進化論 ~GOOD MORNING! -HELLO! 21st-CENTURY~ ◆7pf62HiyTE




 少なくとも――ゴ・ガドル・バは自身の力に自信を持っていた。


 ガドル達グロンギの中でも頂点に君臨するン・ダグバ・ゼバ、特殊な役割を受け持つラ・バルバ・デ等が位置するンやラを除くと最高階級ともいうべきゴ、
 その中においても最強と言っても過言ではない程の実力を持っていた。
 そうでなければ自身を『破壊のカリスマ』と名乗りはしない。

 ガドルにとっての目標はザギバスゲゲルでダグバと戦い彼を撃破する事であった。
 それに進む為のゲリザギバスゲゲル、そしてそれを妨害するクウガとの戦いは通過点でしかない。
 クウガが得た金の力、それを一ヶ月かけて得たのもダグバとの戦いの為、
 ゲリザギバスゲゲルにおいて『戦うリント』つまり『男性警察官』を金の力で殺害するというルールを課したのは自身の戯れ、つまりは趣味に過ぎない。

 そう――カウンターが破壊された事によるゲゲルのやり直しという事態が起こったとはいえ、ザギバスゲゲルへと進む事はガドルにとって何という事もない確定された事――その筈だった。


 だが、その確固たる自信は2度の敗北により脆くも崩れ去った――
 1度目はクウガによって、2度目は2人のリントの少女によって――
 未だ自身の命は消えてはいない、だが本来ならば2度死んでいる事に違いはない。
 この恥ずべき体たらく、『破壊のカリスマ』の名は返上せねばならないだろう。


 脳裏に浮かぶは1人の男、
 グロンギのルールを破りゲゲル関係無しに無差別に殺戮を繰り返した唾棄すべき存在ともいえるズ・ゴオマ・グ、
 ゴやメよりも下の位であるズ故に奴の実力は取るに足らないもの(それでも一般的なリントよりずっと強いが)、
 ダグバのベルトの欠片を得て身の丈に合わぬ程強大な力を得たとはいえ自身の力に及ぶ事も無く、当然の如くダグバに粛正された愚か者でしかない。

 良い笑い者――だが、今の自身に奴を笑う資格などない。


 金の力を得て調子に乗っていなかったか?
 自身の力に胡座をかいていなかったか?
 借り物の力で満足していたゴオマと同レベルではないのか?
 無論、リントの作りしものを利用したとはいえ金の力はガドル自身の中から生まれし力、ゴオマのそれと同列に論じられるものではない。
 しかし、力を得て慢心していたという意味では五十歩百歩、全くの同レベルと言えよう。

(そういえば――)

 2人の少女に奪われた故に手元には無いが名簿にはゴオマの名前もあった。
 既に数ヶ月前に死んだ筈の奴が居るのは明らかにあり得ない事だ。
 が、それに関しては深く考える事も無い。クウガによって殺された筈の自身がいるのだ、ダグバに殺された筈のゴオマがいる事など不思議でもなんでもない。
 参加しているグロンギはダグバを除くとゴオマだけ、加頭は暗に自身とゴオマが同レベル、そう言わんが為に自身とゴオマを参加させたのだろうか?
 屈辱的ではある。だが、今は甘んじて受けよう、金の力を以てしてもクウガはおろかリントの少女2人を殺せず敗北した自身にそれに異を唱える資格など皆無なのだから――
 とはいえ、ゴオマがどうなっているかなど別段どうでもよい。いつもの様にリントを殺戮しようしたがリントの強さにあえなく敗走――そんな姿が浮かぶ程度である。



 重要なのは自身の事だ、このままゴ・ガドル・バは終末を迎えるのか?

 否、断じて否!

 理由はどうあれガドル自身は今もこうして生きている。手持ちの道具は全て失っている、ダメージも回復中とはいえ決して小さいものではない。
 だが、そんな事は大した問題じゃない、言うなればカウンターを破壊されてゲゲルを一からやり直しせねばならない状況に陥った程度のものだ。
 機会が与えられている、それはつまり機会を活かせば済むという事だ。

 そもそもクウガとてゲゲルを行うグロンギに大抵一度はしてやられている。だが、それでも再戦した時にはほぼ確実に仕留めているではなかろうか?
 何よりそれはガドル自身が証明している。
 そのゲゲルの最中にクウガが仕掛けてきた時は終始クウガを圧倒し金の力でさえも全く問題にせず、自身の得た金の力で返り討ちにした。
 しかし再戦した際、奴は金の力を更に強化し、ガドルを遂に打ち倒したのだ。
 つまり、奴自身あの時点では自身に及ばない事を察し(そもそもガドル自身その力ではダグバを倒せない事を話している)、更なる力を得たのだろう。

 同じ事はリント共にも言える。連中は最初は全く自分達に対抗出来ないでいた。
 だが、繰り返されるゲゲルの内に新たな武器を開発、クウガとの連携した戦いを行う様になり、ついにはグロンギに効果的な武器をも作り出したのだ。
 ガドル自身もその武器による攻撃を受けて一度は地に伏せられている。致命傷には至らなかったが後数発受ける、あるいは当たり所が悪ければどうなっていたかはわからない。
 今にして思えばあの時戦っていたラ・ドルド・グはどうなったのだろうか? もしかするとあの時遭遇したリントとは別のリントによって仕留められていたかもわからない。
 連中がそこまで戦える様になった――それは数多の敗戦の経験を活かしたからではなかろうか?

 結局は同じ事なのだ。ガドル自身もこの敗戦を活かせという事だ。
 そこで2つの敗戦を自分なりに振り返ってみようか――



 まずは順を追ってクウガ――と言いたい所だが、気になる事がある為一旦棚上げし少女2人に破れた時の事を先に振り返る。
 と言ってもあの戦いそのものは基本的にガドルの方が優勢だったと考えて良い。
 互いに決め手に欠けていたもののガドル自身はが金の力を温存していたし、持久戦という状況ガドルの一撃さえ通ればガドルが勝ったと考えて良いだろう。
 だが、赤髪の少女――杏子という名だったか彼女の誘いに乗り、金の力を以て心臓を貫く一撃を叩き込んだ事が命運を分けたと言えよう。
 ガドルの想定ではこれで杏子を仕留めた事になり、後はそのままもう1人仕留めるのも時間の問題、その筈だった。
 だが、心臓を貫いたにも関わらず杏子は健在であり、そのまま無数の槍で身体を拘束されてしまった。
 そして拘束から抜け出す前に金髪の少女――フェイトと呼ばれていたか彼女が無数の雷撃を撃ち込んだのだ。
 一撃一撃ならば大した事はない。だが全身に渡り数百発以上の雷撃を僅か数秒の間に叩き込まれたのだ。
 防御力の高い形態で防御に徹したからこそ十数分意識を失う程度で済んだ。他の形態ならば死んでいた可能性は非常に高い。

 さて、この戦いで反省すべき所は何処か?
 無論、最初から金の力を使えば違う結果もある。しかしそれだけで片付けて良い問題ではない。
 決め手はフェイトの無数の雷撃、少なくともガドルの知る限りその様な事の出来るリント等存在しない。
 理屈はどうあれクウガや同じゴの連中に匹敵する程の力を持つリントがいるという事だ。
 だがそれを喰らう事になったのは槍によって拘束されていたからだ。そうでなければ回避は可能だ。
 そして動けなくなる程に拘束されたのは、自分自身大きな隙を作ってしまったからだ。
 お粗末な話だがある意味仕方がない、胸を貫き確実に仕留めた筈だった杏子が平然としていて此方を拘束したのだからだ。
 杏子の口振りから考え、ガドル自身が杏子を仕留めて勝ち誇っている隙に拘束しフェイトがとどめを刺す、そういう作戦だったのだろう。
 つまり、あの時杏子がバランスを崩していたのは確実に誘い、つまりは罠だったのだ。
 しかし1つ疑問が残る。それ自体はガドル自身も考えたが策に講じる前に仕留める事が出来た筈なのだ。
 あの状況下、金の力を使おうが使うまいが即死には至らなくても大きなダメージを与えられる事は確実、即座に動けなくなる程の拘束は至難と言っても良い。
 まさか、出来るかどうかの僅かな可能性に懸けたというのか? いや、あの態度からみるにそんな分の悪い賭けに勝ったという風には見えない。
 高確率で死なない確証があったという態度だった。
 だが、それならそれで疑問が残る、それが事実だとするならば――杏子は胴体に大きな穴が空く程の傷を負っても死なない身体――そういう事になる。
 幾ら何でも胴体に大きな穴が空けば確実に死ぬ。ガドル自身は無論、あのダグバですらも例外ではない。
 無論、絶対に死なないという事は無いだろうが、普通のリントと同じ要領で殺せないという事に違いはないだろう。

 長々と述べたが結局の所纏めるとこういう事だ。
 この殺し合いの参加者たるリントはガドルの知る今までのリントの常識が通用しない強大な力や未知なる身体を持つリントと考えておくべきという事だ。
 その総合力は強い奴はゴに匹敵あるいは凌駕する程、場合によっては出し惜しみせず最初から金の力を使わなければ此方が討たれる事も考えておくべきだろう。

(が……それでもダグバには……)

 とはいえ、彼女達の力がダグバに届くかは半信半疑だ。
 ダグバを倒すつもりであったガドルを打ち破った2人ならばダグバを倒せるのではないか、そうお思いの方も多いだろう。
 だが、それはガドル自身が得た金の力でダグバを倒せると考えてた時の話だ。



 改めてクウガに破れた時の事を振り返ってみよう。
 勿論、度重なる激戦の疲労やリントから受けた銃弾等によるダメージも敗因の1つではあるがやはりあの時のクウガの力が決定的だろう。
 あの時のクウガは金の力を更に強化していた。自身が一ヶ月も掛けてようやく手に入れた金の力を数時間程度で強化したという事だ。
 まず、ガドルの把握する限り短時間しか使用していない金の力を、ほぼ恒常的に使っていた事だ。思えばあの時クウガはこう口にしていた。

『ずっと金でいけそうです』

 その言葉から考えてもそれはほぼ確実と言えよう。
 ガドルがクウガを戦闘で圧倒していたのは基本互いに金の力を使っていないタイミング、そのタイミングでクウガが最初から金の力を使うならばその戦力バランスは崩壊、
 つまり、ガドルと互角、あるいは互角以上に戦える様になるという事だ。
 勿論、それだけならばガドル自身が金の力を使った時点でクウガの優位は崩れ去る。事実ガドルはそう考えていた。
 だが、クウガは更にその先を行った。金の力を強化し黒いクウガとなり――互いのキックの打ち合いでガドルは敗れ去った。

 さて、くどいようだが金の力を更に強化したからこそガドルを打ち倒せたと言えるわけである。
 しかし、果たして本当にそれだけなのだろうか? アレは本当に金の力を強化したものでしかないのか?
 もしかするととんでもない思い違いをしていたのではなかろうか?

 そう、あの姿にほんの僅かではあったもののダグバを重ねてしまったのだ。
 ダグバの本来の姿の色は白、あの時のクウガの色は黒、仮にあのクウガがもう少し荒々しい姿になったとしたら――黒のダグバと言うべき存在ではなかろうか?

 ガドル達グロンギはリントに未確認生命体と呼称されている。最初に明確に確認されたズ・グムン・バを第1号と呼称し以後確認された順に第2号、第3号という風にナンバリングされている。
 但し、ダグバに関しては第1号ことグムンよりも前に現れた事から第0号と呼称されている。
 なお、怪人体としての姿が確認されなければナンバリングされず、人間体で確認された者はB1号という風に別の形式で呼ばれているらしくバルバに関してはB1号と呼ばれていた様だ。
 さて、実の所クウガに関してもリントの間では未確認生命体扱いだったらしく第4号、あるいは第2号とよばれていた。
 第2号とはグムンがリントを襲撃している際に現れた白いクウガであり、第4号とは第3号つまりはゴオマと交戦する際に現れた赤いクウガの事である。
 なおクウガは他に青、緑、紫の姿を持つがこれらは第4号の別の姿というのがリントからの認識だ。その関係もあり最終的には第2号と呼ばれていた白いクウガも白い第4号として認識された様だ。
 何故当初は白いクウガと赤いクウガが別の存在として認識されていたのだろうか?
 その理由は至極単純、単純な色違いというだけではなく、白いクウガは角が短く一見では亜種として認識されてもおかしくは無いからだ。
 真相はそうではない。一言で言えば白のクウガは不完全な状態、それ故に大きなダメージを負った時等本来の力を出せない時は白となるのだ。それはガドル自身も一度クウガを倒した時に確認している。

 何故この説明を長々としたのか?
 対象の強さが外見に現れる事はおわかりだろう、力が強くなれば角も伸び装飾も増す。それは白から赤、金の力を得た時、更に黒い姿になったという風にだ。
 もし、クウガが更なる力を得たとするならば? 恐らく外見は更に変化し角も伸びて装飾も増えるだろう。
 実際に見たわけではないから推測レベルの話でしかない。だがその姿は前述の通り黒いダグバといったものになるのでは無かろうか?

 それに気付いた時、ガドルはある可能性に気が付いた。
 自身を打ち倒した黒いクウガですらも未だ不完全体、クウガの完全体は色違いのダグバという事だ。

 クウガなど取るに足らない存在、
 自分を含め殆どのグロンギはそう考えていた。
 だが、ダグバとバルバはどう考えていたのだろうか?
 いや、少なくともバルバは金の力を得た自身にクウガが勝つ可能性も何処か考えている節があった。
 もしかすると、バルバは知っていたのではなかろうか? クウガがダグバに匹敵する力を持つ可能性があると――

『今度のクウガはやがてダグバと等しくなるだろう』

 そんなバルバの声が聞こえた気がした――

 何にせよその仮説が正しい場合、あの黒いクウガは未だダグバに及ばない存在という事になる。
 同時に仮に自身が万全の状態で挑んだとしても自身の実力は黒いクウガとほぼ互角と考えて良いだろう。
 つまり――今の自分の力ではダグバには及ばない事は確実という事だ。

 全くの道化だ、
 ダグバに勝てる程の力を得たと思っていてもまだダグバに及ばないという現実、本当にダグバの力を得て調子に乗っていたゴオマと同レベルだ。
 それ以上に、クウガの強さに更に先がある時点でクウガにも及ばない事もほぼ確定、自身はリントの言葉で言えば井の中の蛙でしかなかったという事だ。

 とはいえ、記憶する限り名簿にはクウガの名は存在しなかった筈。いない相手の事をこれ以上――

『一条さん!』
『五代』

 いや、確かクウガの男は五代と呼ばれていた。
 何故こんな事に気が付かなかったのか。自分達が未確認生命体第○号と本来の名で呼ばれる様に、クウガもクウガ以外に別の呼称で呼ばれても不思議は全くない。
 恐らくクウガは『五代』という名前の人物。
 確か名簿の中に五代雄介と言う名前があった。それが意味するのは――クウガがこの地にいるという事だ。

 自分を倒したクウガがこの地にいる、
 今のクウガがダグバに及ばないとしても激闘の果てにさらに強く、ダグバ並に成長する可能性はある。
 優勝する為にはダグバクラスの相手を2度破らなければならないという事だ。
 絶望的な状況?

 いや、それこそ望む所だ。
 敗者の汚名を返上、『破壊のカリスマ』の名を挽回する機会を与えられたと考えれば絶好の話だ。
 この殺し合いを勝ち抜く事でそれを果たそうではないか。

 そんな中、あるリントの銃弾を受け地に伏せられていた時、バルバがそのリントに口にしていた事がある。

『リントもやがて我々と等しくなりそうだな』

 思えば戦いを好まないリントがクウガに頼り切るのではなく共闘し、最終的には自身の手でグロンギを仕留める程の力を得ていた。
 その時点では気にも止めなかったがこの地で遭遇したリント達を見ても我等グロンギと同レベルとなったと考えて間違いはない。
 無論、殺し合いに参加しているリント達が例外的かも知れないがそれでもリントの変化は無視出来るレベルではない。

 あのリント――一条と呼ばれていたリント、記憶する限り名簿に一条薫という名前があった事から奴も参加者にいるのだろう。
 実力的には何て事はなくすぐに死んでも不思議はない、だがバルバがどことなく認めている節がある辺り、グロンギに近いリントの代表と言えなくもないだろう。

 確かリントの世界ではもうじき21世紀を迎えるかどうかという時期だったらしい。
 グロンギにとってはどうでもよい話だがリントにとっては1つの重要な節目だったのだろう。

 その節目を経るに辺り新たな変化――進化したのだろうか?

 リントが進化し自分達グロンギをも倒す存在となる――
 クウガも進化しダグバに匹敵する存在となる――

 ならばガドル自身も進化せねばならないだろう――



 あの戦いからどれぐらい過ぎただろうか?
 1時間? 2時間? それ以上?
 時計が無い為具体的な時間はわからない――


 ふとおもむろに本来の姿へと変化――
 赤の眼の状態で2、3度拳を振るう――
 青の眼の状態となりて首飾りの一部を槍に変化させ軽く回す――
 緑の眼の状態となりて槍をボウガンに変化させ周囲に神経を研ぎ澄ます――
 紫の眼の状態となりてその辺の木の枝を剣に変化させ1度振るう――
 最後に金の眼の状態となりて全身に流れる力を感じ元の姿に戻る――

 ダメージが完全に回復したわけではない。
 しかし一連の動作を確かめ戦いに支障が無い程に回復した実感は得た。
 いや――むしろ心なしか前よりも身体の調子が良いとすら感じる。
 以前よりも感覚が鋭くなった――そんな風に感じる。
 あの戦いで膨大な雷を受けた事で更なる力を得た?
 いや、たかだか数秒の電撃程度で急激に強くなるわけもない――只の気のせいかもしれない。

 だが――あの時クウガがほんの数時間で更なる力を得た事実が引っかかる。
 その短時間電気エネルギーを受けた程度でそこまで強くなれるのだろうか?
 もしかすると、電気エネルギーは只の切欠で力を得た理由は別に存在するのだろうか?



 ガドルは知らない――

 クウガとグロンギの身体構造は非常によく似ており、共に腹部に未知の鉱物、クウガにとってのアマダム、グロンギにとってはそれに相当するものが埋め込まれている。
 その鉱物から全身に神経が伸びる事でクウガやグロンギに戦う力が与えられ、その力が大きくなる度に神経組織が広がっていく。
 クウガが金の力を得る事で神経組織に広がりが見受けられた。それは電気ショックによってもたらされたものである。
 だが、それは切欠に過ぎない。本当の理由はクウガが人々の笑顔を守る為に、その笑顔を奪う未確認生命体に負けない様に更なる力を欲したからだ。
 つまり、あくまでも強化されたのはクウガこと五代の意志によるものだという事だ。
 だが、クウガの強化の行く末がダグバと等しい存在、凄まじい戦士である事も警告されていた。その危険性に気付いていたからこそ、五代達は安易な強化をしなかったという事だ。
 それでも金の力を以てしても苦戦し続ける未確認との戦い、そしてガドルに敗北した事から更なる強化の必要が出てきた。
 人々の笑顔を守る――その為に肉体がダグバに近いものになるのも厭わず強化を行ったという事だ。
 その強い意志こそが数時間という短時間での強化という結果を出したという事だ。

 そう、ガドルにとっても同じ事が起こっているのかもしれない。
 一ヶ月かけて電気を浴び金の力を得たのは最初からダグバとの戦いが前提であった。
 しかしガドルにとってはその時点で絶対に必要であったとは言い難い。
 とはいえそれも仕方の無い事だ、ゴの多くはゲリザギバスゲゲルを通過点程度にしか認識しておらず、視点はザギバスゲゲルの方に向いていた。
 その時点でザギバスゲゲルに勝てると考えていたと言っても良い。
 ガドルも例外ではなく、ダグバの為の金の力とはいってもそれはゲゲルに勝つ確率を更に上げる程度のもの。言うなれば70%の勝率を100%にする為のものだ。
 元々ある程度勝てる状態だと考えているなら、絶対に必要という事もない。そんな精神状態でガドルの中の石が簡単に力を与えるわけもなかろう。

 しかし今は違う、2度の敗北により自身の力の優位性は完全に消え去った。
 更に言えば現状でダグバに勝てる可能性も限りなく低いと認識を改めた。
 進化したといえるリント達を倒し殺し合いに勝ち残り最終的にダグバやクウガをも越える為には更に強くならなければならない。
 ガドルは心の奥底から本気でそう思ったのだ。

 あの無限の電撃を受けた時、ガドルの中の石がその意思に答えほんの数秒心の臓を止めた。
 無論、止まったのはごく僅か、続けざまに浴びせられる電撃によって心臓は再び鼓動した。
 その後ある程度の時間――戦いが終わったのは大体1時40分頃、それから約2時間程時を経た事で身体に更なる変化が起こったのだろう。
 少なくとも外見上には変化は見られない。それでも神経組織は以前よりも広がっている。
 ガドルの意思によって自身の身体が強化されたという事だ。




 今、自分は何処にいて、何処に向かっているのだろうか?
 大体の地形は頭に入っているが手元に地図等が無い以上正確な場所についてはわからない。
 だが、長年の戦い、その経験によって培われた勘が教えてくれる、自分の向かう場所に更なる激闘が待っていると――
 早々に杏子とフェイト、あるいはクウガとの再戦の機会が訪れる、そんな予感があった。
 絶対に勝てるという保証は無いし必ずしも再戦出来るかも不明瞭、

「ボンバボ グガスビ ボドダン リント 『ケ・セラ・セラ』」

 以前ゴ・ガメゴ・レがゲゲルの中で口にした言葉、それを知ってか知らずかガドルは同じ事を口にした。その意味は――

『リントの言葉にこんなのがある、『ケ・セラ・セラ(なるようになるさ)』』

 何にせよガドルに後退はあり得ない、前進あるのみ、必ずこの機会を掴んでみせる――
 その足は森を抜けI-5にある建物を目視出来る場所まで来た。あの建物に倒すべきリントはいるのだろうか――
 そう思いながらも更に足を進めていく、その建物――図書館へと。


【I-5/平原】
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身にダメージ(中)(回復中)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する
1:杏子とフェイト、そしてクウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。あの建物(図書館)にいるか?
2:強者との戦いで自分の力を高める
※死亡後からの参戦です
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。



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最終更新:2013年03月14日 22:28