畑仕事
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homuhomu_tabetai
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作者:W5DstCkAo
408 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage] 投稿日:2012/03/26(月) 12:54:34.39 ID:W5DstCkAo
「あぁぁぁぁぁぁ、めんどくさい」
と、心の中で大声で叫ぶ。
燦々たる陽の光が、
私の怒りの蝋燭をレンズを通して着火させたためである。
都会では、田舎から取り寄せて店頭に野菜を並べるだけの、
実に簡単な入手方法をしているが、田舎ではそうともいえない。
まさか、
土の中からひょこっと顔を出して並んでくれるほど、
自然は私達に優しくはない。例外もあるけど。
種を蒔いて早朝に起きて、気温などの管理から、
雨天時の水分管理や肥料や害虫やら。
面倒なことこの上ない作業の末に野菜は完成している。
それを知らない周辺のお方達は、
形が歪だのなんだの文句を言うし、
文句言うなら行かないぞ、自家栽培してれば良いじゃんか。
こっちは、親切心で出荷してあげてるんだって忘れられちゃ困る。
米も野菜もこっちにある。こっちはこっちで稼げてるのに、
出荷してあげるんだから文句言わずに食べなさいと言いたい。
まぁ、私自身は栽培が嫌いなんだけど、
やらなきゃいけないものもあるのだ。
お母さんに、もう嫌だと伝えると、
向こうの一角を終えたら休憩しよう。と、
私の訴えにお母さんは優しく答えてくれた。
その作業とは、私の大好きな害虫との戦闘である。
落ちていた鋭い木の枝を持ち、蟻やらアブラムシやら芋虫やらと対峙する。
見詰め合う私と害虫。
一ミリのミスも許されない。
なんて言ったって害虫は私達の大事な野菜を背後に展開している。
どかなければ殺す。っと、木の枝を向けるけど、
相手はだんまりを決め込み、動こうとしない。
「ならば仕方ない。か。一刀流居合い――」
近所の子供が良く言う台詞を思い出し、
口にはせず、構える。
ちょっとかっこつけてみたい年頃だから、
近所の子供がたまにやる動作を影から見て覚え、
やりたくなっちゃうのだ――くさぃ!?
次の瞬間、異臭が立ち込めた。
芋虫のあの触覚攻撃。
これは精神肉体関係無くダメージを与えてくるが、
幾度と無く戦った私にとっては、
「だが、無意味だ」
と言わんばかりに、人差し指を立てて左右に振る。
これも近所の子供が言っていたもので、
結構気に入っている。
そして、一閃。
綺麗に決まったそれは芋虫を刺し殺し、
野菜を傷つけることなく、討ち取った――が。
次の瞬間、太陽を遮る影が私を覆う。
史上最強の敵が現れたということだ。そしてそれを認識した瞬間。
「ホムゥゥッ!!」
お母さんの、呼ぶ声が聞こえた――
「おっしゃぁ、野菜栽培してるほむほむゲット!」
「たまにいるんだよな、出来るほむほむっていうのがさ」
人間達の会話。
私達の天敵であり、見つかったら最後の場合もある。
気付けば、
多方面から別の一家の悲鳴が響いてきてるのが解り、
思わず笑ってしまう。
この周辺の食事情は私達一家が半分以上担っていて、
狩りも出来ない、栽培も出来ない。
ただ文句を言ってくるだけの飼いほむからの落ちこぼれ達。
それらは殺される。
同情する気持ちはあるけど、
いつもいつも、イライラさせられていたから、
バーカ、バーカと嘲笑う方が適している。
使えるほむほむは、人間の野菜栽培を手伝う代わりに、
住居や、食事を提供され、良い生活が出来る。
だから私も、嫌々していたというわけだ。
「ホミャァ!!」
「ん?」
私は急いで人間の元に向かい、
狩りが出来る証明として、芋虫が刺さった木の枝を掲げた。
しかし――
「くせぇ、近寄ってくるな」
私の視界は一瞬で真っ暗になった。
走馬灯の余裕すらくれずに、
私は――グチャッ
終わり