ドラえもんと別れてから、すぐにのび太と覚は歩き始めた。
目的地は北西の清浄寺方面。
マリオがいた場所に戻り、まだ生きている可能性のあるローザと合流することも考えた。
だが、既にあの場所から離れているかもしれない。
それならば、覚の同郷の者がいる可能性の高い清浄寺へ向かうべき。
傷も疲労も、完全に回復したわけではない。
しかし、すでに参加者が少ない今、一人でも生存者を探すためにも進んでいた。
「のび太君、向こうから誰か来ないか?」
進行方向から人影が見えたと思ったら、それが次第に大きくなる。
すぐに、それがスーツを身に着けた成人男性だということが分かった。
年齢は二人の友達よりかはずっと上だが、彼らの父よりかは若く見える。
「ケガしているな…」
「本当?でも、治せる道具とかないよ…。」
眼鏡をしているのび太に比べて、視力に優れた覚の方が、男の状態を早く理解できた。
同時に覚はすぐに呪力を練り、男が殺し合いに乗っていてもいいようにする。
のび太も同様に、ホルダーに仕舞った銃をいつでも出せるようにする。
「助けてください…。」
その弱弱しい言葉を聞くと、のび太は肩の力を緩めた。
逆に覚は、まだ警戒を緩めなかった。
どこか冷たさを感じる、彼の表情をずっと凝視し続ける。
「どうしたんだ。誰にやられた。」
彼の白いスーツは、至る所に焦げやら破れ目があり、おまけに泥だらけになっている。
こんな格好で職場へ向かえば、たちまち上司から叱責を受けるはずだし、道を歩いても通行人から白い目で見られるはずだ。
どう見ても、誰かと一悶着あった風貌だった。
「恐ろしい相手でした……。」
男、吉良吉影は震えながら答える。
それは演技などではない。
彼が戦った男は、誇張抜きで恐ろしい力を持った相手だった。
逃げ切った今でも、その敵のことを話そうとすると全身に悪寒が走る。
ふと、のび太の胸の内に嫌な予感が走る。
今もなおこの殺し合いの中で生き残っている参加者の中で、恐ろしい相手と聞いて思い当たる節があったからだ。
「もしかしてそいつって…デマオンって名前じゃ無かった?」
「!!!!」
「やっぱり…デマオンは、僕達の地球を襲った大魔王なんだ!!」
「どうやら、この殺し合いの中でも暴れまわっていたようだな。」
人間、様々な感情が一瞬の内に胸の中を駆け巡ると、言葉が出なくなる。
青天の霹靂、まさにその言葉が吉良吉影によってはうってつけだった。
まさか逃げた先にいたのは、元の世界でデマオンと敵対していた人物だったとは。
しかも相手二人の内一人は子供と来ているので、万が一自分のしたことが露見してもいつでも殺せる。
鴨がネギとシェルターと裏切ってもさほど厄介でもない護衛を背負って、やってくるようなものだ。
「聞かせてほしい。何があったんだ。」
吉良はかつてヤンや守に話したように、のび太たちに何が起こったか説明した。
森の中に隠れていると、大魔王が吉良達を襲って来たことを。
何とか振り切ることに成功したものの、同行していたピンクのツインテールの女性が彼に殺されたことを。
嘘は言っていない。自分が人を殺したこと、デマオンが殺し合いに乗っていないことを言っていないだけだ。
「やっぱり…許せない!!」
のび太は怒りをあらわにする。
かつての宿敵である魔王が、この殺し合いで暴れているというのだ。
正義感の強い少年に、黙っていろという方が無茶な話だろう。
「さっきの話からしてもしかして君は、あの怪物のことを知っているのですか?よろしければ教えていただきたいのですが…。」
だが、吉良は万全を期すために、少しでも情報を集めようとする。
デマオンは絶対に出会いたくない相手だが、自分が殺し合いに乗っていることを知っている以上は殺さなくてはならない相手だ。
自分のことを知っている者が増えた中、貴重な隠れ蓑を使いつつ、敵を消していかねばならない。
「うん、それに僕達で一度倒したこと……あ、ちょっと待って!」
急にのび太は慌て始めた。
「今の僕達じゃきっと、あいつを倒せない。」
彼が急に説明を止めた原因は簡単だ。
大魔王デマオンの真の恐ろしさ、即ち不死にある。
銀のダーツを心臓に打ち込まねば殺せず、しかもその心臓は別の場所にある。
「そういうことか。だが、それに関しては問題ないかもしれないな。」
「え?どうして?」
「強力な力を持った参加者には、何らかの措置が施されているのかもしれない。ワンサイドゲームにならないようにな。」
覚がそう思うに至った発端は、自身の呪力だ。
かつてマリオを攻撃した時に気付いたことだが、同胞たる人間を攻撃したというのに不思議なほどその力が抑制されない。
しかしその一方で、最大出力が著しく制限されている。
呪力は神栖66町に住む人にとって、万能の道具とされていた。
だが、今の彼の呪力をそう呼ぶには、聊か大げさだろう。
「不死の能力が、無いってこと?」
「ああ。もしかするとその銀のダーツじゃなくても、奴を殺すことが出来るかもしれない。」
「で、ですが奴の力は恐ろしい物でした……私が逃げられたのも、他の人の犠牲があったようなものです。」
そうは言いながらも、吉良は安堵の言葉と共に俯き、ドサリと地面に尻を付ける。
驚喜の孕んだ笑みを見られないために。
「大丈夫か?」
覚は吉良の傷が思ったより深いのだと感じ、彼の容態を慮る。
「いえ、心配はありません。それよりも皆さん、気を付けてください。
奴はもしかすると、私を追ってここに来るかもしれません。」
吉良が注意を促す。
デマオンが殺し合いに乗っていないということを、彼らに気付かせてはならない。
どこまでいっても、彼は悪の大魔王でなければならないのだ。
「だったらさ、先回りして、僕達があの城に入ろう。」
「「え?」」
のび太の勇敢な発言に、吉良も覚も驚いた。
彼等はあまり気付いてなかったが、この辺りは「大魔王の城」とそう遠くない。
デマオンに吉良を追いかける意志があろうとなかろうと、彼自身の居城にやってくる可能性がある。
「僕は前、あの城に入ったことがあるんだ。」
呆れるほどに複雑なデマオンの城の構造だが、のび太は前に入ったことがある。
デマオンを倒しに行った時と、それが失敗した後に仲間を助けに行った時で2回。
彼が追跡して来るのなら、籠城した上で、魔王と戦おうということだ。
単純な話、戦場では高い場所に陣取ればそれだけで敵に対し有利を取れる。
銃を持つのび太や、呪力の攻撃がメインの覚からすれば猶更だ。
「待ち伏せ作戦か、悪くないな。」
覚も彼の考えに賛成し、のび太の後を付いて行く。
本当ならそんな危ない相手にのび太を巻き込みたくないのだが、彼が言うのならば仕方がない。
余計な口を出さず、自身が持つ力で精いっぱい彼を守るだけだ。
それからすぐに、3人は大魔王の城の目の前にやって来た。
天を突くほど巨大な岩をくり抜いて作ったゆえ、若干不格好さが目立つが、逆に不気味さも際立っている。
おおよそ人間が住む建物とは思えない。
なるほど、確かに人ならざる者が住む場所だと感じ、3人共俄然表情が引き締まる。
「朝比奈さん、吉良さん。力を貸して!あいつを倒すことは、きっとドラえもんや美夜子さんもそれを望んでいるはずだ。」
「はい。私も出来ることならなんでもします。」
「………。」
のび太はデマオンを倒そうとしていたが、覚は怪しんでいた。
(どういうことだ……。)
大魔王の城の、やけに長い階段を登りながら思考する。
デマオンではない。先ほどその大魔王から逃げて来た、吉良吉影に。
(あいつの挙動、何と言うか………何て言えばいい?
とりあえず、いくら何でも子供ののび太が怪物なんかと戦おうとするのを、止めないのか?)
のび太の精神力の強さは、同年代の子供に比べて、一線を画している。
それは彼自身も認めることだ。
だからと言って、初対面で出会った子供が、そんな危ないことをすると言ったのならば。
最低限、制止の一つぐらいはしてもいいだろう。
だが、それなら。
自分だって彼のことを知っているとはいえ、止めようとしていない。
吉良という男がのび太を、ここまで生き延びたという理由で、何かしら強い力を持った少年だと信頼した。
そう解釈しても良いかもしれない。
覚の違和感は、そんな単純な所には無い。
気持ち悪い。
それが現在、朝比奈覚が吉良吉影に対して抱いた感情だった。
一貫しているようで、どこかしら辻褄の合わない所がある。
しかし、その嫌悪感の大元が何なのか分からない。
まるで吉良の言ったことが、全て本当のことであるのに、心ここにあらずと言った様子なのだ。
(そうだ、このうすら寒いような違和感、あの時も感じたことだ。)
彼が12年前、町から逃げた守を探している途中、バケネズミの巣穴に迷い込んだ時のこと。
スクィーラから、彼らの女王の大脳を切除し、食べて産むだけの機械にしてしまう計画を聞いた後だ。
知らず知らずのうちに、何者かが走らせた乗り物に乗せられている。
それを止めなければ大惨事になるのだが、その乗り物のエンジンも運転席も見当たらない。
のび太が彼に対し違和感を抱かないのは、目の前に『明確に悪だと知っている者』がいるからだ。
一方で朝比奈覚にとっての大魔王デマオンとは、のび太と吉良から聞いた存在でしかない。
心臓は高鳴る。
大魔王がもうじきやってくるというのだから当然だが、その理由は魔王ではなく、もっと身近な悪にあるのかもしれない。
数万単位で人間を殺害した異国の独裁者に恐怖感を抱かなくても、同じ町に住んでいるちんけな強盗の方を恐ろしいと思うのと同じだ。
☆
時は少し遡り、森の深奥で広げられた、忌まわしき戦いが幕を閉じてから、10分ほど。
役者は一通り出払い、次の舞台へと足を進める。
残っているのはもう使い物にならなくなり、捨て置かれた舞台装置、あるいは劇がとっくに終わったことに気付かない、愚かな役者だけ。
いや、その場所に新たな人影が動いている。
それは役者にサインをねだる観客か、はたまた遅刻してやって来た役者か。
それとも、終わったかのように見えたドラマはまだ終わっていないのか。
「カインさん! いたら返事して!!」
静まり返った森の中、声変わりしていない少年の声が響く。
こんな中で大声を出すのは、愚の骨頂だろう。
どうぞ自分を殺してくださいと言っているようなものだ。
だが、そんな常識は、今の彼には通用しない。
何しろ彼が逃げているのは、常識がてんで意味を為さない相手だからだ。
川尻早人は、森の中に入るとすぐに、異変に気付いた。
あちらこちらが燃えており、以前シアーハートアタックが爆発した時よりも、多くの樹が倒れている。
森林の香りとは、心を落ち着かせる効果があるものだ。
だが、辺りからただようスス臭さや煙臭さは、とても精神に良好とは思えない。
いくらか炎は収まった後のようだったが、それでもパチパチと木が焼ける音がそこかしこから聞こえた。
一酸化炭素中毒を起こしてしまうのではないかと危惧したが、カイン達の安否の方が気がかりだった。
ボロボロに炭化した木を何度か踏みつけながら、森の奥へ、清浄寺へと走る。
「守くん!ミキタカさん!!」
自分の身を危険に晒してでも、知り合いを呼ぶ。
一刻も早く、あのスクィーラという悪魔の対策をしなければならない。
こうしている間にも、彼の毒牙は迫ってきている。
「高い声で囀るな。耳障りだ。」
早人の声とは対照的に、くぐもった低い声が聞こえた。
そこにいたのは、おおよそ人とは思えぬ姿をした巨漢。
だが、その姿はどことなく本来より小さく見えた。
両の眼窩でめらめらと燃えていた炎はその勢いが弱くなり、黒い衣のあちこちが裂け、青い血が染み込んでいる。
怪我したのか、片足を引きずりながら歩いている。
魔界星全土を牛耳っていた頃に比べて、その威圧感は幾分か鳴りを潜めていた。
それでも目が合えば、全身から冷や汗が出て、心臓が早鐘を打ち始めることは間違いない。
しかし早人は、言うことを聞こうとしない己の心臓を無理矢理鎮め、デマオンに話をしようとした。
この男が殺し合いに乗っており、自分が殺されるのも、スクィーラ達に殺されるのも同じだからだ。
「悪かった。でも聞きたいことがあるんだ、カインさんって……。」
「奴はずっと北の方へ行った。」
早人がすべて質問をする前に、デマオンは短く答えた。
「どうして…?」
早人は質問なのか驚嘆なのか分からない言葉を呟く。
それをデマオンは苛立たし気な舌打ちと共に流した。
彼は片足を引き摺りながら、北へ向かって歩く。
「地球人らしく五月蠅い奴だ。なぜ理由を話さねばならん。仮にわしがその理由を話したところで、奴等が戻ってくるというのか。」
デマオンの言うことは最もだ。
理由を知ろうと知るまいと、早人がカイン達に頼ることは出来ない。
辺りが燃えている上に、追手がいつ来るか分からない以上、彼らが戻って来るまでこの場で待機し続けるのも難しそうだ。
デパートへ向かった早人の同行者は二人共死に、目下、彼が頼ることの出来る者はいない。
武器も使いやすそうな物はなく、あるとしてもあの二人や吉良を倒せそうにない。
やがて歩いていくと、清浄寺のすぐ近くにたどり着く。
その近くに、1つの焼死体があった。
「どういうことだ……。」
魔界星を統一した大魔王は、光を失った目でその死体を見つめていた。
何しろ、デマオン軍の幹部の一人が死んだのだから。
いや、かつて魔界にいた時は、部下の悪魔などいくら死んでも心が動くことは無かった。
だというのに、同胞でさえない地球人の部下がほんの数人死んで、このような暗澹たる気持ちになるのはどういうことか。
これではまるで、ただの凡庸な地球人だ。
デマオンもまた、早人と同様に頼るべき相手を失った。
敵には逃げられ、仲間を殺され。
一見、どうしようもなく詰んでいる状況だ。
このままデパートへ向かい、図書館で聞いたカギとやらを手に入れても、有効活用できそうにない。
「もしかして、吉良吉影という人と戦ったんじゃないか!?」
「その通りだ。」
切羽詰まった状況に見える。
だが川尻早人としては、一つだけ強大な力を持った武器が転がっていたように見えた。
即ち、デマオンという今までにないほど強力な武器だ。
「頼む。僕に力を貸してほしい。」
「力を貸してほしいだと?きさまにわしを手懐けるだけの何かがあるのか?」
腐っても鯛という諺があるが、今の彼にもプライドという物はある。
理由もなしに、たかが地球人の子供の命令など、そう簡単に聞く気にはならない。
デマオンが早人を部下に引き入れるならともかく、逆ならば真っ平御免だ。
(!!!)
その怒声を聞いた瞬間、早人の全身から、どっと冷たい汗が流れた。
辺りはそこかしこで燃えている残火のせいで暑いはずなのにも関わらず。
その目が合った瞬間、凄まじい圧迫感と、刺すような殺意を感じた。
吉良吉影が放つそれなど、この男に比べればそよ風のようなものだ。
「ある。」
だが、魔王に気圧されながらも、早人は短く答えた。
「僕は一度、吉良吉影という男を倒したことがあるんだ。あの男は力が強いだけじゃ倒せない。」
彼は知っている。
吉良吉影という男は、最強のスタンドを持つ空条承太郎でさえ仕留めきれなかった男だということを。
「何故だ? わしのことを知らぬ地球人風情が、なぜ奴を倒せぬと言える?」
魔界の王として、出来ぬことは無いと自負して来たデマオンだ。
それを、たかが地球人の子供に出来ないと頭ごなしに否定されるのは、不愉快千万と言っても過言ではない。
かつては7人の地球人に対し不覚を取ったが、そう2度も3度も取ってたまるかとムキになる。
本当ならば目の前の少年など八つ裂きにして、その肉を腹の足しにするはずだった。
それをしなかったのは、すれば高みの見物を決め込んでいる愚者が愉快な思いをするのと。
目の前の少年が何かの情報を持っていることは事実であるからだ。
「現にあの時だって、わしの配下が余計なことをしなければ、奴を仕留めていたはずだった。」
「それは偶然じゃあない!!あの男は運命に守られ続けているんだ!!」
その言葉を聞いて、デマオンの眉間の皴がさらに深くなり、やけに大きな音で舌打ちをした。
「何を御大層なことを言うかと思えば、運命だと!?もしや貴様、わしがそんな下らぬものに負けたというのか!!?」
早人の言うことは、いい加減なようで的を得ている。
吉良吉影と言うのは、戦いの力こそは魔王や勇者に劣るが、身を護るという面においては、彼らをも凌ぐ。
その大元にあるのが、彼に味方する運命なのだ。
最強のスタンド、スタープラチナをもってしても単独では彼を仕留めるに能わない。
現に早人も、かつて猫草の力で吉良を仕留めようとしたが、ほんのわずかな幸運で失敗した。
「でも力で負けた訳じゃ無いんだろ?」
デマオンという人ならざる者からは、立っているだけで有り余るほどの力が伝わって来る。
スタンドも魔法も知らぬ早人でさえ、彼の強さは前に立っているだけで伝わって来た。
この会場の中では、小学生の早人より力を持った参加者など普通にいるが、その中でもデマオンは抜きんでていた。
そのような男がもし負けるとしたら、かつて仗助たちが吉良の第三の爆弾で殺された時と同様、彼を守っている力によるものだ。
「……逆に聞こう。もし奴をその運命とやらが味方して倒せぬというなら、どうすればいい?」
身じろぎひとつせず、早人は静かに、しかしはっきりと答える。
「心だ。」
デマオンは全く知らぬことだが、早人は確かに、一度吉良を倒した。
少なくとも、吉良を倒すのに貢献したのは間違いない。
その時にあったのは、杜王町の住人に宿っていた、運命さえも打ち破る黄金の精神だった。
だが、そんなことを当事者ではない人間に言っても理解してもらえるはずがない。
ましてや、デマオンは人間ではなく魔族だ。
いくら人間に味方すると言っても、思想信条の根本から、人間を理解出来ぬ所がある方が普通なのだ。
「心だと!?言うに事を欠いて心と来たか!!
進退窮まりわしに助けを求めようとしたつもりのようだが、話にならん。」
「違う!」
「もう良い。貴様など相手にするだけ、時間が勿体無い。」
デマオンは早人を無視し、吉良が逃げた方向に走ろうとする。
片足の痛みも無視し、早人を捨て置こうとした。
我が身可愛さに、自分を良いように扱おうとした早人も腹立たしいが、今は吉良を殺すことが先だ。
魔王の前で度重なる狼藉を重ね、魔界のハイエナにも劣る薄汚い地球人を、この手で裁かねばならない。
「待って欲しい…僕は吉良だけじゃない。まだ2人、この殺し合いに乗っている奴のことを知っているんだ。」
その瞬間、デマオンはふんと鼻で笑った。
「馬脚を現したな。大方そやつ等に仲間を殺され、代わりに倒してくれる者としてわしを利用しようとしているのだろう。」
「その通りだ。勿論ただで助けてもらえると分かったつもりじゃあない。」
彼の魂胆が露見したが、早人は言い淀むことは無い。
デマオンが殺し合いに乗っていない以上は、スクィーラやクッパも共通の敵になり得る可能性はある。
「その二人組のことを話すつもりか?どこまでも浅はかだ。たとえその話が聞くに値するものだったとしても、そこから先貴様をわしの軍門に置いておく必要は……」
デマオンが話をすべて終える前に、彼はその両目を見開いた。
何しろ、川尻早人という少年が、自分の両手で首輪を掴んでいたから。
「僕もろとも、その情報が地虫の夕食になる。」
「きさま……自分が何をしているのか分かっているのか?」
今度はデマオンが、早人を過小評価していた。
忘れるなかれ。
この少年は、自分が爆弾にされていると判明した瞬間、仲間を爆発に巻き込まないために躊躇なく自決をしようとする胆力の持ち主だ。
ここでデマオンの協力が得られなければどの道吉良を止められず、自分もスクィーラ辺りに殺される可能性が高い以上、ここで死ぬのも同じだ。
「分かっているとも。もっと力を込めて引っ張れば、僕が死ぬことぐらい。
けれどそれは僕のせいじゃない。お前が殺したことになる。」
返事はない。
代わりに、ギリギリギリギリと、やけにうるさい歯ぎしりの音だけが聞こえてくる。
早人の言うことは最もだ。
魔王である自分が、「川尻早人が自分の近くで自殺した」などと言っても、聞き入れてもらえるはずがない。
情報のみならず、自分の命をこの地球人は交渉材料にしてきたのだ。
早人は、目が合った瞬間に自分が殺されないことから、目の前の魔王は自分を殺したくない理由があるのではないかと踏んだ。
何も交渉を進めるのに、互いの得だけを考える必要はない。
決裂した際の、相手にとってのデメリットを強調するやり方もありなのだ。
「恐らくだが、吉良はこの殺し合いに乗っていない奴等を隠れ蓑にしようとしている。
お前は人じゃあないから、吉良のことを他人に話しても信用されない。
けれど僕がいれば、少なくとも僕にだけは友好的な者だと信用される。」
「なるほど…言いたいことは分かった。奴らの情報だけではなく、得られるものはきさま自身ということか…」
「それだけじゃない。他の殺し合いに乗っていない人間から得られる信用だ。」
誰が言ったか。
人が人を選ぶにあたって最も大切なのは『信頼』だと。
(わしがかつて地球人に負けたのは、青ダヌキの奇妙な道具が原因と思っていたが……
それは間違いだったかもしれんな……。)
魔王は今、彼の情報ではなく、光に向かおうと歩く彼の精神を信頼した。
空気の変わりようが、デマオンが早人と手を組むことを決めたと、如実に示した。
「奴が逃げた方向に向かうぞ。吉良に追いつく前に、知っている3人のことを全て話せ。」
「勿論。」
仲間を集め、王に今度こそトドメを刺そうとする暗殺者。
玉座からずり落とされたが、復権のチャンスを手に入れた魔王。
革命の時は近い。
【D-5/大魔王の城内部/一日目 午後】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:ダメージ(大)スーツがボロボロ 苛立ち(中)
[装備]:空気砲(65/100)@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:脱出派の勢力に潜り込み、信頼を勝ち取る。
1.邪魔者を殺し、この場からさっさと逃走する。
2.のび太、覚と共に、自分の平穏の邪魔をするデマオンを殺す
3.名簿に載っていた、仗助、康一、重ちー、隼人、そしてシャークに警戒。争うことになるならば殺す
4.早人やミチルにもスタンドが見えたことに対する疑問
5.ヤン達からは距離を置きたい。
6.絵の中の少女、秋月真理亜の手が欲しい
※参戦時期は川尻耕作に姿を変えてから、カップルを殺害した直後です
【野比のび太@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
[状態]:ほぼ健康 決意
[装備]:ミスタの拳銃(残弾3)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:覚と共に脱出する
1.吉良、覚と共に、デマオンを倒す
2.ドラえもんとの思い出は無駄にしない
3.デマオン、スクィーラには警戒
※参戦時期は本編終了後です
※この世界をもしもボックスで移った、魔法の世界だと思ってます。
※主催者はもしもボックスのような力を持っていると考えています。
※放送内容による仲間の死を受け止めました。また、第二放送も聞いています。
【朝比奈覚@新世界より】
[状態]:肉体ダメージはほぼ全快 早季喪失の精神ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、北風のテーブルかけ(使用回数残り17/20)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探し、脱出する
1.安全な場所を探す
2.のび太の思い出を守る
3.神栖66町の仲間(早季、守、真理亜が心配)
4.仲間を探す過程で写真の男を見つけ、サイコ・バスターを奪い返す
5.デマオン、スクィーラに警戒
※参戦時期は26歳編でスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。
【D-4 草原 午後】
【デマオン@のび太の魔界大冒険 】
[状態]:ダメージ(大)片足にダメージ(大) 魔力消費(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:不遜なるデク人形(オルゴ・デミーラ、ザント)をこの手で滅し、参加者どもの世界を征服する……はずだったが?
1.早人と共に、大魔王の城へ
2.吉良を今度こそ殺す
3.地球人よ、頼りにしてるぞ。
※川尻早人から、スクィーラ、クッパ、吉良のことを聞きました。
【川尻早人@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(パン、水消費(中)) ランダム支給品0~1(武器ではない) ひそひ草×1@FF4
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗ってない者を集め、なぜか生きている吉良吉影、およびスクィーラとクッパを倒す
1:デマオンと共に大魔王の城へ向かい、吉良を裁く
※本編終了後です
※名簿は確認しました。
※ヤンから主催者が変わったという説を考えています。
最終更新:2023年01月08日 10:24