◆◇◆◇◇◇◇◇◇◇


此処は、麗しき桃源郷か。
あるいは、三途の彼方か。
果てなき地平まで、桜の木々が立ち並ぶ。
桃色の花弁が舞い続ける、幻想的な情景。

行けども、行けども。
視界に映るのは、満開の桜のみ。
世界が、鮮やかな色彩に覆われ。
花雪に包まれるように、彼女は進み続ける。

その美しさを前にして。
少女は、思わず追憶していた。
“桜”の名を冠した、己の先祖を。
遠い過去に遡る、己の起源を。
少女は、思い返していた。


――――古手梨花は。
――――夢を、彷徨っていた。


“行かなくてはならない”。
“早く戻らなくてはならない”。
そんな思いを抱きながら。
梨花は、途方に暮れていく。

まだ、やらなければならないことがある。
まだ、手を取らねばならない者達が居る。
まだ、終わっていない“友情”が残されている。
この桜の迷宮の終着点を、梨花は答えもなく求めていく。

咲き誇る、桜の海は。
平凡な草木のように、其処に在り続ける。
最早それは、儚くも麗しい“特別な存在”ではなく。
まるでタンポポのように、呆然と偏在する。

花弁が、舞う。
花弁が、舞う。
震える呼吸。鼓動する身体。
桜色だけが、無限に繰り返される。
桜色だけが、視界を飲み込んでいく。

行き着く宛もなく。
只管に、走り続けて。
我武者羅に、進み続けて。
やがて少女は―――“魔女”は。
その脚を、少しずつ止めていく。

立ち止まった、視線の先。
一本の、桜の樹の下。
その幹に腰掛ける、ひとつの影。
桜色の景色に紛れ込むような、白い髪。
今にも儚く散りそうな、脆い微笑み。

その姿は、枯れ木のように映るのに。
奇妙なことに――――悍ましい程に、命の光が迸っていた。

無数の桜の樹々に隠れるように。
“彼女”は、静かに其処に座り込む。
誰にも気付かれず、ひっそりと影に咲く。
“奈落の花”であることを、受け入れるように。

そんな佇まいを見つめて、梨花は。
その寂しげな姿に、哀しさを覚えて。
“彼女”の微笑みを、二つの眼に焼き付ける。
これは、あの男から分け与えられた“呪われし血の記憶”なのか。
あるいは、命が燃え尽きていく中で垣間見た“幻影”なのか。


“奇跡の魔女”は、邂逅を果たした。
呪われし血脈を背負う、“夜桜の魔女”と。
そして――――ゆっくりと、手招きをされた。


◆◇◆◇◇◇◇◇◇◇


渋谷の市街地に。
桜が、咲いていた。
真夏の空の下に。
鮮やかな華が、繚乱していた。

数多の亡骸に根を張るように。
それらの木々は、アスファルトの町並みを蝕む。
ビルの壁や、横たわる自動車。
砕けた瓦礫に、ベンチや街路樹。
街の残骸を覆うように、枝と花は無数に伸びている。

街を覆う幻想の色彩。
宙を舞う花吹雪。
痛ましい桜色の景色を前にし。
彼はその顔に影を落としながら。
静かに、思いを馳せる。


―――櫻花(オウカ)、か。


かつて心を通わせた者を振り返りながら。
雷霆のアーチャー、ガンヴォルトは霊体化しながら街を駆け抜けていた。

他人へと歩み寄り、他人へと手を差し伸べる意志。
時には他人とぶつかり合うかもしれない、それでも真正面から向き合うことを選ぶ勇気。
それはかつて、オウカという少女に見出した強さであり。
己の一筋の光である、飛騨しょうこに見出した強さだった。

本来ならば――――桜とは。
彼女達の想いのように、麗しいものだった筈だ。
だが、この渋谷の街において。
咲き誇る桜は、死者の墓標として立ち並んでいる。
そのことに、何処か遣る瀬無さのような感情を抱く。

感傷の中で、改めてガンヴォルトは振り返る。
先程まで対峙していた相手とのやり取りを。
オウカ達と同じ“強さ”を垣間見た、ある陣営の姿を。

方舟組に迎合することは無く。
しかし、利害が一致すれば“共闘”はする。
それがガンヴォルト達の出した答えだった。




数十分前。
ガンヴォルトは、女剣士のセイバーから“方舟組の方針”を聞いた。

曰く、彼女達は。
“聖杯戦争からの脱出を目指している”。
不要な戦いを望まず、殺し合いそのものからの離脱を目的とする。

この聖杯戦争は、言うなれば“強制参加”であることも事実であり。
そういった陣営が存在することも、さとう達は少なからず予見していた。
その上でガンヴォルトは――――二人のマスターの祈りのために、戦うことを選んでいた。

そして、“その過程で聖杯を狙う者達と向き合うことを選んでいる”。
それは、全てに手を伸ばして余すことなく救うためでははなく。
そうすることが、聖杯を求める者達へのせめてもの誠意と信じたから。

手を取れる者とは手を取り合い、最善の結末を模索していく。
例え相容れない者がいたとしても、その願いと向き合った上で戦う。
それこそが、方舟の面々が選んだ道だった。

彼女達の方針を噛み締めつつ。
ガンヴォルトは思考する。

方舟組の存在は、既に把握していた。
一日目の神戸あさひの炎上を皮切りに、ガンヴォルトはネット上の情報収集を幾度か行っており。
その過程で、SNSアカウントにおける不可解な“タレコミ”を発見していた。
ガンヴォルトは電気を自在に操り、電子機器等へのハッキングも行うことが出来る。
あさひの炎上拡散について調査したように、その書き込みの存在を割り出すことも果たした。

アカウントからの発信は二つ。
片方は、峰津院財閥が保有する霊地の存在についての書き込み。
そして、もうひとつ。

“283プロダクションを中心に聖杯戦争からの脱出を目論む集団が存在する”。
“実際に離脱者が表れた瞬間、聖杯戦争は強制終了となる”。

それは、この聖杯戦争における“脱出派”に関する情報。
彼らの存在の認知と、彼らが目指す計画の影響を流布する密告だった。

一日目の夜間からさとう達が積極的に激戦区へと介入しようとしたのも、これらの情報がきっかけの一つであり。
そして“割れた子供達”の首領がさとうに対して行った情報提供や、その後のSNSアカウントへの返信――方舟組の“対話路線の宣言”などから、ある構図が推測できた。

海賊は方舟の実態を掴み切れていない。
しかし、方舟の脅威だけは認知している。
故に“牽制”という一手を打った。
そして、方舟はその対処を余儀なくされている。

結局のところ、密告そのものには何の確証も存在しない。
書き込みもあくまで“脱出を目指す陣営の存在”と“それに伴う強制抹消の可能性”に触れたのみ。

そもそも脱出の手段というものが本当に存在するのか。彼らの言う強制抹消が一体いかなる筋からの情報なのか。
その裏付けには一切触れられていないし、ガンヴォルト自身も“脱出手段”に対しては懐疑的だった。
予選期間という一ヶ月もの猶予があった中で、それを未だに発動できていない時点で“そもそも実現の可能性自体が極めて低いもの”と捉えざるを得ない。

しかし海賊陣営の取った密告自体は“神戸あさひの炎上”と同じだ。
ネットワーク上での発信を行い、特定の対象を標的にした疑惑の煙を立てて、槍玉に挙げる。
方舟と海賊の敵対関係は、さとうがガムテとの対談の際に聞き出している。
あの密告もまた方舟に対する一種の削りである可能性は高いと考えた。
例え確証が無くとも、“その可能性を提示する”だけで十分に警戒の目を向けさせることが出来るからだ。

女剣士のセイバーが“全員手を取り合う未来”を陣営の看板として提示してきたのも、恐らくはそこが大きい。
彼女達は初めから対話を掲げていたというより、あの密告によってそうせざるを得なくなったのではないか。

脱出路線の継続か、聖杯狙いへの転向か―――その後の現実的な対応はともあれ。
彼らはまず“あの密告”で浮上した疑念を打ち消す指針を示さなくてはならないのだ。
そうでなければ、彼らは“実態は不明だが最優先で叩かねばならない陣営”というレッテルを貼られ続けるのだから。
そして脱出に伴う残存参加者の抹消という噂が立った以上、方舟はそれに対する自分達の誠意も示さねばならない。

この聖杯戦争において、最も消耗戦と耐久戦を強いられる陣営があるとすれば。
それは間違いなく、方舟組である。
ガンヴォルトは己の見解を導き出す。

結果の是非に関わらず、彼らは一旦“どの陣営とも対話をする”というスタンスを取る必要がある。
ただ敵を排除して勝ち残ればいい他の陣営とは異なり、理想や誠意のために彼らは長期戦のリスクを引き受けなければならない。
必ずしも戦う必要はなくとも、戦争が続く限りは粘り抜く必要はある―――そして肝心の脱出計画が本当に機能するものであるかも怪しい。
仮に聖杯を狙う方針に切り替えたとしても、最初から交戦を目的としていた他の陣営に対して初動は確実に遅れる。

セイバー達と連絡先は交換し合った。
方舟組への連絡先と、松坂さとうへの連絡先。
互いのコネクションは作った。
“海賊”のような脅威と対峙する際、場合によっては連携や共闘を行うために。
その為にも、皮下真や青龍のライダーに関する情報共有も済ませた。

その上でさとう達は、“方舟”には乗らない。
ただ彼らに迎合する訳にはいかなかったし、その旨も女剣士のセイバー達に伝えた。

松坂さとうには、聖杯を求める理由がある。
そして今後の陣営全体の方針展開があったとしても、リスクが大きすぎる。
長期戦は必至になり、マスターが戦線に巻き込まれる余地は大きくなるのだから。
博打のような方針にさとうを巻き込む訳には行かないし、さとう自身も念話で方舟組のリスクを認知していた。

だからこそ、思う。
そうまでして、何故彼らはその道を進むのか。

方舟側の“対話”というスタンスが、海賊側の密告によって必要に迫られたものだとしても。
彼らには密告の内容自体を否定することも可能だったはずだ。
あれはデマであり、寧ろ海賊側が真偽不明の情報によって盤面を撹乱している―――そんな風に海賊側への中傷として返すことも出来たはずだった。

しかし方舟は、敢えてそれを否定しなかった。
寧ろ脱出計画も含めて真正面から肯定し、その上であの指針を示してきたのだ。
我々は脱出を目的とするが、貴方達の想いを決して蔑ろにはしない。
そう伝えるように、彼らはあの返信を送っていた。
まるで自ら苦難の道を選び取ったかのように。


「貴方ならば、分かっているはずだ」


それ故に、ガンヴォルトは問う。
満身創痍の佇まいでありながら、手練であることが一目で伝わってくる女剣士に対し。
彼女らの願いに協力することを決意した、その想いを。


「その道を進むことで、如何なる苦難を背負うことになるのかを」


“理想”という、茨の道。
ただの少女達が貫くためには、相応の壁が立ちはだかる。
多くの痛みを背負うかもしれない。
多くの悲しみを背負うかもしれない。
それを止めることも、諫めることも、きっと出来たはずであり。
それでも尚、この女剣士はその真摯な祈りに手を貸すことを選んでいた。


「その上で……どうして“理想”を求める」


“理想”に寄り添おうとする彼女に。
そんな疑問を投げかける。
それは、方舟への“疑念”ではなく。
彼女達が進む苦難を案じるような想いから吐き出された言葉だった。

理想を貫く。正しいと信じた道を行く。
それは決して報われるものとは限らないと。
ガンヴォルトという英霊は、誰よりも知っていた。

ガンヴォルトは、ふいに視線を動かす。
先程まで交戦していた、月鬼のセイバー。
黒死牟は、何も言わずに控えている。
その身に闘志を宿らせながらも。
あくまでこの場を女剣士のセイバーに任せると言わんばかりに。
彼はただ、沈黙を貫いている。


「先に断っておくけれど」


それから、ほんの僅かに間を置いて。
やがて、女剣士が口を開く。


「私は“人斬り”に過ぎない」


彼女達の“理想”は素晴らしくとも。
自分はあくまで、ただの剣客でしかない。
己の身の程は、弁えている。
予めそう伝えるように、女剣士は呟く。
その一言に―――ガンヴォルトは、奇妙な感覚を抱く。


「この身を血漿で穢した、一振りの刃。
 人を殺める術を研ぎ澄ませた、修羅道の士。
 剣の道を極めるなんてのは、そんなもの」


どこか自嘲するように呟く女剣士。
その姿に対し、ふいに懐かしさのような思いが過る。

己を蔑み、嘲りながら。
微かな希望へと、手を伸ばして。
求めるものを掴めずに、彷徨い続けた。
何も得られず、何も残せなかった。
そんな生前の己自身を、ガンヴォルトは追憶する。

女剣士のセイバーは、飄々と佇む。
その凛とした面持ちの裏側には。
ある意味で、自分と通じるものが秘められているのかもしれないと。
ガンヴォルトは、ふいに思う。
一迅の雷霆。それ以上でもそれ以下でもなく、ただの暴威として後世に語り継がれたかもしれない。
そんな己の恐怖と、彼女の自認が、何処かで重なる。


「けどね」


しかし、それでも。
今のガンヴォルトの掌には、“希望”が残されている。
そして――――それは、女剣士にとってと同様だった。
そう伝えるかのように、彼女は言葉を続ける。


「私を頼ってくれた“小さな旅人”が、奇跡を追い求めてた」


女剣士は、いつしか。
自嘲するような表情を、静かな微笑みへと変えていた。


「ただの女の子達が、信じるものを直向きに貫こうとしてた」


古手梨花。283の少女達。
信義を貫き、誠意を胸に抱き。
矜持の為に、彼女達は奇跡を追い求める。
突き付けられた運命と向き合い、それでも最善の道を模索し続けている。
例え如何なる結果を迎えようと、“納得”を掴み取るために。

そんな少女達に、宮本武蔵は敬意を払う。
懐かしさと眩しさを、確かに感じながら。
女剣士は、穏やかに微笑む。


「だったら―――そんな想いを守る“正義の味方”くらいには、なるべきでしょ?」


――――そう告げる彼女の脳裏。
浮かんでいたのは、かつて旅の中で出会った少女。
自らに“正義の味方”という道標を与えてくれた存在。
あるべき世界を求めて、宮本武蔵の傍に並び立っていた、“カルデアのマスター”。
長い旅を経て、その記憶は今もなお剣士の魂に焼き付いていた。


「……貴方も“そういうもの”を背負ってるのは解る」


そして、武蔵は呟く。
眼の前のガンヴォルトの本質を、見抜いていたかのように。


「険しい顔だけど――――慈しい眼をしているものね」


彼女のそんな言葉に。
ガンヴォルトは、思わず不意を突かれた。

思いもしなかった言葉を前にして。
その脳裏に、記憶が蘇る。
自らを信じてくれた、一人の少女のことを。
この聖杯戦争で出会い。かつて何も成し得なかった雷霆を、真っ直ぐに選び取ってくれた相手。
“貴方だから信じられる”と最期に伝えてくれた、愛おしき翼。
飛騨しょうこの顔が、ふいに過ぎった。


「貴方を否定はしない。例え私達と道を分かつとしても……互いに“貫くべきこと”を選んだだけ。そうでしょう?」


それ故に、ガンヴォルトは思う。
“貴方も、そういうものを背負ってる”。
そう告げた彼女の言う通りである、と。
自分も、このセイバーも―――何かを背負いながら、前へと進んでいる。

だからこそ、いずれ道を分かつとしても。
互いに受け入れ合うことが出来るのだと。
相手に向き合うことには意味があるのだと。
そこに方舟の望む“納得”があると、彼女はその佇まいで訴え掛ける。


「だから、恨みっこなしよ」


ニッと爽やかに笑みを浮かべる女剣士。
彼女のその顔を見て、ガンヴォルトもまた仄かに表情が綻ぶ。


「……セイバー」


何処か、清々しさを心に抱きながら。
ガンヴォルトは言葉を紡ぐ。


「ありがとう。どうか、無事で」
「そっちこそ。御武運を」


そして、“雷霆”と“方舟”は背を向け合う。
互いにそれぞれの道を歩むことを約束しながら。
その上で、各々の進む道を見届ける。
どうか、祝福があるように―――共にそう祈るかのように。

ガンヴォルトが、その場から駆け出す直前。
彼は、ふいに振り返った。
女剣士のセイバー、宮本武蔵。
別れる前に、彼女の姿を横目で視た。

彼女が背を向けて、駆け出すとき。
淡い花弁のような“魔力”が。
ほんの一瞬、溢れ出たように見えた。


◆◇◆◇


――――道を分かつならば。
――――躊躇うべきではない。
――――禍の芽は、摘むべきだ。

そんな風に、忠告することも出来た筈だった。
雷霆のアーチャー。先の交戦で、相応の手練であることは理解した。
例え利害の一致する余地があるとしても。
後々に道を分かつことが明白なれば、まだ余力を残している今の内に敵を排除すべきだと。
その眼を開きし“融陽の鬼”―――“黒死牟”は訝しむ。

されど、彼はその顛末を見送った。
二刀のセイバーと雷霆のアーチャー。
両者の遣り取りに口を挟むこともなく、その着地を無言で見届けていた。

その眼に映る、空の色。
誰もが同じ景色を見ているとは、限らない。
心も同じ―――交わり合うとは、限らない。
されど、それは決して悲嘆に値することではなく。
それぞれの見つめる世界があり、黒死牟がその“朝”を迎えたことには意味があると。
彼のマスターである少女、幽谷霧子は伝えていた。

かつて、妄執と嫉妬に狂い―――黒死牟は、弟である縁壱と袂を分かった。
長きに渡る歪みの果てに、得るものは一つとして無く。
されど、この界聖杯という舞台で、兄弟は再び引き合った。
その身を灼かれる炎獄の再演。
終わりの見えない閉塞の再開。
そんな未来すらも在り得た中で、ひとつの結末を迎えた。

例え、道は違えども。
それでも、向き合うことに意味はあると。
対峙の果てに、交わり合うものが存在すると。
そう信じる“方舟”の姿に、黒死牟は想起した。
本来辿るはずの無かった―――朝日の中で迎えた、縁壱と己の顛末を。

そして、もう一つ。
彼が武蔵に忠言をしなかった理由。
雷霆を仕留めるべきだと、告げなかった意味。
その答えは、黒死牟自身も予想をしなかった事柄であり。
しかし――――それ以外に、導き出せる理屈が存在しない。
故に彼は、見つめざるを得なかった。


この場に、幽谷霧子が居たならば。
あの女剣士を止めることは無かっただろう。


ただ、それだけの理由だった。
黒死牟はあの場で、確かに“あの少女”を脳裏に浮かべていた。
そして彼女の存在が、黒死牟を制止していることを。
彼自身が、確かに“気付いていた”。

黒死牟は、戸惑いながらも。
不思議と、動揺は無かった。
そんな筈はないと、否定する気にもならなかった。
まるでその事実を、受け入れるかのように。
だが、今は思案に耽っている時ではない。


「――――“二刀”」


渦巻く感情を、隅に置き。
黒死牟が、武蔵に呼びかける。
武蔵は彼の方へと視線を向けた。


「……あの“葉桜”の、気配がする」


続けて、黒死牟が告げる。
探し人の存在を、彼は察知した。

複数のビルの影。
その隙間に、“異質な気配”を感じ取った。
人間や英霊。そしてNPCとも一線を画す、混ざり物の匂い。
その機敏な感覚を以て、黒死牟はそれを捉えた。
あの“虹花”と呼ばれた者達―――その気配だった。

その一言を聞いて、武蔵は迷うことはなかった。
黒死牟の示す方向へと、共に跳躍していく。
二人の侍が並び、共に進んでいく。
言葉を交わすことはなく―――しかし。
互いに、違和感があった。

宮本武蔵の肉体を蝕む病毒。
機凱種より排出された残穢。
霊骸による浸食が、“抑制”されている。

それを黒死牟は、察知しており。
そして―――彼女自身もまた、薄々感じ取っていた。

朝を迎え、瞼を開きし“侍”は。
桜の花弁を、その眼に捉えた。
“二刀の女剣士”の肉体から溢れ出る、その破片を。
彼は、確かに見つめていた。


◆◇◆◇


きれいな髪の色だね。
まるで、桜みたい。

クラスの女の子とか。
付き合った男の子とか。
バイト先の同僚とか。
色んな人から、そう言われた。
そんな風に褒められたことが、何度があった。

かつての彼女―――松坂さとうは。
それらの言葉に“嬉しさ”を感じたことは無かった。
神戸しお以外の人間に、価値なんて見出していなかったから。
この髪を見ていると、ずっと忌み嫌っていた“叔母さん”との繋がりを思い起こすから。

―――今は、どうなのだろう。

廃墟の一室で、彼女は想いに耽る。
方舟との遣り取りを済ませた“従者”の帰還を待ちながら。
ただ呆然と、虚空を見つめている。

―――しょーこちゃんにも。
―――褒められたことがあった。
―――きれいな髪だね、って。
―――あの頃は、何も感じなかったけれど。

今の自分は、どう思うのだろう。
そんな感情が過ぎった、その矢先。


花弁が、舞った。
淡い色彩の、断片が。
通り過ぎていった。


真夏には似つかわしくない、桜吹雪。
桃色の欠片達が、風に乗って。
少女の周囲を、吹き抜けていく。

うだるような暑さの季節で。
廃墟の屋内であるにも関わらず。
その花弁は、姿を現した。

さとうは思わず、その場から立ち上がった。
警戒に身構えるように。
何かを察したかのように。
風の吹く方を、じっと見据える。

自分の髪色と溶け込むような、桜色の風。
松坂さとうは、ただそれを見つめていた。
手のひらに纏わりついた、一欠片の花弁。
その淡い色彩に、ほんの一瞬だけ視線を落とす。

誰もが崇め。誰もが愛おしみ。
誰もが、それに目を奪われていく。
その美しさに、一瞬だけ心を囚われそうになる。
しかしさとうは、花弁をそっと振り払う。
この手の中にある麗しさが、毒であることを悟ったように。
彼女はただ、息を呑むように身構える。


「――――よぉ、お嬢ちゃん」


そこに根付き、咲いていたのは。
儚げに、そして幽鬼のように佇む。
“一本の夜桜”だった。


「“散歩ついで”に、お嬢ちゃんが居ることに気付いたんでな。寄らせて貰ったよ」


その姿を前にして。
さとうは思わず、息を呑む。
桜の花びらと共に、突如現れた男。
身体のあちこちに、華が咲いており。
まるで此の世ならざる者であるかのように。
男はただ、不敵に笑みを浮かべ続ける。

全く以て、未知で。
余りにも、異質だった。

ただの人間にしか見えなくとも、鋭利な刃のような気配を纏っていた禪院とも、また違う。
もはや、それは――――人ですら無いかのような。
まるで夜桜そのものがヒトの形を成しているかのような。
余りにと異質な気配を、眼前の男は身に纏っていた。

故にさとうは、思わず身構える。
いつでも懐の刃物を取り出せるように。
そして、仕込んだ“それ”をすぐに摂取できるように。
彼女は、息を整える。


「ウチの“同盟相手”から聞いたぜ。一緒に居た仲間を殺されて、みすみす生き延びちまった奴の話を」


その言葉を聞いて、さとうは気付く。
ほんの暫く前の出来事、霊地を巡る戦線の最中。
突如として立ちはだかった“機凱のアーチャー”と、猗窩座と呼ばれていた“修羅のランサー”。
彼らの襲撃を囮にするように奇襲を仕掛けて、そして飛騨しょうこの命を奪った“眼帯の男”。


「そいつは桜色の髪をした、10代くらいの女の子だとよ」


眼の前の男は、彼らの仲間であると。
松坂さとうは、有りの儘に悟る。
だからこそ、なのかもしれない。
この夜桜の化身に対し、“強い敵意”が芽生えたのは。
そして、男もまた、さとうが何者であるのかを理解していた。


「“海賊”の、皮下真さんだよね」
「そういう君は、松坂さとうちゃん。ガムテ君から聞いたぜ」


夜桜の男―――皮下真の目的は、“ちょっとした偵察”に過ぎなかった。
一度は逃がしたアイを仕留めるつもりはない。
しかし、“利用しない”とは言わない。
万花繚乱によって活性化したソメイニンによって、彼はアイに宿る“葉桜”の残痕を辿った。
方舟の面々が彼女を探しに来ることは読み取れる。
故に皮下はアイを釣り餌として利用し、彼女と接触した者達の存在を遠方から“確認”した。
気配を悟られぬように極限まで気配を殺し、尚且つ“空間転移”によって瞬時に離脱をしながら。

結果として、女剣士のセイバーが健在であることに皮下は満足した。
北条沙都子とアルターエゴ・リンボ。
古手梨花を奴らにぶつける為にも、セイバーが居てもらわなくては困る。
故に皮下は、彼女に手出しすることはなかった。

その“帰り道”に、彼はマスターの気配を察知した。
なんてことはない。拠点に戻る前の、ちょっとした寄り道だ。
そうして皮下は、松坂さとうの元へと姿を現した。


「―――ま、どうせ行く宛も無いんだろ。
これまでの遺恨は抜きにして、こっちに来る気はあるか?
俺は“愛の告白”を振られたばかりでね。人手がありゃあ楽なのは間違いないんだ」


皮下は、もののついでと言わんばかりに“勧誘”をする。
諸々の因縁は一旦隅に置いて、こっちに来ないか―――と。

そしてさとうは、すぐに悟る。
これは、取引ですらないことを。
この問いかけは“ただの気まぐれ”に過ぎない。
要するに―――自分達に降った上で死ぬか、ここで死ぬか。
偶々見かけたから、投げ掛けてみただけ。
皮下が伝えたことは、ただそれだけのことだった。

例え利害関係だとしても、さとうに皮下と組むつもりはなかった。
彼らが神戸しおの属する敵連合と対立する存在であることは、ガムテからの情報提供で把握している。
それに敵連合や方舟とのコネクションを手に入れた今、此処で皮下とも手を組むことにはリスクが生じる。
複数の陣営に取り入り、利害を貪ろうとすれば―――それこそ“二枚舌の蝙蝠”として、警戒の対象になりうる。
故にさとうは、皮下に対処せねばならなかった。

念話での連絡はあった。
アーチャーが戻ってくるまで、数分。
時間を稼がなくては、自分は殺される。


「……うちのキャスターと、しょーこちゃんのアーチャー。
両方引き連れてると言ったら?」


そう理解したさとうは、口を開く。
皮下を牽制するような“嘘”を吐く。


「アーチャーには高ランクの単独行動スキルがある。
 マスターが不在でも、彼はまだ現界を続けていられる」


皮下とは手を組まず、彼を突っ撥ねて。
尚且つ、皮下に手出しさせない理由を絞り出す。
そのために、さとうは言葉を並び立てる。


「私の窮地を察知すれば、彼らはすぐに駆けつけてくる」


冷気のキャスターはまだ健在であり、尚且つ飛騨しょうこのアーチャーも単独行動スキルによって現界を続けている。
彼らは今は偵察の最中であり、すぐにでも戻ってくる。
そんなブラフを伝えることで、さとうは皮下の行動を制止せんとする―――。


「偵察に向かっている二騎のサーヴァント。
 その片方でも戻ってくれば、貴方は―――」
「御託(ハッタリ)で俺を止められるんなら」


だが。
夜桜の男は。
変わらず、笑みを浮かべて。


「苦労はしねぇよな。お嬢ちゃん」


そして、次の瞬間。
さとうの目の前に、皮下が“現れた”。
手を伸ばせば、容易く届く距離。
瞬きの合間に、彼は空間移動をした。


「で、答えは“ノー”ってことだろ?」


顔を上げた。
桜を纏う男が、嘲笑う。
さとうの頬から。
汗が流れ落ちる。

思考を回転させる。
必死に、必死に。
その場を切り抜けるための策を。
何としてでも、絞り出そうとする。


「じゃ、いいわ」


そんなさとうの驚愕をよそに。
皮下は、ふっと笑みを浮かべて。
それを目の当たりにしたさとうは。
窮地を察知したように。
懐から咄嗟に、刃物を取り出そうとして。



「死ね」



瞬間。
風を切る音。
何かが断ち切れる音。
宙を舞う花弁達が、吹き飛び。

そして。
さとうの首筋が、裂けた。

皮膚。筋肉。その先の血管。
肉が切り開かれて、真紅が吹き出る。
溢れる鮮血。流れ落ちる赤。

驚愕と苦悶に表情を歪めて。
少女は、成すすべもなく後ずさる。
首筋を押さえても、血は決して止まらない。

皮下の身体は、何の変化も起こしていない。
開花の能力を行使した訳ではない。
――――ただ、右手を一振りしただけ。
横薙ぎの手刀。そんな単純な攻撃。
それだけで、少女の首を容易く引き裂いた。
横一文字に振るった右手は、血で赤く染まっていた。

それから、間を開けず。
皮下は、“違和感”を覚える。
目を細め、怪訝な表情を浮かべて。
首から血を噴き出す少女を見据える。

――――さして“本気”なんか出さなかったが。
――――少なくとも、“首を刎ねる”つもりでやった。

それが、どうだ。
刎ね飛ばすつもりが、しっかり胴体と繋がっている。
結果としては、首元を掻き切る“程度”で済んでいる。
ソメイニンとの適合を果たし、あらゆる能力が大幅に向上したことを鑑みれば、実に奇妙な事態だった。

つまり、目の前の少女は“一撃を躱した”のだ。
致命傷は避けられなかったとはいえ、咄嗟の瞬発力で即死を免れていた。
夜桜の異能を掌握した皮下の攻撃速度に“反応”してみせる―――常人には不可能な芸当と言わざるを得ない。

やがて、次の瞬間。
肉が蠢くような音が響き。
吹き出ていたはずの血液が。
“止血”されていく。
引き裂かれていた首筋が。
“修復”されていく。

致命傷だった傷口を再生して。
息を整えながら、こちらを睨むさとう。
その姿に、皮下は呆気に取られるも。


「おいおい、女の子が拾い食いか?」


合点が行った。
せせら笑いながら、少女を見据える。


「――――それも“ヤク”と来やがった。最近のガキは荒んでんな」


松坂さとうの目元に。
血液にも似た“赤い紋様”が浮かび上がっていた。
“地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)”。
常人を超人へと引き上げる、禁断の薬物。
砂糖菓子の少女は、一線を飛び越えた。




新宿で百獣海賊団の残党と交戦する、その幾許ほど前の時間。
ミラーピースの欠片を回収したガンヴォルトは、近辺を探索する中で“それ”を見つけた。
彼からの念話を受けたさとうは、思案を経た後に。
「位置を教えてほしい」と、ガンヴォルトに伝えた。
そうしてサーヴァントからの導きを経て、彼女は対面した。


――――神戸あさひ。
その遺体を前にして、砂糖菓子の少女は静かに佇む。


――――“しょーこちゃん”が知ったら。
――――きっと、悲しむだろうな。
彼と対面して、さとうは真っ先にそう感じた。
その亡骸を発見したガンヴォルトも、感情は表に出さずとも、声色からは複雑な想いが滲み出ていた。
しょうこに寄り添っていた彼だからこそ、思うところがあったのだろう。
さとうはただ、そう考える。

息絶えた神戸あさひは、満足げに微笑んでいた。
自らの道程に悔いはなかったと伝えるかのように。
何かを成し遂げたと告げるかのような面持ちで、沈黙をしていた。

あの中央区での離別の後に。
神戸あさひがどのような道を辿り、いかにして最期を迎えたのか。
今のさとうに、それを知る術は無い。
それでも、彼女は思う。

――――しょーこちゃんが、何かを貫いたように。
――――神戸あさひも、何かをやりきったのだろうか。

ふいに、そんな感傷が過る。
結局この少年は、最後まで敵でしかなかった。
飛騨しょうこは彼に思うところがあったとしても、さとうにとっては“神戸しおとの愛を脅かす障害”でしかなかった。
故にあの対峙の時も、彼を切り捨てることに躊躇いはなかったし。
今でも彼を認めているつもりはない。

それでも、少なからず思うところがあるのは。
やはり――――しょうことの離別を経て、寂しさを抱いているからなのだろうか。
さとうは、思いを馳せる。

―――叔母さん。神戸あさひ。
―――そして、しょーこちゃん。
見知った者達と、この世界で出会い続けた。
彼らは皆、自分のもとから去っていった。
遠いところへと、旅立ってしまった。

愛の壁となるのならば、誰かを排除することに躊躇いなどなかった。
だというのに、さとうの胸中には何処か切なさのような思いが込み上げてくる。
何かが終わって、何かが変わりゆく。
そんな現在(いま)への実感を確かめるように、彼女は胸に手を当てる。

静かに、深呼吸をする。
浮遊していく感情を、落ち着かせていく。
そして、思考を切り替えた。

あさひとの接触は、ごく僅かな時間だけだったが。
彼の身には明らかな“異変”が発生していた。

アスファルトを打ち砕くほどの常人離れした身体能力を発揮して。
あのキャスターに身体を弄られながら、異常な速度での自己再生を果たしていた。

人間の領域を超えたその能力は、明らかに“外付け”によって得られた異能であり。
薬物か何かによる効能ではないか、というのがキャスターの見解だった。

彼の協力者であった幼狂―――“ガムテ”もまた、人知を超えた瞬発力を発揮していたように。
その効果は、恐らく多少のリスクさえ引き受ければ“誰でも得られるもの”なのではないか。
そう考えた彼女は、神戸あさひの遺体を物色した。
キャスターの見立て通りならば、彼が“それ”を持ち合わせている筈だから。

そして、さとうは。
“極道”を“超人”へと昇華させた力。
“禁断の果実”を、その懐から見つけた。




“地獄の回数券(ヘルズクーポン)”。
その力は、常人である松坂さとうを一時的に超人へと引き上げた。

殺意を察知した時点で、口内に仕込んだ薬物を迷わず摂取したこと。
皮下が攻撃を行うタイミングに対し、殆ど直感と偶然で動作を合わせられたこと。
そのまま躊躇のない瞬発的行動によって、斬首による即死を間一髪で躱したこと。
例え首筋を掻き切られようと―――薬物の力があれば、自己治癒によって耐え切れること。

それら複数の要因が、奇跡的に重なり合い。
普段ならば皮下の攻撃を凌ぎようも無かった中で、さとうは致命傷を回避してみせた。

息を整えながら、さとうは刃物を構える。
一振りの短刀(ドス)。可憐な少女には似つかわしくない凶器。
さとうが“割れた子供達”の遺体から回収したそれを、皮下は鼻で笑う。


「――――で、どうする?」


不敵な笑みと共に、殺意を滲ませる。
“地獄への回数券”。それが何だというのか。
そう言わんばかりに、皮下はその右手を突き出す。
己の身に宿る“開花”の権能を、行使せんとする。
次の攻撃で、眼前の少女を仕留めるために。


「……どうするか、って?」


死が、肉薄している。
あと何秒、生き延びられるのか。
それさえも分からぬ筈なのに。
さとうは、怖じることもなく。


「どうもしないよ」


そして、彼女はそう断言する。
次の瞬間に、皮下の意識が全く別の方向へと向けられる。


「もう、時間は稼いだから」


その一言から、間を開けず。
皮下のすぐ傍―――――コンクリートの壁が、砕け散った。
室内の硝子が、衝撃の余波で次々に粉砕する。

鮮明に迸るのは、蒼く輝く閃光。
暴風のような“雷撃”が、怒涛の勢いで皮下へと突撃した。
桜色の花弁が焼かれ、“夜桜”が吹き飛ばされる。
壁面に叩き付けられた皮下は、凄まじい電流によってその身を灼き焦がされる。

瞬速の“稲光”が、宙を舞うように飛び。
やがて少女の直ぐ側へと降り立つ。


「遅れてすまない、さとう」


――――蒼き雷霆。真蒼の騎士。
少女を護るように着地した“英霊”は、凛とした姿で其処に立つ。


「――――サーヴァント、アーチャー。帰還した」
「おかえり。次はもっと早く戻ってきて、ものすごく痛かったから」


マスターと、サーヴァント。
主従が、再び並び立つ。
夜桜の破片が舞う空間の中。
二人は、眼前の敵を見据える。


「ったく……いきなり殺す気かよ」


壁面に寄り掛かるように倒れ込んでいた皮下が。
苦笑いの一言と共に、悠々と立ち上がる。
その口元に、笑みを零しながら。

漆色に染まる皮下の肉体。
虹花の一員“クロサワ”の異能である“液体金属化”。
その力で四肢を金属として咄嗟に硬質化させ、“雷撃”を受け止めたのだ。


「ウチの総督から話は聞いてるぜ、“蒼き雷霆”」


つまり――――小手調べの交錯と言えど。
皮下は、英霊の一撃を“防いでみせた”。
そのことに、ガンヴォルトは少なからず驚愕する。


「“総督”……お前が、あの“青龍のライダー”のマスターか」
「その通り。“旱害”を殺ったのはお前だな?」


その男は、“神秘”で満ちていた。
体中に咲く“桜”を起点に、夥しいほどの魔力に溢れている。
最早その佇まいは、人間とは言えず。
まるで自分と同じサーヴァントと錯覚するほどの気迫を、“皮下真”は纏っていた。


「――――ま、今はサーヴァントまで相手にするつもりはねぇ。
 どうせマスター殺しも不発に終わったんだ。ここは潔く退くとするよ」


英霊を前にしても尚、男は飄々とした態度を崩さず。
何処か戯けるような素振りで右手を軽く振り、眼の前の少女達にそう伝えてくる。


「帰る前に……一つ、聞かせて貰おうかな」


さとう達が、何も言わずに身構える中で。
桜の花を靡かせながら、皮下は更に口を開く。


◆◇◆◇


『私は、ただ』
『私は、ただ』

『幸せに生きたいだけ』
『穏やかに生きたいだけ』

『繰り返される、輪廻の果てに』
『忌まわしき、悪夢の果てに』

『私は、運命を乗り越えたい』
『私は、呪縛を振り払いたい』

『大好きな仲間との、何気ない未来』
『誰にも弄ばれることのない、安らかな平穏』

『欲するのは、それだけ』
『求めるのは、それだけ』

『百余年の惨劇を、私は打ち破った』
『百余年の閉塞は、まだ続いている』

『だから』
『だから』

『始めましょう』
『終わらせましょう』

『この空の続く先にある、奇跡の朝を』
『桜のように崇められる、絶望の夜を』


◆◇◆◇


意識と記憶が、混濁する。
過去。現在。遥か昔。ほんの最近。
遠い日々。戦い抜いた一月。
そして、現実と幻想。
全てが綯い交ぜになって。
ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられる。

今の自分が、人のカタチを保っているのか。
今の自分が、人で要られているのか。
それさえも、最早うまく捉えられない。
視界をよぎるのは、桜色の欠片のみ。
美しく鮮やかな花瓣だけが、脳髄に焼き付く。

暗闇の中で、古手梨花は。
ただ、藻搔き続けていた。
体中に迸る熱と激痛。
繰り返される肉体の拒絶反応。
歯を食いしばって、叫び声を噛み殺し。
血走った眼を、虚空へと向ける。

幾百幾千―――繰り返した果てに、彼女は奇跡のカケラを掴み取った。
終わらぬ閉塞を打ち破り、未来を勝ち取ることを成し遂げた。
それから数年を経て、掛け替えのない仲間の手で再び惨劇の輪廻へと放り込まれた。
それでもなお足掻き続けた果てに、この世界へと放逐され。
最早“やり直す”ことさえ叶わぬ中で、その命は風前の灯火と化している。


――――それでも、まだ。
――――この命が、尽きていないのなら。
――――私はまだ、終わっていない。


死が運命だと言うのか。
最早カケラすら掴めないのか。


――――だったら。
――――這いずり回ってでも。
――――腸をぶち撒けてでも。
――――血反吐に塗れてでも。
――――奇跡を、もぎ取ってやる。


宿命なんかに、殺されてたまるか。
それが、古手梨花の出した答え。
此処まで、何のために歩んできた。
此処まで、何のために抗ってきた。
此処まで、何のために信じてきた。
ああ。掴み取るためだ。
同じように、道を進む“仲間”がいるのなら。
尚の事、止まる訳には行かない。

そして、それ故に。北条沙都子。
彼女(しんゆう)とのケジメだけは。
絶対に、付けないといけない。

彼女だけは。絶対に、止めてみせる。
魔女さえも超えて、神になってでも、箱庭を繰り返すというのなら。
だったら――――自分が、相手になってやる。
“喧嘩”をしたいのなら、存分に付き合ってやる。
古手梨花の激情が、鮮烈に咲く。


――――咲いてやる。
――――桜花のように。
――――見せつけてやる。
――――夜桜のように。


修羅の蕾が、花を成す。
それは、奇跡とも呼べる祝福の具現。
死を目前にした魔女の、最期の意地。
たったこれだけの短時間で。
梨花は、その力を引き出してみせた。
その血脈が持つ素養を、燃えゆく命と引き換えに掴み取ってみせた。

ほんの僅かな可能性。
ほんの僅かな奇跡。
そんなものを手繰り寄せて。
そして、その手に掴み取る才。

言うなれば、それこそが。
マスターが、マスターたる所以。
“可能性”と呼ぶべきものなのだろう。
そして。彼女は、こう称される。
――――“奇跡の魔女”と。

その瞳に浮かぶ、淡い紋様。
散華を目前にした“夜桜”が宿った。
百年もの時を彷徨いし魔女。
その鮮烈なる最期を、飾るかのように。
“奈落の桜”が――――咲き誇る。



◆◇◆◇



「俺にはこの“夜桜の血”がある」


そうして、皮下は。
己の身体に咲く、“夜桜”へと触れる。


「見るだけで分かるだろ?こいつは、呪われた力さ」


それは、“一人の女”から授けられた力。
崇められ、利用され、使い潰され。
美しき桜のように佇み、そして静かな平穏を望み続けていた。
そんな儚き華から、皮下はその血を与えられていた。


「俺はこの“祝福”を胸に、聖杯を獲る」


皮下は、噛み締めるように。
何処か愛おしむように。
ほんの微かな微笑みと共に。
ただ、そう呟く。


「さて、お嬢ちゃん。お前には何がある」


そして、皮下は問い掛ける。
無言で身構える少女へと、投げ掛ける。
松坂さとうは、その一言を前にして。
意を決したように、口を開いた。


「――――愛が、ここにある」


その言葉を告げることに。
迷いなど、一欠片もなかった。

始まりは、喪失。
幼くして両親と死別して。
“あの人”のもとで育てられて。
少女は、愛という甘い光を喪った。

十数年もの間。
生まれてから今に至るまで。
その大半の時間を、費やして。
少女はずっと求めて、彷徨い続けた。

この心を満たす、淡い輝き。
それが何処にあるのか、知る由もないまま。
松坂さとうは青い孤独の中で、必死に手を伸ばしてきた。


「愛のために、ずっと生きてきた」


そして、彼女は。
長い長い旅路の果てに。
たった一欠片の“愛”を見つけた。

神戸しお。
彼女への想いに殉じて。
愛のために生きることを決意して。
松坂さとうは、ただ走り抜けた。
例えすべてを失ったとしても。
愛だけは、この手に握り締めたい。
そんな祈りを胸に、彼女は命を使い果たす筈だった。


「愛に、私の答えがあると信じてきた」


しかし、さとうは聖杯に導かれて。
新たな運命を辿ることになった。

―――この世界で、また違う愛を見つけた。
元いた世界では、雨音の中で切り捨てて。
それでも再び出会って、衝突して。
共に過ごしていく中で、さとうは胸の内の想いに気付かされた。

ああ、この甘い世界。
たったひとりの、運命の人。
傍に寄り添ってくれた、親友。
キラキラと輝く、数多の感情。
きっと、どれも私なんだ。
そうして松坂さとうは、胸の内の想いを悟った。


「……やっと、見つけたの」


“誰か”の姿が、脳裏を過ぎった。
愛する人と共に、この世界に別れを告げて。
温もりを分かち合いながら、破滅へと身を委ねて。
それでも最後に、無垢な祈りのために命を捧げた。
愛する人への献身。愛する人への想い。
愛する人に送る、たった一つの言葉。

――――生きて。

そう伝えようとした少女が。
きっと何処かに居たのだろう。
“例え死が分かつとも、私達は永遠”。
そんな最期も、きっと美しいものだった。
そんな結末にも、間違いなく意味はあった。

けれど、今の松坂さとうは。
愛を求めた、孤独な少女は。


「――――生きたい」


例え世界から、否定されようと。
例え誰からも、認められずとも。
それでも、この想いは手放したくない。
心の瓶を満たす、この答えだけは譲れない。
そのために、“奇跡の願望器”が必要だった。


「愛する人と、ずっと一緒に」


傍に寄り添って、共に歩き続けて。
永遠の愛を、隣で分かち合いたい。
世界と断絶することもなく。
世界から逃げることもなく。
ありのままの日々を、二人で愛し合いたい。
それが、少女の答えだった。

それは奉仕でも、犠牲の心でもない。
真の意味で比翼となることを望んだ、“愛の誓い”だった。





《ねえ、アーチャー》

《貴方と組む前に、改めて言っておきたい》

《私は、聖杯がほしい》

《しおちゃんと一緒にいるためには》

《奇跡が、必要なの》

《だって、私達の“幸せ”は……》

《社会や世界から、否定されるものだから》

《逃げるのも、隠れるのも、やりたくない》

《私達は、ただ―――ここにいたい》





そして、この“怪物(おとこ)”は。
皮下真という、一人の亡霊は。
そんな少女の言葉によって。
己の中に、一つの答えを見出す。
己の中に宿るものの正体を、規定する。


「……愛、ね」


皮下は、ぽつりと呟いた。
その言葉を、確かに噛み締めるように。
目を伏せながら、微かに口元を緩ませる。


――――私はあの子の手を取ったんです。
――――あの子は……お日さまですから。


鮮明な記憶が、皮下の脳裏をよぎる。
ほんの数時間ほど前。
彼が始末した“実験体/ハクジャ”が吐き捨てた、あの言葉。
それを耳にした時は、下らない感傷だと嘲笑った。
今だってそう思っている。
幻想に絆され、信じるべき相手を間違えた、哀れな奴らだと。

尤も、それでも。
奴らが何のために“馬鹿な真似”をしたのか。
その意味だけは、今になって理解できた。
人間であれ、化物であれ。
己が見出した“光”のために、前へと進んでいく。

百余年、何のために彷徨ってきたのか。
あの夜桜に、想い焦がれたからだ。
彼女に魅入られ、彼女の望みを叶えたいと思ったからだ。
その感情に、名を付けるとすれば。


“愛”と、呼ぶべきなのだろう。


皮下は、確信する。
砂糖菓子の少女との邂逅によって。
己が存在してきた意味を、遂に悟る。
――――己の比翼。己の憧憬。
たった一人の“彼女”に捧ぐものを。


「ああ―――それが、いい」


全てを喪い、万花の桜を掴んだ果て。
皮下真という男に、新たなる朝が降った。
故に彼は、静かに微笑む。
夢現を微睡み、平穏を祈り続けた、あの“夜桜”のように。

全てを乗り越えて。
やがて最後に残るもの。
それは――――愛だ。

砂糖菓子の少女、松坂さとう。
夜桜の化身、皮下真。
花弁舞う廃墟で、彼らは共に同じ答えを掴み取る。

愛ゆえに、愛する者の“終幕”を望んだ。
愛ゆえに、愛する者との“永遠”を望んだ。
呪縛を終わらせることに身を捧げた男。
祝福を未来へと紡ぐことを求めた少女。

彼/彼女は、愛のために生きる決意をした。
その胸に抱くもの、その命を満たすものは、同じであれど。
それぞれが目指す道は、断絶している。


「理解したよ。お前は、俺の“敵”だ」


故に、彼は告げる。
松坂さとう。彼女は、己の敵であると。
その言葉は、云うなれば。
自らに“最後の欠片”を与えてくれた少女に対する、最大の賛辞であった。


◆◇◆◇


“虹花”の一員、アイ。
皮下の実験体の、唯一の生き残りであり。
古手梨花や幽谷霧子の想いに触れた、幼き少女だった。

皮下との離別の後、アイは“人探し”を続けていた。
ハクジャやミズキらの顛末を伝えるために。
今の古手梨花の現状を伝えるために。
そして、皮下真のことを伝えるために。
霧子達が身を置くという“方舟”の面々と出会える可能性に懸けていた。

そして彼女は、邂逅する。
その気配を前に、恐る恐ると待ち受けて。
やがて、あのとき見た“霧子のサーヴァント”と“梨花のサーヴァント”であることを察した。
故に彼女は、安堵を覚えて。
建物の影で休息を取っていたアイは、“二人の侍”の前に姿を現す。


「アイ、だったわね。無事で良かった」


アイは、眼の前に佇む女剣豪を視て。
微笑む彼女の顔を、目の当たりにして。


「聞きたいことが、沢山あるの」


驚愕したように、目を見開いた。
あるはずのないものを見たように。
虹花の少女は、動揺する。


「うちの梨花のことに、あなたと一緒に居た人達のこと。
 それに……皮下のことも」


剣士の問いかけを、よそに。
思わず少女は、ぽつりと呟く。


「―――“夜桜”……?」


その一言を前にして。
武蔵は、呆気に取られて。
しかし、その直後に。
自らの中に流れ込む魔力が。
まるで桜の欠片のように、脳裏に迸った。

宮本武蔵の、残された左眼。
その瞳に―――“桜”が咲いていた。
満身創痍の肉体に齎された“祝福”の如く。
一輪の花が、凛として其処に宿っていた。

それは、古手梨花がその呪縛に肉体を蝕まれたように。
宮本武蔵が“呪われし血”に目覚めたことを意味するのではない。

神をも知覚する異種の血脈。
百余年を繰り返した魔女としての神秘。
令呪本来の権能を超えた命令を可能とする、マスターとしての高い素質。

古手梨花が備える複数のイレギュラー的要素が、ソメイニンの大量投与による肉体の変化と結びついた。
急激に浸食されゆく肉体の影響を受け、彼女の体内の魔術回路もまた変化を引き起こしたのだ。
そして激痛と苦悶が迸る拒絶反応の果てに、“魔力の変質”という結果へと至った。

夜桜の血のみに特化し、その肉体を安定させた皮下とは、根本的に異なる。
今の梨花は、混ざり物の“異形”と化している。
その命を凄まじい勢いで蝕み続ける莫大な負荷は、結果として“最後の灯火”と言うべき魔力の性質と出力を引き出した。

夜桜によって変質した、古手梨花の魔力。
それは主従のパスを経由して、宮本武蔵へと流れ込んだ。
その結果、サーヴァントである彼女の霊基にも魔力の影響が及び―――“夜桜の開花情報”に酷似した形で肉体への作用が表れた。

“夜桜の瞳”。
それは、呪われた血に穢された魔力の烙印。
それは、一人の剣豪の新たなる姿への産声。
それは、最期の死合を控える剣豪への祝福。
新免武蔵―――“真打柳桜”。




生き抜け、修羅舞う道。
脈打つ運命、断ち切り。
とこしえにまで刻め。
鮮烈に咲く、万花の想い。
三伏(まなつ)の流桜を。



◆◇◆◇


「“割れた子供達”はくたばった」


花弁混じりの風。
飛び交う桜色の断片。
その中心に立つように。
“夜桜の化身”が、嗤う。


「“峰津院”は玉座から引き摺り下ろされた」


加速する争乱の中。
多くの強者が、散っていった。
競い合い、ぶつかり合い。
この街に爪痕を遺しながら。
次々に、削られていく。


「龍を斬った“義侠の風来坊”も、最早この世にはいない」


そうして繰り返される疲弊と摩耗。
誰もが陣営という基盤に支えられ。
この痛みの中を、必死になって生き永らえている。


「もう終わらせようぜ。こんな戦い」


だが、もはや。
そんな虚しい闘争は、不要だ。
聖杯戦争を“終わらせる”。
夜桜の男は、そう告げる。


「善だの、悪だの、何だっていい。
 地平を越える“方舟”。
 地平を見下ろす“敵(ヴィラン)”。
 地平を喰らい尽くす“神”。
 ああ――――それが何だ。全部クソ食らえさ」


ああ、そうだ。
有象無象が幾ら足掻こうとも。
所詮、全てが無意味だ。


「俺が焦がれた“あの桜”に比べりゃ、何もかも塵に等しい」


彼が魅入られた“永劫の夜桜”。
それに比べれば、何もかもが無価値だ。
皮下は、そう断言してみせる。
そうして彼は、己の感情の意味を悟った。


「だから、俺が全てを捧げる」


そう、愛ゆえに。
その心に、灯が燈される。
地平を蝕み、繚乱する。


「――――始めようぜ。“夜桜事変”だ」


そして、告げる。
砂糖菓子の少女。蒼き雷霆。
眼前の“敵”へと、宣言する。
滅びゆく廃都に、狼煙を上げる。
此処から先は、己の手番だ―――と。

やがて、風が吹き抜け。
皮下真は、陽炎のように姿を消す。
欠片のような花唇が、虚空を舞う中。

松坂さとうとガンヴォルトは、言葉もなく。
ただ、これからの戦いに身構えるように。
“夜桜”が佇んでいた地点を、静かに見据えていた。



【渋谷区・製薬会社ビル内/二日目・朝】

【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、ガンヴォルトと再契約
[令呪]:残り1画
[装備]:“割れた子供達”の短刀
[道具]:最低限の荷物、ヘルズクーポン複数枚
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:しおちゃんと、永遠のハッピーシュガーライフを。
0:……そう、愛だよ。
1:どんな手を使ってでも勝ち残る。
2:皮下真に対する強い警戒。
[備考]
※ガンヴォルト(オルタ)と再契約しました。
※神戸あさひの死体から複数枚のヘルズクーポンを回収しています。

【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】
[状態]:胴体にダメージ(小)、斬撃の傷跡(複数)、疲労(中)、クードス蓄積(現在8騎分)、さとうと再契約、令呪の縛り
[装備]:ダートリーダー
[道具]:なし
[所持金]:札束
[思考・状況]
基本方針:彼女“シアン”の声を、もう一度聞きたい。
0:方舟には与しない。しかし、手を組める場面では共闘する。
1:さとうを護るという、しょうこの願いを護る。今度こそ、必ず。
2:皮下真とライダー(カイドウ)への非常に強い危機感。
[備考]
※"自身のマスター及び敵連合の人員に生命の危機が及ばない、並びに伏黒甚爾が主従に危害を加えない範疇"という条件で、甚爾へ協力する令呪を課されました。
※松坂さとうと再契約しました。
シュヴィ・ドーラとの接触で星杯大戦の記憶が一部流れ込んでいます。
※新宿区に落ちてたミラーピースを回収してます。
※セイバー(宮本武蔵)に松坂さとうへの連絡先を伝えました。
また方舟組の連絡先も受け取りました。
※方舟陣営とどの程度情報を交換し合ったかは後のリレーに御任せします。

[ステータス関連備考]
※クードスの蓄積とミラーピースを介した“遺志の継承”によって霊基が変化しました。
①『鎖環』での能力が限定的に再現されています。
②クードスに関連して解放された能力が『電子の謡精』を除いて自由に発動できます。
これに伴い『グロリアスストライザー』もクードスを消費せず、魔力消費によって行使できるようになりました。
③強化形態への擬似的な変身も可能となりますが、魔力消費が大きいため連続発動は難しいです。
『電子の謡精』による強化形態との差異は現時点では不明です。

【皮下真@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:万花繚乱
[令呪]:残り一画
[装備]:?
[道具]:?
[所持金]:纏まった金額を所持(『葉桜』流通によっては更に利益を得ている可能性も有)
[思考・状況]
基本方針:つぼみの夢を叶える。
0:さあ、始めようぜ。
1:クソ坊主の好きにさせるつもりはない。手始めに対抗策を一つ、だ。
[備考]
※咲耶の行方不明報道と霧子の態度から、咲耶がマスターであったことを推測しています。
※会場の各所に、協力者と彼等が用意した隠れ家を配備しています。掌握している設備としては皮下医院が最大です。
※ハクジャから田中摩美々、七草にちかについての情報と所感を受け取りました。
※峰津院財閥のICカード@デビルサバイバー2、風野灯織と八宮めぐるのスマートフォンを所持しています。
※虹花@夜桜さんちの大作戦 のメンバーの「アオヌマ」は皮下医院付近を監視しています。「アカイ」は星野アイの調査で現世に出ました
※皮下医院の崩壊に伴い「チャチャ」が死亡しました。「アオヌマ」の行方は後続の書き手様にお任せします
※複数の可能性の器の中途喪失とともに聖杯戦争が破綻する情報を得ました。
※キングに持たせた監視カメラから、沙都子と梨花の因縁について大体把握しました。結構ドン引きしています。主に前者に

※『万花繚乱』を習得しました。
夜桜つぼみの血を掌握したことにより、以前までと比べてあらゆる能力値が格段に向上しています。
作中で夜桜百が用いた空間からの消失および出現能力、神秘及び特定の性質を有さない物理攻撃に対する完全な耐性も獲得したようです。
"再生"の開花の他者適用が可能かどうかは後の話にお任せします。


【渋谷区/二日目・朝】

【セイバー(黒死牟)@鬼滅の刃】
[状態]:武装色習得、融陽、陽光克服、???
[装備]:虚哭神去
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明
0:……。
1:私は、お前達が嫌いだ……。
[備考]
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。
記憶・精神の共有は黒死牟の方から拒否しています。
※武装色の覇気を習得しました。
※陽光を克服しました。感覚器が常態より鋭敏になっています。他にも変化が現れている可能性があります。

【セイバー(宮本武蔵)@Fate/Grand Order】
[状態]:“真打柳桜”、ダメージ(大)、霊骸汚染(中)、魔力充実、令呪『リップと、そのサーヴァントの命令に従いなさい』、第三再臨、右眼失明
[装備]:計5振りの刀(数本破損)
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]基本方針:マスターである古手梨花の意向を優先。強い奴を見たら鯉口チャキチャキ
0:―――桜が、咲いている。
1:梨花を助ける。そのために、方舟に与する
2:宿業、両断なく解放、か。
3:アシュレイ・ホライゾンの中にいるヘリオスの存在を認識しました。武蔵ちゃん「アレ斬りたいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。でもアレだしたらダメな奴なのでは????」
4:アルターエゴ・リンボ(蘆屋道満)は斬る。今度こそは逃さない。
※古手梨花との念話は機能していません。
※アーチャー(ガンヴォルト)に方舟組への連絡先を伝えました。
また松坂さとうの連絡先も受け取りました。

※梨花に過剰投与されたソメイニンと梨花自身の素質が作用し、パスを通して流れてくる魔力が変質しています。
影響は以下の通りです。
①瞳が夜桜の“開花”に酷似した形状となり、魔力の出力が向上しています。
②魔力の急激な変質が霊基にも作用し、霊骸の汚染が食い止められています。
③魔力の昂りと呼応することで、魔力が桜の花弁のような形で噴出することがあります。


【中央区・廃墟/二日目・朝】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:夜桜の瞳、右腕に不治(アンリペア)、ソメイニン過剰投与による肉体の変容及び極めて激しい拒絶反応、念話使用不能(不治)
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]
基本方針:生還を目指す。もし無ければ…
0:――――――――――――――――――――
1:沙都子を完膚なきまでに負かして連れ帰る。
2:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。
3:ライダー(アシュレイ・ホライゾン)達と組む。
4:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。
5:櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。
6:戦う事を、恐れはしないわ。
7:私の、勝利条件は……?
[備考]
※ソメイニンを大量に投与されました。
古手家の血筋の影響か即死には至っていませんが、命を脅かす規模の莫大な負荷と肉体変容が進行中です。
皮下の見立てでは半日未満で肉体が崩壊し死に至るとの事です。
※拒絶反応は数時間の内には収まると思われます。
※念話阻害の正体はシュヴィによる外的処置にリップの不治を合わせた物のようです
※瞳に夜桜の紋様が浮かんでいます。“開花”の能力に目覚めているのかは不明です。


時系列順


投下順


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154:死滅回游 松坂さとう 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-
アーチャー(ガンヴォルト(オルタ)) 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-
154:死滅回游 セイバー(黒死牟) 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-
151:業花の帝冠、筺底のエルピス 古手梨花 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-
154:死滅回游 セイバー(宮本武蔵) 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-
151:業花の帝冠、筺底のエルピス 皮下真 160:ひぐらしのなく頃に桜 -桜渡し編-

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最終更新:2023年07月29日 04:17