挑戦 ◆LuuKRM2PEg


 太陽が沈んだことによって、世界から光が消えて闇は深くなっていく。
 代わりに、数多の星と空に浮かぶ月が輝いているが、太陽に比べると頼りない。発達した文明と科学によって生み出された光も存在するが、世界全てを照らすには余りにも足りなかった。
 人間は闇を恐れる。闇は全てを飲み込んで、そして静寂の世界にしてしまうのだから。安らぎを与える優しい闇も存在するが、時には未来と希望を奪う凶暴な闇も存在する。
 例えるなら、古代より弱きリントを蹂躙し続けたグロンギという種族が、その代表例だ。グロンギは己の快楽の為、そしてゲゲルのスコアを稼ぐ為に数えきれない命を奪ってきた。グロンギが生きる世界でも、このバトルロワイアルでも変わらない。
 殺し合いに呼び出されたグロンギの一人であるゴ・ガドル・バは、今も木々の間を駆け抜けている。ただ、強き者と戦いたいという己の欲望を満たす為に次の獲物を探していた。
 既にクウガもダグバもいない。だが、この島には奴らと同等に面白いリントが数えきれないほどいる。カメンライダーとプリキュアがその例だ。

(どこだ……どこにいる。リント達よ、出てこい……出て来ないなら、俺の方からお前達を狩るぞ)

 ビートチェイサー2000に跨りながら、ガドルは先程の戦いを思い返す。
 弱くなった仮面ライダーエターナルを強くさせる為に、仲間を殺した。すると、期待に答えるようにエターナルは再び究極の闇となった。
 どうやら、リントは同胞を殺されると怒り狂って更なる力を発揮するらしい。そういえば、聞いた話によるとあのゴ・ジャラジ・ダもゲゲルの最中にクウガの怒りを買ったようだ。
 その場には居合わせていないが、ジャラジと戦っていたクウガも憎しみに任せて戦っていたのかもしれない。

(この俺が戦士でもない弱きリントを餌にするか……だが、それもまた一興か)

 何故、たかが同胞の一人や二人が死んだくらいで怒るのかは理解できないが、それはそれで面白い。リントが守ろうとする存在を狩ることで、リントが更に強くなるのならばいくらでも狩ろう。
 冷酷な思想を現すかのように、ビートチェイサー2000が走る道に存在する植物は踏み躙られていくが、ガドルはそれに目を向けずにただ前だけを見つめていた。

――残り30秒で爆発します。

 その最中。
 どこからともなく、グロンギのように無機質な男の声が聞こえてくる。
 それを聞いたガドルは、反射的にブレーキをかけて急停車をした。
 ガドルは周囲を見渡すが、他者の気配はない。ならば、音源は一体どこなのか?

――ここは禁止エリアです。速やかに脱出をしてください。

 疑問が解決されないまま、男の声が聞こえてくる。それは、オープニングで姿を見せたあの加頭順の声だった。

(禁止エリア……だと!?)

 ガドルは加頭の声によって、意識を急激に覚醒させる。
 禁止エリア。それは、定期的に放送が行われる度に設置される場所のことだ。加頭が言うには、そこに留まってしまうと参加者の首輪は爆発してしまい、誰であろうとも例外なく殺されてしまう。名も知らぬ三人の男がそれを証明していた。
 小規模な爆発で『ゴ』のグロンギが死ぬとは思えないが、加頭の言葉が嘘とも思えない。一刻も早く脱出をしなければならなかった。
 ガドルはハンドルを握り締めて、急激に方向転換をさせながらビートチェイサー2000を全速力で走らせる。
 迂闊だった。リントを捜すことに拘りすぎて、それ以前に大事なことを忘れてしまっていたとは。考えてみれば、この島に来てから地図をまともに確認したことは少ない。
 己の判断に呪いたくなるが、それは後回しだ。今は生存が最優先だ。

――残り20秒です。速やかに脱出をしてください。

 死へのカウントダウンは止まることがないが、それでもガドルはバイクを走らせている。
 ガドルは知らないが、ここは【G-6】エリア。最初の放送で7時から禁止エリアに指定された場所だった。

(こんな所で……負けてたまるか!)

 首が吹き飛んだせいで死ぬ。低級のグロンギならまだしも、破壊のカリスマを自負するガドルがそんな間抜けな最期を迎えるなどあってはならなかった。
 ただ、ひたすらに前を進んでいる。まだ見ぬ敵と戦う為。そして、己の勝利を掴む為。

――残り15秒で……

 そんな中でも続いて来る加頭のカウントは、唐突に聞こえなくなる。ガドルがそれに気付いたのはすぐだった。
 不審に思いながらも疾走を続けるが、やはり聞こえて来ない。どれだけ待っても、首輪が爆発することはなかった。
 つまり、禁止エリアから抜け出すことに成功したのだ。

(俺は、勝ったのか)

 命の危機から脱したことを認識して、ガドルは再びビートチェイサー2000を止める。そして、息を吐いた。
 ここまで、命を賭けたのはクウガとの戦い以来かもしれない。こんなことで生死を分ける羽目になるとは予想外だったが、これもゲゲルの一種と考えればいいだろう。
 気を取り直して、また他の戦士を捜せばいい。
 ガドルがそんなことを考えた時だった……

『命拾いをしたようだな、ガドル』 

 今度は女の声が聞こえてくる。それもまた、ガドルにとって聞き覚えがあった。
 振り向くと、女の姿が見える。ゲゲルの進行と監視を行う役割を持つ『ラ』に所属するグロンギ……ラ・バルバ・デだった。
 しかし、目の前のバルバからは気配が感じられない。これはただの映像だと、ガドルは瞬時に察した。

「お前は……バルバだな」
『そうだ。お前に、新たなる王の誕生を伝える為に現れた』
「新たなる王?」
『お前と、ダグバがゲゲルを果たしたことにより、王は現れる。王と戦う資格を得たのだ』

 バルバが淡々と告げた後、指を軽く鳴らす。
 すると、彼女の手元にゲゲルリングが突如として現れた。これは、ゲゲルを行う際にゲドルードのバックルに嵌める物だ。
 つまり、ここから本格的なゲゲルが始まると言うことだろう。それを察したガドルは怪人体へと姿を変えた。

『ゴ・ガドル・バ……これよりお前は、ン・ガドル・ゼバに昇格する。ゲゲルは始まるのだ』

 その言葉と共に、ガドルのバックルにはゲゲルリングが装着される。それを終えるとバルバの姿は消えてしまい、後にはガドルだけが残された。
 バルバが現れた理由は、この殺し合いにはグロンギも関与していることになる。この島に転送されてから『ラ』の集団はずっと自分達を監視して、そしてこうして現れたのだろう。
 あのゴハットは制限を解放すると言っていた。ならば、自分の場合は今の昇格がそれに該当するのだろう。

(新たなる王か……面白い)

 今の自分はもう、ゴ・ガドル・バではない……ン・ガドル・ゼバという殺し合いの覇者となる王だ。
 新たなる王がどこにいるのかはわからないが、それならこちらから出向いて殺せばいいだけ。
 グロンギ遺跡か。それとも全く別の場所か。だが、どこであろうとも島のどこかにいるはずだから、いずれ出会えるはず。新たなる王も比類なき力を持つだろうから、リント達に屠られることもないだろう。
 ゲゲルの前に死んでしまったら、それまでの器だったと言うこと……そう思いながら、ガドルは再び森の中を進み始めた。



【1日目/夜中】
【G―7/森】


【ン・ガドル・ゼバ(ゴ・ガドル・バ)@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、胸部に刺傷(回復中)、腹部・胸部にかなり強いダメージ、ダグバの死への空虚感、電撃による超強化、怪人体に変身中、ビートチェイサー2000に搭乗中
[装備]:ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、京水のムチ@仮面ライダーW、ゲゲルリング@仮面ライダークウガ
[道具]:支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、東せつなのタロットカード(「正義」、「塔」、「太陽」を除く)@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼
[思考]
基本:殺し合いに優勝し真の頂点に立つ。
0:ダグバのように、周囲の人間を殺して誰かを怒らせるのも良い。そして、新たなる王とも戦う。
1:参加者を探す。
2:石堀、エターナルと再会したら殺す。
3:強者との戦いで自分の力を高める。その中で、ゲームとしてタロットカードの絵に見立てた殺人を行う。
4:体調を整え更なる力を手に入れたなら今まで取るに足らんとしてきた者とも戦う。
※死亡後からの参戦です。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※ナスカ・ドーパント、ダークメフィストツヴァイを見て、力を受け継ぐ、という現象を理解しました。
※フォトンランサーファランクスシフト、ウェザーのマキシマムドライブによって大量の電撃を受けた事で身体が強化され、アメイジングマイティに匹敵する「驚天体」に進化できます。また、電撃体の使用時間も無限になっており、電撃体とその他のフォームを掛け持つ事ができます(驚天体では不可能です)。
※仮面ライダーエターナルが天候操作や炎を使ったため、彼に「究極」の力を感じています。また、エターナルには赤、青の他にも緑、紫、金などの力があると考えています。


【備考】
※禁止エリアに突入してから、首輪が爆発するまで30秒のタイムリミットがあります。


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最終更新:2014年06月06日 23:36