SPIRITSを伝えろ! ◆eQhlNH2BMs




「ここが志葉屋敷…みたいですね」
「ま、屋敷っていうだけはあるな」


沖一也一文字隼人の二人は、周りにある民家とは明らかに規模の違う家…志葉屋敷へと訪れた。
あれからいくつかの民家を見て回ったが、大したものは見つからなかった。
そこで一文字の提案により、北にある志葉屋敷に向かおうということになったのだ。

「屋敷っていうからにはでかいだろうし、何かあるかもしれないだろ」
「でも…少し遠いですよ?先輩も怪我してるんですし、近くの民家でもいいから少し休んだ方が…」
「バカヤロウ、俺はそんなやわじゃねえっての」

こんなやり取りの後、二人は北へ進み、道中も何事もないまま到着したのだ。

「とりあえず手分けして中を探索してみるとしようぜ」
「はい!」

こうして二人は、屋敷の中へと入った。


「それにしても、こんな真っ先に一文字さんと会えるとは思いませんでしたよ」
「ああ、全くだぜ。しかもかなりおいしいところで現れてきやがって…」

屋敷の中に入り、二人は改めて再会を喜び合った。
この広い中で、戦友に真っ先に会うというのは、かなり幸運なことだろう。

「他の先輩たちは…無事ですかね?」

沖のその言葉に、一文字は呆れたように言葉を返した。

「あいつらがそう簡単にくたばるわけねえだろ」
「そ…そうですよね。すみません、変なこと言って」
「本郷も結城も村雨も…きっとどこかで正義のために戦ってる。俺たちも負けてられないぜ!」

そうだ。あいつらは負けない。
俺たち仮面ライダーは、たとえどんな奴らが相手でも正義のためなら何度でも立ち上がれる。
決してあきらめないのだ。
だから、その胸に正義が刻まれている限り、彼らが倒れることはありえないのだ。

沖の方を見てみれば、ぽかんとした表情をしていた。
おいおい。まだあいつらがどっかでくたばってるかもなんて考えてるのかよ。
心配しなくてもあいつらは―――



「村雨って…誰ですか?」



はあ?ふざけてんのかこいつ。

「村雨って言ったら村雨良のことだよ!名簿にも名前があるだろ!?」
「確かにありますけど…一文字さんの知り合いですか?」

何なんだこいつ。寝ぼけてるのか?

「知り合いも何も…俺たちの仲間だろ!10人目の仮面ライダー…ZXのことだよ!」
「10人目…ゼクロス?」
「ああ、BADANを潰すために、俺たちと一緒に戦ってたじゃねえか!」
「BADANって…電波ジャックを起こして世界中の人に宣誓してきた組織のことですよね?すみません、月から帰ってきたばかりで余り状況をつかめてなくて…」

おかしい。
なにかがおかしい。
さっきから沖との会話がかみ合わない。
こりゃあ、詳しく話を聞いてみないといけねえかもな。


「つまりなんだ…お前は建設中だった月面基地を破壊され、怪人に襲われたところをなんとか脱出し、地球に帰ってきた直後にここに連れてこられたってわけか…」
「はい…BADANの放送があったのも、その頃ですね」

沖からここに連れてこられる直前の話を聞いた俺は、眉をしかめた。

「なあ沖、もしそれが本当なら、おかしいことになるんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、俺の記憶が正しければお前の話は何カ月も前の出来事になっちまうんだよ」
「そんな!…それってじゃあ、まさか…」

どうやら沖も気づいたらしい。
そう。俺と沖では、連れてこられた時間軸に、何か月もの差があるということだ。

「異なる時間から人を集めるなんて…」
「ああ、どうやらあの加頭って野郎の背後にいる奴らは、とんでもない力を持ってるみてえだな」

まあ、だとしても関係ねえがな。
たとえどんな奴が待ち構えていようと、俺たちのやることは変わらない。
こんなくだらない企画を開催した奴らを倒して、殺し合いを止めるだけだ!


「それで一文字さん、教えてくれませんか?さっき話してたBADANや村雨良のことを…」
「ああそうだな、ちょいと長くなるから覚悟しとけよ」

こうして俺は沖に、BADANや村雨について説明を始めた。

BADANというのはようするに、新たに現れた悪の組織ってわけだ。
自分たちのことを「神に愛された者たち」なんて抜かしてやがる、いけすかねえ野郎どもだ。

村雨は初め、記憶を失っており、その記憶を求めてBADANのコマンダーとして俺たちの前に立ちふさがった。
だが、やがてBADANを脱走しあてもなく放浪し、いろいろとあった後、今は亡き一条博士が残した村雨の記憶が詰まったメモリーキューブってやつを取り込み、あいつはすべてを思い出した。
村雨の姉、しずかはBADANによって殺された。
しかも村雨の体はBADANの首領JUDOの器として作られたらしい。
初めはBADANへの復讐心丸出しで手を付けられなかったり、自分がJUDOの器だっていう事実に苦しんでいた。
それでも今の彼は、正義のために戦う戦士として、未熟ながらも日々頑張っている…


「…とまあ、簡単に説明するとこういうわけだ」
「はあ、なるほど…」

一文字の話を聞き、沖はうつむきながら今聞いた話を整理しているようだ。
まあ、いきなりこんな話を聞かされたのだから無理はないだろう。

「確かに昔は敵だったが、今はもう心配いらねえよ。きっと今もどこかで…」
「でも一文字さん」

一文字の言葉を遮り、沖が言葉を発した。

「その…一文字さんは俺が知ってる一文字さんよりずっと未来から来てるんですよね?」
「ああ、そうみたいだな」
「だとしたら…その村雨にも、同じことが言えるんじゃないですか?」
「…何?」
「つまり…彼がBADANにいる時代から連れてこられている可能性もあるんじゃないですか?」
「……な!そんなこと…」

あるわけない、と口にしようとして止めた。
確かにあり得る話だ。
実際、今目の前にいる沖の時間軸では、村雨はまだBADANに属しているのだ。
村雨が過去から連れてこられている可能性も十分にあり得る。

「一文字さん…」

うつむいてしまった一文字に対し、沖は心配そうな表情を浮かべる。
しかし一文字は、突然顔を上げたかと思うと、笑顔を浮かべていった。

「心配いらねえよ」
「え?」
「村雨は俺たちの後輩で同じ仮面ライダーなんだ!それを信じてやれなくてどうするんだってんだ!」
「でも……」
「それに、もしあいつが記憶をなくしてて、記憶を求めて暴れてるようなら…」
「ようなら…どうするんですか?」
「こうするんだよ!」

そういうと一文字は、突然拳を振り上げ沖にパンチをくらわせた。
突然殴られ沖の体は吹っ飛ばされる。


「ぶん殴ってでも止める!そして教えてやるんだ!お前は正義のために戦う戦士…仮面ライダーZXだってな!」

仮に俺の口から奴に村雨しずかのことや器の話をしたところで、実感がわかないだろうし信じてもらえるとも思えない。
だが、そんな俺たちにも伝えてやれることがある。
それは仮面ライダーとしての魂だ。
たとえ記憶を失っていたとしても、その胸にSPIRITSが宿れば…きっと奴は変われるはずだ!

「い、一文字さん…俺を殴ってもしょうがないじゃないですか!」
「あ、悪い…つい盛り上がっちまって」

ま、あいつが記憶を失ってるってのも可能性の話だしな。
今は信じるしかない。
村雨良が、仮面ライダーとして戦っていることを―――


「とりあえず、改めて探索するとしようぜ!」
「一文字さんは休んでてください!俺が屋敷の中を見て回りますから!」
「そうはいっても、じっとしてるのも落ち着かないしよ…」
「怪我人は安静にしていてください!」
「ちぇ、真美さんみたいなこといいやがって…分かったよ!おとなしくしてればいいんだろ」


彼らは知らない
自分たちが屋敷の中で話に熱中している間に、南の方で気柱が発生していたことを。
その現場にZXがいたことを。
そして、今の彼がBADANでも仮面ライダーでもない、からっぽな状態であることを。

【1日目/黎明 B-2 志葉屋敷】

【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(中)、胸部に斬痕
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考]
基本:仮面ライダーとして正義を果たす
0:探索は沖に任せて休む
1:他の仮面ライダーを捜す
2:暗黒騎士キバを警戒(但しキバは永くないと推測)
3:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める
4:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す
5:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……?
[備考]
※参戦時期は第3部以降。
※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。
※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、頬に痛み
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:志葉屋敷を探索する、一文字の治療道具は最優先で見つけ出したい
1:仮面ライダーとして人類を護る
2:先輩ライダーを捜す
3:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
4:仮面ライダーZXか…
[備考]
※参戦時期は第1部最終話終了直後です
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました


※D-3で発生した獅子咆哮弾の気柱を見逃しました



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最終更新:2013年03月14日 22:27