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  • ひょんなことから女の子
  • ID:7aVR
  • h8OO 1

ひょんなことから女の子

h8OO 1

最終更新:2007年02月24日 02:26

hyon

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管理者のみ編集可
149 名前: >>88のお題 投稿日: 2006/11/26(日) 19:03:26.42 ID:7aVR/h8OO
     クリスマスなんて都市伝説…
     あの頃のオレたちはそう信じていた…
     いつもお互いの孤独を誤魔化し、現実の外気から傷口を守る為に、
     二人で助けあい、クリスマスという困難を鍋パーティーで乗り越えてきた…
     しかし、今年のクリスマスはいつもと違っていた。
     確かにオレのボロアパートの部屋には、友とオレの二人きりしかいない。
     ただ、その『友』はオレの良く知る友ではなかった。
     以前の友の外見とは駆け離れた、華奢で小さな、可愛い女の子だったのである。
     そう、どうやら、共に童貞を守り抜いてきた戦友は、女の子になってしまったらしい。
     まだ鍋の準備もろくにしていない、午後六時にこいつは押し掛けてきた。
     初めはオレも一体何のドッキリか、何のエロゲーかと思ったが、
     とりあえず家に上げて、話を聞いていくうちに、
     この華奢で可愛い女の子はどうやら友らしいと分かったのだ。
     オレの前で一気に喋り上げてしまうと、気が抜けたのか、
     さっきからうつむいて座り込んだまま一言も喋らない。
     とりあえず出してやったお茶にも一口も口をつけていない。
     オレも何と声を掛けていいやら分からず、ただじっと友の顔を見ていた。

151 名前: VIP村人P 投稿日: 2006/11/26(日) 19:15:01.76 ID:7aVR/h8OO
     『じろじろ…見るなよ』
     「あん?」
     この何とも言えぬ沈黙を先に打ち砕いたのは、友だった。
     『どうせ…おまえ…信じてないんだろ…?
     オレが…女になっちゃったなんて…』
     友は相変わらずうつむいたまま、消え入りそうな声でぽつりぽつりと話す。
     大分長くなったように見える、綺麗な黒髪がさらさらと揺れた。
     「そりゃあ…にわかには…信じられんが…」
     そこで友はようやく顔を上げた。
     長めの黒髪。大きく、少し潤んだ目。白く透き通った肌。
     少しばかり幼さを残した、整った顔立ち。
     友は、自嘲的に笑った。
     『…そうだよな…体も…こんなんだし…顔も…今日鏡見たとき、
     オレ、思わず、誰ですか、って言っちゃったもん…
     誰がこんなの…信じるかよって…な…』

153 名前: VIP魔王 投稿日: 2006/11/26(日) 20:05:01.59 ID:7aVR/h8OO
     気付くと、友の目からは涙がこぼれていた。
     それは初めて見る友の涙であり、初めて間近で見る女の涙だった。
     何となく、胸がズキンとした。
     女の涙をこんな近くで見るのは初めてのことだったが、
     女を泣かせるということがこんなに心にくるものだとは思わなかった。
     何とかしてやろうと思った。藁をも掴む想いでオレに助けを求めた友に、
     ちゃんと浮き輪を投げつけてやろうと思ったのだ。
     「なあ…お前さ、よく考えてみろよ…」
     『…なに…?』
     「お前は、今、童貞じゃないんだぞ」
     『…え?』
     「処女だ、しかも今日のこのクリスマスは、初めて異性と過ごすクリスマスだ、
     オレもお前も。これ、スゲーと思わないか?特したような気分にならないか?」
     友は呆然とした顔で、ぽかんと口を開けてオレを見ている。
     怒らしてしまったのか…?
     『…バカ…』
     友の口から放たれたのは、確かにオレに対する罵倒だった。
     罵倒だったが、しかし、その言葉とは裏腹に友の顔は笑顔だった。
     『…ふふ、あはは…やっぱりおまえバカだよ…普通女の子に向かって処女とか言うかよ?』
     「中身は20歳真性童貞フリーターだろうが、入れ物が違うだけだ」
     『バカヤロー…中身も外見も20歳真性童貞フリーターのおまえとは違うよ』
     「さて…ではクソガキが泣き止んだところで、鍋の準備しようか、具材買ってくる」
     『え?おまえ具材買ってないの?』
     「しょうがないだろ、おまえが予定よりずっと早く来たんだから…」

155 名前: VIP魔王 投稿日: 2006/11/26(日) 20:33:21.99 ID:7aVR/h8OO
     コートに袖を通し、オレは手早く買い出しの準備をする。
     財布の中身を確認してからポケットに突っ込み、
     外に止めてある自転車のカギを取り出す。マフラーを巻き、ニット帽を被る。
     「じゃ、買い出し行ってくるからよ、おるすばんよろしく」
     そう言って玄関に向かいかけたオレの裾に、緩い力が加わった。
     振り返ると友が、コートの裾を掴んでいる。
     『あのさ、オレも行くよ。クリスマスに独りぼっちでこんな部屋にいるのさびしーからさ』
     そう言うと友はへへ、と笑い、裾から手を離して立ち上がった。
     心臓が大きく波打つ。顔が紅潮していくのがわかる。
     おいおい、まさか、オレは、友に『異性』を感じてしまったのか。
     上目使いで見上げながら裾を掴むなんて…反則だ。
     「分かった、ついてこいよ」
     『うん』
     友は丁寧に畳んであったPコートを広げ、袖を通す。
     以前はジャストサイズであったはずのコートも、すっかりぶかぶかになってしまっている。
     ジーンズもセーターもぶかぶかで、凄く奇妙な感じになっていた。
     しかし、それを少しばかり、ほんの少しばかり、オレは可愛いと思ってしまった。
     『よし、準備完了。行こ』
     「お前、クリスマスプレゼントに服買ってやろうか?」
     『いらねーよ、バカ』
     ドアを開けると、冷たい12月の風が容赦なく吹き付けていた。

157 名前: VIP魔王 投稿日: 2006/11/26(日) 20:53:11.69 ID:7aVR/h8OO
     『おまえ、このクソ寒いのに、自転車乗るのか…?』
     カギをはめ、自転車に跨ろうとしたオレに友が言う。
     「スーパーまで歩いたら時間かかるからな。さあ、後ろに乗るんだ」
     『ハタチにもなって交通手段チャリかよ、かっこわりーな…
     二人乗りなんて…高校卒業して以来だよ…』
     しぶしぶ文句を言いながら、友が後ろに乗る。
     そうして、オレの肩に両手を乗せ、静かに体重を預けた。
     いや…しかし…これは…
     「お前…結構…胸あるのな…」
     軽く、背中に当たる胸の感触。メチャクチャ柔らかい。
     胸だけでなく、全部が柔らかい。なんだこれは。
     『…ヘンタイ』
     「っしゃあー!!みなぎってきたあああ!」
     ペダルに足を乗せ、一気に漕ぎ出す。唸れ、オレのローリング・サンダー・レビュー号。
     『ちょっ、わ、速いよ、速い、んっ、うわっ、転ぶよっ』
     友が肩から手を離し、オレの腰に手を回す。そして体をぴったりと密着させる。
     「ああああああ!当たってるぜ!グレート!」
     『おっ、おまえ、最初から、それが狙いかあっ!
     下ろせー!自分で歩く!下ろせえええ!』
     「だが断る!」
     『ああ、もうっ、バカヤロー!』
     「うわははははははは!耳をすませばサイコオオオオオ!」
     『もうっ…ったく…バカ…ホンットに…バカ…』

160 名前: VIP遊び人 投稿日: 2006/11/26(日) 21:20:23.51 ID:7aVR/h8OO
     スーパーの自動ドアが静かに開く。
     先程殴られた右頬がまだヒリヒリと痛む。
     しかも殴ったのはパーでなく、グーだ。いくら女と言えども応える。
     「何も殴ることないだろ、ちょっとハシャギすぎただけで」
     『人の胸無理矢理押し付けさせといて!バカ!ヘンタイ!スケベ!童貞!』
     「自転車乗るとテンション上がっちゃうんだよ…
     良いじゃねーかよ胸くらい…お前も『あててんのよ』とか言ってみたかったろ?」
     『言いたくないよ!何だよ、それ!』
     「しょうがないだろ…お前みたいに可愛い女の子乗せたの初めてなんだし…」
     『…~~っ!も、もう知らないっ!勝手にしろ!…帰りは安全運転だからな?』
     「善処する」

     『さーて、何を買いましょうか』
     買い物カゴを下げた友が、店内を見て回る。
     その姿は、まるでおつかいに来た中学生のようだ。
     「あの…何でオレは二回も殴られたんですか?」
     『お前が反省してないから』
     「このツンデレが」
     『黙れヘンタイ』
     「お母さんこれ買って、遊戯王カード」
     『死ね、あ、卵安ーい。ねえ、卵買っていい?』
     「何でも好きなモン買えよ、今日はオレの奢りだぜハニー」
     『うーん…肉どうしよっかなあ…野菜はやっぱたくさんいるし…』
     「エリンギと椎茸とマイタケ買って」
     『キノコそんなにいらない、あとオレ椎茸キライ』
     「椎茸もお前のこと嫌いだけどな」
     『ん……じゃ…お…おまえは…?』
     「何か言った?」
     『な、何でもないっ!何も言ってないからなっ!』

176 名前: VIP神父 投稿日: 2006/11/26(日) 22:39:54.86 ID:7aVR/h8OO
     「…お会計12800円になりまーす」
     「随分買ったな…」
     『ああ…買ったな…』
     「っておいおい、アンタ、何をしてんだい」
     『?オレも少し払うよ、おまえ結構生活きついんだろ?』
     「言っただろ、オレの奢りだって、女の子にゃあ払わせないぜ」
     『…でも…』
     「オレが良いって言ってんだ、お前はただゴチになっときゃいいんだよ」
     『…ん…ありがと…』
     「だからその代わり、また帰りに背中に胸を…」
     『殺すぞ』

     具材や酒やつまみで一杯のビニール袋を籠に乗せる。
     それだけでは足りないので、自転車の後ろの荷台に二つ目の袋をしっかりと結わえつける。
     先程三回目に殴られたみぞおちがズキズキと痛む。
     オレは自転車を押しながら、ゆっくり友に合わせて歩く。
     『残念だったな、おまえの耳をすませば作戦は失敗に終わった』
     「へっ、ホンットに嫌がってることなら無理矢理やらねえよ、童貞なめんな」
     『嘘でしょ』
     「嘘だよ」
     『…ん…でも…その……楽しかったよ?』
     「何か言った?」
     『っ…ばかやろぉ…』
     「嘘だよ、ちゃんと聞いてるよ、今度またやろうか」
     オレがそう言うと、友は一瞬驚いた顔をして、それから綺麗に笑った。
     友は前へ走り出し、オレの正面で振り返ると、手を後ろで組み、満面の笑みで言った。
     『ハラ減ったなっ。早く鍋食べよう、鍋!』
     その無邪気な笑顔の余りの可愛さに、オレは冗談も言えず、
     ただ「おう」と返すのがやっとだった。

259 名前: 鍋パーティー続き 投稿日: 2006/11/27(月) 18:44:57.40 ID:3Ok6nhc6O
     鍋が湯気を上げて、グツグツと煮たっている。
     オレは鍋の中の肉を心待ちにしながら、
     まだかまだかまだかとじっと待ち構えていた。
     『そろそろ、いいかな?』
     どうやら心の内は友も同じらしく、ニコニコしながらオレに尋ねる。
     しかし…あれだ。表情や仕草がどんどん女の子らしく、可愛くなっているのは気のせいだろうか?
     たった数時間のあいだに、友は中身もずいぶん変わってしまったように思える。
     部屋に押し掛けてきたばかりの友は、外見は可愛くなったとはいえ、
     やはり表情や仕草から、『男』の雰囲気や昔の『面影』は微かに感じ取れた。
     だが、今はどうだろう。友はもはや、『男』の欠片もない。
     どんどんどんどん、友は『女』に近付いている気がする。
     そして、初めは戸惑っていたオレも、もはや友に異性を感じないわけにはいかなかった。
     女の子特有の何とも言えぬ良い香り、抱き締めたくなるような小ささ、
     力を入れたら折れてしまいそうな華奢な体、意外に大きかった柔らかい胸。
     オレの理性は少しずつガリガリと削り取られている。
     今こうしている瞬間も。
     『ねえ』
     「あっ!?」
     友が身を乗り出し、オレの目を覗きこんでいる。
     『どうしたんだよ?早く食べようよ?』
     「いや、何でもない、ちょっと物思いに耽ってた」
     『ん、じゃ、恒例の乾杯しよっか』
     「おう、では今年も孤独なクリスマスと」
     『オレたちの童貞に――まあ童貞はおまえだけだけど、乾杯』
     「もはや童貞でなく処女なお前に乾杯」

274 名前: VIP神父 投稿日: 2006/11/27(月) 21:08:35.44 ID:3Ok6nhc6O
     乾杯のあと、缶ビールをぐいっと一気に飲む。
     うまい。最高にイカしてる。三分の二ばかりを一気に飲み干してしまう。
     しかし、友のほうはと言うと、オレと同じように勢い良く缶を傾けたは良かったが、
     すぐに口を離すと、ごほごほと咳き込んでしまった。
     『…っか…ぁ…なんだ…これ…?何か、ニガイ、ヘンな味する…』
     「何言ってんだよ、普通のビールだろ、それ貸してみろよ」
     『…え…あ…』
     「んー、いや、別に普通じゃんかよ。
     体だけじゃなく、味覚もお子様になっちゃったんじゃねえの?」
     『…ぅ…///』
     「どうしたんだよ、そんな顔真っ赤にして、アルコールの回り早いな」
     『…そ…その…それ…オレの…びーる…』
     「何だよ、回し飲みくらい前からしてたろ、
     何を気にしてんだお前……」
     て…これは、か、か、間接キスってやつじゃないかよ!
     いつものノリで何をやらかしてんだよオレは!確かに中身は友だが外側は…
     しかし、友も何でそんな恥じらってんだよ!昔普通にやってたろ!
     そこまで女の子になっちゃったのかよ!?
     『ん…そだよな…ま、前からやってたよな…
     …ぅ…ごめ…忘れて…』
     だぼだぼのセーターのかかった手をフルフルと振りながら、
     うつむいて小さな声で言う友。
     なんという可愛さ…一目見た瞬間萌えてしまった
     この友は間違いなく美少女
     「いや…その…気にすんなよ、鍋食おうぜ、鍋、酒はゆっくり飲めな」
     『うん…』
     (絵:長目)

282 名前: VIP神父 投稿日: 2006/11/27(月) 21:33:43.96 ID:3Ok6nhc6O
     話題は尽きず、酒は進み、具材は次々と投下される。
     オレたちはいろいろな事を話した。
     学生時代の思い出話、昔やったバカな奇行、
     最近観た映画や買ったアルバム…何でも話した。
     さっきの間接キス事件が尾を引いたのか、初めは無口だった友も、
     オレがガンガン話題を振るうちに、また飲めないなりに酒をチビチビ飲むうちに、
     次第にいろいろ喋るようになり、アルコールのおかげで饒舌になっていった。
     『おまえ、肉ばっか取りすぎだよ、野菜も採れ』
     「いや、お前が見てないうちに結構食べてるから」
     『あはは、うそつけよぉ~』
     「だってお前が椎茸買ってくんないだもん、そりゃ肉食うしかないって」
     『ふふ、どんだけしーたけ好きなんだよ、おまえ』
     等と下らない会話を交し…ひたすら鍋をつつき…
     ときにTVをつけては…ひたすら好き放題に突っ込みまくり…
     そしてしんしんと…夜は更けていった。
     気付けば鍋は空になり、オレたちは酒をチビチビやりながら、
     酒をつまみ、ぼつりぼつりと他愛ない雑談をしていた。
     『なあ、おまえ彼女欲しいとか…思わないのか?』
     「愚問を、いつも考えてることだよ、そんなの。
     まあ、いくら欲しくても、彼女なんて出来ないけどな」
     『もう一生それでいーじゃねーかぁ。オレも行けるとこまで付き合うよ』
     「ハハ…オレのスピードについてこれるかな?
     そういや、お前、どうすんだ?これから」
     『…ん…これから、って?』

18 名前: 鍋パーティー 続き 投稿日: 2006/11/29(水) 22:50:13.20 ID:D7u7sxheO
     「それは、恋ってやつじゃないか?」
     冗談のつもりだった。
     いつものように、酷い言葉で罵倒してくると思った。
     だが…友の反応は意外なものだった。
     友は一瞬蒼白になったあと、うつむいて、涙をポロポロ流し始めたのだ。「お、おい、どうしたんだよ、どっか痛むのか?」
     『…っく、ひっ…ぐ、ふぇっ…なっ…なんで…だよ…』
     「え?」
     『…きょう…なんか…ずっとヘンなんだ…
     はじめはさ…おまえ、ただの友達だとしか思わなかったんだ…』
     友は涙をセーターの袖で拭き、苦しそうに息を詰まらせながら喋る。
     オレは友の泣き顔を半ばぼんやりと見つめながら、
     どうして友は泣くのだろうと思っていた。
     『今日…おまえと一緒にいて…オレ…ドキドキしたんだよ。
     はじめは何でだろ…ってずっと思ってたよ。
     でも、げーいんは、ひとつしか、なかった。おまえのせいなんだ。
     オレ、気がついたら…おまえのこと…好きになってたんだ…
     だめだって、わかってるよ。おかしいって、思うよ。
     女になった途端、今まで普通にしてた友達好きになるなんて。
     理性では、歯止め掛けてた。だけど、止まんなかった。
     はじめは、おまえのこと、同性として、オトコの視点で見れてた。
     だけど気がついたら…オンナだった。
     もう、おまえのこと、異性にしか、みれなかった…』
     そこまでつっかえながらも、一気に喋ってしまうと、
     力が抜けたのか、友はうつむきひたすら涙した。どう声を掛けていいか、わからなかった。
     急激な展開と、友の内面の複雑な葛藤に、困惑するばかりだった。
     友が…オレのことを好き?
     異性にしか見れない?
     待てよ、それって、それって――
     ただひたすらに、時が過ぎていく。
     部屋にはただただ、友のか細い泣き声だけが響いていた。

20 名前: VIP悪魔 投稿日: 2006/11/29(水) 23:10:13.97 ID:D7u7sxheO
     しばらくすると、友も泣きやみ、部屋には完璧な静寂が訪れた。
     ただ、オレも友も、うつむいて、黙るばかりだ。
     喋ろうとしても、言葉が歯の裏で溶けてしまう。
     何も言うことが出来ない。
     そんなオレの内心を察したのか、友が突然立ち上がり、酷く無理矢理作られた笑顔を浮かべて、元気な声で言った。
     『…さて!その…なんか…ごめん。やっぱり女になるとさ、
     情緒不安定っていうか、よくわからなくなるんだ。自分が。
     …ヘンなこと、口走っちゃってごめん。
     おまえも、元々オトコの奴にヘンなことゆわれてさ、
     あんまりいい気分じゃなかったよね…』
     違う。
     『その…ぜんぶ、忘れて。オレが、言ったこと、ぜんぶ』
     違う。
     『…オレ、帰るよ、泊まろうと思ってたけど…
     おまえも、気まずいの、やだよね…?』
     違う。
     『…じゃあ、バイバイ。また今度、会お…?』
     友がPコートを羽織り、立ち去ろうとする。
     オレは友の腕を掴んだ。びっくりするほど華奢な腕だった。
     友が驚いた顔で振り返る。
     『どうしたの、いきなり…んっ』
     自分のしていることが、よくわからなかった。
     気がつくとオレは、友を抱き寄せて、キスしていた。
     目を開けると、友の驚いた顔が間近にある。
     「行くな」
     唇を離し、友をしっかり抱き締めて言った。
     「オレも、好きだ」
     友がまた声を上げて泣き始める。でも今度の涙は、前とは違う。
     『…っく…すき…だいすきぃ…』
     泣きながら何度も呟く友の頭を、オレは何度も撫でてやった。
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