【初出】
禁書SS自作スレ>>686-687
禁書SS自作スレ>>686-687
朝。
久しぶりに感じる朝という感覚は妙に清々しいものだった。
結標・淡希は布団を片付けつつ窓の外を見て太陽の眩しさに思わず目を瞑る。
「いい天気」
思わず笑みを浮かべてしまうほどの晴天。
どうやら夜中から朝方まで雨だったようで窓から見える地面も濡れているが、逆にそれすらも心地良い。
結標は青色のシンプルな寝間着に包まれた身体で伸びを一つ、青い空を見つめる。
雲一つ無いとはこの事、と言える程何も無い青過ぎる空。
正直この家の惨状と交換して欲しい程だった。
「………」
伸びを終えて後ろを振り返る。
其処に待っていたのは現実。時々、ゴミの山。
結標の能力である【座標移動】で一箇所に纏めたのは良いが、ハッキリ言えば処分に困る。
頭が痛くなったのか思わず結標は両手で頭を抱える。
一時的とは言え廃人同然になった結標はとある問題を抱えていた。
その問題とは―――能力の低下。
能力者にとっては致命的な問題である。
精神状態がまだ安定していないのか、と罅割れている心に気づかず結標は首を傾げる。
精神に異常をきたしている者は総じて自覚症状が無いとは誰の言った言葉か。
勿論、例に外れず自分は大丈夫だと罅割れた心を補強している結標も気づいては居なかった。
「大丈夫。大丈夫。私はやれる。私ならやれる……ッ!」
精神を集中して目の前のゴミの山と向かい合う。
即座に脳内で計算式を展開。
どうすれば最短でこの山をゴミ捨て場まで持っていけるかを思案。
結論が出るまで十秒。
……少しずつ捨てていった方がマシね……。
ガックリと肩を落とし、うなだれる結標。
能力低下は思考能力にまで影響をきたしているらしい。
体力自体は、そこは特殊なエキスパートを育成していた霧ヶ丘女学院出身。
現代のお嬢様は時として力強さも求められる為それなりに鍛えているのだ。
ちなみに現在は高校は停学中である。
それもこれもあの事件がキッカケだが、どうやら『仲間』達も同じような処分になっているようだ。
無事を聞いた時は錯乱していて気にもしていなかったが、こうして冷静になると、少し気になった。
「……ん、と」
ゴミを袋に詰め、持ち上げる。
かなり重いが、そんなものには負けぬと肩に担ぐ。肩に何かが勢い良くめり込んだ。
「―――ッ!」
思わず声にならない叫びを上げてしまう。
何事か、と見てみればゴミ袋の中間地点、そこが妙に尖っていた。
プラスチックのディスクケース。
昨日見つけた一方通行とその最強を支える少女の資料が入ったものだ。
結標はそれを見て目を鋭くする。
一方通行、学園都市最強の能力者。
それを倒すため、そして、"目的"を手に入れるため、結標は粉々に砕け散った心をかき集めたのだ。
勝てる、と己に言い聞かせる。
勝利のため、玄関から出て直ぐ近くにある階段を降りつつ結標は思考を走らせる。
まずは少女の確保。
然るべき処置の後に一方通行を倒す。
完璧だ。
色々段階を抜かしている辺りが更に完璧さを強調している。
結標は己の作戦の完璧さを確認して満足げに頷きつつ、まだ寝ぼけているな、と階段を降り終える。
ゴミ捨て場にゴミを分別して置き、今度は先程と逆に階段を登り始めた。
その間も結標は思考を止めない。
……やはり演算能力を補っているって事はなんらかの能力?でも、一方通行が言っていた事が気になるわね。
『あのクローンどもの電波の届かないトコに――』
クローンという言葉が気になる。そして電波という言葉も何か引っかかりを得た。
恐らくそれは御坂美琴のクローンである妹達の事だろう。
どういう経緯で一方通行があの妹達と結託したのかはわからないが、一方通行は自らの力は前の半分と言っていた。
それでもなおあの威力。
あの恐怖。
思わず思い出して自分の身体を両腕で抱く。
少しの間、震えが止まらなかった。
「く、ハッ、ぁ」
息が苦しい。恐い、もう嫌だ。戦いたくない。逃げて。
甘ったれるな、と思う。
砕けた心の断片が恐怖を叫ぶ。
しかし、結標はそれを無理矢理意思で叩き伏せる。まだ終わるわけにはいかない。
終わるのは、一方通行を倒せずに"目的"を手に入れられなかった時だけだ。
格好の良いような言い草だが、結局は自分のためか、と結標は思わず自嘲する。
身体を抱いた腕を解き、階段の上を見据える。
久しぶりに感じる朝という感覚は妙に清々しいものだった。
結標・淡希は布団を片付けつつ窓の外を見て太陽の眩しさに思わず目を瞑る。
「いい天気」
思わず笑みを浮かべてしまうほどの晴天。
どうやら夜中から朝方まで雨だったようで窓から見える地面も濡れているが、逆にそれすらも心地良い。
結標は青色のシンプルな寝間着に包まれた身体で伸びを一つ、青い空を見つめる。
雲一つ無いとはこの事、と言える程何も無い青過ぎる空。
正直この家の惨状と交換して欲しい程だった。
「………」
伸びを終えて後ろを振り返る。
其処に待っていたのは現実。時々、ゴミの山。
結標の能力である【座標移動】で一箇所に纏めたのは良いが、ハッキリ言えば処分に困る。
頭が痛くなったのか思わず結標は両手で頭を抱える。
一時的とは言え廃人同然になった結標はとある問題を抱えていた。
その問題とは―――能力の低下。
能力者にとっては致命的な問題である。
精神状態がまだ安定していないのか、と罅割れている心に気づかず結標は首を傾げる。
精神に異常をきたしている者は総じて自覚症状が無いとは誰の言った言葉か。
勿論、例に外れず自分は大丈夫だと罅割れた心を補強している結標も気づいては居なかった。
「大丈夫。大丈夫。私はやれる。私ならやれる……ッ!」
精神を集中して目の前のゴミの山と向かい合う。
即座に脳内で計算式を展開。
どうすれば最短でこの山をゴミ捨て場まで持っていけるかを思案。
結論が出るまで十秒。
……少しずつ捨てていった方がマシね……。
ガックリと肩を落とし、うなだれる結標。
能力低下は思考能力にまで影響をきたしているらしい。
体力自体は、そこは特殊なエキスパートを育成していた霧ヶ丘女学院出身。
現代のお嬢様は時として力強さも求められる為それなりに鍛えているのだ。
ちなみに現在は高校は停学中である。
それもこれもあの事件がキッカケだが、どうやら『仲間』達も同じような処分になっているようだ。
無事を聞いた時は錯乱していて気にもしていなかったが、こうして冷静になると、少し気になった。
「……ん、と」
ゴミを袋に詰め、持ち上げる。
かなり重いが、そんなものには負けぬと肩に担ぐ。肩に何かが勢い良くめり込んだ。
「―――ッ!」
思わず声にならない叫びを上げてしまう。
何事か、と見てみればゴミ袋の中間地点、そこが妙に尖っていた。
プラスチックのディスクケース。
昨日見つけた一方通行とその最強を支える少女の資料が入ったものだ。
結標はそれを見て目を鋭くする。
一方通行、学園都市最強の能力者。
それを倒すため、そして、"目的"を手に入れるため、結標は粉々に砕け散った心をかき集めたのだ。
勝てる、と己に言い聞かせる。
勝利のため、玄関から出て直ぐ近くにある階段を降りつつ結標は思考を走らせる。
まずは少女の確保。
然るべき処置の後に一方通行を倒す。
完璧だ。
色々段階を抜かしている辺りが更に完璧さを強調している。
結標は己の作戦の完璧さを確認して満足げに頷きつつ、まだ寝ぼけているな、と階段を降り終える。
ゴミ捨て場にゴミを分別して置き、今度は先程と逆に階段を登り始めた。
その間も結標は思考を止めない。
……やはり演算能力を補っているって事はなんらかの能力?でも、一方通行が言っていた事が気になるわね。
『あのクローンどもの電波の届かないトコに――』
クローンという言葉が気になる。そして電波という言葉も何か引っかかりを得た。
恐らくそれは御坂美琴のクローンである妹達の事だろう。
どういう経緯で一方通行があの妹達と結託したのかはわからないが、一方通行は自らの力は前の半分と言っていた。
それでもなおあの威力。
あの恐怖。
思わず思い出して自分の身体を両腕で抱く。
少しの間、震えが止まらなかった。
「く、ハッ、ぁ」
息が苦しい。恐い、もう嫌だ。戦いたくない。逃げて。
甘ったれるな、と思う。
砕けた心の断片が恐怖を叫ぶ。
しかし、結標はそれを無理矢理意思で叩き伏せる。まだ終わるわけにはいかない。
終わるのは、一方通行を倒せずに"目的"を手に入れられなかった時だけだ。
格好の良いような言い草だが、結局は自分のためか、と結標は思わず自嘲する。
身体を抱いた腕を解き、階段の上を見据える。
次の瞬間。
階段の上から男の子が落ちてきた。
「ひぁっ!?」
思わず受け止めてしまうが、衝撃を殺し切れずに背中を階段の踊り場に設置された手すりにぶつける。
痛みと共に訪れるのは謎の生暖かさ。
視線を下に向けるとツンツンとした黒髪が見えた。
「………」
結標の時が止まった。
状況を整理しよう。視線を下に向けてまず見えるのは寝間着に包まれた己のそれなりに大きな胸の筈だ。
しかし、今は寝間着と黒髪。
状況検証完了。
誰かが胸に埋まっているのだと結標は判断し、取り敢えずは、投げた。
「ホブァーッ!?」
愉快な掛け声と共に踊り場の手すりに叩き付けられるツンツン頭。
結標は立ち上がって、目を回しているツンツン頭を見やる。
結標と同じぐらいの年代に見える少年は身体を上下反対にしつつ、唸っていた。
「うぅ……あだだだ」
どうやら少年は一時的に気を失っていたようだ。都合が良い。
ふと、結標の横を猫が通り過ぎて行く。
階段を優雅に下っていく姿はどこぞの貴族の飼い猫を思わせるような猫だ。
「ハッ!?なんで俺はこんなトコロで気を失ってるのでせう!?」
少年が起きたようだ。しかも微妙に記憶が飛んで居るらしい。
少年は上下逆になっていた身体を器用に回転させて立ち上がると結標へと向き直り、
「あ、なぁ、アンタ!ちょっと悪いんだが、猫見なかったか!?」
いきなり問答無用で詰め寄ってきた。
「か、階段を降りて行ったわ」
「そうか、ありがとう!」
面を喰っていた結標へお礼を言うなり少年は凄まじい速度で階段を降りていった。
あれなら何時こけてもおかしくはない。
先程はたまたま結標が居たからよかったものの、下手したら大惨事だ。
「今度会ったら注意をしないといけないわね」
地味に世話好きの結標は階段を上り、玄関へ向かいつつ対一方通行用への作戦を思案し始めた。
階段の上から男の子が落ちてきた。
「ひぁっ!?」
思わず受け止めてしまうが、衝撃を殺し切れずに背中を階段の踊り場に設置された手すりにぶつける。
痛みと共に訪れるのは謎の生暖かさ。
視線を下に向けるとツンツンとした黒髪が見えた。
「………」
結標の時が止まった。
状況を整理しよう。視線を下に向けてまず見えるのは寝間着に包まれた己のそれなりに大きな胸の筈だ。
しかし、今は寝間着と黒髪。
状況検証完了。
誰かが胸に埋まっているのだと結標は判断し、取り敢えずは、投げた。
「ホブァーッ!?」
愉快な掛け声と共に踊り場の手すりに叩き付けられるツンツン頭。
結標は立ち上がって、目を回しているツンツン頭を見やる。
結標と同じぐらいの年代に見える少年は身体を上下反対にしつつ、唸っていた。
「うぅ……あだだだ」
どうやら少年は一時的に気を失っていたようだ。都合が良い。
ふと、結標の横を猫が通り過ぎて行く。
階段を優雅に下っていく姿はどこぞの貴族の飼い猫を思わせるような猫だ。
「ハッ!?なんで俺はこんなトコロで気を失ってるのでせう!?」
少年が起きたようだ。しかも微妙に記憶が飛んで居るらしい。
少年は上下逆になっていた身体を器用に回転させて立ち上がると結標へと向き直り、
「あ、なぁ、アンタ!ちょっと悪いんだが、猫見なかったか!?」
いきなり問答無用で詰め寄ってきた。
「か、階段を降りて行ったわ」
「そうか、ありがとう!」
面を喰っていた結標へお礼を言うなり少年は凄まじい速度で階段を降りていった。
あれなら何時こけてもおかしくはない。
先程はたまたま結標が居たからよかったものの、下手したら大惨事だ。
「今度会ったら注意をしないといけないわね」
地味に世話好きの結標は階段を上り、玄関へ向かいつつ対一方通行用への作戦を思案し始めた。