レポーター「本日は見滝原から北部へ20キロ、G県山中のほむほむ養殖牧場へと来ています。」 その3
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homuhomu_tabetai
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レポーター「な、なんとか……お、終わりましたね」
斎藤「お疲れ様。他のスタッフさんも中々良い手際でしたね。
おかげさまで、いつもの半分の時間で済みましたよ」
レポーター「お褒めいただき、光栄です」
斎藤娘「お疲れ様です。みなさん、ありがとうございました」フカブカ
レポーター「あ、そうだ、出来ましたら……養殖業者さん特有の、
ほむ料理の裏レシピなどあったら見せていただきたいんですが……」
斎藤「裏レシピですか?
最近は色んなほむ料理が多いですから、私どもしか知らないような料理なんて……」
斎藤娘「……ほぶ天……。
父さん、ほぶ天なんてどうかな?」
レポーター「ほぶ天……ほむ天の事ですか?」
斎藤「ああ、そうか!
あれなら、まず出回らないな。早速準備して差し上げなさい」
斎藤娘「はーい!」
レポーター「ほむほむの天ぷらでしたら、そば屋で何度か……」
斎藤「ははは、それは仔ほむのかき揚げや若ほむ、ほむほむの天ぷらでしょう。
ほむ天は、ひと味もふた味も違いますよ」
レポーター「で、では、料理風景も撮影させていただきます」
斎藤娘「じゃあ台所へどうぞ、すぐ準備できますから」
レポーター「もう、ほとんど終わってますね」
斎藤娘「父がほむほむの天ぷらが好きなんで、いつでも作れるようになっているんですよ」
レポーター「なるほど……おや、それは……?」
斎藤娘「老ほむほむです……この業界に古くから関わっている人間には、鳴き声からほぶほぶなんて呼ばれてます」
老ほむ「ホブホブ……」ヨボヨボ
斎藤娘「この子は、十回以上出産を経験したベテラン親ほむなんですよ。
ほむほむはどんなに長く生きても12ヶ月の命、この子はもう13ヶ月も生きてるんです」
レポーター「老ほむほむですか……話には聞いた事がありましたけど、
これがそうなんですか……」
斎藤娘「普通、ほむほむは成体になったらすぐ食べられてしまったり、
野生でも半年生きれば長寿って言われているくらいで、こんな状態になるのは稀なんですよ。
あ、ウチみたいな所だと、数年に一匹は出るんですけどね。
ただ、野生のまどまど百匹を見付けるより、野生のほぶほぶ一匹を見付ける方が大変だって話です」
老ほむ「ホブフフ……」ピース
レポーター「お詳しいんですね」
斎藤娘「東京の大学でほむほむ学を専攻していたんです。
人数は、かなり少なかったですけど」
レポーター「学者は目指されなかったんですか?」
斎藤娘「元々は家業を継ぎたくて勉強してましたから……ただ行き着いた場所があまりにも専門的過ぎて、農業大行くほうが良かったかもしれません。
それに、母が亡くなってから、ずっと父が一人で牧場を切り盛りしてましたから」
レポーター「そうだったんですか……」
斎藤娘「………さあ、油の温度もいい感じですし、早速、調理しますね。
ほむ出汁と混ぜた天ぷら粉に卵を溶いた衣液にほぶほぶをたっぷり浸します」
老ほむ「ホブブブブブ」ブクブクブクブク
レポーター「若いほむほむと違って、暴れませんね?」
斎藤娘「ほぶほぶは、痩せて肉も少なく筋張っているから野生まどまどにさえ見向きもされないって言われるくらいで。
実は、本能的に食べてもらいたい、って思っているらしくて、調理の際にも暴れないんですよ」
衣老ほむ「ホブゥゥン///」ヤットタベテモラエル
斎藤娘「これを油でじっくりと揚げます。
さあ……熱いけど、頑張るんだよ。」
衣老ほむ「ホブン」ファサッ
ジュワァァァァァァッ
「ホブゥゥゥゥゥゥゥ……」
レポーター「これが、幻のほむ料理、ほぶ天ですね!」
斎藤「どうぞ、召し上がって下さい」
レポーター「では、さっそく………」サクッ
……………
レポーター「………こ、これは」ホロリ
「口に入れた瞬間の食感は、山菜の天ぷらにも似た歯ごたえのある噛み心地……。
さっくりとした衣がその歯ごたえを絶妙に後押しし、素晴らしい噛み応えを生んでいる……。
何度噛んでも、この絶妙な歯ごたえが衰えない!
しかも、味は今まで食べた、どんなほむ料理よりも濃厚!
一口しか口に含んでいないのに、口いっぱいにまでほむ飯とほむジュースで流し込んだような重厚感!
だと言うのに、ササミのようなさっぱりとした後味と、フカヒレのようにホロホロと崩れる肉の食感が重厚感を緩和して、
まるで、今まで食べたほむ飯が、ただの白米だったように錯覚してしまいそうな……。
そして、まるで……数年ぶりに食べたお袋の味のような……あたたかい旨さ……。
こ、これが……幻の、ほむ料理………旨い、旨すぎる……!」ボロボロ
斎藤「ハハハ……皆さん、泣くほど旨いですか?
そうでしょう、そうでしょう……」
斎藤娘「ほぶほぶ……老ほむほむは、ほむほむの本能として、その最期をまどまどの食事として終える事を望んでいます。
ですが、どうあっても食べて貰えない老ほむほむは、本来ならばストレスを感じなければ熟成されない旨みを、
自分自身の体内酵素の分泌だけで作り出すんです。
その味は一種だけでも絶品と言わるほむほむの体液全ての味を併せ持つと言われています」
レポーター「全ての味……」
斎藤娘「ミキサーで全てを混ぜるだけでは味は調和しきれず、最大限の味を発揮できませんが、
体内酵素で作られた混合体液による旨みは、全身の部位に浸透する事で各部位の旨みも極限にまで高めるんです。
ただ、まどまどは食いしん坊なので、お肉がたっぷりついたほむほむか、ぷりぷりの柔らかい身の仔ほむしか食べないんです」
レポーター「そ、それだけの理由でこんな旨い物を食べないなんて………」
斎藤娘「これは単に売り物にならないほぶほぶの最期を看取ってあげるための料理ですけど、
天然物の活きリボほぶだったら、市場では野生まどまどの数万から十万倍は下らない価格がつきますよ。研究資料用としては、ですけど。
何せ、きゅうべえの枯れた大地を、野生のほぶほぶ一匹が肥沃な土地に還るとまで言われてますから」
レポーター「野生まどまどの十万倍!?」
(お、思わず宝くじの一等価格で換算してしまった……)
斎藤娘「こんなに美味しいのに、有史以来、いえ、きっと地球誕生以来、一度もまどまどに口にされた事のない、伝説の食材です。
ほぶほぶは、まどまどに食べて欲しくて、こんな味を出してくれているのに……」
斎藤「ウチみたいな育て方をする養殖業者は、もう国内でも片手で数えるほどしかいないからね。
じきに、正真正銘、伝説の食材になってしまいますよ」
レポーター(これ……報道していいのかな……)
レポーター「本日は、大変、ありがとうございました」
斎藤「いえいえ、こちらこそありがとうございました。
放送日が決まったら、教えて下さい」
レポーター「はい……。では、これで……」
……………
レポーター(思わず、報道マンとして、あるまじき事を考えてしまった……)
スタッフ「スンマセーン、そろそろ車出しますよ」
レポーター「あ、ああ……」
斎藤娘「ちょっと待ってくださーい!」
レポーター「あ、これはこれは……どうされました?」
斎藤娘「車で東京まで帰られるんですよね?
それほど時間のかかる事じゃないでしょうけど、小腹が空いた時にコレをどうぞ」
レポーター「これは?」
斎藤娘「ほぶ天を、ほむ出汁とあん汁で甘辛く煮絡めて、小さく刻んだ簡単な料理です。
お口に合えばいいんですけど……」
レポーター「ちょっと一かけ……こ、コレは!?」ブワッ
(中略)
レポーター「…………」
斎藤娘『あ、あの、父から聞きました……。
うちのほむほむ、可愛いって言ってくれたって……』
レポーター(やっぱ変人だよなぁ……食い物だってのに)
斎藤娘『子供の頃からずっと、ほむほむは食べるだけで可愛くなんてない、って言われて育ったんで。
レポーターさんがそう言ってくれて、嬉しかったです……』
レポーター(………俺もガキの頃は、さんざん変人扱いされたなぁ………。
ほむコンとか、ほむ愛主義者とか、……いいじゃんかよ、食いモン愛でてもよぉ……)
斎藤娘『よ、よかったら……その、また、来て……下さい///』
レポーター(……………///)
「………………俺……仕事変えようかな」
スタッフ「へ? 何か言いました?」
レポーター「ウッセェ、独り言だよ……聞き返すなよ、恥ずかしい。
ほれ、帰ったら編集作業すんぞ! 今日も全員残業な!」
スタッフs「うぃーっす」ガックリ
レポーター(結局、俺はあの数日後、斎藤さんの養殖牧場に戻って、
ほぶ天とは別の、手軽な珍ほぶ料理を紹介してもらい、そちらを放送した。
それが良かったか悪かったかは、仕事を辞めようとする今も分からない。
ただ、ほぶほぶがあの味を出すに至った経緯や、ほむほむ大切に育てている人達を思うと、
おいそれと大勢の人間の耳に入れてはいけない気がした………)
数十年後――
レポーター「はい、みなさんおはようごさいます。
本日は見滝原から北部へ20キロ、G県山中のほむほむ養殖牧場へと来ています。
早速、取材を行いたいと思います。
こちらが、この牧場を経営している斎藤さんです。
おはようございます、斎藤さん」
斎藤婿「おはようございます。
今日は是非、義父から伝授された伝統のほむほむ養殖技術を見ていって下さい」
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END