とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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とある授業の社会見学    第一章  Time Schedule Part-A

 うららかな秋晴れ、見事なまでの快晴の空。
 少し前までの季節ならばしつこく残っていた朝方特有のむわっとした湿気も今ではすっかり影を潜め、あるの
はうって変わった爽やかな秋の空気である。
 その清廉な空気を深々と肺に吸い込み、新鮮な酸素を取り入れ、脳を活性化させていく上条当麻。
 ここ最近はめっきりと的中率を下げ、ほとんど『外』の天気予報並みの精度にまでなった学園都市内の天気
予報にしては珍しく見事な予報どおりの天気を見ながら、上条当麻は隣に向かって声をかけた。
「いい天気になったなぁ」
「ああいい天気になったんだもんだにゃー」
 上条の声に対して、隣を歩く人物から声が返ってきた。
 返ってきたはいいが、その声はなんとなく不機嫌そうである。
「おい、なんだよ土御門。何そんなに不機嫌なんだよ」
「ああ? なに不機嫌なんだと? カミやんてめぇそれはマジで言っているのかにゃー?」
 爽やかな朝の空気の中にあって、隣を歩く土御門元春――魔術も科学にも精通している多角経営スパイ――
の周囲だけ重苦しい雰囲気が流れている。
「カミやんには全然心当たりは無いとそういうわけなんですかにゃー?」
 にこやかに笑いながら問いかけてくる土御門。
 にこやかではあるのだが、引きつっている口の端と平坦な声が、けして機嫌が良いわけではない事を如実に
語っている。
「心当たりっつってもなぁ…。何かあったか?」
 問い返されて、首を傾けながら考える上条。
 しばらくそのまま考え込みながら歩いていたが、はたと思いつくと土御門に向かって言う。
「あー、もしかしてあれか? 舞夏と一緒にいられなかったからか?」
「当たり前だ!せっかく今回はオレが出張らなくてもいい様なイベントだってのに、何だっていきなりあいつと
離れ離れにならなきゃならんのだ!あとさりげに人の妹のことを呼び捨てにしてるんじゃねーぜよ! そっちの
方がマジでムカつくぜい!!」
 溺愛している義妹と別れて登校することになったことよりも、上条に義妹が呼び捨てにされたことを咎めた土
御門はさっきからのイライラをすべて乗せたかのような拳で襲い掛かる。
 慌ててそれを迎え撃つ上条は拳を必死で避けながら怒鳴る。
「うおぉっ! 何しやがる! てめえさっきは問題ないって言ってたじゃねぇか!」
「あの場はああ言うしかないだろうがよ! オレが本気で言ってたとでも思ってやがんのかカミやんは!」
 なおも勢いを増す攻撃を捌きながら、上条は先ほどあった光景を思い返していた。

            ◇                    ◇ 

 話は十数分前にさかのぼる。
 前日の夜に社会見学の事を聞かされ、なにやら自分は上条にのけ者にされ、一人寂しく家にいなければなら
ないと思い込んだインデックスは目覚めたときから機嫌が悪かった。
 上条が朝食を用意して声をかけてもろくに返事もせず ( ただし朝食自体はきっちりと完食したが ) 、留守番
するインデックスに向けて作りおきした昼食について伝えようとしても聞く耳を持たない態度であった。
 さすがに腹が立った上条がインデックスをほうって置いて出かけようとすると、今度は半泣きになってこっちを
見上げてくる始末。
 さすがにこのまま家に残しておくのは気が引けるが、さりとてどうしたものかとドアを開けたまま思案してふと
目をやると、隣室からも寮の住人が出てくるところだった。
 ドアを開けて出てきた土御門だが、すぐ隣に上条が立っていることに気が付くと体を強張らせたまま固まった。
「おいーっす。そっちも今から出かけんのか土御門?」
 掛けた声にびくりと震える級友の姿に疑問を感じた上条だったが、
「あ、おはようございますお兄ちゃん」
 と、立ちつくす土御門の横合いから姿を見せたメイド姿の女の子から挨拶を返されると今度は自分の方が固
まった。
「ま、舞夏?! いきなり隣の住人をお兄ちゃん呼ばわりするとはどういうことなのかにゃー?!」
 驚愕の表情で義妹を振り返り、慌てて問いただす土御門元春だが、
「えー? お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょー? 兄貴のほうこそ何を言ってるんだよ?」
 事も無げに返事をする土御門舞夏。
 軽く返った返事だが、『あ、兄貴…。カミやんはお兄ちゃんでオレは兄貴呼ばわりだと…?!』 という呟きが
聞こえてくることから、何かこだわりがある部分に尋常ならざるダメージを受けているようである。
 そんな義兄を無視して舞夏は上条にさらに話しかける。
「そんなところで何を突っ立ってるんだー? 早く出かけないと開始時間に間に合わなくなるぞー?」
 そんな問いかけにようやく硬直が解ける上条。軽く首筋をさすって緊張をほぐしながら返事をする。
「あー、何だ、土御門舞夏か。朝っぱらから突然寮の廊下にメイドさんが現れたからびっくりしただけ…」
 返事する言葉も半ば、今まで部屋の隅から上条を見ていたインデックスが、舞夏の名前を耳にした瞬間すさ
まじい速さで玄関から飛び出ると立ちつくしたままの上条を蹴倒して廊下に躍り出し、そのまま舞夏に向かって
詰め寄っていく。
「ねえねえ聞いてよ聞いてよまいか! 今日はまいかが前に言ってたお祭りの日なんでしょ?! それなのに
とうまったら私を置いてきぼりにして一人で出かけようとするんだよ!ひどいと思うでしょ!」
 突然現れたシスターにまくし立てられて最初は戸惑っていた様子の舞夏だが、さすがにそこは学校外での実
地訓練を許可されているエリートらしく即座に状況を判断、的確に答えていく。
「あー、確かにそんな事を言ったような気もするけどあれだぞー、今日やる社会見学祭は多分想像している
ようなものとは違うんだぞー?」
「なっ、何が違うって言うのかなまいかは!」
 味方と信じていた人物からの思わぬ発言に混乱するインデックスに対してさらに言葉を続ける舞夏。
「この間やってた大覇星祭や一端覧祭は学生がメインで動くイベントだったけどなー。今日の社会見学祭は
企業とか研究機関がメインで動くからこないだみたいに食べ物の屋台がズラズラ並ぶほども出てこないはず
だぞー。」
「え……」
 その言葉に、数歩よろめいて後ろに下がると崩れ落ちるインデックス。
「そ、そんな…、もうあの焼きそばとかお好み焼きとかは食べられないの……?」
 うなだれたまま呟くインデックスを見て不審に思ったか、舞夏は声を掛けて尋ねる。
「どうしたー? 大丈夫かー?」
「うう…、いいんだよまいか。 今日はもう、わたしは家で一人で留守番してるよ……」
 力なく体を起こすとトボトボと自室まで帰ろうとするインデックス。
 その背中に向かって声が掛かる。
「んー、あれだなー、企業や研究機関の出展もなかなか面白いものがあるんだぞー。良かったら一緒に来る
か? 学校引率でないと入れないところもあるけどそれ以外のところもなかなか見所があるぞー」
 ピタリと止まる歩み。そのまま振り返ると顔を輝かせて尋ねる。
「いいの?」
 が、ふと気が付いていまだ寮の廊下にダウンしている上条の方を見て思案するが、
「あー、そっちと一緒に行こうとしても多分無理だぞー。今日はどこの学校に所属しているかのチェックが一番
厳しいからなー。向こうに行った先で離れ離れになると思うぞー」
 最後の言葉に決心がついたようである。
 舞夏の方に戻ってくるが、傍らに立つ人物にふと気が付く。
「あれ、あなたは…?」
 インデックスに尋ねられた瞬間、今まであらぬ方向を見る振りをしていた土御門元春は突然あたふたとした
感じで二人から離れていく。
「ほ、ほらカミやん、そんなとこでいつまでも寝てないでさっさと行こうぜい。舞夏はその銀髪シスターちゃんを
よろしく頼んだぜよ」
「おー、頼まれたー」
 歩く途中で廊下に伸びている上条を掴むとそのままそそくさとエレベーターに乗り込んで行ってしまう。

「い、いいのかな……」
「いいっていいって、それよりもまずはその服装から何とかしないと大変なのはこっちだからなー。うーん、いく
らなんでもシスターの格好のままはまずいしなー」
 しばらく思案していたようだが、妙案を思いついた様子で手を打つとインデックスを引っ張って先ほど出てきた
部屋の中に戻っていく。
「ちょ、ちょっと何をするのかなまいかは!」
「まあまあ、私に任せておけー? えーと、確かこのあたりに予備の衣装があったはず……」
 なにやらごそごそとやっているようだが、すでに学生寮から出かけている上条たちは二人が何をするつもりな
のかちっとも知る事は出来ないのだった。

                ◇                    ◇ 

 土御門から繰り出される拳に対処しながら学生寮での出来事を思い返していた上条だが、ふと思いついた疑
問を口にする。
「ってか、お前ってインデックスとは面識があるんじゃねぇのか?」
「いや、同じ『必要悪の教会(ネセサリウス)』に所属しているとはいえ今の俺の立場としては禁書と直接顔を合
わせるわけにはいかねーんだぜい。それに、忘れたのかカミやん。あれは一年毎に記憶を失っていたんだぜ?
仮に昔会ってたとしても、むこうが覚えてることは無いんだにゃー」
 事も無げに語る土御門。
 そんな土御門の言葉に思わず手が止まる上条。
 そこにすかさず土御門からの左フックがいい感じに決まる。
「がっ?! なにしやがんだてめえ!」
 何とか踏み止まりながら問いただす上条に対し、打ち据えた左拳をプラプラと振りながら土御門は軽い調子
で答える。
「まーあれだな? 過去はどうあれ禁書がいる現状を続けていくためにオレは不必要に接触しない方がいいっ
てだけの話だ。舞夏との事に関してもさっきの一発でチャラにするんだから一々引っ張るんじゃねいぜい、カミ
やん」
 重くなりそうな雰囲気に対して自分としてもいろいろと思うところはあるのだが、ここは友人の言葉に従って気
持ちを切り替える事にする。
「……まあ、お前がそう言うのなら」
「そうそう。カミやんは気楽にいろってこった。それに、あんまりこれ以上オレらがこうやってると、あすこにいる
お方がそろそろマジで切れそうなんだにゃー」
 そう言われ、ふと前方を見れば、集合地点である会場の入り口に不機嫌ここに極まりといった状態で吹寄制
理が腕を組んで仁王立ちしていた。
 というかマジでコワイ。
 何か彼女を怒らせるようなことをしたのかと身構える上条だが、心当たりがまるで無い。あえて言えばありそ
うな遅刻という線も時計を確認してみればまだ開始時間前である。
 やましい事が無ければ堂々と行けばいいのだが、いかんせん、普段の自分の行動を鑑みるに胸を張る事が
なかなか出来ない為、恐る恐る吹寄に近寄っていく。
「あの、吹寄さん、おはようございます」
 挨拶をされた吹寄だが、上条のほうをギロリと睨み付けると一喝した。
「遅い! こんな時間までいったいどこで寄り道してきたのよ上条当麻! 開始時間三○分前に会場入りしてい
ないなんて貴様はこの社会見学祭に真剣に取り組もうという気持ちが無いのしら? それならばその浮ついた
気持ちを今すぐ改めることね。そんな事では今日という日を無事に終えることなど出来ないわよ!」
「ええっ? 俺だけ? 叱られるのは俺だけなの?! 俺と一緒に来てた土御門なんかはどうなるの?!」
「何をたわけた事を言ってるのか知らないけど、私は運営側に連絡を入れないといけないからあんたはさっさ
と会場に入りなさい!」
 なにやら忙しそうにする吹寄は唖然とする上条に向かってまくし立てるとそのままどこかへと行ってしまった。

 ちなみに、上条と一緒に来ていた土御門は吹寄の注意が上条に向かっている間に彼女の死角を移動して既
に会場入りを果たしている。自身の持つ技術をろくでもない事に駆使している感じがするが、本人曰く『技術は
使ってこそ意味がある』 との事だそうな。
 閑話休題

 ともかくとして、どうにか会場に入った上条は事前にクラスで打ち合わされていた集合ポイントに向けて歩いて
いく。会場に使われているのは大規模な実験にも使われるような広大なスペースをもつ建築物であるため、普
段ならば大きく感じられるのだろうが現在はここに集まっている参加者のためにやや狭く感じられるほどである。
「そろそろこの辺のはずなんだけどなぁ……」
 なおも現在進行形で集まってくる人の群れの中を移動し続ける上条の目が見知った人影を発見する。
 身長一三五センチの幼児体型である担任の小萌先生は普段の服装とは違い、大人びた感じのするスーツを
着用している。しているのだが、サイズが小さいために何だかアンバランスである。
(なんつーか、どっかの付属小学校の生徒か、七五三でおめかししたようにしか見えねえよなぁ……)
 ぼんやりとした頭で割と失礼なことを考えながらなおも歩いていくと、小萌先生が誰かと話しているようなのが
分かった。
(誰だろ?)
 話している相手はどうやら女性のようである。 女性の中では長身のようで、スラリとしている。
 だが、上条が目を引いたのはそこではない。
 長身の体を包む衣装はグレーのスーツ。堅苦しいイメージのあるそれを身に着けているというのにその女性
からは野暮ったいイメージは感じられない。むしろ活発に動く、やり手の秘書のような感じがする。
(どっかの企業代表の秘書さんか? でもそんな人がわざわざこんな場所にまで来るはずは無いだろうし、小萌
先生と話してる理由も分からねえし…)
 上条がそんなことを考えているうちに小萌先生とその女性の話しは終わったようで、小萌先生は別の場所に
向かって歩いていく。
 と、相手をしていた女性がこちらの方を振り向いた。

 その姿に、思わずどきりとする。

 おそらくは長いのであろう髪を後ろでアップに纏めていることや、パンツスタイルにスニーカーでいることから本
来は活動的だろうという先ほどの想像はおそらく合っているだろう。
 それ以上に受け取られるのは、その女性から出ている雰囲気のほうである。
 よくよく見れば、来ているスーツも何だか着慣れていないように見受けられるし、なんとなく着崩した感じという
か、堅苦しいスーツに包まれることによってただでさえ大きいであろう胸元がより強調されるようになってというか、
ぶっちゃけもう漂う雰囲気は大人の色香を纏ったエロス全開な感じであった。
 上条がボーっと見とれているとその女性は誰かに気がついたようで、こちらのほうに向かって歩き出してきた。
 いろいろな意味でよく目立つその女性の進路から身をそらした上条だが、何だか自分のほうに向かって歩い
てくる感じがする。
(え? 俺なの?)
 慌てて周りを見回すが、女性が近づいたと気付くと近くにいた人間は上条から距離をとるように離れていくこと
からやはり自分を目指して近づいてくるようである。
(マジで誰だ?)
 必死で脳内を検索するが、このような年上の女性に知り合いはいないはずだし、なんで?! と思っているうち
に女性が目の前に立ち止まった。
「えーと……」
 どう切り出せばいいか分からない上条がとまどっていると、女性が気さくな感じで語りかけてきた。
「相変わらずボーっとしているようじゃん、少年」
(誰なんですかいったい?!)
 社会見学祭開始前から上条当麻の周りはいろいろとややこしい事になっているようである。

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