その2
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homuhomu_tabetai
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…十数分後。仔供達はようやく飽きたのか、雛鳥へのちょっかいを止めた。
仔リボほむと仔白まどは再び空へと飛び、仔ほむ達は巣の周りをゴロゴロとしていた。
仔ほむ「…ホミャア」 …イイナァ
空に目を向けると姉達が元気に飛び回っている。仔ほむはその様子を羨ましそうに眺めている。
仔ほむはずっと両親や姉達に憧れていた。希少種、その存在は全てのほむまど達の憧憬を集める立場であった。
希少種は皆美しい。そして天敵であるほ食者にも匹敵する強さ。大規模な巣では守り神としてその地位を不動のものとしている。
自分もあんな風になりたい、そう何度も仔ほむは思った。そしてそれは叶わぬ願いである事も理解していた。
羽。普通のほむ種と希少種の決定的差をつけるモノ。
それが自分には無くこれからも手に入ることは無い。同じほむ種なのにどうしてこんな差がつくのか…。
たまに両親にねだって抱えながら飛んでもらう事もあるけれど、身体が成長するにつれそれも難しくなるだろう。
…子ほむは目を閉じ夢想する。そこには両親と姉達に自分、そして妹達が揃って空を飛んでいる姿であった。
そんな光景を夢見ていた。一度だけでもそれが叶うなら…。
雛鳥「「ピー! ピー! ピー!」」
そんな仔ほむの夢を覚ますかのようにけたたましい鳴き声が聞こえた。仔ほむは目を開いて雛鳥達の方へと目をやった。
…この雛鳥達もいずれは空へと飛び立っていくのだろう。今は自分達に手も足も出ないのに、いずれは自分の手の届かぬ大空へと羽ばたいていくのだ。
仔ほむは嫉妬にも似た感情を雛鳥達に覚え始めた。
仔ほむ「ホミュ!」 エイ! コツン!
雛鳥「ピッ!」
仔ほむは少し強く雛鳥を小突いた。八つ当たりもいい所である。しかし惨めさが増すばかりで仔ほむは巣の中で地団駄を踏んだ。と、
仔ほむ「…ホミュ?」 ダンダン
そういばこの巣はかなり丈夫に作られているようだ。
先ほども高所から運んで来たというのにその形はまったく崩れていない。雛鳥を3羽乗せていたにも関わらずだ。
…そして自分達と雛鳥の大きさはほぼ変わらない。
仔ほむはひとつの案を思いつき、傍で寝転がっている妹達に耳打ちした。
仔ほむ「ホミャ…」 ドウカナ…
仔まど「ミャロ!」 シュゴイ!
仔めが「ホミィ…」 ニャルホド…
2匹の妹達も姉の提案に乗り気のようだ。実は仔まどと仔めがも仔ほむ同様、両親と姉達を羨ましく思っていた。そして共に大空を飛びたいと、とも。
姉から聞かされた案はそれを満たすに十分だと思った。
3匹は夢を叶えるべく早速実行に移った。
仔ほむ「ホミュ!」 デテケ!
仔まど「ミャド!」 ジャマ!
仔めが「ホミィ…!」 ドイテ…!
雛鳥「「ピー! ピー! ピー!」」
3匹は雛鳥達を巣の中から引きずり出し始めた。
しかし非力なほむ種、しかも仔供。思うように巣の外へ引っ張り出せない。雛鳥の鳴き声が鬱陶しい…。
仔ほむが雛鳥の頭を小突こうと手を上げようとしたその時、
雛鳥「ピィッ!」 ガッ!
仔ほむ「ホミャアアアァァッ!」 グサァッ! ゴロゴロゴロ…
仔まど「ホミュラチャーーーーーンッ!」 オネエターーーーーンッ!
仔めが「ホミュ ホミュ…」 アワアワ…
強烈な口ばしカウンターを額に喰らい、後ろへと転がっていった。
リボほむ「ホムン?」 ウン?
空を飛び回っている仔リボほむ達を見守っていたリボほむは巣の方が騒がしくなったのに気付いた。
目を向けたリボほむが見たのは、あの雛鳥が小癪にも愛しい我が子へ攻撃を加えている場面であった。
リボほむ「ホムゥ…!!」 コノ…!!
激昂したリボほむは弓を構え、照準を定めると躊躇する事なく矢を放った。
雛鳥「ピィィッ…!!」
矢は背中を直撃し、雛鳥は痛ましい悲鳴を上げた。矢が刺さった勢いで体は前のめりに傾いてそのまま巣から転がり落ちてしまい、そのまま動く事はなかった…。
雛鳥達「「ピー!! ピー!! ピー!!」」
突然家族を奪われた雛鳥達はますます鳴き立てる。
仔ほむ「ホミュウ…」 イタタ…
仔まど「ホミュラチャン…?」 ダイジョウブ…?
仔めが「ホミィ…」 ペロペロ…
起き上がった仔ほむの額はすっかり赤くなってしまった。おまけに全身は草だらけだ。仔まどは姉に付いた草を払ってやり、仔めがは額の傷を舐めてあげた。
仔ほむ「ホミュッ…!!」 キッ…!!
仔ほむは立ち上がると巣に駆け寄り、先ほどよりも強引に雛鳥を引きずり出し始めた。それを見た仔まど達も後に続いた。
さっきは雛鳥1羽に対して仔ほむ達も1匹で対応していたが、今度は雛鳥1匹に対して仔ほむ達3匹である。ついに全ての雛鳥が巣の外へと出されてしまった。
仔ほむ「ホミャア!!」 コノ!!
仔まど「ミャドミャド!」 ヨクモ オネエタンヲ!
仔めが「ホミュウ…!」 ユルサナイ…!
雛鳥達「「ピイッ…!」」
仔ほむ達は先ほどの意趣返しと言わんばかりに雛鳥達に暴力を振るった。
成す術も無い雛鳥達、それを見ているリボほむは仔供達を止めようとはしない。いや、むしろ誇らしげな顔をしている。
そう、強くなりなさい…。例え羽は生えていなくとも、あなた達は白まどと私の仔供なのだから凡百のほむまどとは訳が違うのよ…。
リボほむは目の前で繰り広げられている光景を暴力で無く、鍛錬という都合の良い解釈を行った。
…数分後、気が済んだのかようやく仔ほむ達は暴力を止めた。
2羽の雛鳥は痛々しげな体を地面に横たえている。かろうじてまだ生きているようだ。
そんな雛鳥達を尻目に、仔ほむ達は先ほどの提案をリボほむに伝えた。要約するとこうである。
家族みんなで一緒に空を飛びたい。しかし自分達には羽が無い…。だからこの巣を利用することにした。
さっきこの巣を下ろしたようにお母さん達が巣を持ち上げ、今度は逆に空を飛ぶ。もちろん乗るのは私達3人だ。
これで夢だった家族揃っての飛行が楽しめるよ。そうだ、紐を括り付けてそれを持てば更に安全だよ!
この提案を聞いたリボほむは感動した。なんて賢い仔達なのだろう! やはりそこらの連中とは訳が違う、さすが私達の仔だけはある!
リボほむは白まどを呼ぶと経緯を話した。話を聞いた白まどもまた我が仔の賢さ(と思っている)に感動した。
雛鳥の事など気に掛ける素振りも無い。そして我が子の夢を叶えるべく、巣にくくりつける紐の調達へと向かった。
10分ほど経過すると白まどが戻って来た。手には植物の蔓が握られている。これをロープの代わりに使用するらしい。
一家は早速作業に取り掛かった。
リボほむ「マドカ!」 ソッチヲヒッパッテ!
白まど「マドマド!」 シッカリムスバナイトネ!
鳥の巣は何種類もの植物や木の枝などを組み合わせて作られている。
リボほむ達は木の枝の隙間に蔓を通し、決して解けないように何重にもきつく結んで括り付けた。
仔ほむ「ホミュ♪」 タノシミダネ♪
仔まど「ミャロ!」 ウン!
仔めが「ホミャ…」 ワクワク…
仔ほむ達はもうすぐ夢が叶うとあって、胸を躍らせていた。
だから気が付かなかった。自分達を狙う存在に。
雛鳥「ピィ…」
仔ほむ達にフルボッコにされた雛鳥のうち1匹がヨロヨロと身を起こした。
そして小さいながらも鋭い口ばしを、こちらに背を向けている仔めがに狙いを定めるとゆっくりと近づいて行った。
全身のダメージは大きく、足元はおぼつかない。それでも雛鳥は歩みを止めなかった。
自分達の家を奪った存在に、自分達の家族を傷付けた者に、自分達の家族を奪った仇に復讐するために。
仔まど「! ホムラチャン!!」 ! ウシロ!!
仔めが「ホミュ?」 エ?
距離を詰め、雛鳥はくちばしを突き出し突進した。仔まどが気付いたようだがもう遅い。
最後の力を振り絞り仔めがの無防備な背中を突き刺さす―――!
ザンッ…!
雛鳥「ピ」
―――事は叶わなかった。代わりに刺さったのは雛鳥の頭部であった。雛鳥は自身に何が起こったのかも理解できないまま絶命した。
仔めが「ホ、ホミャ…」 ヘナヘナ…
白まど「ホムラチャン!?」 ダイジョウブ!?
雛鳥の頭部を射抜いたのは白まどの矢であった。襲撃に気が付いていたのは仔まどだけではなかったのだ。
仔めが「ミャドカァ…!」 オカアターン…!
白まど「ホムラチャン…///」 ダイジョウブヨ…///
胸に飛び込んで来た仔めがを抱きしめてあげる白まど。一見優しい光景に見えるが足元で横たわる雛鳥の亡骸には目をくれさえもしなかった。
リボほむ「ホムホムホムン!!」 ソレジャア、イクヨ!!
白まど「マドン!」 イイヨ!
仔ほむ達「ホミュウ♪」「ミャロォ♪」「ホミィ♪」 ワーイ♪
ついに出発の時が来た。仔ほむ達は先ほどの出来事などまるで無かったかのようにはしゃいでいるである。
親達は巣の左右に括り付けた蔓を両手でしっかりと握った。それは武器の弓矢を置いていく事を意味するのだが、仔供達の安全を考えればやむを得ない措置であると考えた。
それに今から行くのはずっと高い空の上である。自分達を狙う存在などありはしないだろう…。
リボほむ・白まど「ホーム!」「マード!」 セーノ!
ゆっくりと巣が上昇していく。高さはどんどんと増していき、高原に立っていた木の高さすらあっという間に越していった。
仔ほむ「ホミャア~!」 ワ~!
仔まど「ミャロ~♪」 タカ~イ♪
仔めが「ホミィ…///」 スゴイ…///
仔ほむ達は見た事も無い光景に大興奮である。これまで親に抱えられながら飛んだときは安全のためか、比較的低い高さであった。
しかし今飛んでいる場所は違う。地面はずっと下にあり、目の前を遮る障害物は一つも無い。
お母さんやお姉ちゃん達はいつもこんな光景を見ているんだ…。仔ほむ達は眼前に広がる光景に感動した。
仔リボほむ「ホミャア~!」 オカアタ~ン!
仔白まど「ミャロ~!」 イモウチョ~!
仔ほむ「ミャロカ~♪」 オネエタ~ン♪
仔まど「ホミュラチャ~ン♪」 オ~イ♪
仔めが「カニャメシャン…///」 テ フリフリ
仔リボほむ達が巣の周りを飛び回りながら妹達に手を振る。仔ほむ達もそれに応えて手を振り返した。楽しい空の旅は始まったばかり…。
親鳥「「チチッ」」
リボほむ一家が空へと飛び立ったのと入れ替わるように雛鳥達の親が戻って来た。口には餌を咥えている。
しかし巣はおろか雛鳥の姿も見あたらない。親鳥達は慌てて木の周り、他の木の周りも調べたが発見出来ない。
親鳥達は途方にくれた…。その時、
「ピィ…」
微かだが我が仔の鳴き声が聞こえる。鳴き声は木の下からだ。木から落ちてしまったのかと慌てて地面に降りる親鳥達。
そこで彼らが見たものは我が子の無残な姿であった。
親鳥「「チチッ!」」
親鳥達は自分の頭を横たわる仔供の体に擦り付けると揺らし始めた。しかし仔供はピクリとも動かない…。
親鳥「「チーッ!」」
雛鳥「ピィ…」
二度と目を覚まさない我が仔に悲しみの声を上げる親鳥達。しかしその時確かに仔供の鳴き声が聞こえた。
それは最後の生き残りの雛鳥であった。全身に傷を負っているが命に別状は無いようである。
親鳥達は雛鳥の傍に寄ると愛しげに、それでいて傷が痛まないように優しく頭を擦り付けた…。
しかし一体何が起こったのか…? 木には巣が見当たらなかった。だから巣から転げ落ちた、という訳ではないだろう。
なら巣ごと落ちてしまったのかと思えば、地面に巣やそれらしき残骸は見当たらなかった。
雛鳥「ピィ…」
雛鳥が空を見上げて小さく鳴いた。親鳥達は視線を空に向けると何かが遠ざかっていくのが見えた。それは間違いなく自分達の巣であった。
それで親鳥達は全てを悟った。そしてもう一度我が仔達の亡骸に目をやった。怒りが沸々と燃え上がる。
我が仔の仇を討つべく、遠ざかって行く一団を親鳥達は猛スピードで追撃して言った。
仔ほむ「ホミャア~♪」 キモチイイ~♪
仔まど「ティヒヒ~♪」 スズチ~♪
一方こちらはリボほむ一家。親鳥達の悲しみと怒りなど露知らず、空の旅を満喫していた。上空は更に涼しい風が吹き、居心地は抜群である。
仔リボほむ達は相変わらず巣の周囲を飛び回りながらはしゃいでいる。妹達と一緒に飛べる事が嬉しかったのだろう。
仔ほむ「ホミュホミュ!」 タノチイネ!
仔まど「ミャドミャド!」 サイコウダヨ!
仔めが「…ホ、ミィ」 ウツラ、ウツラ…
仔ほむ達はすっかりこの巣がお気に入りのようだ。微妙な揺れが心地いいのか、仔めがは舟を漕いでいる。
お母さんにねだってこの巣を自分達の巣まで持って帰ってもらおう、そうすればまた空の旅が楽しめる!仔ほむはそう考えた。
リボほむ「ホムホム///」 カワイイネ///
白まど「ハシャイジャッテ///」 ソウダネ///
仔供達のはしゃぐ姿に顔を緩ませるリボほむ達。
だからといって注意力を疎かにする事はない。2匹にとって仔供の安全は第一なのだ。
それでも仔供の元気な様子を見ているとやっぱり笑みが零れてしまう。
親達は仔ほむ達と自分の手に握られた蔓にのみ注意を払っていた。だから自分達を目指して接近する存在には気が付かなかった。
そして向けられているとてつもない殺気にも…