勝負は、意外なくらいあっけなく終わった。






レンタロウの石ころ帽子のエネルギーが切れるまでもなく、ガボが居場所を探り当てる。
風の妖精の力を纏ったブーメランは、殺傷力こそ低いが、攻撃範囲は広い。
よしんばガボが狙う気なくとも、誰かに当てることは出来る。
そして巻き上がる風が、見えないレンタロウの石ころ帽子をはぎ取った。
再び投げた疾風のブーメランのダメージに、レンタロウの幽体が異変を感じ、戻ろうとするも時すでに遅し。


肉体がいる場所に戻った時には、既に近くにガボがいた。

「オマエが本体か!姿を消しても、オイラの鼻はごまかせなかったようだな。」
「もしやあなた、俺を殺すつもりですか?やめてくださいよ。もしそんなことしたら、あなたも俺と同類になりますよ。」

今まで美夜子を襲ったことなどどこ吹く風のように、ガボの行動を咎めようとするレンタロウ。
「安心しろ、殺すつもりはねえ。」
大きく息を吸い込んだと思うと、ガボは口から、ピンク色の息を吐いた。


「な……これは……Zzzz……。」
抵抗を見せるも、既に肺には眠りを誘うガスが大量に入っており、レンタロウは目を閉じた。
そこで、半透明だったレンタロウの魂が姿を消す。
意識を手放したことにより、魂は彼の肉体に戻った。

持っていたナイフは、主を失い、地面に落ちる。
そして、レンタロウ自身もナイフに同調するかのように、ゴロリと大の字になり、地面に寝転がった。

そこへ、猫の姿をした少女がやってくる。
丁度月が雲に隠れ、猫の姿に戻ったところだ。


「あなた、助けてくれたの?どうして?」
見ず知らずの自分を助けた、あまり良い恰好とは言えない少年を、怪訝な顔で見つめる。
「わかんねえけど、コイツからすげえ嫌なニオイがした。
猫の姉ちゃん、コイツは何者なのか知ってるか?」
「会ったことはないけど、そのままにしてはおけない人みたいね。それと、ありがとう。」


レンタロウは、何事もなかったかのように眠っている。
しかし、厄介なのはこれからの相手の対処法だ。
目を覚ましたら、縛ってようと何してようと幽体離脱されれば意味がない。
この男を二人で運び、起きるたびに眠らせるというのもまた、面倒な手法だ。


「どうしようかしら。」
せっかく助かったというのに、根本的な解決が出来てないことに、悩む美夜子。
「オイラにいい物があるぞ。」

提案を出したガボは鞄から、一本の剣を出す。
青の柄と黄色がベースの刀身を持っており、十字架をモチーフにした、神聖なデザインをしていた。

「これ、オイラの仲間が使っていた、ゾンビやお化けに強い武器なんだ。」
「そんな物があるの?それにゾンビにお化けって?」
悪魔や使い魔と戦った経験のある美夜子でも、驚きの話だ。
「ああ。最初の会場にオルゴ・デミーラって怪物がいただろ?オイラ達はアイツやその手下とも戦っていたんだ。」

ガボの話によると、彼の世界では竜、ゾンビ、怪鳥など、様々な怪物に対応した武器や剣技があるという。
武器のサイズとしては、美夜子に支給されたオチェアーノの剣よりも小ぶりだ。
逆に言えば、猫の姿にされていても、どうにか使うことが出来る。


「でも、あなたは、私より小さいのに凄いわね…。」
ガボはどうにも嘘をついているように見えなかった。
彼の純粋な瞳からは、魔界が迫ってきているという自分の話を信じてくれた、のび太たちから近い物を感じた。

「ああ!オイラは白い狼の子供だからな!!」
「え、狼?どういうこと?人間じゃなくて?」
「姉ちゃんこそ猫じゃねえのか?」

呪いで人間にされたガボと、呪いで猫にされた美夜子。
話がこんがらがるのは当然でもあった。
ひとまず話を整理して、美夜子にゾンビキラーを渡すガボ。


「ありがたいけど、あなたの武器はいいの?」
「オイラは剣は好きじゃねえ。ブーメランで充分だ!
そうだ姉ちゃん、オイラの仲間……。」


ガボが自分の仲間を、美夜子が知らないか聞こうとしたところ、ボン、と爆ぜる音が聞こえた。
それに反応して、音の方向を見てみると、向こうの森から煙が上がってきた。
「あれは……オイラの仲間かもしれねえ!姉ちゃんはそいつを見張っててくれ!!」
「ちょ……ちょっと……!!」

美夜子の静止も無視して、森の方へ走っていくガボ。


瞬く間に姿が小さくなっていき、完全に見えなくなると、ふうっとため息をついた。
相も変わらずレンタロウは寝転がっている。
片手を曲げて、残った手足はまっすぐ伸ばして。


(そうだ!!)
美夜子はここで、肝心なことを思いだした。
レンタロウが持っていたナイフは、どこへ行ったのか。
あの時彼は幽体化していたが、攻撃した時の得物の手ごたえはあったため、ナイフは本物だろう。
それを取り上げなければいけない。

しかし、ザックを探っても、肝心なものは出てこなかった。
ならば森から肉体の場所へ戻る際に落としたのだと推測し、レンタロウ本体を置いて走り出す。
安堵していた彼女は、急に焦り始める。

(ナイフはどこよ……。)
あれを残しておけば、きっとよからぬことになる。
しかし、具体的な「よからぬこと」とはどういうことなのかまでは、想像できなかった。



(いつまで寝てると思ってたんだ?)
ヒュッ、と飛んできた短剣が、美夜子の後頭部に刺さった。

「なんで……?」
一言、疑問をこぼした。
だが、答えを聞く前に、彼女は絶命した。
刺しぬかれた短剣の、舞い狂うような追加の刺突によって。


「ああ、あなたは醜い、獣の姿だったのですね。」
ガッ、と動かなくなった美夜子の死体を蹴りつけるレンタロウ。


元々眠りに落ちた際に、ナイフはレンタロウの体の下に置かれていたのだ。
それは彼が意図してやったことではない。
だが、相手の体に触れ、起こすことを嫌った美夜子に、見つけられずに済んだのだ。


そして、遠く離れていた美夜子に刺したのは、彼の能力あってのものでは無い。
それは、彼が持っていたダンシングダガーにあった。
意識さえあれば、持っている者が念じるだけで、踊るようにひとりでに相手を刺しに向かうのだ。
遠く離れた位置の爆音によって目覚めた直後も、報復の機会を目を閉じて待っていたのだ。
そして、二人組の片割れが走っていったのは、この上ないチャンスだった。


気が済むまで美夜子を蹴とばすと、捨て猫のような姿になった美夜子を置き去りにし、先へ進むことにした。

(さて、どこへ向かうとするかな?あの汚いガキにも復讐したいが、アイツはどうでもいいかな、しかし……。)
レンタロウが気になったのは、ガボが美夜子に渡したゾンビキラー。


(これは一体どういうことだ?)
自分が幽体離脱している際には、抜け殻になった自身へのことは気遣ったが、魂の方に被害を受けたことなど一度もなかった。
さっきの怪しい息を吐いたガキもそうだったし、この世界は自分が見たこともない能力を使う者がいるのかもしれない。


ひとまずゾンビキラーをザックに仕舞い、南へ向かうことにする。


【美夜子@ドラえもん のび太の魔界大冒険 死亡】
【残り 48名】

【C-8/平原/一日目 黎明】


【鶴見川レンタロウ(@無能なナナ】
[状態]健康
[装備]ダンシングダガー@FINAL FANTASY Ⅳ
[道具]基本支給品×2 オチェアーノの剣@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち、ゾンビキラー@ドラゴンクエストVII 石ころ帽子(エネルギー切れかけ)@ドラえもん 不明支給品0~1、美夜子の支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者がキレイな内に"表現"する。
1.南へ向かい、新たな獲物を見つける。
2.汚いガキ(ガボはどうでもいいが、邪魔するなら殺す)

※本編死亡前からの参戦です。
※肉体に瞬時に戻ることができますが、その場合所持品はその場に放置されます。
※名簿はまだ確認していません

【C-8→7/森/一日目 深夜】

【ガボ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たち】
[状態]健康
[装備]疾風のブーメラン@ゼルダの伝説ㅤトワイライトプリンセス
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラとザントを倒す。
1.C-7の、炎の発生源へ向かう
※少なくとも魔物ハンターはマスターしています。
※名簿はまだ確認していません。


[支給品紹介]
[ゾンビキラー@ドラゴンクエストVII]
ガボに支給された剣。十字架を模した形をしており、ゾンビ・幽霊系に大きなダメージを与えられる。
本ロワではこの効力がどこまで及ぶか不明。


Back← 022 →Next
030:頭隠して身体隠さず 時系列順 023:ペナルティ
021:ハートの道は悪意で舗装される 投下順
012:月光のシンデレラケージ ガボ 035:少女、楽園へ至る
鶴見川レンタロウ 043:Crazy Noisy Bizarre Station
美夜子 GAME OVER
最終更新:2021年07月05日 14:17