ガノンドロフがと出会ってからしばらくして、ローザはバロン城にたどり着いた。
(何……これ……)
荘厳で美しかったはずのバロン城は、あちらこちらに穴が空いていた。
頑丈だったはずの城門は何かしらの強い力で半壊しており、侵入者から城を守る役割を放棄している。
静まり返っていることから、ここで行われた戦いは過去のもので、この惨劇の立役者はここではないどこかへ向かったことが伺えた。
(あの男ね……。)
下手人はここに来る前に、バロン城の方向から襲ってきたガノンドロフだということは簡単に分かった。
軍事国家バロンの心臓部たるバロン城の頑丈さは、宮廷白魔導士をしていた自分が良く知っている。
いくら城を兵士がいないと言えど、ここまで傷跡を残せる者など、相当の実力者か未知の武器の使い手でない限り不可能だ。
そして、被害を受けたのは城だけではないこともすぐに分かった。
腹を刺され、動かなくなっている少年を見つけた。
姿は人間の物とは大きく異なっていたが、血の乾き様、開き切った瞳孔など、もう手遅れだということは十二分に伝わった。
(ごめんなさい。私が助けるのが遅れたばかりに。)
ガノンドロフとの戦いで、既に事切れているノコタロウに祈りを捧げ、城の中に入る。
戦いは終わり、静まり返っていたがそれでも隠れている者がいる可能性に期待する。
「誰かいない!?私は殺し合いに乗っていないわ!!」
しかし、帰って来るのは木霊だけだった。
まだボトクの姿に変えられているため、姿で恐れられていることも考え、城内を2階まで探ってみた。
だが、人に会うことは無かった。
(誰もいない……)
バロン城へ行けば、自分の知り合い一人ぐらいには会えるという期待があった。
しかし、その期待は外れた。
(もう少し待っていれば……誰か来るかしら……。)
たまたま自分が一番乗りだったという可能性も否定できない。
しかし、しばらく城を歩くうちに、そうは思わなくなった。
この城の空気が、人を寄せ付けないほどに荒んでいたからだ。
内部を見てみれば入り口以外はさして破壊されているという訳でもない。
だが、静けさとは異なる虚しさと寂しさが、この城の中に充満していた。
床の細かい汚れまで再現しており、地下水道への入り口が無いことぐらいしか違いは無い。
しかし、漂っている空気が決定的なまでに違った。
このバロン城を模した建物は、城として人を集めるのに適していない、殺伐とした空気を放っていた。
雰囲気で連想したのはバロンというよりむしろ、ゴルベーザ軍によって滅ぼされ、魑魅魍魎が蠢くようになったエブラーナ城だった。
この場所にいても人を集めることが出来るのは不可能ではないのか、そう思い始めた瞬間だった。
空虚な城内に、放送が響き渡った。
「え……!?」
死者の名前が発表され始め、すぐに呼ばれたのは、彼女の最愛の人。
誰よりも強く、自分の弱ささえも乗り越え、常に自分も他の仲間も引っ張っていった男。
そんな彼の死が、無慈悲に告げられた。
何処へ行くか悩んでいた頭を、思いっ切り殴られたような感覚を覚えた。
放送が終わるまで、ローザは何も出来ずに棒杭のように立ち尽くしていた。
城の雰囲気も相まって、重苦しい空気が、ローザを飲み込もうとしていった。
どれくらい経ったのかは分からない。
ローザはただ、ぼんやりとバロン城によく似た廃墟を見つめていた。
だが、しばらくして答えを出した。
(戦うしかないわね。)
一呼吸おいて、弓を構えた。
ボトクの身体の作りは人間とは異なるため、人間が使うのに適した弓を両手で使うのは手間がかかる。
だが、右手と口を使えば、コントロールこそは落ちるが活用することが出来た。
今まで、セシルに頼り切っていたのかもしれない。
それゆえ、ボトク程度の怪物に良いように騙され、殺し合いを止める貢献も出来なかった。
(きっとこんなんじゃ、セシルにも顔向けできないわ。)
姿は怪物にされたままで、どうすれば殺し合いを打破できるかなんて、相変わらず見当もつかないままだ。
だが、カインも、エッジも、ヤンもまだ生きている。
もしかすると、ルビカンテやゴルベーザだって主催に反旗を翻しているかもしれない。
(私はこんな所で終わる訳にはいかないわ。そうよね?セシル。)
最愛の人との離別を嘆くのは、この殺し合いから生還した後でもいい。
セシルを追って、1人で魔導船に侵入した時のことを思い出す。
もうのんびりこの城で立ち止まる気にはならなかった。
じきにこの城を繋ぐ3つの橋のうち、1つが閉鎖されてしまう。
そうすると、いよいよ城に来る人は少なくなるだろう。
すぐに城を出て、北へ向かうことにした。
(8時までにあの橋を渡らなければ……)
そうと決まると、慣れない怪物の姿でも走り出す。
もう、迷いはなかった。
しかし、この時彼女は知らなかった。
禁止エリアを越えた先に、彼の恋人の兄がいることを。
その兄は、ローザとは異なった想いをセシルの喪失に関して抱いていることを。
また、彼女の姿を奪った怪物は死んだことで、もうじき姿が元に戻ることも。
彼女にとって未知の要素がどのようになるかは、まだ誰も知らない。
【F-5 橋/一日目 朝】
【ローザ・ファレル@Final Fantasy IV】
[状態]:HP2/3 ボトクの姿 決意
[装備]:勇者の弓@ゼルダの伝説+矢30本 トワイライトプリンセス ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:北へ向かい、仲間(カイン、エッジ、ヤン)を探す。
1.ボトクに対抗する勢力を集め、彼に自身の姿を戻してもらう
2.ガノンドロフに警戒
※参戦時期は本編終了後です。
最終更新:2022年02月21日 13:42