔法少女リリカルなのは、
 レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはがB-7に生成されたクレーター中央に放置されています。何れもカートリッジ残量は0です。
※支給品一式×3、双眼鏡@現実、ランダム支給品0~3(ノーザ0~1、シャンプー0~1、ゴオマ0~1)、水とお湯の入ったポット1つずつ、バグンダダ@仮面ライダークウガがB-7の何処かに散らばっており、破損している可能性もあります。



【支給品紹介】

バナナパフェ@超光戦士シャンゼリオン
鹿目まどかに支給、
涼村暁の好物。


彦馬のクッキー@侍戦隊シンケンジャー
高町なのはに支給、
ディケイドシンケンジャー編(第二十一幕と第二十二幕の間)で登場、
戦いに出た丈瑠達の帰りを待つ彦馬が光栄次郎に誘いを受け作ったシンケンジャー5人(源太以外)の顔を模したクッキー

女傑族の腕輪@らんま1/2
本郷猛に支給、
かつて八宝斎が女傑族より盗んだ秘宝。
腕輪に嵌められている丸薬は惚れ薬となっていて、飲んだ後最初に見た異性に惚れてしまうという強力なもの。
嵌められた丸薬はそれぞれ『一瞬玉』、『一日玉』、『一生玉』と呼ばれ持続時間はその呼称通りである(つまり一瞬玉は一瞬、一日玉は一日、一生玉は一生)。
但し、この地においては制限により一日玉、及び一生玉については持続時間が短くなっている(それでもすぐに解けるという事は無い)。



時系列順で読む

投下順で読む



Back:Lの季節/I don't know the truth ノーザ GAME OVER
Back:Lの季節/I don't know the truth スバル・ナカジマ Next:青き地獄の姉妹
Back:Lの季節/I don't know the truth 筋殻アクマロ Next:野望の「二の目」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年03月14日 23:10