とある学校の校庭。
この殺し合いが始まる前、クラスの覇権を目指した争いが繰り広げられようとしたこの場所で、新たな争いが始まらんとしていた。
片側にいるのは紅の戦士、ルビカンテ。
もう片側にいるのは、白のパラディン、セシル。

「行くぞ、セシル!!」
先に飛び出してきたのは、紅の戦士の方だった。
「話を聞いてくれ!ルビカンテ!!」
先手を許してしまったが、その攻撃に当たるまいと躱し続けるのが白の聖騎士。


「話を聞く余裕などない!!ファイガ!!」
ルビカンテが念じると、一対の火球がセシルに向けて襲い掛かる。
セシルが真珠色の大剣を振りかざすと、その炎は水蒸気に帰した。


「ふむ。氷の剣か。」
「ここで僕らが戦っていてもあいつらが喜ぶだけだ!!君ならわかるはずだ!!」
「然り。だが、私は脆弱な者共と協力する気などない。ただ、強者との戦いを望むだけだ!!」

続いて右手から炎の魔法を続けざまに打つ。
仲間であったエッジやリディアのように、遠距離攻撃を持たぬセシルにとって、この攻撃は厄介だった。


「どうした!?私がおまえに負けたのは、貴様の仲間や強い武具のおかげというわけなのか?」
「頼む!奴等を倒すために、僕と協力してくれ!!」
「ならん。この殺し合いを止めたいのなら、私を殺すがよい。」

自分の発言が矛盾していることなどお構いなしとばかりに、続けざまに炎の魔法を打ち続ける。
弾幕のように迫りくる炎を、吹雪の剣を振り回す。
だが、このままではらちが明かない。


(力を貸してくれ、ローザ、みんな!!)
炎の嵐の中をくぐり抜け、ルビカンテに斬りかかる。
その刃が深紅の衣に吸い込まれんとした時。


(!?)
その一撃は、ルビカンテの左手により止められた。

「中々面白い武器を貰った。使わせてもらうぞ。」
「爪!?」
かつてのルビカンテは、炎の魔法やそれを応用した術など、徒手空拳の戦い方をしていたので、セシルも油断していた。
だが、炎の爪という支給品を承ったことにより、新たな戦法を編み出したのだ。


反撃を受けまいと、慌てて後退するセシル。
「この爪は、こういった使い方も出来るようでな。」
ルビカンテは左手を上空にかざす。
すると爪に火が集まった。


「食らうがよい!!」
さらにその炎を持ち前のファイガで増幅させる。
先ほどより強い炎球が、白騎士めがけて襲い掛かった。

「ぐあああ!!」
吹雪の剣を持ってもしのぎ切れず、熱風により吹き飛ばされる。


「どうした?まさかそれで終わりではあるまい。」
倒れたセシルを見下ろすルビカンテ。

「どうやら……本気で戦わなくちゃいけないようだね。」
「その通りだ。全力でかかってくるがいい!!」
予想通り、というわけだが、パラディンとして前面で戦い抜いた彼は、その程度では終わらなかった。
顔や体のあちこちに火傷を見せながらも、ケアルで回復していく。
回復術の制限によりその効果は著しく低いが、最低限の回復が終わると、すぐにルビカンテに斬りかかった。


「ほう……やはりやるではないか。」
先程までとは別人のような速さに僅かながら驚く。
炎の爪でも防御できず、マントの守りの無い腿に凍傷をつけられる。

その後もセシルは二撃、三撃と続けざまに斬撃を加えようとしていく。
だがルビカンテもさることながら、その攻撃を悉く凌いでいく。


そして、何度目かセシルの剣が空を切った時。
空から、正確には校舎から、何者かが飛んできた。
それは同じように赤い色をしていたので、一瞬ルビカンテと関係ある何かとセシルは戸惑ってしまったくらいだ。


しかし、それは着地する前に、身体を大きく回転させ、巨大なハンマーでルビカンテを大きく吹き飛ばした。
赤の巨体が、何度かバウンドして転がっていく様子は、セシルも見とれてしまっていた。

「誰だが分からないけど、助かった……っ!?」
赤い帽子の男は、無防備だったセシルの顔面に、ハンマーを打ち込んだ。

「な……なぜ!?」
視界がブラックアウトしたセシルの疑問に答える間も無く、暗い闇を宿した目を持つその男は、ハンマーを振りかざす。
完全に不意を突かれ、ルビカンテとの激闘もあったセシルが、この男に敗れるのも時間の問題だった。


「おのれ……おのれ!!よくも戦いに水を差してくれたな!!!!」


怒りに燃えるルビカンテが、赤帽子の男目掛けて切り札である技を出した。
「火焔流!!!」

真紅の竜巻が、深紅の衣装を身に纏った男を呑まんとする。
その一撃は、炎の爪により、かつてセシルが見た時よりも強大だった。
だが、彼はその場から一歩も動かず、ハンマーを構え、深く腰を落とす。


「何っ!?」
火焔流とは逆方向に激しく回転したハンマーは、その竜巻を一撃で打ち消した。
渾身の一撃を破壊した後、不気味に笑う。

「ぐうっ……!!」
ルビカンテに雷が落ちる。ただの雷ではなく、黒い色を纏った雷だ。
あんな色をした雷は、雷魔法やラムウを見てきたセシルも見たことがない。
分かったのは、帽子の男が相当な手練れであることだ。


「まだだ!!」
今度はセシルが立ち上がる。
ザックから何かを取り出し、帽子の男目掛けて投げた。
それを男は何の問題もないと体を反らして躱す。


「ぬ!?」
しかし投げた先にいたルビカンテにそれは当たった。

「うおおおお!!どういうことだ!!」
身体が浮かびあがる奇妙な感覚に、叫び声をあげる。

「ルビカンテ!!君だけは逃げろ!!そして、僕の仲間と共に……。」
全てのセリフを言い終わる前に、鈍器の一撃がセシルの顔面に迫りくる。
それを吹雪の剣で受け止めるセシル。

だが、相手の持ち味はハンマーや雷だけではない。
彼が今のような有様になる前からあった、ジャンプ能力だ。
剣の反動を逆利用してセシルの背後に回り込む。


「速い……。」
そのまま巨大なハンマーを、後頭部に叩きつける。


「ローザ……ごめん。」
最後にこぼしたのは、最愛の人への言葉。
それを聞いても、影に従った男の心には届かなかった。



【セシル・ハーヴィ@Final Fantasy IV 死亡】
【残り 49名】





(た、大変なものを見てしまった!!)
学校の外から、戦いの一部始終を見た者がいた。

(は、早くこのことを他の人やのび太君に伝えないと!!)
何のためらいもなく巨大なハンマーを振るうマリオを見て、彼は何も出来なかった。
その姿勢は、彼の主人が学校で宿題を忘れた時に廊下で取ることになった姿勢と似ていたのは、何かの皮肉だろうか。
男が校舎から出る前に、ドラえもんは急いで学校の外へと走り出した。


(ポケットもない今、ぼくだけでは絶対あいつに勝てない……早く誰かを集めないと……!!)
今はただ、これ以上被害が出ないことを望むだけだった。


【E-8 学校 校庭 深夜】
【ドラえもん@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
[状態]:健康 恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本行動方針:マーダーから身を守る、赤帽子の男(マリオ)に警戒
1.のび太を探す
2.学校で起きたことを対主催勢力に話す

※魔界大冒険終了後です。
※トランプ名簿は、のび太しか確認していません。



セシルを葬り、ルビカンテに重傷を負わせたかの男は、キノコ王国の姫を何度も救った、かつての英雄だった。
だが、そんな英雄でも、絶望に囚われる時が来る。


「お願いだ!!ボクは何でもするから、仲間だけは殺さないでくれ!!」
――――なかなか、ききわけの、いいヤツじゃのう

1000年の扉から目覚めた魔物を目の前にして、マリオが目の当たりにしたのは、今までにない絶望だった。
助けるはずの姫が、魔物に乗り移られてしまった。
ただでさえ目の前の敵の恐ろしさをその身で感じているのに、その敵を倒しても姫まで取り戻せるか分からない。
最悪の場合、自分の手で大切な人を殺めてしまうことになる。


――――……よかろう……。一生わらわにつかえるといい。これで、そちはわらわのものだ。
仲間の反対を振り切って、影の女王の軍門に下ることを選んだ。
そうすれば、少なくとも姫は怪物の物になっても、死ぬことはないと思ったから。



その後は、彼は魂を奪われて、邪悪な心を植え付けられた直後、この戦いに呼ばれた。
仕える相手となった女王はこの舞台にはいない。
だが、彼がやることは、怪物に魂を売った英雄として、参加者を殺し続けるだけだ。



【マリオ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:健康
[装備]:大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険  
[道具]:基本支給品×2 ランダム支給品0~3 ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVII
[思考・状況]
基本行動方針:殺す

※カゲの女王との選択で「しもべになる」を選んだ直後です
※カミナリなど、カゲの女王の技もいくつか使えるかもしれません。



「許せぬ!!許せぬ!!許せぬ!!」
飛ばされた先で、ルビカンテは叫び続けた。
それが最早負け犬の遠吠えでしかないと分かっていても。
戦いが終わり、負けが確定した時に飛ばされた先が、闘技場と言うのは何かの皮肉だろうか。


――――ルビカンテ!!君だけは逃げろ!!そして、僕の仲間と共に……。
彼の脳裏にフラッシュバックするのは、彼が発した言葉。
あの時、逃げようと思えば自分があの羽のような道具を使えばいいのは分かっていた。
だが、それでいて自分に使った。


その身を挺してまで発した想いを、無下にするなど、彼の武人としての誇りが許さない。
だが、脆弱な者に協力することも、彼の性格が許さない。

彼の苦悩は、続く。




【A-8 黎明 闘技場】

【ルビカンテ@Final Fantasy IV】
[状態]:HP 1/4 魔力消費(小)
[装備]:炎の爪@ドラゴンクエストVII フラワーセツヤク@ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1 
[思考・状況]
基本行動方針:戦うか、協力するか
1.あの帽子の男(マリオ)は絶対に許さない

※少なくとも1度はセシルたちに敗れた後です。




【ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
セシルに支給された、氷柱を模したような剣。
氷属性の剣で、斬った後追加で氷のダメージも与える。


【炎の爪@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
ルビカンテに支給された爪。
暖色を中心としたデザインに違わず、攻撃した後追加で炎のダメージも与える。
また、道具として使うと、炎の球を出すことが出来る。

【大型スレッジハンマー ジョジョの奇妙な冒険】
マリオに支給されたハンマー。
そのままでも十分な破壊力を持つが、原作で波紋エネルギーを纏わせたように、何らかの力を纏わせることが出来るかもしれない。


【キメラの翼@ドラゴンクエストVII】
セシルに支給された道具。
本来なら投げると一度行った場所に移動するシステムだが、本ロワでは相手に投げることで、同じ会場内にランダムで移動できるシステムになっている。


【フラワーセツヤク@ペーパーマリオRPG】
ルビカンテに支給されたバッジ。
付けると、消費FP(フラワーポイント)が下がる。
本ロワでは、他の魔力の節約にも応用できる。


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最終更新:2021年04月17日 11:16