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//578 :とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:17:27 ID:Q9pVXBYI
日が傾きつつある第七学区の喫茶店に上条と神裂は向かい合って座っていた。
「で、話っていうのは?」
「ええ、それを今からお話しようと思ったのですが……」
神裂は辺りの席や喫茶店の外を自席から見渡す。誰かに聞かれちゃマズい事なのか、
と上条は適当に考えたが、店員以外誰もかった事に逆にがっくりしているように見えた。
「誰か待ってんの?」
「……ええ、実は土御門も一緒に来るはずだったのですが「用があるから遅れるにゃー」とか、
ふざけた言葉を残してどっかに行ってしまったのですよ。そろそろ来てもおかしく無い時間なのですが……」
余談だが、さきほど上条が神裂の胸にダイブした件については「急いでいるので謝らなくて結構です」と、
許しているのか怒っているのか解らない返答を頂いた。
だが、逆に言うとそれほど重大な話という事で、十中八九それに上条も巻き込まれるという事を意味している。
(……不幸だ)
上条が久々にお決まりの言葉を吐いた時、カランコロンという音と共に、
金髪アロハシャツな噂のあいつが喫茶店に入ってきた。
「遅れてすまんにゃー、ねーちん。おっと、かみやんはすでに着席済か」
「遅いですよ土御門。あなたが居ないと話が始められないんです」
「おし。じゃぁ、三人揃った所で、お話をさせて貰うとするかにゃー」
「にゃーにゃー言うのはやめなさい。耳障りです」
//579 :とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:19:01 ID:Q9pVXBYI
上条はそれからしばらく話を聞いた。相変わらず訳の分からない専門用語が満載の
暗号トークだったが、上条は辛うじて、次の事を理解した。
一つは上条に同行を願いたい仕事があるということ。
一つはあまり危険な事は無い仕事だと思うのであまり心配しなくて良いということ。
一つはその仕事は『とある超能力者』に接触する目的があるということ。
一つは、これはあまり聞きたくなかった事だが、仕事はイギリスで行うということ。
一つは『最大司教(アークビショップ)』とよばれるイギリス清教のトップからの
直々の指令(つまりはイギリス清教側の仕事)だということ。
そして、最後の一つは、
その『とある超能力者』は『原石』の人間だということ。
「……以上だ。どうだかみやん、理解できたか?」
「まぁ、大体。それで、原石ってなんだっけ?宝石か?」
土御門が、うわこいつありえねーという顔をして、となりの完全魔術側の神裂にさえ
呆れた目で見られた上条は少し俯いて、「……分からないので、説明お願いします」と
小さな声でお願いした。
「『原石』っていうのは、学園都市の『外』で自然に生まれた能力者のことだ。つまりは
かみやんみたいな『生まれつき』や、『外』で成長していくうちに勝手に『力』が発現した能力者の
ことを『原石』と言うんだ。どうだかみやん、理解できたか?」
「……う~ん、つまりは、俺はその『原石』の能力者に会いにイギリスまで行かなきゃならんと。そういう訳か」
「つまりは、そういう訳だな。物分かりが良くて(?)助かったにゃー」
「一つ聞きたいんだが、なんで能力者に会いに行くのに魔術サイドが動くんだ?
普通は科学サイドがする仕事だろそれ」
「いえ、実はそうゆう訳にもいかないんですよ」
神裂の言葉に「?」が二,三個浮かんだ上条に対し、神裂はさらに言葉を続ける。
「その『能力者』はイギリスに居る、というのも理由の一つですが……」
神裂は一度息を止めてから、
「主点の『とある能力者』には、超能力と同時に魔術を使うことができる、という興味深い噂があるのですよ」
在り得ないことを口にした。
//580 :とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:20:43 ID:Q9pVXBYI
「超能力と魔術を同時に……?」
上条は突拍子のない話に目を丸くした。
超能力者に魔術は使えない。使ったとしても三沢塾の時の様に体中に傷を負って、
下手をすれば死んでしまうかもしれない。上条にとっても常識になりつつある事を
神裂は一文でぶっ壊した。
「ええ。どこから流れた噂かは分かりませんが、調べる必要があると清教のトップが判断しました。
まぁ、実質我々イギリス清教と学園都市の共同作業……ということでしょう」
調査する対象が『超能力者』という事で,どうやら学園都市も手伝うらしいが、
上条には一つだけ、決定的に引っ掛かることがある。
「……で、なんで俺がついていくの?」
「……それについては私も『最大司教』に問い合わせました。あなたを連れて行くよう
指令したのも彼女ですから。そしたら電話に出ない上にFAXで、
『女には人には言えない秘密が一つはありけるのよ。おほほほ』
……という思わず抜刀したくなるような迷惑FAXを送ってきてそれから全く連絡が着きません。
……えっと、それほど危険な仕事では無いと思うので付いてきてくれますか?」
そんな憤慨エピソードを聞かされた後に「ごめんなさい行きません」とか絶対言えない
お人良し上条であったが、またしても問題が浮かんでくる。
「インデックスはどうするんだ?一緒に連れて行く…って訳にもいかないし」
「あぁ、彼女に関しては多分……多分ですが、大丈夫です」
//581 :とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:23:13 ID:Q9pVXBYI
「え、ちょ、こもえ!?」
「はいはーい、ちょっとお邪魔させてもらいますよー」
割と散らかっている部屋に月詠小萌がどしどし上がってきた。
「え、あの、まだ食べかすが……」
インデックスが自分で食い荒らした食料を頬を赤らめながら、光速で掃除していく。
「で、なんで、こもえがいきなりとうまの家に押し入ってきたの?とうまならまだ帰ってないけど」
「う~ん、よく分かんないですけど「かみやんは一週間ほど家に帰らないと思うから小萌せんせーが
インデックスのとこにいってあげたほうが良いんじゃないですか?」とか、久々に真面目な顔した土御門ちゃんに言われましてねー。とりあえず来てみました。一応寮監の許可は取ってますから大丈夫です」
当然、完璧幼児体型の月詠小萌が寮の許可など取れるはずが無いため、無断で寮の部屋に入ってきた上条担任であったが。
「!? ということは、またとうまは私を置いて危険な事件に首突っ込んでいるんだね!?
今回という今回は絶対に絶対にして許さないんだから!!」
鋭い歯を丸出しにして野獣のように吠えるインデックスに対して月詠は落ち着いた表情で、
「帰らないといってもお友達の家で一週間缶詰勉強会らしいですよ?」
え、とインデックスの歯が若干丸みを帯びる。冬休みも近いし、まあ在り得ないことでは無いのだが、少女の顔はなんと言うか交際相手にフラれた時に見せるような絶望感溢れる脱力系の表情に変わっている。
どっちにしたって自分に言わずにどっかに行ってしまうことには変わりは無い。
「………いいもん。どうせとうまにとって私なんか…………」
アックア戦あたりに見せた極スネモードに突入した哀れな少女に、月詠小萌は持ってきた
紙袋から悦の表情で最終兵器を繰り出す。
「ちなみに今ここには、デパ地下特製もう食わずにはいられない最強無敵の百戦錬磨、
グルメリポーター独占のロールケーキがあるのですが……まぁその様子ですと、
『あなたは』残念ながら食べらないようですね。先生はとても残念です。はい。」
ニヤニヤしながらロールケイク(発音注意)にフォークをブッさそうとする月詠の手に、
空腹少女の手が添えられる。
「……それとこれとは別なんだよ」
次の瞬間には元の欲望丸出しのシスターさんに戻ったインデックスが凄まじい勢いで
ロールケーキを口にもりもり頬張っていた。
月詠小萌は心の中で小さくガッツポーズをする。
作戦成功、と。
どっちにしたって、本当は上条がイギリスに行くことなど月詠は知らない訳だが。
//582 :とある禁種な能力者:2010/06/06(日) 20:26:05 ID:Q9pVXBYI
「……なるほど。土御門は小萌先生を騙してインデックスの相手をさせているから
大丈夫……と、そう言いたい訳か」
「ま、そうゆうことだ。じゃあ早速、第二三学区に停めてある七〇〇〇キロオーバーの
内臓圧迫飛行機に乗ってイギリスへ……」
「行かねーよ。そんなんで納得できるか」
疲れた顔で席を外そうとする上条に土御門が追加説明を施す。
「まぁ、実際『接触』じゃなくて、『護衛』なんだけどにゃー」
上条の動きが若干鈍る。『護衛』ということはその『超能力者』はだれかに狙われている事を
意味するのではないか?
なんというか、上条が黙ってスルーできない事を的確に突いている気がする。
土御門の声が少し低くなる。
「超能力と魔術が同時に使えるってのは相当美味しい話らしくてな。『外』にいる
『研究者気取り』の奴らが、その『能力者』を狙っているらしい。で、『安全のため』に
俺らが先に接触した方がいい……ってのが『上の報告』だ」
その『研究者気取り』を知っている者なら、
それを『スターゲート計画の残党』と呼ぶだろう。
当然、上条には理解できないが、要するに狙われているから助けましょうという事だけは解った。
正義感溢れる上条としてはなんとなく行く気になってきたが、自分が手伝されるのはやっぱり
納得がいかない。特に理由が分からない辺りが。
悩む上条にトドメの一言が突き刺さる。
「かみやんのいない状態での『仕事』は上層部から禁止されてるからにゃー。
もし、かみやんが行きたくないって言っちゃったら、ぶっちゃけ『その能力者』死んじゃうかもよ?
例の『研究者気取り』さんは結構乱暴だから」
やっぱり自分のせいで人が死ぬのは忍びないですよね、と神裂が棒読みで言ったのを
合図に上条の心は折れ、同行を許可してしまった。
不幸だー、という上条の声は一陣の風ともに消えて無くなった。
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