顔に十字を持つ者 ◆gry038wOvE



 ……ったく、どうしてこんな事になっちまったのかねぇ。
 俺こと一文字隼人は、ゆっくりとどこかの小さい村を歩いている。
 村といっても、戦場のような荒廃した村ではなく、各々の家の設備はある程度整っている……推測するに、ここは日本のどこかの島なのだろう。
 最近まで誰か住んでいたんだろうか……?


 それにしても、あの加頭とかいう怪人に誘拐されたはいいが、まさか殺し合いをしろと言われるなんてな。
 今までのパターンを考えると、殺されかけたり脳改造をされかけたり……っていうのが王道だが、今回は少しイレギュラーだ。第一目的がサッパリわからねぇ。


 今回ここに連れて来られたのは、本郷、結城、沖、村雨────それから三影か。
 この参加者に何か意味でもあんのか……?
 このメンツじゃあ、殺し合いなんかしそうなヤツは三影だけじゃないか?
 BADANの改造人間・タイガーロイドの三影英介──ヤツには要注意っていうところか。仮面ライダーとして、人の命を屁とも思わねえようなヤツを野放しにはできないわな。

 風見志郎、神敬介、アマゾン、城茂、筑波洋──ライダーの中にもいねえやつが何人かいるな。
 これはおそらく確認違いじゃない。広間にもいなっかったし、名簿にもない。
 じゃあ、逆になんでこいつらは連れて来られなかったんだ?
 全国に散らばってるライダーの中から、たった五人しか見つけられなかったっていうわけでもないだろう。
 加頭──ヤツが集めている人間の特徴を考えると、彼らが何故選ばれず、俺たちが何故選ばれたのかが余計にわからなくなってくる。


 加頭が集めたのは、おそらく特殊な人間ばかりだ。
 あの時──加頭が平然と三人の人間の命を奪った時、アイツが口にした「NEVER」、「砂漠の使徒」、「テッカマン」、「外道衆」はその言い方やニュアンスから、特殊体質・特殊能力の人間だろうと考えられる。「ドーパント」にいたっては、自ら変身して実演してくれたわけだ。


 参加者で名前がわかったのは、孤門一輝っていうハンサムだけか。パッと見じゃあ悪いヤツではなさそうだったが、人間っていうのはわからないもんだからなぁ。
 それからその他にも、あの場には外見からして明らかに人間じゃないヤツも少なからずいた。
 どう考えても、その選別基準は偶然じゃない。彼が集めたのは、ライダーや怪人、或いは俺さえ知らない未知のバケモンだ。


 つまり、他のライダーも充分選別基準は満たされている。なのにあいつらはここにいない。
 第一、元科学者で首輪をいじれるかもしれない結城丈二(俺も風見の体に機械を詰めたことはあるが、結城に比べたらたいした事はない)をわざわざ連れて来て、機械など絶対に扱えないであろうアマゾンがいねえっていうのは……。


 ん? ──待て。
 ここにいるライダーは五人。来ていないライダーも五人。
 この別れ方は綺麗すぎやしないか? もしや、殺し合いが行われているのはここだけじゃなくてもう一箇所あって、残りのライダーはそっちにいるっていうことはないだろうか。
 殺し合いが行われているのがここだけという保証はない。
 だいたい、あの加頭だって、「我々」という言い方をしたじゃないか。それは他にも殺し合いを催したヤツがいる、という意味ともとれる。
 少なくとも、新たな悪の組織がどっかで動き出してるってのは確かか──


 ────まあ、他のライダーも殺し合いをしてるなんて、最悪の状況を考えるのは止そう。
 それに、アイツらなら多分そう簡単には死にはしないか。
 俺も、できれば他の連中はまだBADANを倒すために奮闘していることを願いたい。



「さて、俺もとっとと帰って復活した怪人どもをブチのめしてやらねえと」



 今、日本はトンデモねえことになってるんだ。こんなことしてる場合じゃねえよな。
 まずは本郷たちを捜して三影や加頭を倒さないといけない。
 他にも力を悪用する人間がいるってなら相手してやる。

 ────なんてったって、俺は人間の自由と平和を守る仮面ライダー2号だからな。


 ……なんて考えていた時だ。
 背後から強い殺気を感じ、俺は咄嗟に身を翻して左方に転がる。
 その殺意は、明らかに俺に向けられたものだと思った。それは次の瞬間、俺のいた場所に一閃の黒光が流れたことで確かになった。


 それは剣を振るうことによって起きたかまいたちだ。タイガーロイドが背中に背負ってる危険物とは違う。
 ────つまり、三影じゃない。
 ってぇと、いきなり初対面で襲ってくるような礼儀知らずかい。


「……なんだい、あんた?」


 返事も挨拶もない。ただ、俺が見た先には禍々しい黒い狼の鎧があった。その動きを見るに、人間が入っているのは恐らく確か。
 剣を構え、隠す様子もなく堂々と立っている。変身能力者にしても、俺みたいに肉体そのものがヘン、っていうわけじゃなさそうだ。
 言ってみるなら、──そう、がんがんじいだ。
 凶暴化したがんがんじいのようなヤツが、こちらを睨んでいる。
 そいつは、あの一撃を避けた俺に少し驚きながらも、再び剣を構えていた。それにしてもデカい剣だな。


「まっ、そっちがその気なら────俺も本気でやってやりますか」


 さっき言ったとおり、力を悪用する人間の相手も仮面ライダーの仕事だ。
 三影にしろ、加頭にしろ、コイツにしろ、少しは仮面ライダーに休暇をくれたっていいものを……。
 正義の味方も楽じゃないってね。


 俺は両腕を、真正面から見て時計の十時を差すあたりに翳す。
 こいつが俺の変身ポーズ。あんまり人前で見せたくはないんだがね、まあいつもの怪人へのサービスってことで。

 ライダァァ────

 ────変身!!


 一文字隼人としての外形を捨て、俺は真っ赤な拳を握り、真っ赤なマフラーを風に乗せる。
 飛蝗の改造人間。触覚、複眼、強化筋肉、変身ベルト──それらが、俺が人間じゃないっていうことを表している。

 この姿の名は力の戦士・仮面ライダー2号──要するに、俺の戦いの姿だ。
 そんな異形を見て、ようやく異常に気を向けたがんがんじいモドキが反応した。
 まあ、人間が変身したらフツーは少し驚くか。


「魔戒騎士じゃないな」


 魔戒騎士──その言葉の意味はわからねぇ。
 だが、おそらくは加頭の言ってたNEVERやテッカマンと同じ──俺の知らないところで動いてる、特殊能力者たちの名詞だ。
 そうか、騎士か。道理で剣を使うわけ。ま、奇襲をしかけるようなヤツに騎士道精神なんざあるとは思えねえが。
 ともかく、そいつの言葉に俺は適当に言葉でもかけてやることにした。


「ヘッ、ようやく喋ったか」

「ましてやホラーでもない────だが、醜い姿だ」

「百も承知!」


 こいつ、俺とマトモに会話する気がないらしい。
 男なら、戦いで語れっていうことか? まあ、そいつに答えてやるのも悪くないね。俺だってそういうコミュニケーションは不得意じゃない。
 俺は醜いと言われた鬱憤もあって、少し力を込めて前進する。言われ慣れてはいるが、こういうヤツにいると少しくらいは腹も立つ。
 まずはこの技だ!


「ライダァァァァァァパァンチッッ!!」


 前進というには余りに猛々しい、突進とでも言うべき走行に右腕を乗せ、鎧の胸のあたりに拳を打ち込む。
 その名はライダーパンチ。
 拳に響いた余韻は思ったよりも大きく、一瞬だけ右腕が肩まで痺れるような感覚に陥る。
 この鎧、見た目以上に硬い……!
 力の二号と呼ばれた俺の拳でさえ、この男を相手には虫同然ってか。がんがんじいなら吹っ飛んでたぜ。


 すぐに右腕を引くが、それ以上に早く、男の腕が俺の腕を掴んだ。
 更に俺が危機感を抱くよりも早く──いや、掴まれたと気づくよりも早く、そいつは俺の腕を返す。
 柔道や合気道でもありえないような圧倒的な力で俺の体が、宙を転ぶ────男は、俺の腕を掴んだまま、不自然な回転をかけて飛ばしたのだ。
 その間、男はまるで微動だにしないようだった。鎧が飾ってある横で、俺の体が勝手にひっくり返ったように見えてしまうだろう。
 俺にもそういう風にしか見えなかったのだ。


「痛ェ……テメェ何者だよ……」


 俺は地面に打ち付けられた体を起こしながら訊く。
 改造人間とは違う──あの、「動」の感覚がない。ゆえに隙がない。ただ、この男の底から感じる「闇」が殺気だけを放っている。
 動物の遺伝子を受けた改造人間ゆえの鋭い勘がそれを拾わなければ殺されてしまう。


 俺は純粋に、この男が何者なのかが気になったのだろう。
 よく考えれば、こいつに会話は通じなかったのかもしれない。
 だが、少しでも追い詰めたことで気分が高揚していたのか、男は答える。


「我が名は暗黒騎士キバ……!」


 暗黒騎士キバ──か。コイツのさっきからの行動は、その「暗黒」の肩書きに相応しい傍若ぶりだ。
 だが、だからこそ倒さなければならない相手……。俺たち仮面ライダーが退くわけにはいかない相手だ。
 再生怪人以外の敵は随分と久々で鈍っちまったのか。
 数だけで質のなってないヤツらを倒しまくってたのが悪かったのか。
 こんなヤツにやられる俺じゃない──。


「────消えろ、弱き者!」


 お次は敵さんの攻撃だった。
 黒い大剣を体の後ろに構え、キバは駆ける。スピードも圧倒的だ。
 反応しようと思った頃には、既に俺の胸の強化筋肉に傷が入っていた。
 だが、この俊敏な攻撃に反応しようと思ったこと自体は悪いことじゃなかったしい。
 傷もこれだけで済んだし、俺の居場所を通り過ぎたばっかりで、こちらを向いていないキバに出会えたのだから──。
 俺はすぐに、急停止しようとするキバの後方に両腕を向けた。
 これが好機。利用しない手はない。


「ライダァァァァァァチョォップッッ!!!!」


 今回は出血大サービスだ。
 右手、左手。二つの腕で逆ハの字を描いてキバの首筋を打ちつける。マントが少々邪魔だ。格好つけやがって。
 いつもなら片腕でパパッとやってしまうところだが、パパッといく相手じゃないからな。
 少し戦っただけで十二分にわかった。
 お願いだから、少しはひるんでくれよ──


「────そうか、君は仮面ライダー二号、一文字隼人だったな。思い出したよ」


 ──全然効いてないってか。
 広間で加頭が俺の名前を発表したのを思い出したらしいが、俺には全く関係ない。
 俺の攻撃が全然効かない怪人を相手にしないといけないっていうのはなかなかキツい話だ。
 こいつは本当に救いようもないな。


 ────ま、それに救いをやるのが俺たち仮面ライダーなんだけどな


「死ね────仮面ライダー」


 振り返ったキバは、この至近距離で俺に剣を突き刺そうとしていた。
 この距離と体勢では回避も難しい。
 だいたい、ここまでの戦いで既に体は傷を負っている。
 火事場の馬鹿力を発揮するにも、体が動いてくれないようだった。
 キバは、あの大剣を使って俺の身体を突き刺そうとしていた。

 ────だが、その瞬間


「チェンジ・冷熱ハンド! 冷凍ガス!」


 救いっていうヤツが、少し遅れてきてくれたらしい。
 キバの身体は半身が凍りつき、俺の身体を貫くのを妨害している。
 この技──仮面ライダースーパー1、沖一也だ。
 直後に、彼の声が聞こえて、やはりスーパー1のものだったのだと確信した。


「助けに来ましたよ、センパイ」

「助かったぜ! コウハイ!」


 銀色のスズメバチの仮面ライダー、スーパー1。彼はそのファイブハンドを用いて、あらゆる技能を使える。
 そのうちの冷熱ハンドは、冷凍ガスを噴出する。我が後輩ながら、とんでもない能力の持主だ。俺は少し旧型すぎるか?
 ともかく、不意の攻撃に驚愕するキバをよそに、俺は後方へと退いていく。


「さっ、ライダーが二人揃ったところで、本領発揮だ! アレをやるぜ!」

「え?」

「ダブルライダーの必殺技って言ったらアレしかないだろ」


 俺がそう言って、先に高くジャンプする。飛蝗の改造人間ゆえ、ジャンプ力には大きな自信があった。
 だが、このまま俺が蹴りを入れたところで、おそらくはキバには効かないだろう。
 ────もう一つ、力があれば別だが。

 少し遅れて、戸惑いながらもスーパー1がジャンプする。案外満更でもなさそうだ。
 コイツは俺と違って、ジャンプ力が有限じゃない。宇宙開発用改造人間であるがゆえに重力制御装置が搭載されたスーパー1は、その気になれば宇宙にだって飛び出すことができる。
 そのため、初動が遅れても俺に合わせるのも容易だったらしい。


「スーパー!」「ライダー!」




「「ダブルキィィィィックッッ!!!!!!!!!」」





 凍り付いて動けないキバに、2号とスーパー1、二つの力が合わさったライダーキックがぶち当たる。
 一度、攻撃を受けた胸部に蹴りを受けたキバは、流石に嗚咽を吐いた。
 ダブルライダーの攻撃に勝てるもんか。
 鎧さえ叩き割るような一撃に、キバはもがき苦しんだ。


「……おのれ…………仮面ライダー……」


 キバは胸を押さえ、後退していく。
 よろよろとしながらも、民家の群れの中に消えていこうとする。
 案外、一撃与えるとあっさりどっかに行っちまうものなんだよな。
 もうそろそろアイツも限界だろう。このままトドメを刺すのも悪くはねえが……なんだかそいつは後味が悪い。
 これで懲りてくれれば有難いが、どちらにせよアイツのダメージは大きいはずだ。しばらくは動けないだろう。


 ────まあ、俺も人のことは言えないんだが……


 ばたんっ、と変身を解除した自分が倒れる音がした。
 俺もちょっと胸が痛い。あの切り裂かれた傷、思ったよりも深手だったか……?
 同じく変身を解除した沖が近寄ってくれたらしい。


「大丈夫ですか!?」

「ああ……ちょっとだけ休む……悪いがその辺の家まで運んでくれ……」


 沖は黙って頷き、俺に肩を貸してくれた。
 やっぱり、この殺し合い、一筋縄ではいかないな……。
 仮面ライダーってヤツがどこまで通用すんだかワカんねェ……。


 本郷、みんな、無事でいてくれよ……。



★ ★ ★ ★ ★



 僕──バラゴ──は打撃の痛みに胸を押さえる。
 スーパーライダーダブルキックの威力は、僕の胸に鎧を纏っていたことを忘れるほどの痛みを与えた。


 闇に堕ちてまで強さを求めた僕を、────愛する母親の幻影さえ切り捨て、己が心に光が無い事を証明した暗黒騎士を、油断したとはいえ倒すとは妬ましかった。


 此処で殺し合いをする道を選んだのは、ただ生き残るには楽だったからに過ぎない。
 周囲の総てを葬る……、それが闇に堕ちた魔戒騎士に最も相応しい生き方なのだ。
 弱肉強食の世の中では、弱い者たちは容赦なく死んでいく。魔戒騎士である父やかつての師匠である冴島大河は弱いから死んだ。その現実に悲しみはない。
 だから、僕は最強として君臨し続ける──それが生きる道。
 加頭という男に利用されることもない。もし生き残ったら、アイツも殺す。そして僕は元居た場所で目的を遂行するのみだ。


「────薬切れか」


 龍崎駈音としての顔が崩れ落ち、醜い十字の傷が浮かび上がる。
 顔を変容させる薬────あれはどこに行っただろう。
 僕は装束の中を探した。
 だが、すぐにやめる。


 今はあんな道具を使う理由もないということに気づいたのだ。この顔のままでも行動に支障はない。あれは御月カオルを欺くための姿にすぎない。
 確かに自らの醜い傷跡を隠したい気持ちはあるが、今この場にある薬が有限である以上、こんなところで使うわけにもいかないのだ。
 あんな薬よりも、この場では強い武器の方が頼りになる。
 そういえば僕の支給品は、いつかある人間に渡した「魔弾」だった。僕の手には2発。何故これがここにあるのかという疑問は既に無い。加頭という男やその仲間の影響力は魔界にも渡っている……それは最早疑いようもない
事実なのだから。
 今更僕がこれを使う理由はないと思っていたが、時に下僕として使えるホラーが必要となる。僕が動かずとも他の参加者を殺してくれる下僕がね。
 ところでこの魔弾は魔戒騎士には効かないのだが、仮面ライダーにはどうだろうか。
 そうだ、彼らこそ、ホラーという完全なバケモノに変えてしまおう。
 飛蝗の怪物などより、はるかに醜悪な異界の来訪者の姿に────。

 そうだ。その方がいい。
 この殺し合いを、光の者が闇へと堕ちる宴にする。
 折角なのだから、この殺し合いを趣のあるものへと変えてやろう。


★ ★ ★ ★ ★


「すまねえな、沖……」


 俺の体を借りて、一文字さんは礼を言った。俺もそれに相槌を打った。
 彼を助けるのは同じライダーとして、そして人間として当然のこと。ましてや彼は先輩だ。できれば他の先輩たちとも協力したいが、今この段階で見つかったのは一文字さんだけ。
 寧ろ、あれだけの参加者の中から最初に会ったのが同じライダーだったのは奇跡的な幸運である。


 先輩ライダーたちがいれば、加頭を倒すことに協力もしてくれるだろう。
 この力を誰かを護るために使いたい、人類のために使いたい──。
 その心は嘘偽りではない。
 だから、俺は一文字さんをこんな風にしたあの鎧の男を許さない。────まあ、向こうも相当のダメージを受けているだろうから、許す許さない以前に死んでいるのかもしれないが。
 そんな怒りが俺の心を燃やす中、一文字さんはあまりにも唐突に言い出す。


「……そうだ、沖。俺の支給品よぉ、写真だったんだよな……」

「写真、ですか……?」

「人が死ぬ瞬間の写真だ。怪人にやられるわけじゃねえ、同じ人間に戦争で殺される人たちの写真なんだ。俺だって何枚か撮ったことがあるが、あれほど悲しいことはない……」


 一文字さんはカメラマンであるゆえ、一時期、戦場で子供たちにカメラを向けていた。
 笑わない子供たちを笑わせた男────それが彼だったらしい。
 そんな彼に戦場の写真が支給されるとは何という皮肉だろう。確かに写真自体は武器ではないが、「人の死」に慣れさせようという目的で支給されたであろうことはよくわかった。
 シャッターを切るとき、その写真を撮った人はどうおもっただろうか。
 きっと辛い。きっと悲しい。──同じ人間の所業とは思えない怒りが、渦巻くだろう。
 一文字さんはその気持ちを知っているから、こんな話をしたのだ。


「この殺し合いでも同じ過ちは繰り返させちゃならない……」


 俺はその時、初めて見た。
 こんな馬鹿げた殺し合いをしようとする鎧の男や、悲しき戦場の写真さえ更なる殺し合いに利用する加頭への怒りで、顔を歪めた一文字さんの顔を。

 ────両目を跨いで、「非」の字型の傷が浮かび上がっている。
 先輩たちからは「改造手術によるもの」と聞かされていた傷だ。
 彼が本当に激昂したときに浮かび上がるものである。


「それを防ぐのが、俺たち仮面ライダーでしょ?」

「……ばかやろう、俺のセリフとんじゃねえ……」


 疲れ果てた一文字さんを背負い、俺は歩いた。
 村の中には幾つかの民家があるが、俺たちが探すべきは治療薬がある家ではなく、修理道具がある家だ。
 探すのは少し手間がかかる。



【1日目/未明 C-2 村】


【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、胸部に斬痕、顔の傷が浮かび上がっている
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0~2(確認済み)
[思考]
基本:仮面ライダーとして正義を果たす
0:沖に肩を借りてどこかで休む
1:他の仮面ライダーを捜す
2:暗黒騎士キバを警戒(但しキバは永くないと推測)
3:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す
4:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……?
[備考]
※参戦時期は第2部以降。
※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。
※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。

【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:一文字を連れてどこかで休ませる
1:仮面ライダーとして人類を護る
2:先輩ライダーを捜す(参戦時期が不明なため、良に関しても不明)
3:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
[備考]
※参戦時期は現在不明。


【バラゴ@牙狼─GARO─】
[状態]:胸部に強打の激痛、顔は本来の十字傷の姿に
[装備]:ペンダント、魔戒剣、魔弾(2発)+ボーチャードピストル(0/8)@牙狼
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2、顔を変容させる秘薬?
[思考]
基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する
1:仮面ライダーに魔弾を打ち込みホラーにする
2:今のところ顔を変容させる予定はない
[備考]
※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。
※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。
※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。


【支給品解説】

【魔弾@牙狼─GARO─】
第21話「魔弾」に登場する、ホラーの魂が篭った弾丸。
これで撃たれた者はボナファルツ、又は低級ホラーに憑依され、撃った者のいう事を聞くようになる。
劇中でホラーとしての姿を見せたのはボナファルツのみで、他は全員ゾンビのような状態になっている。
また、これは魔戒騎士には効かない。


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一文字隼人 Next:SPIRITSを伝えろ!
沖一也 Next:SPIRITSを伝えろ!
バラゴ Next:魔獣


最終更新:2013年03月14日 22:07