のっけから申しあげておきますが、この話を読む価値は贔屓目に言ってもありません。
よほど時間を無駄にしたい物好きの方を除けば、この話を飛ばして次の回を読むか、あるいは別の方のお創りする御話を読むほうがよろしいと思います。


それでも読みたいと?
私としてはこの話は、読んでいただかない方が読者様の為だと思うくらいですが。
読むからには決して中身が薄っぺらな作品だとしても、文句は言わないでくださいね。
いえいえ、この話自体にいくらでも文句のほどを述べても構いませんが、他の話まで巻き込むのはおやめください。


では始めましょう。

殺すことを望むくせに、命の価値を全く鑑みない、愚か者たちの殺し合いもどきを。



手下に頭巾の少女を殺すことを任せて、自らは大魔王の城へと向かう黒の男が一人。
そこへ学校から北上してきた、赤帽子の男が一人。

方や、償おうとした弟の喪失を伝えられ、呪いの剣に心を委ねた哀れな人形、ゴルベーザ。
方や、仲間や恋人の喪失を恐れ、カゲの魔物に心を委ねた、これまた哀れな人形、マリオ。


互いの目が合うや否や、黒の人形は主たる剣を持つ力を込めます。
相手は弟の仇でもありますが、そんな高尚な理由ではありません。
ただ、皆殺しにすべき相手の的だから。

一方で、巨大なハンマーを鬻ぐ赤の人形も力を込めます。
これまた誰かのためではなく、主に命じられるがまま、殺そうとしています。


先陣切って斬りかかるのは、黒の人形の方。
長身を生かして、皆殺しの剣を高く振りかぶり、肩から胸を通り、腿まで斬り裂こうと袈裟懸け一閃。
だが赤の人形もただで斬られません。
その生への決意は、人に言えるほど素晴らしい物では決してありませんが、それでも後ろへ飛びのいて躱しました。

驚く間もなく、黒の人形は第二撃を逆袈裟に振るおうとしますが、それより先に赤の人形が、顔目掛けてハンマーを振るいます。
当たれば、彼もまた弟の二の舞になるはずですが、残念ながらそういう訳にはいきません。
先程の斬撃を躱した赤の人形の意趣返しのように、黒の人形もまた後ろへ飛びのき、殴打を躱します。


「雷よ、打ち抜け。サンダガ!!」
剣だけでは手に余ると無駄に判断力を働かせた黒の人形は、ハンマーの届かない位置まで離れると、雷魔術に手を出します。
しかし、赤の人形もまた同時に、黒の雷を呼び出す、主譲りの魔術を念じました。

闇夜から白の槍と黒の槍が生まれ、互いのいた位置に降り注ぎました。
荒野に、二重の轟音が響き渡ります。
それに伴い、土は大きく舞いあがりました。
不幸か不幸か、互いに雷が直撃することは無かったのですが、身体に土くれが降りかかります。
それを払いのけ、再度相手に斬りかかる黒の人形。
しかし、三度目の一撃もまた、空を切ります。


そして、赤の人形の姿は、消えていました。
否、消えたのではありません。
赤の人形がマリオだった頃から得意だった、人間離れした跳躍力を用いて、頭上からハンマーを振り下ろそうとしていました。


「くっ……ファイガ!!」
空中に炎球が帯を作るように回転し、赤の人形を焼き尽くさんと迫ります。
だがそれは一度、黒の人形の部下であったルビカンテから似た技を受けているので、回避手段が限られる空中でも凌ぐのは容易。
いともあっさりハンマーを振るい、炎を薙ぎ払います。



だが赤の人形が炎にかかり切りになっているうちに、またも黒の人形はハンマーの距離が届かない位置に。

「ブリザガ!!」
ここまで見てくださった読者様方、とくとご覧あれ!
一つ、また一つと白い氷塊が赤の人形を中心として降り注ぎます!!
誰が言ったか、死と生の境目は赤と白のコントラストで彩られているとのことですが、今の状況はその表れでしょうか!!
一つや二つをハンマーで砕くことは容易、しかしその数、到底短時間で数えきれるものではありません。


やや、どうしたことでしょうか!!
躱すことに力点を置かず、ハンマーを振り回しながら黒の人形へと突撃し始めたではありませんか!!
言うまでもなく、氷の刃が赤の人形の体に突き刺さります。
だが、それは脳や心臓のような、身体の中枢を司る箇所には当たりません。
刺傷と凍傷、2つのダメージを食らってもひるまず、殺すことに力を入れるとは、どこまでも人形の愚かさを語っているようですね。

しかし、黒の人形は邪悪な刃を振るい、いち早く鈍器の攻撃を受け止めます。
耳に悪い、ギィギィと金属と金属が擦りあう音のみが聞こえるだけです。
死線と視線が交錯し合う場所から、いち早く離れたのは黒の人形の方。
赤の人形の方も、負けじと距離を詰めようとします。


ハンマーを振らんとしたその腕が、急に動かなくなります。
先程のブリザガによるダメージが原因でしょうか?
否、黒の人形のもう一つの氷技、呪縛の冷気でございます。
同じ氷術と言っても、こちらはほとんど肉体にダメージを与えない代わりに、神経に作用する術です。

だが、こんな術でいつまでも動きを封じられるような赤の人形ではありません。
彼という人形の糸を握っているのは、たとえ世界が変わってもカゲの女王のみ。
その命令に従い、相手を滅せんと無理矢理体を動かします。


そして、落とされるのは、またも黒い雷。
完全に予想の外を突かれた黒の人形に、今度こそ黒い槍が貫かんと迫ります。


雷は落ち、されど躱さず。

「参れ!!黒龍!!」
その傘代わりになったのは、召喚術と共に、現れた黒いとぐろを巻く巨大な龍。
鱗を全身に纏い、凶悪な牙を持っていますが、その瞳には生気は微塵も感じません。
まあ人形と化した男に、それまた操られる獣ですから、言うまでもありませんが。
そこで、まだ動くのに難儀している赤の人形に、更なる敵がやってきます。
それは、彼が別の世界で乗ったこともある、電車でした。


列車というものを知らない黒の人形が意図してやったことではありませんが、赤の人形が止まった場所は、線路の上。
せいぜいが足を妨げる出っ張り程度にしか思っていなかった二人に、予想外だったようです。
前門の虎後門の狼もとい、前門の龍後門の鉄獣。
どちらの一撃も食らえば、女王の力を得た者だろうと、良くて瀕死。

「これで、終わりか……。」
黒の人形は勝利を確信すると、とどめを黒龍と鉄獣に任せ、踵を返します。
これは別に、黒の人形の同情などではありません。
ただすべての参加者を皆殺しにせねばならないため、とどめを刺す時間が惜しいというわけです。


鋭い牙を見せ、龍が迫ります。
後ろは列車。避けるにも体が思うように動かない以上、難しいです。
これにて万事休すでしょうか、


否、これで終わるほど、容易な存在ではありません。
人形と化したとはいえ、彼はまた勇者。
3次元の肉体から、持っているハンマーもろともペラリと薄くなり、攻撃の当たる範囲を大幅に減らします。
だが、これだけでは竜の牙の隙間に入れど、1ミリの隙間もなく迫りくる鉄獣からは、逃れることは出来ません。
ならばこれで哀れな赤の人形はこれで終わりでしょうか?
否、そのまま覚束ない体をどうにかぐるりと回し、筒のような形になり、列車の下の隙間へと逃れます。


獲物を逃した召喚魔は消え、何も残すことなく列車も進みます。
残されたのは、一つの赤の人形だけ。
先に述べたように、この戦いは犠牲も出ず、殺害者が成果を上げることもなく、全く読む価値のないものだと。


かつて自分も乗った列車を見た赤の人形は、そう遠くない場所で下車した者たちを襲うのか、黒の人形を追うのか、はたまた別の人間を狩りに行くのか。
どうするのかは分かりませんが、それはまた別の話。


ではまたどこかで。
この二束三文にもならぬ話を読んでいただいた、物好きな読み手様が、今度はもう少し含みのある話に出会えるように、幸運を。




【D-7/荒野/一日目 黎明】
【ゴルベーザ@FINAL FANTASY IV】
[状態]:健康、呪い MP消費(中)
[装備]:皆殺しの剣@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、参加者レーダー青
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を全滅させ、セシルを生き返らせる
1.大魔王の城を目指し、参加者を殺して回る。
2.キングブルブリンには手駒として働いてもらう。

※参戦時期はクリア後です
※皆殺しの剣の呪いにかけられており、正常な思考ではありません。防御力こそ下がっていますが、魔法などは普通に使えます。


【マリオ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険  
[道具]:基本支給品×2 ランダム支給品0~3 ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVII
[思考・状況]
基本行動方針:殺す

※カゲの女王との選択で「しもべになる」を選んだ直後です
※カミナリなど、カゲの女王の技もいくつか使えるかもしれません。


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最終更新:2021年07月13日 10:55