とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 1-289

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匿名ユーザー

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この邂逅より時を遡ること少し。
「で、黒子。アンタいつまでついて来る訳?」
「それは愚問ですわお姉様。お姉さまの行く先こそがわたくしの目的地ですわ」
御坂美琴と白井黒子は常盤台中学の下校ルートからは幾らか外れたところにあるファミレスの中で、噛みあっている様で実は噛みあってない会話をしていた。
「全く。風紀委員の仕事とかは無いの?」
「ええ。先日のテロ事件で働きを評価していただきまして、今日は完全完璧のフリーですの」
対面に向かい合って座った二人は、互いに注文した食事を順調に減らしている。
ちなみに美琴はミルク風味ミートソーススパゲッティーにオニオンサラダ、白井は茸ソースのハンバーグとパンのセット、飲み物は美琴はホットミルクティーで白井は黒烏龍茶と言ったメニューであった。
「あー、こないだの?」
「はいですわ。ですから、今日は前々から計画していた『お姉様密着大作戦』を実行しようと思いましたの」
「何なのよ、その聞くだけで気分が萎えそうになる作戦は。で?」
げんなり、と言った感じで美琴がフォークを振りながら先を促す。
「最近のお姉様の行動はどこかおかしいと思いますの。門限ギリギリまで出歩く回数も以前に増して増えたような気も致しますし、こうやって寮や食堂以外でお食事をとろうとする事も多くなったような気がするんですの」
ぴたり、と一瞬美琴の動きが止まる。しかし何事も無かったように再び動き出し、
「ふーん、そうだったかしら」
と、白井の顔を一瞥する。
「それで?私の行動が変だからどうしようっての?」
「そんなことは聞くまでも無い事ですわ、お姉様」
美琴の視線を真正面に受け止めて、白井は宣誓する様に右手を胸に当てて謳い上げる。
「お姉様についた悪い虫を排除するに決まっているじゃありませんか」
ずべしゃあ、と言う効果音がつきそうな程の大きな動きで美琴はずっこけた。
「まぁまぁまぁお姉様ったら、そんなわかり易いリアクションをなさっては一目瞭然ですわよ」
「な、な、な、なんて事を言うのよアンタはーっ!?」
がばっと起き上がりながら、美琴は叫ぶ。
どうでもいい事だが、ここが公の場という事を忘れてはいないだろうか?
「どこをどうやったらそんなトンデモな話になるのよ!て言うか大体悪い虫ってのは何!?」
「それは勿論、あの殿方の事ですわ。夏休みの終わりの日に寮の前でなさっていたやり取り、忘れたとは言わせませんわよ?」
「あ、アイツは全然、そんなんじゃないわよっ!何言ってるのよ?」
「そんな!?わたくしの推理が間違ってるとでも?」
「間違いも間違い、大外れよ!!」
怒りの所為か、顔を紅潮させて美琴は吼えた。
……隣の席のカップルが刺激しないように席を立っていく。
「……でしたら、何故このような所でお食事をなされるのですの?」
至極当然と言える疑問を、白井は投げかけた。
「……今日はそういう気分だったのよ」
そう言って、温くなったホットミルクティーを一気に呷る。
「まぁ、そうだったのですの。わたくしはてっきりお姉様が、このファミレスはあの殿方と会ったことがある場所でここでなら偶然会えるかもいえ例え会えなくてもそんな想い出に浸りながら優雅に食事をしたい、と思っておられるのかと思いましたわ……って大丈夫ですの!?お姉様!」
白井は突然咽た(奇跡的に口の中のものをぶちまけると言う醜態は晒さずに済んだ)美琴の背中を擦ろうとして、テーブルを回り込もうとする。
そんな白井の動きを片手で制し、
「えほっ……大丈夫よ。ったく、いきなり変なこと言わないでよね」
と言いながら、カップを片手に席を立つ。
「あら、おかわりですの?でしたらご一緒いたしますわ」
と言って、白井も自分のコップを空にして席を立つ。
「別に一緒に来なくてもいいわよ」
「そうは参りませんわ。お姉様ある所わたくしありですもの」
はいはい、と空いてる片手をひらひらとさせてドリンクバーへと向かう。
そこに待ち受けるモノを知らずに。



で、現在に戻る。
口火を切ったのは上条だった。
「御坂と白井じゃねーか。こんな所でも会うなんて奇遇だな」
その言葉に、白井が反応する。
「まぁまぁまぁなんという事でしょう!噂をすれば影が射す、と言うのはあながち間違った言葉でもございませんのね?」
これに美琴が過剰に反論する。
「な、何言ってんのよ黒子!誰が誰の噂をしてたって言うの?」
「あら、そう言えば噂をしていたのはわたくし一人だけでしたかしら?」
えへ、黒子失敗☆、などと頭をコツンと叩きながらウインクする白井。
そして、そんな流れについて行けないのが若干一名。
「………………。誰?」
ぽつり、と呟かれた姫神の問いに上条が答える。
「あぁ、姫神は会った事無いよな。えーと……」
一瞬の逡巡後、続ける。
「常盤台のレベル5ビリビリ中学生とそのルームメイトの風紀委員だ」
「ちょっと!何なのよその説明の仕方は!」
美琴の抗議もどこ吹く風。
「常盤台のお嬢様でもファミレスなんかに来るんだなぁ。もっと良いもの食えるんじゃないのか?」
「それは勿論そうですわ。グレードで言えば、こちらの料理など足元にも及ばないクラスだと個人的には思いますわ。まあ、これはこれで良いものだとは思いますけれど」
「って黒子も普通に流すんじゃないっ!……それで、そちらの方はどこのどちら様?」
一頻り激昂して深呼吸一つ。とりあえずの平静を取り戻して、今度は美琴が問う。言葉尻に微妙な殺気が滲み出ていたりするが。
「姫神秋沙。クラスメイトだよ」
この上条の言葉に、
「へぇ……、クラスメイト、ねぇ……」
なぜか押し殺すような声で唸る美琴と、どことなく楽しそうな顔になる白井。
二人の視線の先には、しっかりと繋がれた上条の右手と姫神の左手がある。
「ははぁ、クラスメイトさんですの。でも、ただのクラスメイトだ、とは仰いませんわよねぇ?」
ぷぷぷ、と笑いそうな仕草で口元を押さえながら白井が言ってくる。それを聞いて、更に美琴からの視線が強まる。
「……えーと」
(何、何なの、何なんですかこのプレッシャーは!?何かマズい事を言いましたかー!?)
強いて言えば、その鈍感なところが拙かったかと思われます。
美琴からの理不尽なプレッシャー(上条主観)を受けて硬直する上条。
と、姫神がその上条より一歩前に出る。
「始めまして。私。姫神秋沙」
ぺこり、と一礼。
「それで。あなたたちの名前も教えてもらえると。ありがたいのだけれど」
姫神の問い掛けに、美琴達も素直に応じる。
「御坂美琴です。こちらこそ始めまして」
「白井黒子と申しますわ」
二人からの答えに、こくり、と首を縦に振り、
「御坂さんと。白井さんは。上条君と私の関係が気になるみたいだけど。私たちは。本当に」
ここで一拍止まり、続ける。
「ただの。クラスメイトだから」
「あらあら、でもただのクラスメイトにしては随分と親密になさっておられるみたいですけれど?」
白井からの揶揄交じりの指摘に対しても、
「この手は。そういうのとは違うから」
「どう違うって言うのよ」
どこか不機嫌そうに、美琴が反駁する。
「これは。こうして貰わないと私が困るから。上条君に協力して貰っているだけ」
「「…………、ハイ?」」
姫神の答えに、意味が判らない、と言う風に声を上げる二人。しかし、姫神はそんな二人を気にも留めずに、いまだ固まってる上条に声を掛ける。
「君。そろそろ席に戻らないと。ウェイトレスさんが困ってる」
そう言って指を差した先には、確かに注文の品を手に空席の前でオロオロしているウェイトレスの姿がある。
「ん、そ、そうだな。じゃあな御坂、白井」
上条が二人へ声を掛けている間に、姫神は手際よく自分のイチゴサイダーを注いでいる。
そして、そのまま自分たちの席へと戻っていった。
後に残されたのは。
「……お姉様、わたくしたち体良くあしらわられたのでしょうか……?お姉様?」
「ふ、ふふ、また私はこんな扱いな訳……?」
ご愁傷様です。

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