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タナトス その3

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homuhomu_tabetai

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突如、白目を剥き出して食器ごと前のめりにぶっ倒れるまどまど。

「おいどうしたんだまどまど!! まどまど!? まどまどぉおおおおおおお!!!!」


まどまど「ギョヒエェェェェェェェ!!!マギョァアァァァァァァァァ…………」ジタバタ

ほむほむ「マドカァー……」オロオロ

仔ほむまど「ホミュゥ… ミャド…」オカアサンドウシタノ…


今まで聞いたことも無いような奇声を上げてのたうち回っている。
何とか応急処置を施そうとするが――、






「ダメだ死んでる………クソっ、どうして!!!」


まどまど「」グテーン
ほむほむ「マドガァアアアアアアァァァァァァァ!!!!」


ホミュー…? シヌッテナニ?
マデョマデョォ… ワカラナイヨ…
ホミャァ……? オカァサン…? 
ミャドンッ! ピョンピョン オカアサン、コンナトコロデネナイデヨ!! 


飼いほむほむ達は基本的に寿命まで生きることができる。
ほむほむにとって重大な病気といえば『ほむほむ病』くらいなものだが、遊び仲間を慎重に選び身体を清潔に保ってやれば、発症することはまずない。
その上ほ食種に命を脅かされる心配がないのだから、飼いほむの死因といえば大抵、老衰か餌のやり忘れである。

だがごくまれに、この親まどまどのように、健康な若ほむまどが何の前触れもなく突然死することがある。
俺も話で聞いた程度の情報だが、人間と同じように若年性の心筋梗塞というのがほむほむ種にもあるそうだ。
その発症率は宝くじで一等を当てるよりはるかに低く、それでいて全くの健康体でも発症することがあるらしい。

可愛い子供にも恵まれて「まど生」これからだったというのに、なんて不憫なまどまどなんだろう……
残された家族には、掛ける言葉が見つからないな……


死にまど「」ニコニコ

マデョマデョ!マデョー! オカアサン!ヒルネハゴハンタベテカラ!
ホミュー!!ホミュミュ~! オカーサンアソボ!アソボ!
ホミュッホミュッ! コレオイシイヨ!
ミャド~~!! イイカゲンオキテヨ~!! ピョンピョン


親の死骸の周りを困惑気味の仔ほむ達が取り囲む。
表情筋が弛緩したのか、先程の苦悶に満ちた表情とはうって変わって安らかな死に顔だ。寝てるふうに見えるのも無理はない。
だが、子供たちを優しく包みこんでいたあの温もりは、もうない。

子供をたしなめるべき立場の親ほむも、ショックで呆然としている。


ほむほむ「ホ…ホヒッ…マドカ…マドカァー……」ポロポロ


顔は涙でグシャグシャで、ポカンと開いた口から涎が垂れていることにも気づかない。
たまに狂ったかのように髪を掻き毟るので、長くて綺麗なストレートの黒髪もすっかりボサボサになってしまった。


ほむほむ「ホガァアアアアアア!!!マドカァアアアアアーーーーー!!!」ドウシテ!!ドウシテ!! バタバタ ブチッ!ブチッ!!


それにしても困ったことになった……
分別のつく年齢の親ほむは時間が立てば落ち着くだろうが、仔ほむ達のことである。
彼らに、親が死んだということをどうやって伝えればよいのだろう……

生まれたときから人に飼われている仔ほむ達は『死』の概念を知らない。
それは親や他の家の飼いほむ、それに野生ほむ達と触れ合う内に自然に、じっくりと習得され、若ほむになる頃にはいつの間にか誰でも理解していることなのである。
毎日がほ食種との戦いである野生ほむならいざ知らず、飼いほむにとっての初めての『死』は大抵、親の老衰死であるから、人間が急いで教えてやる必要は全くないのだ。
そもそも、このような難しいテーマは、ほむほむに(人間にだって)すぐに理解してもらえるような話ではないだろう……

だから今回のケースに俺は戸惑った。
親の死骸と戯れているような無垢な彼らに、『死』というものをどうやって理解させればよいのだろう?

……そして、その行為は『善』であるのか?


市販の飼い方マニュアルも、ネットの掲示板も、こんな事態への対処法は何も教えてくれない。
結局は自分の信じる方法を採るしかないのだ。


ホミュ~ オカアサンズットネテルヨ
マデョー… ツマンナイヨ…
ホミュンッ!! ソンナコトイッチャダメ!!
ミャドォ オカアサンハヤクオキテ



だから俺は仕方なく、


「お母さんは居なくなった訳じゃないんだ……どこか遠く……お空の上に行ったんだよ……」


    嘘をついた。

    真実を知れば、仔ほむ達は絶望してしまうだろうから。


ホミュ!? ミャドドッ!?
マデョ デモオカアサンココニイル
ホミュー! ソウダヨー!


「そこにいるのはお母さんの抜け殻だよ…本物のお母さんはそこを抜け出して、羽根を羽ばたかせてお空へ飛び立って行ったんだ…
 ほら、そこのお母さんは温かくないだろう? その『温かさ』がお母さんの本体で、身体から抜けていったんだ」


マデョー… ツンツン ツメタイ…
ホミュミュ~ セミサンミタイ~
ホミャァ? オカアサン、カエッテコナイノ?


「戻ってくることはできないけど、いつかお前達もお母さんのところに行くことになるからまた会えるよ。
 生まれてきたほむほむはいつかはお空に行かなきゃいけないけど、お母さんは用事が出来たから早めに行くことになったんだ。」


ミャドォ… ヨウジナラシカタナイネ…
マデョデョ~ ワタシモハヤクイキタイナー
ホミュゥー…? オカアサンハオソラニイルノ…?


「ああ、空の上からお前達のことを見ていてくれるよ…だからお前達もおちおち悪いことできないな」


ホミャァ! ウン!
ホミュン! ソンナコトシナイヨ!
マデョマデョ~! イイコニスルヨ!
ミャドド~ ピョンピョン オカアサンミテル~


……何とか仔ほむ達を誤魔化せたようだ。この聞き分けの良さと純粋さには感謝しないとな。


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