「親友」(4) ◆gry038wOvE
もう一方の場所では、もう一つの遺志が渦巻いていた。
「────クウガ」
村雨が、血を噴出して倒れた男の体に手をかける。
その体はもう治らない。ゼクロスと違い、体の構造自体はほぼ人間なのだ。
…………しかし、男の手が、またピクリと動いた。
──そのことに気づいて、彼は驚愕する。
「……生きているのか!?」
そう、厳密に言えばこの時点ではまだ死んでいない。
アマダムの持つ、自衛効果によって五代の体は致命的なダメージを受けると、仮死状態にするような効果があったのである。
そんな仕組みを知らないゼクロスは、その生存本能に驚いているようであった。
「村、雨さん…………」
無論、制限下にあるアマダムは、そんな働きを長くはもたせられない。
だから、それを知る霊石が、深い眠りの代わりに最後に仲間に語り欠ける時間を明け渡したのだろうか。
そう、この石は持つ者の願いを具現化させるのである。
その効果か否か、五代は小さな声を出そうと必死だった。
「喋るな、クウガ」
「あの子、たちを、を見つけたら、……助けて、あげてください…………。
それが、仮面ライダーの、使命だと、思うから……」
死に際に託す言葉がそれなのか、と村雨は思った。
だが、この男の感情には何処か突き動かされる。
どうあっても、人を救いたいのだな……という強い意思が、ゼクロスの欠落した部分を揺さぶっていく。
仮面ライダーという言葉を知らない彼に、こう言われてしまうのも変だなと思ったが、彼の遺志である以上は、批判もできない。
「……わかった」
────また、この了承と同時に、五代のもう一つの願いが偶然にも叶った。
アマダムの能力とは全く関係ないところで、五代の最期の望みが、彼らを呼びかけたのである。
五代の耳に、声が聞こえる。
「……五代! 五代なのかっ!!」
その時、近くから男性の声が聞こえた。
真っ黒なライダースーツを着た男と、白いコートの男である。
声を発したのは、ライダースーツの男の方であった。
「…………一条、さん……………」
彼の最期の望み────それは、親友・一条薫と再会することだったのだ。
★ ★ ★ ★ ★
「さやか……あなたのことは忘れません……」
涙も枯れたつぼみは、血まみれになったさやかの顔や体を川で洗う。
彼女は、人を殺したことを後悔していた。だから、せめて亡くなった今こそ、彼女は血で汚れていてほしくなかったのだ。
衣服についたものは落ちにくかったが、皮膚に付着したものは、多少赤みがかっている程度になった。
「アマリリスの花言葉は、内気の美しさ……」
さやかの良い部分は、常に隠れているようにさえ思えた。
本当の優しい彼女が、美しい彼女が、どこかに隠れていたのである。
彼女の美しさは、とことん内気で、なかなか姿を見せてはくれなかった。
つぼみだって一度、彼女に堪忍袋の緒を切らせてしまったくらいだった。
そんな花を、さやかの体の上に乗せる。
岸辺で、美しい死体が手を組んで、花を乗せて眠っていた。
ダークファウストとして目覚めることも、もうない。
「ありがとう、さやか……私の永遠の友達……」
さやかはつぼみに何をしてくれたわけでもない。
だが、彼女の優しさや本当の心に触れ、友達として認め合い、彼女の死を乗り越えてつぼみは強くなり──えりかの死とも向き合うことができた。この場で確かに人の死は起きていて、それをプリキュアとしてどうにかしていかなければならないという自覚も強まった。
……その戦うための強さが、彼女からの贈り物だと思うと寂しい。
さやかの性格を考えると、こんな状況じゃなければ、きっと一緒にいるだけで楽しかったのだろうな、とつぼみは思った。
「私たち、もっと早く会っていれば……こんな事にならなかったんでしょうか」
もし、会えたのがごく平穏な日常だったら。
同じ中学校のクラスメイトとか、近所の友達同士とか、そういう真柄だったのなら。
そんなありもしない日常を想像して、つぼみは涙ぐみそうになった。
どうして、こんなことになってしまったのだろう。
だって、彼女は死ぬ直前だって友達や好きな人を考えてるくらい純粋な女の子だったのに──。
「えりか、もしそっちにいたら……私の友達と仲良くしてあげてください。
ちょっときつい事を言うかもしれないけど、本当に楽しくて、優しい人だから……」
そう言って、つぼみはさやかに少しだけ黙祷を捧げた。
永遠の友達を鎮魂する、その姿は悲しげで、今にも折れそうだった。
「…………その子、死んじまったのか」
つぼみの背後から、若い男性の声が聞こえ、彼女は慌てて振り向いた。
一体、誰だかわからない以上、警戒が必要だと思ったのだ。
黙祷という行為は隙が大きすぎる。
「……安心しろ。危害を加えるつもりはない」
バンダナを巻いた、体格の良い男────それはゼクロスの応戦に向かい、迷子になった良牙である。
つぼみはその男のことを知らなかったが、彼は敵意を見せてはいない。
「……まあ、俺もその子と喋ったわけじゃないが、前にちょっと見かけたんだ。俺にも手を合わさせてくれないか?」
つぼみは、暗い顔で「はい」と答え、その男がさやかに手を合わせて黙祷するのを見つめた。
本当に良い人であることははっきりわかった。
つぼみに対して敵意を見せないというどころか、こうしてさやかの死体に手を合わせてくれる。
さやかの死を悼む人がいてくれたことが、つぼみには嬉しかった。
「なあ、そのアヒル……」
と、黙祷を終えた良牙はそこにいた一羽のアヒルを指差した。
さやかの死も気になったが、同時にこのアヒルについても気になっていたのだ。
何故かといえば、それは単純────
(ムースじゃないか?)
そう、名簿には載っていないが、それはムースではないかと良牙は思ったのだ。
「このアヒルさんを知ってるんですか?」
「ああ……まあ、ちょっと知り合いでな」
「なら、このアヒルさんを引き取ってくれませんか?」
このアヒルの知り合いがいるのなら、その人物にこのアヒルを託したいと思ったのだ。
冷静に考えれば、殺し合いの場においてこの行動は厄介払いもいいところだ。
ただ、アヒルを持主に返したいという想いはあったので、良牙に明け渡そうと考えたのだ。
「……わかった」
良牙もそれを了承する。
彼は、とりあえずムース(?)にお湯をかけて、彼を元の姿に戻そうとしたのである。
多少因縁のある相手だが、時に協力することもある。そもそも、同じ呪泉郷仲間として、乱馬のライバルとして、少しは協力できる関係であるのは確かなのだ。
それが何時でもガラスの友情であるのも確かだが。
「……良かったですね、アヒルさん」
そう言って、アヒルを良牙の手元に渡すと、少しの寂しさも感じる。
一応、しばらく一緒に行動していたアヒルである。
さやかとの事も全部、このアヒルは見届けていてくれた。
「で、お嬢ちゃんはこれから、一人で行動する気なのか? 何なら、俺が一緒に……」
良牙はつぼみの身を案じて言う。
そう、これが自然な対応なのである。つぼみは勝手にアヒルとの別れまで考えてしまったが、結局はこうなる運命だ。
互いに仲間を求めていたのだから。
「あ、ああ……そうですね! 確かに一緒に行動した方がいいかもしれません。ただ、一つだけ寄りたい場所があるんですが……」
「そうか……。俺も行きたい場所があるが、そこには別の奴が向かったから大丈夫だろう……」
奇しくも、向かおうとしている場所まで同じなのである。
良牙はゼクロスと怪人の交戦地、つぼみは五代が死した場所──それはほとんど同じ場所だ。
双方の地は50mも離れていない。
(ムース……、しばらくしたら元に戻してやるから安心しろよ!)
お湯のポッドはあるが、変身を解除すると全裸になるし、極力隠したい変身体質であるため、良牙はムースを元に戻すのを後回しにする。
そんな思いさえ知らぬまま、丈瑠は良牙の腕で、あまりにきつすぎる抱きしめ方に痛みを感じていた。
「私は、花咲つぼみです。あなたは?」
「俺は、響良牙だ」
二人は、再び森を歩み始めた。
【1日目/昼前】
【D-5/川岸】
【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×3、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、ムースの眼鏡@らんま1/2、さやかのランダム支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:五代の死体がある場所へと向かう
1:仲間を捜す、当面はD-5辺りを中心に探してみる。
2:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する
3:あのまどかは……???そしてマミは……
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(小)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身2回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ@仮面ライダーW、支給品一式
[思考]
基本:天道あかねを守る
0:とりあえずつぼみの向かう場所についていく。良と五代はまあ大丈夫だろう…
あとは隙を見てムース(丈瑠)を元の姿に戻してやろう
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:ついでに乱馬を探す
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
なお、秘伝ディスク、ガイアメモリの詳細は次以降の書き手にお任せします。
支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
【志葉丈瑠@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:両手完全破壊、ダメージ(大)、疲労(極大)、ガイアメモリによる精神汚染(中)、アヒル化、絶望、全裸、体が痛い(良牙が過剰に強い力で抱えている為)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:?????
0:もうどうして良いのかわからない。
1:源太に対して合わせる顔が無い……
[備考]
※参戦時期は、第四十六、四十七幕での十臓との戦闘中です
※鴨子溺泉の水を浴びた事でアヒルに変身する体質になりました。但し丈瑠はまだ原因には気付いていません。
※しばらくつぼみと行動していたため、つぼみとさやかの行動については粗方見届けています。それにより、自分の行動に対する後ろめたさも強まっています。
【備考】
※D-5の川岸に美樹さやかの死体が残っています。死体には、アマリリスの花が添えられています。
★ ★ ★ ★ ★
「折角、友達になれたのにーーーーっ!!!!」
溝呂木眞也は、その雄たけびを聞いていたし、さやかが完全に死ぬのを眼前にしていた──。
人形が壊れた瞬間を、彼はもう目の当たりにしてしまったのである。
(ハッハッハッハッ…………惜しいが、これで充分だ)
見届けられなかったが、彼女は人を殺したらしい。
誰を殺したか知らないが、五代だと聞けば、彼は喜ぶよりむしろ、その場にいなかったのを惜しむだろう。
だが、何にせよさやかはファウストとして、充分に働いた。殺してくれた。そして死んでくれた。
もっと存分に楽しませて欲しかったが、もう彼女を使ったゲームは終わりだ。
さて、次はどう遊ぶか。
ともかく、溝呂木はサイクロン号の置いてある辺りに向かった。
ここで、彼は二人を一度分散させたのである。
鍵が溝呂木の手元にある以上、それは誰にも使えない。
そして、幸いにも破壊などの外傷もされず、誰にもみつけられずに放置されていた。
すると、そこへ……
「はぁ…………はぁ…………」
右目を潰された少女が、全身に疲労感を感じながらよろよろと歩いてくるのが見えた。
まどか────いや、スバルである。
先ほど、サイクロン・ドーパントとして溝呂木の撤退を手助けしてくれていたのだが、怪我をしている。
クウガやゼクロスにやられたのだろうか。
何にせよ、その怪我を溝呂木は何とも思わないし、もし出来るのなら彼女を利用して遊べないかと考えた。
「……まあいい。少し事情を聞かせてもらうか」
【一日目・昼前】
【D-4/森】
【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~2個(確認済)、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
0:まどか(スバル)から事情を聞く。
1:姫矢准からウルトラマンの力を奪う。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:今は凪は放置。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1~2エリア以内に対象がいる場合のみです。
※ダークファウストが一度に一体しか生み出せないことを、何となく把握しました。
※目の前にいる鹿目まどかがまどかを殺した何者かが化けた偽者だと推測しています。
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:疲労(超極大)、ダメージ(超極大)、全身に生命活動に致命的なダメージ、右目刺傷&流血
ソレワターセによる精神支配、シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収、惚れ薬によりアクマロに惚れている、鹿目まどかの姿に変身中、幻覚を見せられている。
[装備]:T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、スモークグレネード@現実×2
[思考]
基本:愛するアクマロ様のしもべとして働く。
0:アクマロ様が傍にいてくれている……!
1:アクマロ様に従い、他の参加者(シンケンジャー、仮面ライダー、プリキュアを主に)を仕留める。そして、鹿目まどかになりきって美樹さやかの友達になる。
2:ティア……
[備考]
※参戦時期はstrikers18話から20話の作戦開始前までのどこかです。
※『高町ヴィヴィオ』は一応ヴィヴィオ本人だと認識しています。
また、彼女がいることからこの殺し合いにジェイル・スカリエッティが関わっているのではないかと考えています。
※ソレワターセに憑依された事で大幅にパワーアップしています。
※シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザの肉体を吸収したことで、彼らの情報を得ると共にその姿にコピーすることができます。但し、その力までは得られません。
※一日玉の効果でアクマロに惚れています、最低でも12時以降までは解除はされません。同時にソレワターセを浄化してもこちらは解除されません。
※生命活動に致命的なダメージを受けており、その命をソレワターセで繋いでいます。つまりソレワターセを浄化しただけではスバルはそのまま死にます。
※溝呂木眞也によって幻覚を見せられました。その結果、溝呂木眞也の事を筋殻アクマロだと思い込んでいます(今後、違う種類の幻覚を見る可能性があります)。
★ ★ ★ ★ ★
────五代と一条。
元の世界の唯一無二の仲間同士である二人が、ここで別れの言葉をかわしていた。
二人がここで出会えたのは紛れも無い偶然である。
「……どうしてだ、五代……どうして、こんなことに……」
村雨と鋼牙。普段から寡黙な二人の男も、その様子を気まずそうに眺めていた。
彼らは決して、何の感情も抱いていないわけではない。
五代の死を惜しいと感じたり、一条の姿に同情したり、そうした感情を抱いていた。
だが、五代はそんな一条の言葉とは無関係に、ただ必死で、一条に伝えたい事を話そうとしていた。
「一条さん、こんな、戦い、絶対、止めてください………」
「ああ……」
「………みんなの、笑顔を、守って……」
「ああ! 勿論そのつもりだ! だから君も生きて、一緒に守るんだ!」
一条は、この状況を知らなかった。
五代の血が左胸を染めていることから、それが致命傷であることには気づいていたが、少なくともアマダムの力がある限りは治癒や仮死状態による蘇生も可能かもしれないと考えていた。
かつて五代の死を見送った時とは、比べないほど遥かに強い悲しみでもあった。
彼の死は、絶対に避けたい事実なのである。
「…………ありがとう、ございます…………」
遂に五代の息は切れ始めていた。
アマダムの力も弱まりつつある。
だが、その前に……まだ五代には伝えたい事が山ほどあったのだ。
完全にアマダムの力が消える前に。
そして、己の全身が活動をやめる前に。
「ねえ、一条さん、…………俺が、こんな力を、持って、戦うことに、なったの……、後悔してるでしょう?」
「……ああ!」
鬼刑事・一条薫が頬に涙を垂らす。
「君にこんな寄り道はさせたくなかった! 君には冒険だけしていて、欲しかった……!
君がこんなに傷ついたのは、きっと、私のせいなんだ……」
顔をぐしゃぐしゃにしていた。
それは、いまだかつて誰も見たことが無い表情かもしれない。
だから、五代は意外な表情に胸を打った。
「……そんな顔、しないでください、俺は後悔、してないんです……」
彼は笑顔を愛する男だった。
笑顔のために、戦ってきた男だった。
痛みに耐え、ただ誰もが笑顔になれる世界を作りたいために戦った。
その戦いのことを、一条は忘れないだろう。
五代は、それから先の言葉は一切切らずに、一呼吸ではっきりと言った。
「……だって、一条さんに会えたから!」
五代は、笑顔を作り、力無い腕でサムズアップを返した。
「ああ…………!」
一条は、きっとどこかで、「それ」が来た事を確信したのだ。
くしゃくしゃの笑顔、そして五代の拳へと拳を合わせたサムズアップ。
それは、見るものにこれまで二人がどれだけ親しい関係であったのかを考えさせる。
今までにない表情で、五代を見送る────それは二人の友情の証だった。
だが────
二人の友情の証が、そのまま崩れ落ちていく……。
五代の右腕は力なく地面に落ちて、そのまま動かなくなった。
「五代……?」
死んでいるとは思えない顔だったから、死体慣れした一条ですら、それが誰かに殺された死人の顔だとは思えなかった。
笑顔。
そんな表情で、青空を見ながら死んでいる男は、これまで一人だっていなかった。
それは、彼が一条との出会いを本当に後悔していなかったことを、意味していた。
きっと、殺した相手だって、彼は怨んではいないのだろう。
「五代! 五代!」
それでも、彼に再び笑顔を見せてやりたいから、彼の体を揺さぶる。
戦わなくてもいい。ただ、もう一度、どこかへ冒険をしに行ってほしい。
それで、桜子たちに土産話を聞かせてやってほしいのだ。
…………しかし、2000もの技を持った男は、既に動かない。
「五代ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」
最後の笑顔、最後のサムズアップ、最後の友情────一条はそれを噛み締め、慟哭した。
【五代雄介@仮面ライダークウガ 死亡】
★ ★ ★ ★ ★
…………それから、また数分経った時、五代の体からアークルが摘出された。
涙も枯れた一条は、彼の体から浮き上がったアークルを彼の体から取り出したのである。
本来、変身していない時には体内で分散されるが、持主の死が近付くと体の外に出てくるのが、このアークルの特徴でもあった。
「これでもう、彼は戦い続けずに済む……。彼は、争いの無い世界へと行けたんだ……」
青空となった男は、最後まで笑顔だった。
彼にその姿を返してやる為に、一条は涙を拭い去った。
これからは、一条が誰かの笑顔を護るために戦わなければならないのだ。
村雨良が、目の前で土を掘っている。
生身でありながら淡々と、工事でもしているのかというくらいの早さで、地面が掘られていく。
人間離れした能力であり、人間じみた行動をしようとしている証だった。
「……五代は、一体どうして死んだんだ?」
一条は村雨に問う。名前を聞くよりも先に、こんなことを聞いてしまうのは警官失格かもしれない。
だが、それが最も気になった。クウガはどうして死んでしまったのか。
凄まじき戦士となりうる超人が、どうしてこんなところで血を吹いたのか。
「横から剣で刺された……溝呂木という男に操られた女の子にな」
「その女の子は……?」
「美樹さやかというらしい……。どうしているかはわからない」
溝呂木眞也、美樹さやか。その二人は名簿に載っていた。
溝呂木という男には人を操る能力があるという────
「溝呂木……か」
鋼牙はその名を呟いた。
人を操ったというその男こそ、ホラーに操られている可能性がかんがえられる。
何にせよ、斬らなければならない相手である可能性は無きにしも非ず。
彼に会った際は気をつけなければならない。
「君の名前は?」
「俺は……村雨良と言うらしい」
「らしい?」
自分の名前なのに、まるで他人事である。
しかし、そうした一条の疑問を無視して、村雨は続ける。
まるで自分の名前など、今は全く関心がないように。
「あいつは最期にさやかを助けろと言った……」
村雨の目は脅迫じみていた。だから決して殺すな、と。
一条はそれに屈しているわけではないが、本当に操られているだけなら、五代の遺志も継ぐべきだと思った。
だから、憎しみからさやかを殺す気はない。
そう、その少女には鼻から憎しみなど感じていないのだ。
ただ、彼の遺志を継ぎたい。
彼の生命を少しでも保たせてくれた……彼の死に目に会わせてくれた、このアークルに誓って。
そして、このライダースーツの戦う力に誓って。
「……彼らしいな。……ああ、わかっているつもりだ。彼が望むことも、望まないことも」
五代との付き合いは一条が最も長い。この場でも一番長いのである。
だから、当然彼がさやかの死を望まないことくらいわかっている。
「……ところで、君はどうするんだ? これから」
一条は、村雨に訊く。
彼についてはほぼ何も知らない。
だが、少なくとも五代と仲良くやっていたというのはわかる。
ここまで五代がどうしていたのかを、聞いておきたかった。
「行く宛てはない」
「なら、我々に着いて来てくれないか。仲間は多いに越したことはない」
「……俺はそれで構わない」
村雨の答えは単純である。
良牙も五代もいないこの状況で、一条や鋼牙に誘われれば、彼らについていくしかない。
「……出来た。五代一人分の穴だ」
男性の姿を目測できる村雨は、五代を包むのに充分な穴を既に作り出していた。
一条が、五代の亡骸を抱えて、その穴へと優しく乗せた。
土の上で五代が笑っている。
できれば、彼にはいつまでも青空を見せておいてやりたかったが、それはできない。
「……五代」
もう一度、その名を呟き、土を被せていく。
彼の笑顔に土をかけていくのは躊躇われたが、死者を埋葬する一つの手段として、寧ろ彼の為の行動であると思った。
「五代雄介……誰かの笑顔を守るために戦った戦士か────」
守りし者たる鋼牙は、一言も会話をかわすことがなかったが、その男のことが強く印象に残った。
一条薫の親友であり、鋼牙と同じ守りし者────一条たちの世界の未確認生命体第4号、クウガ。
「お前が守りたかったもの、か……」
村雨は、五代という男が最後までわからなかったが、彼の強い意志と魂だけははっきりと理解していた。
それはまるで村雨の心に抉り込んでくるような、不思議な感情だった。
今の彼の表情は、感傷に浸っているというよりは、感傷に浸れないことを惜しんでいるような、そんな姿である。
「行こう」
「ああ」
三人は、五代の眠る場所を去っていく。
振り向きはしない。ただ、親友の思いを背負って……。
【1日目/昼前】
【D-4/森】
【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
2:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
3:再びバラゴを倒す
4:一条・村雨と共に行動し、彼を保護する
5:零ともできれば合流したい
6:未確認生命体であろうと人間として守る
7:相羽タカヤに会った時は、彼にシンヤのことを伝える
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康、悲しみ
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式×2、ランダム支給品2~5(一条分1~2確認済み、五代分1~3未確認)、警察手帳、コートと背広、アークル
[思考]
基本:民間人の保護
0:五代…
1:警察として、人々を護る
2:五代の意志を継ぎ、さやかという少女を保護する
3:魔戒騎士である鋼牙の力にはある程度頼る
4:他に保護するべき人間を捜す
5:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アークルはほぼ完全な状態であるため、五代のようにこれを使用して変身することはできるかもしれません。
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:負傷(右肩に切り傷、左胸から右わき腹までの深い切り傷、左前腕貫通、胸部破損、いずれも回復中)、疲労(大)
[装備]:電磁ナイフ、衝撃集中爆弾、十字手裏剣、虚像投影装置、煙幕発射装置
[道具]:支給品一式、生命の苔@らんま1/2、ランダム支給品0~2個
[思考]
基本:カメンライダーを倒す。主催の言葉に従い殺し合いに乗るつもりは無い。
0:五代の死に……
1:二人の後をついて行く、『守る』……か。
2:良牙と合流できたら……???
3:エターナルを倒す。
4:特訓……か。
5:ミカゲや本郷の死に対する『悲しみ』
[備考]
※参戦時期は第二部第四話冒頭(バダンから脱走中)です。
※衝撃集中爆弾と十字手裏剣は体内で精製されます。
※能力制限は一瞬しかゼクロスキックが出来ない状態と、治癒能力の低下です(後の書き手によって、加わる可能性はあります)。
※本人は制限ではなく、調整不足のせいだと思っています。
※名簿を確認しました。三影についてはBADANが再生させたものと考えている一方、共に戦う事は出来ないと考えています。
【備考】
※D-4にて五代雄介の死体は土葬されました。アークルは既に摘出されています。
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最終更新:2013年03月15日 00:22