走る。
走る、走る、走る。
本当はカゲの一族は人間の様に姿を現さずとも、影に潜りながら場所を転々と移動することが出来る。
でも、それは出来ない。
影に潜っていれば、マリオを見逃してしまうかもしれない。
アタイはマリオを探さなければいけない。
最早迷っている場合ではない。


マリオは絶対に悪くない筈なのに。
他の誰でもない、アタイがそれを証明しないと。
マリオはアタイを助けてくれた。
独りぼっちでどうすればいいのか分からない時に、イチコロバクダンを探してくれた。
自分だって姿と名前を奪われていたのに、アタイに優しくしてくれた。


マリオが人殺しなんてするはずがない。
きっとあの青い生き物の見間違えだ。
それか、あいつが嘘をついたんだ。


「待ってーーーっ!!」
後ろから声が聞こえた。
さっき魔法で焼いたはずの、あの青い生き物の声だ。


その声を聴いた瞬間、アタイの胸の奥に、カゲよりも黒いもやのような何かが渦巻いた。
きっとあいつを放っておけば、またマリオに対して酷いことを言う。
そんな言葉はもう聞きたくない。
聞きたくない
キキタクナイ
聞くことになる前に……殺る。

殺れ!!


指をふり、今度こそあの生き物を焼き尽くそうとした。
真っ赤な火柱が爆ぜる。
しかし、炎は敵を焼くことなく吹き飛ばされた。


青い生き物が持っている杖が光ったと思ったら、竜巻が起こり炎を吹き飛ばした。

「ごめん……でも、話を聞いて欲しいんだ!」
「イヤよ!!」
「待って、ぼくはーーーー。」
怒りに任せ、言葉と炎をぶちまける。
しかし、またも炎は杖から出る竜巻によって吹き飛ばされた。


タダでは済まなかったはずだが、それでも決定打は与えられなかった。


「まだだ!!」
「どこかへ行って!!」
さらに魔法をぶつける。
炎は勢いを増し竜巻を破る。
熱だけではなく、怒りによって増した魔法の炎は、風圧も並ではない。
跳ね返された竜巻の威力も相まって、青い生き物は何メートルか吹き飛ばされ、ゴロゴロとボールの様に転がっていく。

心には真っ黒なものがまだ渦巻いている。
これを払拭してくれるのは、きっとマリオしかいない。
どんな時でも優しかったマリオがしてくれるはず。
青い生き物に背を向け、構っていられないとばかりにまた走ろうとする。

「もうやめてくれ!!きみはこんなことしたいんじゃないだろ!?」
身体のあちこちに泥を付けながらも、どうにか立ち上がる。
しかもそのまま青い生き物はアタイに向かってきた。


この生き物は、頑丈だからか、はたまたワンワンのように炎の耐性があるのか分からなかったが、別の方法を使うしかない。
あの技だ。
アタイの帽子をずらし、ゆっくりと相手を見つめる。


そこで、投げキッスを送った。
「な………!?」
相手の瞳が焦点を失い、短い脚は千鳥足になる。
成功した。


メロメロキッス。
得意とする炎が効かない相手に、アタイが使える、魔性の投げキッスだ。
最も混乱している時間はさほど長くはないが、今のうちに逃げてしまえばいい。


しかし、相手はあろうことか、地面に頭を叩きつけた。
一度ならず、何度も何度も。
偶々地面に転がっていた石が砕ける。
混乱によるものでは無い。
逆に、混乱状態から脱するために、自分の頭に衝撃を無理矢理与えた。

「アナタ、どうしてそこまで……。」
「ぼくには、のび太君っていう、大切な友達がいるんだ。
ドジでぐずで怠け者だ。でも、誰よりも優しいし、他の誰にも持ってない凄い所がたくさんあるんだ!!」

トモダチ。
アタイと同じ。
誰かが誰かを想う心。
そこに大きさは存在しない。


「だから、こんな所で壊れるわけにはいかないんだ!!」

アタイは思い違いをしていたようだ。
この生き物は、アタイの大切な人を悪く言う、嫌なヤツだと思った。
でも、アタイと同じで、大切な人がいる。


「あ、アタイは……アナタを……」
「………。」
「ころしたく………ない………。」

もう、炎は出せなかった。
誰かの大切な人の想いを踏みにじる。
そんなことをしてしまえば、本当にマリオに顔向けできなくなるから。

「気にしなくていいよ。さ、メルビンさんの所に戻って、一緒に謝ろう。
それからさ、君の大切な人を探しに行こう。
ぼくも勘違いしていたかもしれない。見間違えか、誰か悪い奴が変身していたんだろう。」


「アタイ……ごめんなさい……アタイは……。」
泣き崩れて、その場に倒れこむしか出来なかった。
感情に身を任せて、正常な判断を失って、そのせいで髭のお爺さんも、目の前の生き物も傷つけてしまった。


でも、もう大丈夫。
傷つけてもなお、マリオを探すのに協力してくれると言ってくれる人がいる。
マリオだって、クリスチーヌやノコタロウだって、最初は敵だった。
けれど、旅を通じて、仲間としての絆が結ばれた。
ちょっとした間違いで喧嘩しても、また仲直りすればいい。


どうしてこんな大事なことを、忘れていたのだろう。


丁度その時、この世界で初めての太陽が顔を出した、
その光は、髪の毛の無い彼の頭を照らした。


カゲは濃くなっても、それだけ照らしてくれる光がある。
それは絶対に消えることは無い。






はずだった。




急に背筋が寒くなる。
辺りに、雹が混じった風が吹く。
空を見上げれば、山ほどの氷の塊。

こんな攻撃を受ければ、無事では済まない。


「「危ない!!」」
同時に二人が叫んだ。
でも、まだ間に合う。
カゲの力で地面に潜って、やり過ごせればーーーーー



あろうことか、青い腕はアタイを突き飛ばした。
拒絶ではなく、防衛のためなのだろう。
だが、そのせいでカゲに逃げられたのはアタイだけになってしまった。


氷が雨あられと、名前も聞いていない、青い生き物に降り注ぐ。
何か声を上げていたが、すぐにかき消された。


すぐに黒い仮面の男が現れた。
男は禍々しい剣を一振り、そうしていともあっさり、さっきまで生きていた者の命が、砕かれる。

アタイはカゲの底で、すぐ近くにいた男の悍ましさに震え、何も出来なかった。
誰かの友達の物語は、これにて終わりを告げた。
だが、この物語はまだ終わっていない。


カゲは闇を呼び寄せ、報われることもなく物語は続く。
しかも、その闇はまだ終わることを知らない。


【ドラえもん@ドラえもん のび太の魔界大冒険 死亡】
【残り 40名】


【E-6北/一日目 早朝】

【ビビアン@ペーパーマリオRPG】
[状態]:健康 疲労(大) 情緒不安定(大) 仮面の男(ゴルベーザ)への恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針 マリオを探す もし彼が死んだら?
1.……。
2. 探す途中に、危険そうな存在がいれば殺す
3.マリオに会って、本当のことを知りたい

※本編クリア後の参戦です
※ザックには守の呪力で描かれた自分とマリオの絵があります。


【ゴルベーザ@FINAL FANTASY IV】
[状態]:健康、呪い MP消費(中)
[装備]:皆殺しの剣@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、参加者レーダー青
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を全滅させ、セシルを生き返らせる
1.大魔王の城を目指し、参加者を殺して回る。
2.キングブルブリンには手駒として働いてもらう。

※参戦時期はクリア後です
※皆殺しの剣の呪いにかけられており、正常な思考ではありません。防御力こそ下がっていますが、魔法などは普通に使えます

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043:Crazy Noisy Bizarre Station 時系列順 045:最高の恋人
投下順
040:想いは呪い呪われ ビビアン 056:エンドロールは止まらない
ドラえもん GAME OVER
032:薄っぺらな人形劇 ゴルベーザ 056:エンドロールは止まらない
最終更新:2021年09月04日 22:18