その1
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homuhomu_tabetai
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有史以来、極東の地日本で着実に広まりつつあった「ほ虐文化」。
しかし開国以来、粗暴で残虐とされたこの文化は急速に衰退していった。
最近になって、ようやくほ虐文化の日本史への貢献が認められ、堰を切ったがごとくこの文化は世界中に広まっていった。
この話は、ほ虐文化が世間一般に認知されるほんの少し前のことである。
もちろんこの話が、登場する少女たちが、ほ虐文化を育てたという訳ではない。
土着の文化。素朴な虐待。彼女らは、ありふれた虐待屋だった。
さやか「このミタキハラに大昔からいた動物。『ほむほむ』って言うんだよ。知らないかな?」
ほむら「…いいえ。だって、転校してきたばかりだし」
出会ったばかりであるというのに、声には妙な冷酷さがあった。
少し疑問に思いながらも、まどかはほむらを初めて見てからずっと思っていた事を口にする。
まどか「ほむらちゃんにそっくりでしょ?この生き物」
ほむら「ええ、確かに。それにしても…この服装は…」
さやか「コスプレみたいだよねー。これ、魔法少女っていうらしいよ」
ほむら「!…そう、魔法少女…」
まどか「…?
まあ、とにかく触ってみてよ。可愛いでしょ」
ほむら「…ええ、そうね。少しだけ…」
まどか「…」
じっとほむらの顔を見つめるまどか。さすがに恥ずかしくて、ほむらはこう答えた。
ほむら「…どうしたの、鹿目さん。何か顔に付いてるかしら?」
まどか「あ、ああ、ごめんほむらちゃん。
…単刀直入に聞きたいんだけどさ、いいかな」
さやか「さすがにいきなりすぎない?」
まどか「早めに知ってもらった方が良いと思って」
彼女たちのこのような不審な態度を見るのは、長いループの中でも初めてだった。二人に対する感情など忘れて、純粋な好奇心で聞く。
ほむら「この動物に何かあるの?」
まどか「…えっと、この子の事大切にしたいと思う?」
ほむら「…ええ。小動物を虐める趣味は持っていないわ」
さやか「そっかー。…うん、分かった。じゃあ、この子転校生にあげるよ」
何か不本意な発言をしてしまったのだろうか。明らかに二人の顔には失望が浮かんでいた。
ほむら「ねえ、どうしたの?この生き物が何か…」
さやか「今度、いつでもいいけどさ、あたしたちと一緒に図書館に来ない?嫌な思いさせちゃうかもしれないけど」
殆ど強制に近い言い方で言う。少し反発を覚えたが、素直に答える。
ほむら「ええ、分かったわ。なんなら今日でもいいけれど」
今日は魔女が現れないはずだ。今回は二人と仲良くして、マミや杏子と会わせないで魔法少女にさせないようにした方がいいだろう。
打算が顔に出ていたのか、少し引いた顔でまどかが約束を取りつける。
まどか「うん。終礼が終わったら、私は少し用事があるから、二人で玄関で待っててね」
まどか「お待たせー、二人とも。ちょっと先生との話が長引いちゃって。ごめんね」
ほむら「いいえ、それ程待っていないわ。行きましょう」
さやか「転校生、図書館の場所知ってるの?」
ほむら「ええ。街の事はある程度は調べたから」
とっさに嘘を付いてしまう。お天道様に顔向けできないような事は今は何もしていないのに。
自分の嫌味な性分が、つくづく嫌になってくる。
まどか「そっか。まあ、公式のサイトなんかに出る情報じゃないし」
さやか「当然っちゃー当然かあ」
二人の話にまるでついていけない。まさか、何年も過ごしたミタキハラでこのような疎外感を感じるとは思わなかった。
ほむら「…ねえ、そろそろ教えてくれないかしら?何があるの?」
まどか「…ほむほむを知らないって事はさ、ほむらちゃん、ほ虐も知らないんだよね」
ほむら「…ほぎゃく?」
さやか「ほむほむ虐待、略してほ虐」
新入りに業界用語を説明するように、さらりと答えるさやか。
ほむら「あなたは動物虐待をしているの?」
さやか「うん」
ほむら「虐待を…」
冷静に見えるよう受け答えをする自分とは裏腹に、心の中はどろどろとした怒りで満ちていた。
動物虐待などは人の心を失った者のすることだ。ましてや自分に似た動物のこと、憤怒に身を任せるのも当然のことであろう。
ほむら「信じられないわ…あなたはそういう人だったの?」
さやかから、心なしか離れながら聞く。長い時間を過ごしたこの街の中から、ひどい不協和音が聞こえてきた気がした。
今まで、ミタキハラの専門家という訳ではないが、この街についてただの中学生以上の事は知っているつもりであった。
それが、まどかやさやかが動物虐待に加担していると言うのだ。まさか守り、敵対してきた二人が、街の人間の多くが、動物を虐待しているかもしれないだなんて。
自分の今までの歴史が全てふいになってしまったようで、目眩がする。
まどか「えっとね、先に行っておくと、ほむらちゃんにほ虐を強制するつもりはないの。
街に古くから住む人からすれば、ほ虐は子供の頃からずっと親しんできたものだけど、ミタキハラに引っ越してきた人も多いし。
ただ、ほむらちゃんにはどうしても知って欲しかったの。その…色々と…うん。理由だって…」
さやか「やっぱさ、街の歴史だもの。それに…あんたにそっくりだしさ」
ほむら「…もう結構よ。私は、虐待に加担するつもりはないわ」
二人を振り払って去ろうとする。吐きそうでたまらなかった。感情が内で爆発しそうだったが、すんでのところでまどかの悲痛な声が聞こえ、押しとどめる。
まどか「お願い。ほ虐の歴史だけでも知って。ほむらちゃんなら、この街の歴史に共感してくれると思ったから…」
まどかにそう言われると弱い。さすがに虐待を容認する気にはなれないが、図書館に行く約束もしてしまった折、無碍に断ることもできない。
ほむら「…分かったわ。ただし、それだけよ。虐待をするつもりはないわ」
さやか「勿論。分かってくれてありがとう、転校生」
その台詞には言葉以上の感情は入っていないようだった。この子はこんなに素直だったかと驚く。
どうやら、今回の時間軸もかなりのイレギュラーなようだ。
図書館に到着するまでの数十分は、動物虐待などという由無し事よりもワルプルギスの夜、そしてクリームヒルトの方が頭を悩ませていた。
この時の自分は愚かで周りが何も見えなくなっていたと思う。今となってはもう、取り返しがつかない。