とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 1-461

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匿名ユーザー

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上条たちの円から一歩離れた所に、話に参加できなくてむくれているのか、むすー、としている御
坂美琴がいるだけだ。
と、彼女は急に表情を変えた。
何か、信じられないものを見ているような顔だ。
上条は美琴が向けている視線の先を追ってみた。

そこには、上条たちを飲み込んだあの白い亀裂があった。

「・・・・・・ッ!?」
上条の全身から嫌な汗が出る。
「ん?どうした、カミやん」
土御門はそんな上条の様子に気付いたのか、真剣な表情になる。
インデックスとステイルも顔を上げ、亀裂に注目する。
「・・・・・・!上条当麻、離れろ!」
「うぉぁあああ!?」
ステイルは言葉と同時に、上条を蹴飛ばした。
2mほど地面を転がる上条を無視し、ステイルは素早くルーンのカードを辺りにばら撒く。
亀裂はどんどん押し広げられる。
すると、亀裂の隙間から人影が見えた。
大体腹の辺りだろう、白いスーツが見えている。
上条は身構える。
と、上条の隣に土御門と御坂美琴が駆け寄ってきた。
「もしかすると、あいつが俺達をここに連れ込んだ奴なのかもにゃー」
「マジュツとかなんとかわけわかんないけど、アレが出てきたって事は開戦ってことよね」
美琴はそこのところは理解しているらしく、バチンバチン、と火花を散らしている。
上条は一瞬、体を震わせた。
別に、その魔術師のことが怖いのではない。
幻想殺しでも打ち消せない魔術が怖いのではない。
ただ、人智を超えた魔術を使うというので、人ではないような気がしたのだ。
ビキビキ、と音が鳴り、亀裂が大きく口を開ける。
ここに、謎の魔術師との戦いの火蓋が切って落とされた。


第一回戦 Aureolus_Izard

白い亀裂の中にいる魔術師の顔が現れた。

オールバックの緑色の髪。
それは紛れも無く、アウレオルス=イザードだった。

「!?」
上条は驚愕した。
アウレオルス=イザード。
以前、三沢塾での一件で一度、拳を交えた錬金術師。
彼が上条たちをこの世界に引きずり込んだ張本人だというのか。
彼の修得した黄金錬成(アルス=マグナ)という魔術を使えば不可能なことは無いだろう。
だが彼はあの一件で記憶を失い、整形もしたというので、まともな状態でないはずだ。
上条が思考を内側に向けていると、アウレオルスは亀裂からゆっくりと出てきた。
「・・・・・・、久しいな。禁書目録(インデックス)、ステイル。君達もここにいるのか」
彼が最初に目を向けたのは身構えているインデックスとステイルだった。
どうも彼の言動は、上条たちをこの世界に連れ込んだのは自分ではないように聞こえる。
暫くすると、アウレオルスは辺りを見回し、
「存外、辺鄙な場所だ。こんなところで戦れというのか」
と、急に上条の方にグルン、と向いた。
上条はびくっ、と震え、
「な、お前――――――――――――」
「なんでここにいる、か。私にも良く分からんが、どうやら君達と戦わねばならぬようなのだ」
アウレオルスは上条の心を先読みしたように、上条の疑問に答えた。
すると、アウレオルスはゆっくりと屈んだ。
そして地面に手を付く。
そのとき、土御門はハッ、として、
「危ない!カミや――――――――――――」

彼の声と共にバキン、という音がなり、上条の足元から縦横20cmほどの岩石製の四角柱が物凄
い勢いで伸びてきた。

土御門の言葉に一瞬気を逸らした上条は反応が遅れ、無防備な胸板に柱が直撃する。
「ぐが・・・・・・ぁ・・・・・・っ!?」
肺の中の空気が強制的に吐き出され、その場に崩れ落ちる。
近くにいた土御門と美琴が慌てて倒れた上条に駆け寄ってきた。
「アンタ!」
「くそっ。これが、奴がもともと持っていた魔術だ」
土御門は地面から伸びた、長さ2mほどの岩石の柱をゴン、と殴ってから言った。
と、いつの間にかステイルが炎剣片手に上条の隣に立っていた。
「以前言ったと思うが、奴の分野は錬金術だ。黄金錬成(アルス=マグナ)は三沢塾に侵入してか
ら完成させた錬金術の最頂点だが、その1ランク下の錬金術――――――『物質錬成(コスモ=マ
グナ)』を奴が使っているということは、奴の技能は『三沢塾』の一件以前のものとなる。物質錬
成は掌で触れたものの形を分子レベルで組み替える術式だ」
「つまり、今ここにいるアウレオルスは学園都市にくる以前のアウレオルスってことだ。カミやん
の言ってた魔術師が何か、操作系の魔術を使ったのかもしれない」
上条はゆっくりと立ち上がり、恐る恐るといった感じで右手で岩石の柱に触れる。
バキッ、という音がなり、2mもあった岩石の柱がボロボロと崩れた。
アウレオルスの使う錬金術に、右手は通用する。
ということは、彼は上条たちを連れ込んだ魔術師は彼ではないことになる。
もっとも、その魔術師の話が本当だったらの話だが。
上条は改めてアウレオルスの方を見る。
彼の後ろにあった、白い亀裂はもう消えていた。
彼自身はそのままの姿勢で上条に視線を向けている。
その瞳はあらゆる感情の色が失われたものだった。
まるで、誰かに操られているような。
上条は背筋に悪寒を感じた。
ほとんど操り人形のようなアウレオルスに対して、ではない。
過去を操り、人間を操り、幻想殺しをも操る力を持った、正体不明の魔術師に対してだ。
悪寒は恐怖と憤怒からくるものだった。
「・・・・・・、上等だ。これがテメェのやり方なら。人を操って、世界を操って、皆まで巻き込
んで。そこまでして俺の成長を楽しむ為だけってんなら――――――――――――」

上条は覚悟と共に告げる。
ここにはいない、謎の魔術師に向かって。
その魔術師に幻想殺しが通じなくても、関係ない。
その魔術師が人智を超えた魔術を使っていても、関係ない。
上条はただ、守りたい者を守る為だけに、守るべき世界を守る為だけに、拳を握る。
その者を傷付けるような奴は、その世界を壊すような奴は、誰であろうと拳を振るう。
たとえその拳が通じなくても、決して諦めない。
そうやって、今まで過ごしてきた。
そうやって、今まで守ってきた。
だから上条は自信を持って告げる。

「――――――――――――そんな幻想は欠片も残さず全て喰らい尽くす!!」

言葉と共に、上条は駆け出す。
アウレオルスとの距離は10m前後。
大体6、7歩で射程圏に入る。
アウレオルスの方からバキン、という音が聞こえる。
上条は咄嗟に身構えたが、さっきのような岩石の柱は伸びてこない。
代わりに、アウレオルスの足元からよくゲームなどで目にする約1mの剣が2本、伸びてきた。
上条の足元からは何も出てこないことを確認してから再び、上条は駆け出す。
距離はおよそ、7m前後。
アウレオルスは伸びてきた剣を2本とも両手で掴むと、そのうち1本を上条に向かって投げつけた。
と同時に、バキン、と音が響くと剣がいきなり加速した。
上条は走るのを止めず、握っていた右拳を振り上げ、顔に向かってくる剣を叩き落すように振り下
ろす。
バキン、という音が鳴り、飛んできた剣は弾け飛ぶように粉砕した。
あと、5m前後。
アウレオルスは表情を変えず、無言のまま片手を上条に翳す。
するとバキン、と音が鳴り、彼の掌から静電気のようなものが散った。
だが、何も変化が無い。
上条は不審に思っていると、
ゴッ、という音と同時に彼の背後から石塊をぶつけられたような衝撃が来た。

「・・・・・・っ!!」
上条は一瞬何が起こったか理解出来なかった。
前に走っていたのでダメージは軽減されていたが、今の衝撃でバランスが崩れる。
すぐに右手で何かの圧力を受けている背中を触ろうとする。
すると、バシュッ、という空気の抜けたような音が鳴り、背中を押す圧力が無くなった。
おそらく空気を圧縮したものでも撃ったのだろう。
それを確認すると、上条はつんのめりそうになった状態から一歩踏み出し、バランスを取り戻す。
あと、2m前後。
アウレオルスは相変わらず無表情のまま剣の切っ先を上条に向け、一突。
だが上条は体を捻り、これをかわそうとする。
直後。
バキン、と音が鳴り、突き出した剣の切っ先がぐにゃりと曲がり、上条の右脇腹に突き刺さった。
上条の体内で肉が切り裂かれる音が響く。
「・・・ぎ・・・・・・がぁあああああああ!!」
傷口から伝わる灼熱の痛みに上条は歯を食いしばる。
上条は体を捻ったとはいえ、加速状態にあったので突き刺さった剣はそのまま上条の右脇腹を一閃
した。
生暖かい液体が流れ出るのを感じながらも、上条は右拳を剣に向かって横薙ぎに振るう。
先のように剣は触れた瞬間に粉砕する。
切っ先についていた上条の血液はそのまま残り、バタバタと地面に流れ落ちる。
アウレオルスとの距離は、およそ1m。
射程圏に入った上条は横薙ぎに振るった拳をそのまま後ろで構え、アウレオルスに放つ。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
ゴギン、と見事にアウレオルスの右頬に拳がめり込んだ。

瞬間。
バギン、と音が響き、アウレオルスの体が蒸発するように消えてなくなった。

「は・・・・・・?」
思わず、疑問の声が漏れる。
「な、にが・・・・・・っつ」
上条は脇腹を押さえる。

手からはべったりとした感覚が伝わってくる。
思っていたより深く切られたようで、出血量も多い。
きっと無理に体を動かしていたので溢れ出てきたのだろう。
しかし、今考えるべきはそこではない。
何故、アウレオルスは殴った瞬間、消えてしまったのか。
痛みと出血で朦朧とする思考を必死に動かす。
(何で・・・・・・、消えた?土御門は魔術的な何かをやったって言ってたけど、俺の右手(イマ
ジンブレイカー)はあの魔術師には通用しないって言ってた。なのに何で?意図的に消したのか?)
上条は後ろで待機しているであろうインデックスたちの方へ振り向こうとする。
魔術に疎い上条は目前の問題をうまくまとめられない。
プロの魔術師であるインデックスや土御門やステイルなら予測をいくつも立てることができるだろ
う。
しかし、途中で上条は気付いた。
さっき上条が無策に駆け出し、アウレオルスの攻撃を何発か受けたとき、何故誰も警告の一言も
かけなかったのか。
少なくともインデックスは何か声をかけてたと思う。
だけど今は、過ぎた事より目の前で起こった問題を解決するのが先だ、と結論付け、

だが、そこには後ろを向いて地面にへたり込んでいる御坂美琴以外、誰もいなかった。

「ぁ・・・・・・、え・・・・・・?」
上条の思考回路は一瞬真っ白になった。
現状がまったく理解できない。
とりあえず上条は、唯一そこにいる美琴のもとへ、ふらつく足を動かし向かう。
「お、おい、御坂。みんなは・・・・・・どうした?」
上条の声に美琴はビクッと震え、思い出したように上条の方に振り向き、
「あ・・・・・・、アンタ、いたの?」
美琴は怯えるような、びくびくした目で上条を見る。
「何が・・・・・・あったんだ?何でお前だけ・・・・・・」
「わ、分からないの。アンタが叫んで飛び出していった時に、急に後ろから・・・・・・変な音が
聞こえてきて。振り向いてみたら、みんな・・・・・・いなくて」

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