───患者を見つめる。
 落ち着いて。冷静にと。何度も自分に言い聞かせながらも、視線は逸らさない。

 白い光。
 白い部屋。
 ここはホテルの一部屋。どこにでもありふれてる、世界と繋がった場所。
 けれど、今はそうじゃない。部屋の外と内は切り離されている。
 中に潜む恐ろしきものの、おぞましき片鱗を有するものの気配に浸されて。
 あるいはもっと、身近にある死の気配が滲み出て。
 ここは異界と化している。常識を営むこの身にとっては、少なくとも。

 目の前の光景は現実だ。
 過去に見た、誰彼の現場の記録じゃない。
 未来に目にするだろう、誰彼の現場の追憶じゃない。
 横たわる体。投げ出される金の髪。亡くしてしまった、右の手首。
 全て、現在の自分が立ち会わなくちゃいけない、現実の問題。

(本当は……病院に電話した方が……いいんだけど……)

 医療の知識、医術の実践は覚えている。
 病院でお世話をする子供、学校のクラスメイト、事務所の仲間、芸能関係者、行き交う人。
 互いが触れ合う交差で出来る小さな傷を見て、適切な対処を施してきた経験は積んである。
 今回は、違う。
 日常を飛び越えた惨事。命に関わりかねない重い傷を負ってるのかもしれない。
 本格的な治療をするまでに命を繋ぐ応急手当は必要だけれど、一番はやはり、もっと専門の、大きな設備のある場所まで運ぶ手配をするのが、最善の手段だ。


 ───それは、できない。
 ───多くの理由が、それを拒む。


 電話をしても、きっと、すぐには救急車は来ない。
 病院はどこも満員に到達するまで混んでいる。幾度と起きた事故。聖杯戦争の余波の爪痕だと、知っているのはごく僅か。
 大きな怪我、命が失われる瀬戸際の淵にいる人が、多くいる。
 限られた人員。限られた設備。限られた残り時間。
 一人でも多くの患者を救うためには、治療優先のトリアージが行われる。
 この女性が、誰よりも先に治療して貰えるのか。見立てでは、そうはならないと思う。
 傍らの少女にとって、このひとがどれだけ大事な存在だとしても。

「マスター…………」

 金髪の少女から声が漏れる。
 マスター。聖杯戦争のマスター。倒れ伏す彼女をそう呼ぶこの子は、やはりサーヴァントだ。
 今まで出会った、英霊と呼ばれるカタチとは印象がまるで異なる。強い侍。厳かな姿。
 隣り合うふたりは、同じ髪の色をしていて、まるで歳の離れた姉妹のようだ。
 明らかな西洋人のサーヴァントはともかく、マスターの方にも異国の血が混ざってるのだろうか。

 サーヴァント。そう、サーヴァントだ。
 人ならざる力を潜在させた、おそろしく強きもの。
 怯えと焦りで小さな肩を震わすこの少女も、やはりサーヴァントであり、力を備える。驚異も、また。
 つい先ほど覗かせたその先端、何もない空間を波打たせる、奥にいるモノを引きずり出そうとする行い。儀式。
 まだ恐怖の余韻は張り付いている。日が落ちても下がらない、肌にまとわりつく夏の熱気のように。

 少女は怯えている。
 それは主であるマスターを、それ以外の理由でも大事な彼女を失うかもしれない恐れから。
 外の情報に対して、とても敏感になって、近寄るものに警戒している。
 きっと、許さないだろう。救急車に運ぼうと彼女に触れる隊員を。
 無数の苦痛と叫びが鳴っているだろう、病院の空気を。
 それが正解なのに、適切だとわかっていても、大切な誰かを他人に託すという選択を、どうしても選べない。

 ……多分、だけれど。
 この子はきっと、誰かに裏切られた。
 気を許してしまい、近づかせてしまったせいで、酷い傷を負わせてしまった。
 もう誰にも触らせたくない、誰も信じられないと、目をぎゅっとつむって、心を固く閉ざして、必死にはね除けようとしている。

 それを。
 恐ろしくてたまらない誰かの手を、取ることを選んでくれたのだから。
 触れることを、許してくれたのだから。
 開けてくれた心に、精一杯に応えてあげたい。
 考えられるのは、思っているのは、それだけだった。

「……失礼……します…………」

 容態を窺おうと腰を下ろしてすぐに、異臭が鼻腔を刺した。
 厭なにおい。今まで嗅いだことのないものの痕。
 保健室でよく嗅ぐ、つんと刺激する消毒液ではない。
 病室でままある、粗相をした排泄物ではない。
 肉が焼けたにおい。牛でも、豚でも、鳥でもない。
 皮が油で弾けた香ばしさも、肉から滴り落ちる汁の旨味も感じられない。
 いつだって焼ける所にあるが、誰も食べようと考えすらしない禁忌の味。
 人間の。焼けた肉のにおい。

「───────……!」

 叫びだしたくてたまらない嘔吐感が、喉元をせり上がる。
 片手で口に蓋をして、必死に堪えた。出してしまえば、もう止まらない。この悪夢に立ち向かう力を失ってしまう。
 目を反らしてはいけない。どこに目を向ければいいか、わからなくなってしまう。
 肺に溜まった空気を呑み込む。大丈夫、指先は動く。怖くない。怖く、ない。

 匂いの源泉に視線を戻す。右の手首、尺骨から先が消失していて、あまりに痛々しい。
 腕が飛ぶという怪我、間違いなく大出血でショック症状を引き起こしてもおかしくないが、止血だけは迅速に済まされている。
 傷口に火を当てて、強引に焼いて塞いだと、血の気の引くような真似をして。

「爆弾って……言ってたわ……。サーヴァントにやられてしまったの……。マスターを脅して、契約を結び直すって……」

 か細く、状況の説明が添えられる。

「私なの……。私がしっかりしてないから。
 私がいけないサーヴァントだから、アサシンを近づけてしまって、マスターをこんな……酷い目に……!」

 伝えられた内容は、よくわからない。
 これからにとっては大事な話なのかもしれないけど、ここで重視するべきものではなくて。
 わかるのは、少女が自責の念に駆られて、苦しんでいるということだけで。

 ───肩に触れる。
 驚くくらい細く、華奢な肩だった。
 刺激しないよう、強く押さえつけたりせず、触れ合うぐらいの軽さで。安心感を与える。
 ゆっくりと触れて、さすって、こちらを見返す視線に、大丈夫だと、笑顔を形作ってみせる。
 顔の強張りが自分でも感じられて、少しぎこちなくなってる。レッスンが足りない。改善点いち。
 けれど、意図は伝わってくれた。次第に肩の上下は収まって、表情を緩ませてくれる。
 よかった。心配を移させるようなことにならないで。

「すごい熱……! やっぱり、傷のせい……?」

 額に手を当てて、容態を確認する。
 熱い。風を引いた子供の時と同じだ、はっきりと熱を持っている。
 熱は、体の異常を知らせる、もっとも明瞭な伝達手段。細菌の感染、異物が入り込んだエラーを知らせる合図。

「抗生物質…………鎮静剤……ううん、それよりまず冷やさないと……」

 傷口から菌が入り込んでしまったのなら、繁殖を抑える薬を飲ませなくてはいけない。
 熱と傷の痛みが継続して苛んでいるのなら、体を冷まし、痛みを抑制する薬が必要だ。
 浅い火傷なら、傷にも軟膏を塗っておくが……この規模だとどうするべきかわからなくなる。
 薬───この部屋に薬は常備されている? いいや、医薬品所持の許可がなければ薬は持てないから、外のドラッグストアまで向かわなきゃ。まだ店に薬は残ってるだろうか?

「あの……氷……ここにはありますか……?」

 とにかく、できることをしていくしかない。
 まずは、苦痛を少しでも和らげてあげなくては。
 薬を与えても、効果を発揮するには時間差がある。熱を溜めたままでは、負荷もかかったままで辛いだろうから。

 薬を与えても、効果を発揮するには時間差がある。熱を溜めたままでは、負荷もかかったままで辛いだろうから。

「え……? ごめんなさい、わからないわ……。わたしたち、この部屋には来たばかりだから……」
「うん……それじゃあ……冷凍庫の方……探してみましょう……」
「あ……わ、わかったわ……!」

 少女を伴って備え付けの冷凍庫に向かい、扉を開ける。
 中には何も入ってないが、アイスボックスに固められたままの氷はあった。
 それを取り出し、水と一緒にビニール袋に詰めて、タオルで包み、氷嚢を何個か作る。

「桶に水……溜めてきたわ……! これでいいかしら……?」
「うん……ありがとう……!」

 用意して貰った水桶に氷嚢を入れて、冷えたところでタオルを濡らす。
 そうやって冷たくなったタオルを絞って、額や腕、体の汗を拭いたりしてあげる。余った氷嚢は額に当てて直接冷やす。

「これで……良くなったのかしら……? もうマスターは大丈夫なの……?」
「ううん……まだ……。あとは……お薬と包帯をもらって……経過観察しながら……」

 これから、ホテルを出て、薬を買って来て、戻ったら薬を飲ませて体を安静にして。
 そこまでが、自分にできる全部になる。
 熱と痛みが引いて、意識が戻ってくれれば、あとは静養の時間を取ればいい。
 ……マスターという立場が、それを許さないとしても。

 そんなつもりはない。戦うつもりなんてない、のだけれども。
 自分も、マスターだから。
 そうすることを望むひとが、いずれ霧子の元にやってくる。マスターの資格を放棄しない限り。
 眠る彼女が、そうであるように。

「ぅ……あ───ぐ…………!」

 呻きが、部屋に流れる。
 苦しむ彼女の肌には、大量の汗。
 漏れる声は、蝕まれる体に喘ぐ苦悶ばかりで、乱れた息が部屋に浮かんでは消える。 
 タオルで拭っても、すぐに肌に汗が浮かんで下に伝う。
 鬩ぎ合っている。体内に入り込んだ毒素と、免疫機能が。
 それとも、それ以外の、バイ菌以外の何か?
 彼女に巣食い、指先からゆっくり、齧るように、時間をかけて痛みをもたらす、何かの形が。

「マスター……!? ああ、マスター……! しっかり……!」

 たまらず身を乗り出して、彼女の手を握る。
 残った方、片側の手を自分の両手で包んで。

「大丈夫よ、アビーはここにいるわ……! あなたはひとりじゃないわ……眠りにいても……寂しくなんか……ないから……」

 大丈夫。
 心配いらない。
 気休めの言葉をかける。聴覚が働かなくても、触覚を伝って思いが届くようにと、切に、切実に。
 気休めは大事だ。人が治るには、それが一番大切なもの。
 どんなに医療が進んでも、どんなに治療が正しくても。
 患者の心が弱ってしまえば、治しは効かない。二度と目覚めは訪れない。
 精神が肉体に引きずられる。

 気休めは大事。
 けれど、やはり気休めでしかないのだ。
 いくら心を強く保っても、体が先に倒れてしまったら、同じく目覚めは二度とない。
 肉体が、精神を連れ込んでいく。

(どうしよう……)

 悩む。対処をしながら、懸命に考える。
 今すぐ薬を買いに、外に出るべき?
 ───この子たちを、置いて?
 瞳の輪郭が滲み、今にも涙が零れそうな子から、目を離して?
 信じてくれた。外の全てが敵にしか見えないぐらい過敏になっていたのを、頼ってくれた。
 ここで見捨ててしまえば、もう今度こそ、彼女は信じるすべを失ってしまうのでは。

 見捨てるわけじゃない。見捨てるわけじゃないの。
 助けるために立たなきゃいけないだけ。そうする方が、助かる確率を高められるのだから。
 けれど子供には、そんなことはわからないのだ。
 そこからいなくなってしまうのは、視界から数秒消えてしまうだの時間が、子供にとってはそれだけで耐え難いこと。
 これは我が儘ではない。子供はいつだって訴えている。願っている。
 その子供心を、他愛もない小さな声を、どうして見なかったことにできるだろう─────────?


(どうしたら……?)

 指か止まる。
 足が固まる。
 理解できる。寄り添いたいと、思ってしまっているから、動けない。
 優先順位が、定まらない。

 駄目。駄目。しっかりしないと。
 目を逸らしたら、いけない。両手で覆ってしまっても、いけない。
 諦めてしまうことなんて、できない。
 じゃあ、どうするの。見捨てることも、逃げ出すこともしたくないわたしは、なにを、選ぶの。


 ───不意に、景色が暗がりに移り変わった。


 怪我の状態を確かめるため点けていた、部屋の暖色系の蛍光灯が、霧子のいる範囲だけ落ちた。
 逆説的ではあるけれど、舞台の上で、スポットライトが当たり自分が切り取られたような。
 いや、違う。そうではない。電源が切れたわけじゃない。
 これは影だ。
 背後に誰かが立ち、その背丈が覆いになって、光を塞いでいるのだ。

 姿は見えない。
 でも、誰であるかを、自然とわかっていた。
 契約で繋がっている縁といった、霊的な直感。
 あるいは。彼が動いた風を受けて、ぼんやりと、曖昧な、なんとなく?


「セイバーさん……?」


 黒の袴。黒の長髪。
 振り返った先にいたのは、幽谷霧子のサーヴァント。セイバー。

「…………………………」

 現れたセイバーは何も言わない。
 彼が寡黙で、多くを語らないのは知っていることなのに。
 今の沈黙は、いつもと違う気がする。何かに黙考するような、神妙に思惑をしているような。

「……? ッ──────!?」

 声が出ずに、引きつった喉から悲鳴が上がった
 首の向きを変えた霧子に同じ方を向いた……自分をアビーと呼んだ少女は、突如として現れたセイバーを見て身を震わせて。

「あ…………悪魔…………っ!?」

 そう、言った。

(あ………………)

 胸が、痛んだ。
 肺の奥、骨に守られた心臓が跳ねる痛み。

「だ……駄目よ! まだマスターは連れて行っちゃ駄目……!」

 マスターに覆い被さって、必死に祈る。
 周囲の空間が泡吹き、揺れる。水面から顔を出す魚のように。
 挺身と捨身を厭わない行いは、マスターへの思いの強さと、セイバーへの恐れの強さを物語る。
 アビーからすれば、死に瀕する彼女を、天上の国に導きに来た、恐ろしい死神のように見えているのだろう。
 セイバーを最初に見た人は、悪魔のようだと感じてしまうのか。
 人間の顔に、本来あるはずのない三対の瞳が、爛々と血走った光る様。
 誰もが悪魔と、恐ろしいと叫んでしまうのは無理もない。否定はできない。

 最初の召喚で目にした時は、同じくらい恐ろしいと感じた。
 恐いひと。酷いことを、してきたひと。
 今でも心証は変わっていない。そんな人じゃないと、庇ってあげる事はできない。
 哀しい人だと、慰めてあげる事はできない。
 なら、せめて───

「大丈夫……だよ……」

 言葉をかける。
 振るえて縮こまるアビーの背中を、優しくさする。

「誰も……連れて行ったりなんか……しないよ……。
 あなたも……あなたの大事な人も……ここにいて……いいんだよ……」

 あなたたちが、ここでお別れになるなんて結果にはならない。
 その恐怖は、ここではなくてもいいものだから、信じてあげて。

「…………いいの……? 私が悪い子だから呼んでしまった、悪魔ではないの……?」
「ん……ちょっと、恐いひとだけど……酷いことをしたりは……しないよ……。
 わたしの……サーヴァントさん……ですから……」

 その言葉を、どこまで信じてくれたのか。
 アビーはゆっくりと身を起こして、落ち着きを取り戻してくれた。怯えは消えてないが、過剰な反応は見せない。

「───────────────」

 会話を聞いていたセイバーは、顔を顰めてしまっている。
 嫌な事を、言ってしまっただろうか。後で謝っておいた方がいいだろうか。
 マスターと認めてもらってないのに、口を出してしまった事が、よくないのかもしれない。嫌いだと、言われてしまったし。

「えっと……セイバーさん……。なにか……ありました……?」
「…………………………」

 何も答えず。
 寡黙なのは普段通りだけど、こんな場面で黙りこくっているのには、流石に少し困ってしまう。
 それをよそに、セイバーは足を前に出して近づき、片膝をついた。
 仮初の主である霧子を通り越して───後ろで伏す金髪のマスターに。

「…………退がれ………………」

 そこで、やっと一言、口を開く。
 霧子達に向けて、離れろと命じる。
 目線はやはりこちらを向いていない。六つ眼の焦点は、揃ってある一点に集約されて離れないでいて。
 言葉を投げられた二人は顔を見合わせる。アビーにはありありと不信と不安の感情が顔を覆っている。
 霧子に目線を向けているのは、信頼の証を求めてのこと。

 ───任せていいの?
 ───この方を頼りにしていいの?

 縋りつく求めに対して、霧子は頷く。
 声を出さずに、決して迷いを出さずに。
 出してしまえば、疑って、任せてくれないだろうから。
 そうしたら、躊躇を隠せないながらも、二歩分だけ身を引いてくれた。
 何かあれば、マスターの身に危険が及ぶと判断したら、すぐに攻撃を加えられる距離に。

 少し広くなった周り。
 セイバーの左腕が伸ばされる。
 腰の鞘には手を付けてない。無手の掌がゆっくりと迫る。
 広げた手は、玉の汗を流す彼女の顔に向かわず。
 唾を飲み込むのも億劫そうな細い首に向かわず。
 短い間隔で深い隆起を上下させる胸部に向かわず。
 向かったのは、赤く焼け爛れた、手首から先が落とされた腕に向かい。


 手を─────────
 閉じる────────


「ぇ────────────?」

 誰の声なのか。
 何が起きたのか咄嗟に理解できず、『いざとなったら』の判断さえつかなかったアビーか。
 目の前の光景に、自分の視覚がおかしくなってしまったのかと混乱している、自分か。

 二人は見た。
 セイバーがなにをしたのかを見ていた。
 伸ばしたセイバーの指が、金髪のマスターの傷口に無造作に触れて。
 傷が開いてしまうのも構わずに、指を閉じて握りしめたように見えたのを。

 実際は違う。握ったわけではない。
 傷の表面に押し付けた掌は、失われた右腕を補填したみたいに沈んでいき。
 互いを求め合って、融け合って、繋がって、ひとつになっていって──────。


 なに。あれはなに。なんなの。
 恐ろしいことが起きてるとしか思えないあれは、なに。
 二人の疑問は同じもの。
 目撃者は別々に同一の疑問が脳に生じ、精神をかき乱す。


(食べ…………ちゃった?)


 ああ。
 あれは、食事だ。


  食べられている。生物が生存するために必須となる捕食行動。
 鬼にとっての食事とは、人間の血肉。
 そういった説明を、受けた記憶が、あった。

 彼が人を食べるところを、見たことはない。
 食べることは聞いていても、どうするかまでを聞いたことはない。
 これが、そうなのか。
 口を使わずに、喉を鳴らすことなく、舌で味を感じたりもしない。
 手から、吸い込んで、食べる。
 そんなことをして、そんなことをできる生き物が、彼だった。
 彼は、セイバーは、黒死牟は、鬼だった。

 声が出ない。
 彼が人を食べようとしているのを前に、何も言い出すことができない。
 命をいただく行為、命である責務を果たしているのを邪魔するのは、いけないから?
 人を食べる場面を初めて見て、心が竦んでしまったから?
 そうかもしれない。でも、違うと思う。
 これが食事なら、ただ食べたいだけなのなら、手首を取り込んでからその先へまったく進んでないのはおかしくて。
 何より、これは、こう思うのがおかしいのかもしれないけど。
 鬼という生き物の食事を、初めて見るのに、変な気がしたから。
 食べているというよりも、今まで自分が彼女に施していたそれと、同じような。

「縁壱」

 合図のように、名前が表れる。 
 呼び声の最後の一言が余韻になって消える、その間に、風は吹いた。
 ざん、という、断ち切られた音が聞こえ。
 じ、という肉を焦がす音が聞こえた。
 誰も追いつかない反応。視界に入れた時点で、もう事は終わっていて。

 もうひとりのセイバー。血を分けた双子。
 人のままでいる侍が、いつの間にかそこにいて。
 抜き放たれていた刀が、赫く光り突き立てていた。
 ちょうど、セイバーと彼女とが交わり繋がった場所の中心、融け合う箇所を区切るように。



「──────ッ!? あ"っづぅ!? なにこれぇ!?」



 部屋中を跳ね回るみたいな絶叫。
 刃物で腕を切り落とされたにしては、どこか緊張感がない。
 さっぱりした、というか。
 痛みの訴えではあるのだけれど、命を脅かされた反応ではなく。
 例えるなら、タンスの角に足の小指を意図せずぶつけてしまって、思わずびっくりして出してしまったような声。

 声を出した。
 うなされながらの呻き声などではなく。はっきりとした言葉を発したという意味に、そこで気づいて。

「え─────あーー……と? なんだか知らない人がたくさん集まってるんですけど、いったいこれ───」
「マスター!!」

 アビーの腕が、続く言葉を止める。
 目覚めたばかりで意識定まらない自分のマスターに、喜びの感情のままに飛び付いていた。

「よかった……! 目を覚ましてくれて、本当に……!」
「アビーちゃん……? ああ、そっか、私……」

 呆とした表情で眺めていたのは、ほんの僅かな時間だった。
 残った片方、指先が透明に光ってる手を首に回して、愛おしげに金絹の髪を鋤く。

「───心配、かけちゃってたんだね。
 独りにしちゃってごめんね」

 自分にしがみついて涙を流す少女がどんな気持ちで見守っていたのか、全て理解しているんだろう。
 腕に感じてるはずの激しい熱も、体の一部が失くなった喪失感も、気にならない。
 気絶してる間、部屋に取り残されて孤独にいるだろう小さな隣人を、真っ先に気にかける。

(綺麗な人……だな……)

 落ち着きを取り戻した、険の取れた顔。
 流れる金の髪。黄金の糸で紡いだような、輝く髪。
 金で飾られたかんばせも、見劣りせず調和が取れている。痛々しい欠損を負っていても損なわれはしない。
 瞼を落として眠りにつく様は、それこそ眠り姫。運命の王子の愛を受けて目覚める御伽の主賓のよう。

「あ……ありがとう! 本当にありがとうございます、東洋のお侍さま……!」

 目尻に溜まった水玉を拭いながら、視界の隅で踵を返しドアに向かう背中を見咎めて。
 アビーは投げかけた。感謝の礼を。持ち得る限りの思いを込めて、最大の感謝の念を送った。
 振り返らず、立ち止まりもせずに、体格の輪郭を解いて、霧になって消えてしまった。

 去り行く背中を、名残惜しく見送る。
 彼に、言葉は届いただろうか。
 心は伝わって、彼に色を与えてくれただろうか。
 そこではたと立ち返って、起きたばかりの負傷者を再び検めた。

「……? あれ………………」

 ……斬られたとしか見えなかった腕の先は、止血が為されていた。
 火傷の痕で塞いだ、多少強引な方法なのは以前と変わらない。
 ただ、先ほどのものと比べると、その焼かれ方は違っている。
 焼け爛れ、腐敗していく肉を想起させる痛々しい有り様だったものが、不思議と、綺麗に見える、ような。

「彼女の傷口には、呪詛が混じっていた」

 兄の後を追うことなく、膝をついて留まっていたセイバーが。
 懐から取り出した白い包帯、薬の入った小箱を床に置きながら、疑問を見透かした。

「襲った者が最期に残したものなのだろう。怨念か執念か、どちらにせよ強くこの世に留まり、人体に毒素となって影響を与えていた。
 兄上はその呪詛を……周りの肉ごと喰らう形で取り込んだ。彼女に鬼の血が入らないように、私が処置するのを含めて」
「…………じゃあ……」

 胸の奥、小さな命が脈打つ場所を、爽やかな風が撫でた。
 夏の真っ只中で、春の歓びが訪れたみたいなな。
 熱く速く響く鼓動が、躍動するきもち。

 だって、それはつまり。
 命をいただくためじゃなく、命を守るために、彼が手を貸してくれたということで。

「……なぜ、そこで笑う?」
「いえ…………でも……縁壱さんも少し……笑って……ます、よ……?」
「…………………………そうか?」
「はい……ふふっ……!」
「………………………………………………そうか……………………」
「はい……!」

 指で自分の表情筋をぐにぐにと確かめている。そんなことをしなくても、あなたはきちんと笑えているのに。
 きっと、彼と同じ表情を浮かべているんだと思うと、あたたかい気持ちがますます溢れるばかりだった。



 たとえ偶然でも。気紛れでも。
 自分が思ってるような理由じゃないかもしれなくても。
 人の命が在ることを認めて、人の傍の側に回ってくれたことが───ただそれだけで、嬉しかった。



 ◆



 その後。
 鳥子はアビーから、気絶してから起きた話と、今の状況を聞いた。

 最悪からは、どうにか持ち直したらしい。
 少なくとも……陰湿な陰陽師に追われ、執拗な殺人鬼に付き纏われ、実質孤立無援で置いていかれていた時よりは、ずっと。
 向こうから近づき率先して、甲斐甲斐しく介抱してもらっておいて、これ以上を望めるというのは横暴と言うもの。
 こんな弱った体で見つかったなら、カモとして真っ先に攻められて然るべき、本当に瀬戸際立ったのだ。

 アサシンを撃退して、今後どうこうするプランがあったわけでもない。
 【怪異】を払うのと同じ。命が差し迫った中で必死に切り抜けようと選択肢を見つけ、もがいた結果。
 鳥子達は成果を残した。アサシン撃破、プラスに働くかはさておいて、サーヴァントの一騎を仕留めた。

 あれは……何が起きたのだろう。
 鳥子は令呪を使った。アビーに宝具を使用するよう指示を下した。
 ならばアサシンを倒したのはアビーの宝具であるのは紛れもなく、起きた現象もその顕れだろう。

 実のところ、アビーが宝具を解放する瞬間を、鳥子は憶えていない。
 目の当たりにはしたが、手首を爆破された痛みとショックで意識が霞み、明瞭に記憶できていなかった。
 あるいは、【そこ】から出てきそうだったモノを目にしたくないと本能的な恐怖が働いて、早々に記憶を手放すのを無意識に選んだのかもしれないが。

 ともかく、とても光っていた気がする。
 アビーを基点に、瞼を突き破るぐらいに強い光が放たれていたのは、網膜に焼き付いてる。
 光そのものが宝具なのか。光を伴って宝具が顕れたのか。そこは脳に入らなかったが。
 いずれにせよ、その光によってアサシンは倒された。
 ホテルの窓ガラスに響く罅ひとつ入れずに。カーペットに焦げ目ひとつ残さずに。
 意識を取り戻した後の部屋は、以前とまるで様子が変わっていなかった。

 これは攻撃じゃない。そういう括りに加わるものじゃない。
 もっと違う、別の場所で起きた出来事だ。
 宝具を使ったたいうのに。
 敵を倒したのに。
 何をしたのか、どういう攻撃だったのかを示す痕跡が、まったくない。
 追放。放逐。そんな単語が意味もなく浮かんだ。

「マスター……?」
「鳥子さん……あの……大丈夫ですか……?」

 巫女の声が目を覚まさせる。
 泡吹く虹の門の前で振り返る。
 旧い夢を、見そうだったらしい。

「やっぱり……お話しするのやめて……お休み……します……?」
「あ──────ううん、へいきへいき。話してた方が気が楽だから」

 起きていたのに寝ていたなんて、我ながら器用な真似を。
 顔を窺う霧子を心配ないと手を振ったが……咄嗟に右手でやってしまったのでますます不安げにさせてしまう。

 失くした右手の先には、包帯が綺麗に巻かれていた。
 とりあえず生きてればそれでいいみたいな荒療治じゃない、丁寧に、労る気持ちで処置された腕。
 どれも、霧子がやってくれたことだ。

「霧子ちゃんは疲れてない? ずっと手当てしてくれてたんでしょ?」
「はい……さっき少し……休んでたので……。
 でも……こんなに夜更かししたのは……初めてです……」
「そっか。悪いこと教えちゃったね」

 強引に話を続ける。
 ここはホテルのベッドだ。
 鳥子とアビーが泊まり、アサシンが暗殺を踏み切った部屋にいる。
 殺されかけた場所で寝泊まりというのは気が落ち着かないものはあるが、二人がいることが不安を吹き飛ばしてくれた。
 ちなみに隣の部屋、つまりアサシンが借りていた部屋は他の男衆───霧子のサーヴァントともう一組のマスターとサーヴァントに割り当てることにした。
 どうせ費用はアサシン持ちなのだ。使わないままでいるのは勿体ないし、遠慮してやる義理もない。
 チェックアウト時にどうするかは……まあ何とかなるだろう。断りなく引き払っちゃってもいいかもしれない。

 助けてくれたばかりか手厚い看護までしてくれた霧子とアビーとでベッドを囲み、色々な話をした。
 お互いが界聖杯のマスターであることの確認。どういうスタンスで東京を動いているのか。
 名前。能力。出来ること。途中に世間話。
 こっちの体調を慮ってか、元来の性質なのか、ゆっくりと噛み砕いて、咀嚼していく。
 まるで、明日のテストに備える勉強会のようだった。

 双方から提供できる情報はふたつ。
 仁科鳥子は、サーヴァント、フォーリナー、アビゲイル・ウィリアムズの特性と取り巻く危険性を。
 幽谷霧子は、元の世界からの知己が複数いるマスターによる同盟と、聖杯への干渉及び脱出計画を。

 アビーに纏わる伝承、能力を説明するのには、少し躊躇した。
 だいたいにして、自分もよくわかっていない。
 当人のアビーは、明かすこそ、知ること自体が禁忌にして禁断なのだとも。
 何より───アビーを矢面に立たせ、負荷をかけさせてしまうのが、嫌だった。
 なので解説もふわふわっとしたもので、

『なんかやたらとヤバい力があって、それを利用しようと怪しくつけ狙ってる奴がいるけど、こっちで上手く使えば界聖杯から脱出できるかもしれない』

 という風にしか言えなかった。
 聞いた霧子の方も、要領を得ない内容に小首を傾げ、わかってくれたのかどうか。

 じゃあ説明しない方が良かったのかといえば、そんなコトは全然ないのである。
 アサシンは倒しても───脅威はちっとも減ってくれてはいない。
 アサシンが同盟を蹴ってアビーは排除しようとした理由。同盟を組もうと提案してきたそもそもの理由。
 リンボと名乗るアルターエゴ……その魔の手は未だこちらに向けられている。
 アサシンのマスターにそうしたように、アビーの情報をちらつかせて警戒を煽る真似を繰り返しているのなら。
 いつまた同じ目に遭うか知れたものじゃない。

 なら先手を打っておかなくてはいけない。
 リンボを誘い出しす計画がご破算になった今、できるのは孤立無援を避けるぐらいだけれど。
 霧子達がまだリンボ伝いの情報を掴んでいなかったのは本当に幸運だった。
 内容がまるきり虚偽でない以上、こちらから公開することで少しでも信用を買っておかなくては。

 自分のマスターがリンボに懐柔されたから、アサシンは性急に手を切ってきた。
 令呪を持ったマスターが自分に命令できる状況のままなのは、都合が悪いからと感じたからだろう。
 アサシンの都合の悪さが、自分達に関係ない都合だとは限らない。
 アビーがリンボに狙われる状況が不味いと感じたからこそ、手を組もうと接触してきたのだ。
 それをこうも掌を翻したのは、アサシンの事情のみならず、アビーに纏わる状況にも変化が起こったのかもしれない。
 最悪、この拠点についても割れてる可能性もある。
 意識が戻ったのだし、まず離れようと進言しただけど。

『それは駄目よ……!』
『それは……だめです……!』

 息の合った同音で、見事に断念させられてしまった。
 気絶してた間に何があったのだろうか。この二人、意外と相性がいいらしい。

 しかし考えてみれば、アビーも含めて三騎のサーヴァントがいるこの現状。
 リンボの悪巧みがどんなものであれ、今すぐここを攻め立てに行く方向に行くとは思えない。
 迎え撃つ、という選択肢が生まれたこの場所は、ある意味でどこへ向かうよりも安全だ。

「それで、さ。どう、霧子ちゃん」
「え…………?」
「私達と協力してくれる気、ある?
 話を突き合わせてみると、けっこう組める余地あると思ったんだけど」

 聖杯戦争を離脱できるメリット。
 聖杯戦争にさらなる災害を引き起こすデメリット。
 旨味があり、相応に負債を抱える可能性を含めた上で、共同戦線を組む気はあるかどうかを問う。

「……え………………と…………はい。
 私はぜんぜん……いいんですけど…………。
 おでんさんや…………セイバーさん達にも…………聞かないと……」
「ん、オッケー。ま……仮にいい返事がもらえなくても気にしないでいいよ。
 ここまで助けてくれただけでも十分過ぎるぐらいだし」

 許容範囲だ。
 独断で決めれるほど意見が強いタイプでもなさそうだし、相談するだけでも御の字と見るべき。
 もっとも、そのメンツと直接話を交わしては、まだいない。
 この手を治してくれた霧子のセイバーは、和服の後ろ姿だけは視界の端で捉えていたのだけれども。
 見知っているのは、やはり同じく和服を着たもうひとりのセイバーと。
 またしても和服の、それもだいぶ歌舞いてる格好の、中年ぐらいのマスターである侍だ。
 ……霧子を除けば、ずいぶん和風なメンバーなことだ。
 別行動してる友達も、そんな感じなんだろうか。

「あとは、そっちの友達とのコンタクトを取り次いでくれれば、こっちとしては十分かな。
 ひょっとしたら、みんな纏めてこっからおさらばする作戦ができるかもしれないじゃない?」

 今日の夕方頃にマスターであると知れたという二人組。
 夜に電話で会話して以降、持ってる携帯が壊れ、公衆電話もごった返しで連絡できず仕舞いだそうだが。
 鳥子の方は携帯を温存できてるので、番号さえ憶えてれば接触は可能になる。
 肝心の計画についてだが、何でもサーヴァントの力を使って、一緒になって聖杯戦争を離脱しようと考えてるらしい。
 詳細は聞き出せてないらしいが、ならこちらの腹案であるアビーの力を借りるプランも、きちんとカードに使える。
 二通りのプラン、上手く噛み合えば併用して、成功率を高められる。

 ……アビーをだしに使う真似は、当然ながら気が進まない。
 けど事実としてアビーには秘めたる力がある。これを受け入れなければ始まらない。
 敵はこっちの事情なんかお構いなしだ。心情もデレカシーもまるで配慮してくれない。
 自分の身を守るため、何よりアビーをこれ以上利用されないためにも、打つ手は打っておかなくてはいけない。

「………………………」
「どうかしたの、霧子?」
「あ……ううん…………」

 じっと見つめる霧子に、アビーが声をかける。
 目の色、髪の色、白い服装。
 どれも薄く儚げで、アビーと並ぶと、姉妹とはいえずとも、中の良い友達同士にも見える。

「あの……まだ、わたしには……よくわからないことが多いんだけど……」

 言葉を選ぶように慎重に、ゆっくりとした喋りでも。
 言いたいことはしっかり決まってるのだろう、つかえたりせず朗々と。

「アビーちゃんが持ってるものが……危なくても……。
 怖いことが起きちゃうのも……なんとなくだけど、わかっていて……。
 けど、そうじゃないのも……アビーちゃんの願いも、ちゃんと……届いてるから……」

 それが何であるか、言うまでもない。
 厚く巻かれた包帯。当てられた氷嚢。
 鳥子の姿が、その結実だ。
 鳥子を救うようアビーが哀願し、霧子が受け入れたからこそ、自分は生きていられる。

「鳥子さんが大好きなこと……そのためにすっごく頑張れること……ぜんぶ、知れたから……。
 ここが……アビーちゃんにとって……帰りたい場所なんだって……思えるなら……。
 もし……一緒に行けなくても………………わたしは、ふたりのこと……応援したい、です…………」
「……! まぁ……!」

 跳ねる笑顔とは、まさにこのことだろう。
 アビーは弾んだ声で袖から出てない腕を伸ばし、霧子の両手を揃えて握った。縄跳びみたいにぶんぶんと上下している。

「ありがとう霧子……! あなたの気持ち、とっても嬉しいわ……!」
「ふふ……うん……! あ……桶の水……張り替えてくるね……。氷……もう固まったかな……」

 温くなったタオルと水桶を持って、ぱたぱたと台所に向かう。
 習慣づいた淀みない作業の流れといい、介護を請け負ったことといい、医療関係の勉強をしてるのだろうか。

「……いい子だよね」

 小声でアビーに
 蛇口から出る水音や氷を出す音がするので、霧子には聞こえはしない。

「ええ、とっても善い子よ。私のことを怖がってたのに、優しく迎えてくれたの」

 それは、見かけによらず肝の座った子だ。
 考えてみれば、殺し合いなんて行われてる世界で人助けに奔走するからには、それぐらい芯が入ってないと立ち行かないだろう。

「ええ、すごく優しい子なの。あの子は罪も嘘も知らない純粋な子……誰も彼も罪から逃れようともがく、こんな場所で出会えるなんて……」
「うん……うん?」

 そう。霧子は優しい子だし、ここまで治療もしてくれた。
 これを見捨てる恩知らずにはなりたくない。出来るだけ手助けする方向で進んでいく予定だ。
 とはいえ、自分達だったからいいものの、これがもしリンボみたいな悪辣な輩の誘いだったなら、優しさはむしろ仇になる───────。
 そう、小言を言いそうだったのだけれど。

「ここで起こってるどんなに重い罪の痛みも、あの子には関係がない。
 けれどあの子は、そんな罪深い人達の声を聞き届けて、同じ痛みを抱えてくれるの。
 素晴らしいわ……痛みを与えるのではなく、受け止めることで救済を為すだなんて。みんなの原罪を背負って十字架にかけられた御子様のよう」 

 アビゲイルは何か、妙な事を、言っていた。

「澱みも穢れのない、瞳の中に映した者の罪を暴く、鏡のように綺麗な心。
 そう、まるで───銀色の鍵。幽世への門の鋳型。
 ああ……とても残念。私が悪い子じゃなかったら、いいえ……悪い子のままだったなら、お父様のところへ送」
「ところでさ、アビーちゃん。
 体、大丈夫?」
「え?」

 何も反応せず、話題を切り替える。
 それには答えていけない。信じるも疑うも許されない、ただの妄言として扱おう。
 そういうことに、しておかないと。

「宝具、使っちゃったじゃん? どこか悪くなったところ、ない?」
「あ……ううん。大丈夫よ、マスター。私、これくらい耐えられるわ」
「つまり無理させちゃってるんだね。ごめん」 
「謝らないで下さいな。マスターは間違ってなんかいないわ。あれでいいの。あれでよかったのよ」

 やはり、無視できない負担をかけさせているようだ。
 申し訳ないと思うが、後悔するわけではない。
 罪だというなら背負うし、罰があるというなら向かい合う。
 もうそういう関係なのだ。彼女とは。
 マスターとサーヴァントという関係が、そもそもそういう契約なのだ。

「謝りついでにもういっこ。アビーちゃんのこと教えちゃったのもごめんね」
「もう……マスターったら謝ってばっかなんだから。
 気になさらないで。私はあなたのサーヴァントだもの。マスターがそう信じたのなら、私も同じように信じます」
「あはは、ごめ───おっと。
 まあとにかく、折角同盟相手になりそうな協力者と会えたんだし、こんな無茶はもうこりごりよ。私も凄い大変だったし」

 ここまでの道程は、人との巡り合わせがあまりにも悪かったしか言えない。
 最初がアレで、次がアレだ。最悪、この上ない。
 会う全員が敵、なんて疑心暗鬼に凝り固まる前に、揺り戻しとばかりに最良の相手と出会う事ができた。
 この運気は、逃すべきではない。
 遅れた分をここで一気に取り戻して、一刻も早く空魚と連携して脱出の手を探らなければ。

(変だな、私)

 そう。協力者。同盟相手。
 合わせられるのは、ここまでだ。
 この距離感が、許される範囲だ。
 霧子達がどれほど善人で、頼れる仲間であっても、『そこ』の境界線は踏み越えさせてはあげられない。

(空魚がここにいるって前提で、なんでか話しちゃってる)

 いてくれたらいいのになー、ぐらいの、のんぼりとした気持ちなのに。
 根拠はなく、疑問さえなく、信じてしまえている。
 空魚が巻き込まれているのなら、同じぐらい危険な目に合わせてしまうって分かってるのに。

(でも仕方ないじゃん。
 空魚がいれば、これはいつもの冒険で、私達や他の人も帰ってこれる──────そういうゴールが出来上がるんだから)

 こっちは漸くスタートラインに立てたのだ。 
 そっちもそっちで七転八倒してるんだろうけど。
 運命(きょうはんしゃ)の再会というものを、そろそろ信じさせて欲しいものだ。



  ◆



 腐る────────────


 腐る────────────


 腐り落ちる。



 手足の末端から崩れ壊れていく錯覚。
 肺腑が灼熱に誘拐する妄想。
 魂の根幹が捻り回され、千々に裂かれる幻覚。
 積年を募らせる弟を脳裏に浮かべる度に思い浮かぶ痛みが、全く別の象徴によって再発している。

 黒い空、黒い街。点在する星屑の灯。
 待機している建造物の屋上、夜景を展望できる位置。
 鼻には砂と血の混じった匂いが入る。
 耳には断末魔、目には壊滅的な惨状。
 英霊悪鬼の跳梁跋扈は、箱庭の耐久度を急激に削り続けている。
 獄卒も逃げ惑う強者がひしめく戦場に、向かうことなく……己は一体、何をしているのか?

 他者への施しなぞ、鬼と成り果てて以来、ただの一度とて行っていない。
 それも敵に。マスターと呼ばれる将、サーヴァントという兵を現世に留まらせる要に。
 衰弱した女。怯えるだけの小娘。組み伏せるには易く、与するにもまた易い。
 労せず落とせる一組を、見逃すのみならず、あまつさえ塩を送る始末。


 期せず、収穫は得られた。
 主たる女の切断部に巣食っていた、黒い呪い。
 英霊という位階に達し、透き通る視界で見通せるものは骨肉のみに限らなくなった。
 今この身体を構成する魔力、それを生成する魔術回路なる基盤の流れをも視界に加わり、その点を発見できた。
 死に際の残穢としてこびりついた滓のようなものだったが、人間ひとりを呪い殺すには十分な量だろう。
 執念深く、偏執的で、未練がましい、怨念に相違ない呪詛も、鬼の身にはむしろよく馴染む。
 触れた傷に捕食による細胞融解を一部適用、癒着したところで一気に吸い出し、引きずり上げ、体内で消化。
 小癪な妄念は、少量の血肉と共に養分と変わり、この身の活力に置き換わった。

 共有された情報によるなら、自分をアビゲイルと名乗るサーヴァントには秘めたる力があり、それを利用せんと忍び寄る輩がいるという。
 先の襲撃者も、それに連なる刺客なのだろう。
 これを確保している限り、敵が向こうから好きなだけ寄ってくれるというなら、実に都合がいい話だ。
 妙なしがらみが多く、座して待ちに徹するしかない今、これは好機と見るべき。


 見苦しい言い訳だ。
 幾ら機が巡ったといえども、手放しで喜べるはずがない。
 はじめから勘定に入れていたわけではなかった。進言も、駆られる必要性も、あそこには何もなかった。
 何故、己はあのような行いをしたのか?
 理由は未だ、皆目見当たらない。強いて言うなら───


───あ……ありがとう! 本当にありがとうございます、東洋のお侍さま……!


 感謝の言葉を聞いても、湧き上がるものは何もなかった。
 抜き身を鞘に収め去り行く背中に、涙ながらに声を届けられた日は数知れぬが、漣ひとつの感慨も抱いた記憶がない。
 命を救い、人世を守り、平和をもたらしたという高揚は一切なく。
 人の剣士として鬼を狩っていた時代と同じ、虚無の広がりを感じるのみ。

 言祝ぎで力を高められなどしない。
 同期にはそう意気込んで周りを鼓舞する手合いも多かったが……日の呼吸に千枚劣る腕前がその甲斐なのだとしたら、なんと儚く微弱な助力だろう。
 褒めそやされ拝まれることで強さを得られるなら、今頃仏でも志している。
 結局この身に力を賜らせてくれたのは、鬼狩りが宿敵と定めた憎き始祖のみ。
 傲岸に、確固たる力の自信に満ち溢れた存在からの提案を前に、障子紙の厚さの信義は破り捨てられた。
 無限の時間。
 永遠の研鑽。
 神の寵愛の賜物に追いつくには、幻想にも劣る空想よりも確たる力に縋ることのみが唯一の道であるというのに。

 理由はない。
 大した理由ではない。
 手を下したのは益からでも情でもない。
 手傷ひとつにかかずらい、煩く喚く姦しい泣き声が、あまりに苛立たしかったからに他ならない。
「ただ、そういう気分だったから」で、上弦の壱が力の一部を振るったのだ。
 堕落と呼ばす、軟弱と謗らず、なんという。


 英霊とは人の意思。信仰を束ねて形成される影法師。
 数百年人を斬り続け、我欲に駆られて無意味な殺戮を繰り返してきた黒死牟に向かう意思とは即ち、畏れと恐怖のみだ。
 人間であった頃ならいざ知らず、黒死牟とは人の理を裏切り、仇なし続けてきた背信者。
 良き行いをする、という余白が、そもそも存在しないのだ。
 強さのみ求めてきた鬼に、それ以外を求められている。
 それを、三人がかりで無理やりねじ曲げられた。
 肉体(現在)を叩き伏せられ、精神(過去)を焼き焦がされ、魂(未来)を掬い上げられた。

 苛々する。
 吐き気がする。
 無いものをあるはずだと体内をまさぐられ、こそぎ落とされ、詰め込まれている。霊基が軋み上げるのも道理だろう。



「おい見ろよ!! そこの露店のおでん半額だってよ!!! めちゃくちゃ買っちまったぜ!!!」



 ──────そして何故、この男は馴れ馴れしい絡み方をしてくるのか。



 屋上に駆け上がって来た光月おでんは、こちらの右隣でどか、と腰を深く下ろす。
 両手には湯気の立つ容器と、とりどりの食物に当世風の酒瓶。
 どう見ても酒盛りの準備だった。
 早速蓋を開け、具材をかきこみ汁を啜る音が煩く響く。
 月も白み夜の闇が少しずつ薄れつつある時分、一体全体何が悲しくて独り宴会に付き合わされなくてはならないのか。

「オォォ~~~~あぢいっ! うめぇっ! 東京って町はまったく道は狭いわ空気は溜まってるわ町行く民は辛気臭えわで仕方ねぇが、メシの旨さだけは文句のつけようがねぇなぁ!」
「……何をしに……来た……」

 抜き放つのは、殺気までに留まった。
 錆び付いたと自嘲しようとも、酒の痴れ言に刀を向けるほど落ちぶれているつもりはない。

「あ? メシに決まってんだろメシに。戦前の腹拵えってな。
 まだおまえからもらった傷も治ってねぇし、食って早いとこ力つけとかねぇとな」

 質問の答えになっていない。
 腹を満たしたければ好きにすればいいが、それがどうして、わざわざ面を出すことに繋がるのか。

「ほら」

 ずい、と差し出される腕。
 手のつけられていない、同じ中身の入った容器が掴まれてる。

「ん、どうした? 苦手な具でも入ってたか?
 ああ、霧子のお嬢達にもくれてやったから安心しろや。此度のあいつの心意気に乾杯ってやつよ」

 ……よもやと思うが。
 これを渡すためだけに、ここまで昇って来たのだとでもいうのか。

「戯れ合いのつもりなら……今すぐ去れ……」
「そんなんじゃねぇよ。戦が近いっつったろ。
 そこかしこで火祭りもかくやのこの様じゃ、いつ始まってもおかしかねぇ。食える時に食っとかなきゃな」

 一戦交えた程度でもう馴れ合ったつもりか。
 縁壱とあの月夜の再演を果たすまで、鞘を収めてやるとは言ったが。
 魂の凌ぎを削り合った敵同士に飯を施す、侮辱めいた振る舞いを受けてやる程、温い関係に身を窶せる筈がない。

「どちらにせよ……不要だ……。鬼に……人の血肉以外の食物は……受けつかぬ……」
「かーーーっなんだそりゃ! 酒もおでんも飲み込めねぇってか! 人生損し過ぎだろ……!」

 狂おしいほど余計な世話だった。
 食事なぞ単なる栄養摂取の手段。
 むしろ鬼になった事で直接肉体強化に充てられるようになったのなら、厭うものなぞあるものか。
 そう、鬼だ。この身は上弦の壱。■■に最も近い高みに座位する血鬼の徒。
 人を喰らい、剣士を殺し、人類史に影を落とす天魔の敵。

 それを───この男はまるで恐れていない。
 それどころか今のように、酒の席で偶々隣り合っただけの初対面の相手の肩に腕を乗せるような、不躾な気安さで詰めてくる。


 無数に屠ってきた鬼狩りの怒りも。
 実弟や女剣士の見せた哀れみもない。


 光月おでんという侍には、身分という"心の檻"がない。
 あの娘のように、覆い被せた衣を全て剥ぎ取って、最後に残った"一"に目を合わせてくる。
 はじめから、生まれや格差、鬼だとか英霊だとか、見ていないのだ。

 血華吹き荒ぶ真剣仕合も。
 乱痴気騒ぎの中で繰り広げられる私闘も。
 終わればなべて大笑いで締めくくる、自由闊達なる生き様。


「理解したならば……早々に降りろ……。茶飲み話に……巻き込みたければ……下の者に……すればよかろう……」
「ええ~そうは言ってもよぉ~~……。
 なんか向こうは女子の花園で入りづらいし、縁壱もさぁ、あいつぜってえこういうノリ乗らないじゃんかぁ~~」

 だから、何故それで盃を向けるのがここになるのか?


 「お前とが一番話が合うと思ったんだよ。
  本気で怒鳴って、斬り合って、殺し合ったのに、お互いに生き延びた! こんな縁は早々ねえ!」


 ……………………今度こそ、二の句が出なかった。

 理解したからで、今更改めるつもりもない。
 縁壱との決着に手前勝手なり靴で水を差した不躾な侍は、相も変わらず鼻持ちならない。
 伴天連でも目にしない奇特愚昧な振る舞いには、今でも嫌悪と苛立ちしか湧いて来ない。
 一方で、そんな大莫迦者に斬り伏せられた我が身の恥を、思い起こさずにはいられない。

 おでん、縁壱、幽谷霧子
 誰も、彼も、分からなかった。
 鬼に、人喰いに、黒死牟という英霊に対し、戦い以外の何を見出だし、何を求めてるのか。
 幾ら脳の思考速度を回そうと、納得に足る答えは出てこなかった。



「…………………………………………」
「嫌そう!? オイオイそんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃねえかよぉ!!」

 深く、息をつく。
 それは鬼と変わるより、鬼狩りに加わるよりも遥か以前。
 武家の跡取りとして生まれて以来の初めての、心底からの陰鬱な溜め息だった。



【文京区(豊島区の区境付近)・ホテル/二日目・未明】

幽谷霧子@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:健康、お日さま
[令呪]:残り二画
[装備]:包帯
[道具]:咲耶の遺書、携帯(破損)、包帯・医薬品(おでん縁壱から分けて貰った)
[所持金]:アイドルとしての蓄えあり。TVにも出る機会の多い売れっ子なのでそこそこある。
[思考・状況]
基本方針:もういない人と、まだ生きている人と、『生きたい人』の願いに向き合いながら、生き残る。
1:鳥子さんを看護。手伝ってあげたいけど……またセイバーさんを困らせちゃうかな……
2:色んな世界のお話を、セイバーさんに聞かせたいな……。
3:摩美々ちゃんと……梨花ちゃんを……見つけないと……。
4:包帯の下にプロデューサーさんの名前が書いてあるの……ばれちゃったかな……?
5:摩美々ちゃんと一緒に、咲耶さんのことを……恋鐘ちゃんや結華ちゃんに伝えてあげたいな……
[備考]
※皮下医院の病院寮で暮らしています。
※"SHHisがW.I.N.G.に優勝した世界"からの参戦です。いわゆる公式に近い。
 はづきさんは健在ですし、プロデューサーも現役です。

【セイバー(黒死牟)@鬼滅の刃】
[状態]:健康、生き恥
[装備]:虚哭神去
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明
0:呪いは解けず。されと月の翳りは今はない。
1:私は、お前達が嫌いだ……。
2:どんな形であれこの聖杯戦争が終幕する時、縁壱と剣を交わす。
[備考]
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。
 記憶・精神の共有は黒死牟の方から拒否しています。

光月おでん@ONE PIECE】
[状態]:全身滅多斬り、出血多量(いずれも回復中)
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:二刀『天羽々斬』『閻魔』(いずれも布で包んで隠している)
[所持金]:数万円程度(手伝いや日雇いを繰り返してそれなりに稼いでいる)
[思考・状況]
基本方針:界聖杯―――その全貌、見極めさせてもらう。
0:この後の派手な戦に備える。今はメシだメシ。
1:他の主従と接触し、その在り方を確かめたい。戦う意思を持つ相手ならば応じる。
2:界聖杯へと辿り着く術を探す。が――
3:カイドウを討つ。それがおれの現界の意味と確信した。
4:ヤマトの世界は認められない。次に会ったら決着を着ける
5:何なんだあのセイバー(武蔵)! とんでもねェ女だな!!
6:あの変態野郎(クロサワ)は今度会った時にぶちのめしてやる!
7:あさひ坊のことが心配。頃合を見て戻りたい
[備考]
古手梨花&セイバー(宮本武蔵)の主従から、ライダー(アシュレイ・ホライゾン)の計画について軽く聞きました。
※「青い龍の目撃情報」からカイドウの存在を直感しました。
※アヴェンジャー(デッドプール)の電話番号を知りました。
※廃屋に神戸あさひに向けた書き置きを残してきました。
※全集中の呼吸を習得してました。

【セイバー(継国縁壱)@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:日輪刀
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:為すべきことを為す。
0:今はただ、この月の下で兄と共に。
1:光月おでんに従う。
2:他の主従と対峙し、その在り方を見極める。
3:もしもこの直感が錯覚でないのなら。その時は。
4:凄腕の女剣士(宮本武蔵)とも、いずれ相見えるかもしれない。
5:この戦いの弥終に――兄上、貴方の戦いを受けましょう。
[備考]


仁科鳥子@裏世界ピクニック】
[状態]:体力消耗(大)、顔面と首筋にダメージ(中)、右手首欠損(火傷で止血されてる→再止血・処置済)
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:護身用のナイフ程度。
[所持金]:数万円
[思考・状況]基本方針:生きて元の世界に帰る。
0:アビゲイルの“真の力”について知る。
1:アルターエゴ・リンボを打倒したい。
2:霧子ちゃん達との協力関係を維持したい。向こうとこっちが持ってる脱出プランを組み合わせたりとか、色々話したい。
3:私のサーヴァントはアビーちゃんだけ。だから…これからもよろしくね?
4:この先信用できる主従が限られるかもしれないし、空魚が居るなら合流したい。その上で、万一のことがあれば……。
5:できるだけ他人を蹴落とすことはしたくないけど――
6:もしも可能なら、この世界を『調査』したい。できれば空魚もいてほしい。
7:アビーちゃんがこの先どうなったとしても、見捨てることだけはしたくない。
[備考]※鳥子の透明な手はサ―ヴァントの神秘に対しても原作と同様の効果を発揮できます。
式神ではなく真正のサ―ヴァントの霊核などに対して触れた場合どうなるかは後の話に準拠するものとします。
※荒川区・日暮里駅周辺に自宅のマンションがあります。
※透明な手がサーヴァントにも有効だったことから、“聖杯戦争の神秘”と“裏世界の怪異”は近しいものではないかと推測しました。


【フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)@Fate/Grand Order】
[状態]:体力消耗(中)、肉体にダメージ(中)、精神疲労(大)、魔力消費(大)、決意
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターを守り、元の世界に帰す
0:マスター……今はゆっくり休んでいて……。
1:鳥子に自身のことを話す。
2:アルターエゴ・リンボを打倒したい。
3:マスターにあまり無茶はさせたくない。
4:あなたが何を目指そうと。私は、あなたのサーヴァント。


時系列順


投下順


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107:向月譚・弥終 幽谷霧子
セイバー(黒死牟
107:向月譚・弥終 光月おでん
セイバー(継国縁壱
110:吉良吉影は動かない 仁科鳥子
フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ

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最終更新:2022年08月13日 17:31