【初出】
禁書SS自作スレ>>927-930
禁書SS自作スレ>>927-930
―――― プロローグ 3 ――――
雨である。御坂美琴は雨が嫌いだった。感電とかそういった論理の話ではない。気分的に雨は嫌なのだ。理由はない。だから、朝から雨のこんな日曜日は特に大嫌いだった。こんな日は外に出るのも憚られる。傘を差すのも億劫だ。
「・・・・・」
携帯電話に目をやる。時刻は十時。開いてみれば待ち受けになっているとある高校生と御坂美琴のツーショット写真。九月末日に撮られたその写真を待ち受けにしてしまった理由は分からない。いや、正確には分かろうとしないのか。あの高校生の電話番号もメールアドレスも知っている。聞いた。というより、向こうから聞いてきて交換するしだいになった。だから、いつでも電話できる。携帯電話のシステムのペア登録だって彼と行っている。ボタン一つで電話は掛かる。ただ、それだけなのに名門中学のエース、御坂美琴はたったそれだけのことができないでいた。
「(っ・・・。どうして、こんな事一つできないのよ、私はッ!)」
そんな自分に自己嫌悪。どこまでも素直になれない自分。まったくもって腹立たしい。電話一つ掛けられないなんて、本当に自分で自分に電撃でもぶつけてみたい気分になる。電話を持つ手がワナワナと震えている。ボタンを押す。表示されるのは上条当麻と登録された電話番号。あとは電話の『掛ける』ボタンを押せば電話は掛かる。美琴は震える手のままで電話が描かれた掛けるボタンを押す。携帯電話を耳に持っていく。それだけの動作にひどく時間が掛かっているように感じた。再び、自己嫌悪。
トゥルルル、トゥルルル。無機質に鳴る呼び出し音。そして、呼び出し音が何回か鳴ったあと、ガチャ、という音と共に聞きなれた声が聞こえてきた。
「はいー、上条だけど?」
「っ!」
慌てて電話を切る。電話の向こうではツー、ツーという虚しい音だけが響ている。
「(ちょ、馬鹿。何で切っちゃうのよ私)」
再び美琴が上条の電話番号を表示させダイヤルボタンをプッシュしようとした時、ブルブルブルと美琴の携帯電話が震えだした。もちろん、表示されている名前は上条当麻の四文字。おそらく、突然切れた電話に不信でも覚えてリダイヤルしてきたのだろう。美琴は再び震える手でダイヤルボタンを押す。携帯電話を耳に持っていけば、当然ながら先ほどと同じ声が聞こえてきた。
「おーい、御坂?ど・・・」
ブツッという音。再び電話回線は遮断されたのである。もう、なんというか相手にしてみれば嫌がらせかギャグとしか受け取れないなんとも奇怪なお嬢様の行動であった。
結局、そんなことが四、五回ほど続いた後美琴は学校の用のノートを切らしている事に気がついて嫌々ながらも街に出た。適当に服を引っ張り出してパジャマから着替える。取り出したのは長袖の白いセーターに黒を基調としたミニスカートだった。セーターはともかくミニスカートは寒いかな、と考えつつも美琴はコンビニに行くだけだからと手早く着替え終わった。しかし、着替え終わってはみたものの、やはり今はもう冬。やはり生足の冷えというのは相当なものだった。
「確か・・・ここに」
美琴はセーターとスカートを取り出したのと同じ引き出しから何やらゴソゴソと漁っていた。違うものをポイポイと引き出しの外に投げていくのはお嬢様として、いや年頃の女の子としてどうかとは思うのだがそこは気にしたらダメということだろう。
「あった、あった♪」
笑顔で美琴が引き出しから取り出したのは黒いタイツのように長い靴下であった。美琴は取り出した確かに防寒効果はありそうな長い靴下を慣れた手つきで穿いていく。スラリと伸びた足が黒い生地で覆われ際立っている様子はかなり魅力的に感じるが、本人は気にせず、黒いニーソックスを穿き終えた。
そんな訳で着替えを終えた美琴は学生カバンの中から財布を取り出すと、小走りに部屋を出て約二百メートル先のコンビニへ急いだ。雨はわりと小降りになっていた。
雨である。御坂美琴は雨が嫌いだった。感電とかそういった論理の話ではない。気分的に雨は嫌なのだ。理由はない。だから、朝から雨のこんな日曜日は特に大嫌いだった。こんな日は外に出るのも憚られる。傘を差すのも億劫だ。
「・・・・・」
携帯電話に目をやる。時刻は十時。開いてみれば待ち受けになっているとある高校生と御坂美琴のツーショット写真。九月末日に撮られたその写真を待ち受けにしてしまった理由は分からない。いや、正確には分かろうとしないのか。あの高校生の電話番号もメールアドレスも知っている。聞いた。というより、向こうから聞いてきて交換するしだいになった。だから、いつでも電話できる。携帯電話のシステムのペア登録だって彼と行っている。ボタン一つで電話は掛かる。ただ、それだけなのに名門中学のエース、御坂美琴はたったそれだけのことができないでいた。
「(っ・・・。どうして、こんな事一つできないのよ、私はッ!)」
そんな自分に自己嫌悪。どこまでも素直になれない自分。まったくもって腹立たしい。電話一つ掛けられないなんて、本当に自分で自分に電撃でもぶつけてみたい気分になる。電話を持つ手がワナワナと震えている。ボタンを押す。表示されるのは上条当麻と登録された電話番号。あとは電話の『掛ける』ボタンを押せば電話は掛かる。美琴は震える手のままで電話が描かれた掛けるボタンを押す。携帯電話を耳に持っていく。それだけの動作にひどく時間が掛かっているように感じた。再び、自己嫌悪。
トゥルルル、トゥルルル。無機質に鳴る呼び出し音。そして、呼び出し音が何回か鳴ったあと、ガチャ、という音と共に聞きなれた声が聞こえてきた。
「はいー、上条だけど?」
「っ!」
慌てて電話を切る。電話の向こうではツー、ツーという虚しい音だけが響ている。
「(ちょ、馬鹿。何で切っちゃうのよ私)」
再び美琴が上条の電話番号を表示させダイヤルボタンをプッシュしようとした時、ブルブルブルと美琴の携帯電話が震えだした。もちろん、表示されている名前は上条当麻の四文字。おそらく、突然切れた電話に不信でも覚えてリダイヤルしてきたのだろう。美琴は再び震える手でダイヤルボタンを押す。携帯電話を耳に持っていけば、当然ながら先ほどと同じ声が聞こえてきた。
「おーい、御坂?ど・・・」
ブツッという音。再び電話回線は遮断されたのである。もう、なんというか相手にしてみれば嫌がらせかギャグとしか受け取れないなんとも奇怪なお嬢様の行動であった。
結局、そんなことが四、五回ほど続いた後美琴は学校の用のノートを切らしている事に気がついて嫌々ながらも街に出た。適当に服を引っ張り出してパジャマから着替える。取り出したのは長袖の白いセーターに黒を基調としたミニスカートだった。セーターはともかくミニスカートは寒いかな、と考えつつも美琴はコンビニに行くだけだからと手早く着替え終わった。しかし、着替え終わってはみたものの、やはり今はもう冬。やはり生足の冷えというのは相当なものだった。
「確か・・・ここに」
美琴はセーターとスカートを取り出したのと同じ引き出しから何やらゴソゴソと漁っていた。違うものをポイポイと引き出しの外に投げていくのはお嬢様として、いや年頃の女の子としてどうかとは思うのだがそこは気にしたらダメということだろう。
「あった、あった♪」
笑顔で美琴が引き出しから取り出したのは黒いタイツのように長い靴下であった。美琴は取り出した確かに防寒効果はありそうな長い靴下を慣れた手つきで穿いていく。スラリと伸びた足が黒い生地で覆われ際立っている様子はかなり魅力的に感じるが、本人は気にせず、黒いニーソックスを穿き終えた。
そんな訳で着替えを終えた美琴は学生カバンの中から財布を取り出すと、小走りに部屋を出て約二百メートル先のコンビニへ急いだ。雨はわりと小降りになっていた。
一通り買い物を終えた美琴は店の外へ出た。雨はどうやら一時的に止んでいるらしく、道に溜まった水溜りに波は出来ていなかった。それはいい。ラッキー、と美琴は内心非常に喜んでいたから。だが、妙に変な気分がする。行く時には気がつかなかったが、あまりにもここが静かすぎるのだ。今日は日曜日である。しかも時間は正午のちょっと前だ。飲食店を探す学生などが一人ぐらいはいてもいいはずの通りは何故か今日は不気味なほどに無人だった。それでも、コンビニの中には人がいた。だから、無人というわけではないのだろう。
「・・・・・・」
自然と足が小走りになる。人間としての本能が今の状況を危険だと告げている。だからだろうか、脇道から突如として出現した突起物に気が付かなかったのは。
「っ!!」
気が付いた時にはもう遅かった。突起物の正体は薙刀のような槍のような武器の先端だった。その武器の所有者であろう人影は体を翻して美琴の背後へ回り込むと、両腕を掴んで背中へと回し例の得物を美琴の首へ近づけた。
「お前、誰だ?なんで、人払いの結界の中に入ってこれる?」
若い男の声だった。美琴は後ろを振り返ろうとしたが首を少しでも動かせば背後の男が持つ薙刀に触れてしまう。だから、美琴は振り向かずに言葉を発した。
「結界?何ソレ?だいたい、何?そんな物騒な武器振り回して。人を襲おうとか考えるんならさぁ、こんな白昼堂々と・・・・」
美琴の体から青白い電撃が放出される。御坂美琴は名門常盤台中学でただ二人、学園都市でも七人しかいないレベル5の一人である。その能力『超電磁砲(レールガン)』は最高速度が光速に達するほどの雷撃の槍である。無論、彼女の武器は雷撃の槍だけではない。落雷から微細な電磁波まで、電力が通っているものなら全て彼女の武器となる。そんなとんでも中学生が本気で能力を発動させている。空気中に放出された電気がバチバチと音を立てて怒り狂う。その矛先は当然背後の男だ。
「やってんじゃないわよ!!」
豪雷一閃。天空から落ちてきた一撃は無残にも男を直撃した。普通なら即死、または重傷である。戒めが解かれた美琴は怒りとそしてやりすぎたかも、と言いたげな表情で背後を見た。男の影は、ない。黒焦げになったとしても遺体は残るし、ましてあの雷撃から逃げられたとは思わない。そう、あの威力で思うほうが馬鹿げている。だからだ。だからこそ、レベル5御坂美琴は園光景が信じられなかった。結論から言えば男は生きていた。それも、無傷で。回避したのかは分からないが、それでも無傷というのはどう考えてもおかしい話だった。美琴の表情が焦りに曇っていく。だが、そんな美琴の焦りを他所に薙刀の男は、ハハハハと大きな笑い声を上げると、なるほどな、と勝手に一人で納得した。美琴が怪訝な表情をしていると、男は笑みを浮かべて美琴に応えた。今気づいたが目の前にいるのはやはり少年としか表現しようのない男である。しかも、カッコイイというよりは美しいと表現すべきの。そう、美少年という言葉が相応しい人物だった。だが、格好が奇天烈すぎる。体には青銅の鎧を身に纏い、頭にはサークレットのように頭を一周する輪を付けている。靴の代わりに履いている草履は今の季節としては有り得ないものだし、何より革の鎧に付けられたマントがいかにも奇天烈の象徴であった。
「いや、悪ィ。あんたも魔術師だったんだな。なるほど、それなら人払いの中に入ってこれるのは納得だよ。で、あんたは何のサーヴァントのマスターなわけ?見たところ、誰も連れていないようだけど」
「は?何?・・・えっと、とりあえず頭大丈夫?ていうか、何その格好。コスプレ?」
魔術師やらサーヴァントやらマスターやら訳の分からない言葉が並ぶ。美琴の訝しげな表情はまだ崩れない。
「なぁ、あんた。誰のマスターでもないってなら俺と契約してよ。マスターが死んじゃってさ、魔力の供給が断たれてんのよ。あと三時間ほどしたら消えちまうんだけど、どうかな?」
「聞いてねぇし。ていうか、契約?あんたどっかの業者の回し者?悪いけどセールスはお断り。」
訳の分からない表情で次の雷撃の槍の装填を始める。装填と言っても電気を練り上げるだけだが・・・・
「? 話が噛みあってねぇな・・・・じゃ、とりあえず一つ聞くけどあんたマスターじゃないの?」
「だから、何よソレ?」
それだけ聞くと男は安心したのかフゥと息を漏らし、笑みを浮かべたまま美琴の方へと向かって歩き始めた。もちろん、これに慌てたのは美琴である。怪しげな笑みを浮かべて向かってくる男に雷撃の槍を放つ。一発目。男は余裕の表情で音速を交わすと、再び美琴との距離を詰めた。二発目。今度は交わすまでもないと判断したのか、雷撃の槍が放たれても動こうとしなかった。ただ漫然とした足取りで確実に距離を詰めてくる。雷撃の槍が男に迫る。だが、男は気に留めない。雷撃の槍が男に当たる。
「あぁ、無駄なんだわ。『アテナの楯』って知ってるかな?まぁ、知らなくてもいいや。その楯がこの時代でいうアレだ。えーと、遠距離狙撃系の能力を全てシャットダウンしちまうのよ」
言うやいなや、美琴の放った雷撃の槍は男に直撃した瞬間に最初からなかったかのように掻き消えてしまった。
「っ!!何を訳の分からないことをッ!!」
再び掃射される雷撃の槍。今度は確実に男を仕留めようと全力で殺しにかかる。明確な殺意を込めた一撃。だが、それすらも・・・・
「無駄だって。俺を殺したいなら近接戦で来ないと。ていうかさ」
と、男が軽く口にした途端地面が弾け飛ぶ。次の瞬間、美琴は男に地面に押し倒されて両腕をつかまれていた。さきほどと違うのは美琴が仰向けである点。さっきと違って今度は男の顔が直視できる位置にある。男はやはり見れば見るほど美少年で、吸い込まれそうな真赤な瞳、あまりにも整いすぎた端正な顔立ち。そして、何よりも美しいと感じるオーラがその男の周りからは溢れていた。
神がこの男を創るべくして創ったとしか考えられない、それは完璧な『美』だった。だが、今の美琴にそんな事を考えている余裕はない。さっきの出来事を美琴は理解することもできなかった。
地面が弾け飛んだ瞬間、美琴は押し倒されていたのである。男との距離はすでに目と鼻。美琴は我に任せて雷撃の槍を放つも、やはりその攻撃は男をゆるがすこともしなかった。
「あんた契約、嫌なの?」
「も、もう分かったから!!契約でもなんでもするから早く放しなさいよ!馬鹿ッ!!」
焦りと恐怖に染められた声で美琴は言う。だが、男はソレを意に返さない様子で嬉しそうなこれまた極上の笑顔で受け取ると。
「そうかい。そいつはありがたい」
と一言言っただけで、
「・・・・・・」
自然と足が小走りになる。人間としての本能が今の状況を危険だと告げている。だからだろうか、脇道から突如として出現した突起物に気が付かなかったのは。
「っ!!」
気が付いた時にはもう遅かった。突起物の正体は薙刀のような槍のような武器の先端だった。その武器の所有者であろう人影は体を翻して美琴の背後へ回り込むと、両腕を掴んで背中へと回し例の得物を美琴の首へ近づけた。
「お前、誰だ?なんで、人払いの結界の中に入ってこれる?」
若い男の声だった。美琴は後ろを振り返ろうとしたが首を少しでも動かせば背後の男が持つ薙刀に触れてしまう。だから、美琴は振り向かずに言葉を発した。
「結界?何ソレ?だいたい、何?そんな物騒な武器振り回して。人を襲おうとか考えるんならさぁ、こんな白昼堂々と・・・・」
美琴の体から青白い電撃が放出される。御坂美琴は名門常盤台中学でただ二人、学園都市でも七人しかいないレベル5の一人である。その能力『超電磁砲(レールガン)』は最高速度が光速に達するほどの雷撃の槍である。無論、彼女の武器は雷撃の槍だけではない。落雷から微細な電磁波まで、電力が通っているものなら全て彼女の武器となる。そんなとんでも中学生が本気で能力を発動させている。空気中に放出された電気がバチバチと音を立てて怒り狂う。その矛先は当然背後の男だ。
「やってんじゃないわよ!!」
豪雷一閃。天空から落ちてきた一撃は無残にも男を直撃した。普通なら即死、または重傷である。戒めが解かれた美琴は怒りとそしてやりすぎたかも、と言いたげな表情で背後を見た。男の影は、ない。黒焦げになったとしても遺体は残るし、ましてあの雷撃から逃げられたとは思わない。そう、あの威力で思うほうが馬鹿げている。だからだ。だからこそ、レベル5御坂美琴は園光景が信じられなかった。結論から言えば男は生きていた。それも、無傷で。回避したのかは分からないが、それでも無傷というのはどう考えてもおかしい話だった。美琴の表情が焦りに曇っていく。だが、そんな美琴の焦りを他所に薙刀の男は、ハハハハと大きな笑い声を上げると、なるほどな、と勝手に一人で納得した。美琴が怪訝な表情をしていると、男は笑みを浮かべて美琴に応えた。今気づいたが目の前にいるのはやはり少年としか表現しようのない男である。しかも、カッコイイというよりは美しいと表現すべきの。そう、美少年という言葉が相応しい人物だった。だが、格好が奇天烈すぎる。体には青銅の鎧を身に纏い、頭にはサークレットのように頭を一周する輪を付けている。靴の代わりに履いている草履は今の季節としては有り得ないものだし、何より革の鎧に付けられたマントがいかにも奇天烈の象徴であった。
「いや、悪ィ。あんたも魔術師だったんだな。なるほど、それなら人払いの中に入ってこれるのは納得だよ。で、あんたは何のサーヴァントのマスターなわけ?見たところ、誰も連れていないようだけど」
「は?何?・・・えっと、とりあえず頭大丈夫?ていうか、何その格好。コスプレ?」
魔術師やらサーヴァントやらマスターやら訳の分からない言葉が並ぶ。美琴の訝しげな表情はまだ崩れない。
「なぁ、あんた。誰のマスターでもないってなら俺と契約してよ。マスターが死んじゃってさ、魔力の供給が断たれてんのよ。あと三時間ほどしたら消えちまうんだけど、どうかな?」
「聞いてねぇし。ていうか、契約?あんたどっかの業者の回し者?悪いけどセールスはお断り。」
訳の分からない表情で次の雷撃の槍の装填を始める。装填と言っても電気を練り上げるだけだが・・・・
「? 話が噛みあってねぇな・・・・じゃ、とりあえず一つ聞くけどあんたマスターじゃないの?」
「だから、何よソレ?」
それだけ聞くと男は安心したのかフゥと息を漏らし、笑みを浮かべたまま美琴の方へと向かって歩き始めた。もちろん、これに慌てたのは美琴である。怪しげな笑みを浮かべて向かってくる男に雷撃の槍を放つ。一発目。男は余裕の表情で音速を交わすと、再び美琴との距離を詰めた。二発目。今度は交わすまでもないと判断したのか、雷撃の槍が放たれても動こうとしなかった。ただ漫然とした足取りで確実に距離を詰めてくる。雷撃の槍が男に迫る。だが、男は気に留めない。雷撃の槍が男に当たる。
「あぁ、無駄なんだわ。『アテナの楯』って知ってるかな?まぁ、知らなくてもいいや。その楯がこの時代でいうアレだ。えーと、遠距離狙撃系の能力を全てシャットダウンしちまうのよ」
言うやいなや、美琴の放った雷撃の槍は男に直撃した瞬間に最初からなかったかのように掻き消えてしまった。
「っ!!何を訳の分からないことをッ!!」
再び掃射される雷撃の槍。今度は確実に男を仕留めようと全力で殺しにかかる。明確な殺意を込めた一撃。だが、それすらも・・・・
「無駄だって。俺を殺したいなら近接戦で来ないと。ていうかさ」
と、男が軽く口にした途端地面が弾け飛ぶ。次の瞬間、美琴は男に地面に押し倒されて両腕をつかまれていた。さきほどと違うのは美琴が仰向けである点。さっきと違って今度は男の顔が直視できる位置にある。男はやはり見れば見るほど美少年で、吸い込まれそうな真赤な瞳、あまりにも整いすぎた端正な顔立ち。そして、何よりも美しいと感じるオーラがその男の周りからは溢れていた。
神がこの男を創るべくして創ったとしか考えられない、それは完璧な『美』だった。だが、今の美琴にそんな事を考えている余裕はない。さっきの出来事を美琴は理解することもできなかった。
地面が弾け飛んだ瞬間、美琴は押し倒されていたのである。男との距離はすでに目と鼻。美琴は我に任せて雷撃の槍を放つも、やはりその攻撃は男をゆるがすこともしなかった。
「あんた契約、嫌なの?」
「も、もう分かったから!!契約でもなんでもするから早く放しなさいよ!馬鹿ッ!!」
焦りと恐怖に染められた声で美琴は言う。だが、男はソレを意に返さない様子で嬉しそうなこれまた極上の笑顔で受け取ると。
「そうかい。そいつはありがたい」
と一言言っただけで、
―― 美琴の唇に自分の唇を重ねた
舌と舌が絡み合い男の唾液が美琴の口に流れ込み、クチュクチュと卑猥な音を立てる。何かと何かが繋がる音がする。それでやっと自分の身に何が起きたのか気づいた美琴は目を見開いて、
思い切り上下の歯を振り下ろした
「dsfjしぇjsdbjvkljbklaufh」
声にならない悲鳴。その衝撃でわずかに怯んだ男は美琴の手を放し、自分の舌が繋がっているかを確認してから目の前で今にも泣きそうな顔をしながら咳き込んでいる少女に目をやった。
「いてぇじゃねぇか!馬鹿!近接戦は痛いんだよ!!」
そんな男の冗談めいた怒気に対して美琴は全身の電気はバチバチと暴走させたまま殺気を込めた目線で男を威圧する。
「うるさい、うるさい、うるさいっっ!!なんてことしてくれんのよ!あんたは!!契約とか言っといて、結局こういうのが目的なわけ!!??」
すごい剣幕で暴れまくる美琴と電撃。その二つを呆れながらに見ていた男は、
「・・・・・えーと、もしかして、初めて?」
「っ!!」
それが引き金だったのか、少女の怒りの雷撃が静まっていく。変わりに聞こえてきたのは美琴の泣き声であった。まぁ、初めてなら当然と言えば当然だが何も契約程度で泣く事はないだろう、と男は思っていたが美琴にしてみれば訳の分からないまま半ばレイプ気味にファーストキスを奪われたのである。泣きたくなるのは乙女として当然のことだ。いっこうに泣き止まない目の前の少女にさすがに男は慌てたのか、ソッと泣きじゃくる美琴の前に膝を折ると、優しさ溢れる口調でこう言った。
思い切り上下の歯を振り下ろした
「dsfjしぇjsdbjvkljbklaufh」
声にならない悲鳴。その衝撃でわずかに怯んだ男は美琴の手を放し、自分の舌が繋がっているかを確認してから目の前で今にも泣きそうな顔をしながら咳き込んでいる少女に目をやった。
「いてぇじゃねぇか!馬鹿!近接戦は痛いんだよ!!」
そんな男の冗談めいた怒気に対して美琴は全身の電気はバチバチと暴走させたまま殺気を込めた目線で男を威圧する。
「うるさい、うるさい、うるさいっっ!!なんてことしてくれんのよ!あんたは!!契約とか言っといて、結局こういうのが目的なわけ!!??」
すごい剣幕で暴れまくる美琴と電撃。その二つを呆れながらに見ていた男は、
「・・・・・えーと、もしかして、初めて?」
「っ!!」
それが引き金だったのか、少女の怒りの雷撃が静まっていく。変わりに聞こえてきたのは美琴の泣き声であった。まぁ、初めてなら当然と言えば当然だが何も契約程度で泣く事はないだろう、と男は思っていたが美琴にしてみれば訳の分からないまま半ばレイプ気味にファーストキスを奪われたのである。泣きたくなるのは乙女として当然のことだ。いっこうに泣き止まない目の前の少女にさすがに男は慌てたのか、ソッと泣きじゃくる美琴の前に膝を折ると、優しさ溢れる口調でこう言った。
「初心だな、あんた。いいじゃねぇか、契約のキスぐらい」
その次の瞬間、男が五メートルぐらい吹っ飛ばされたのは言わずもがなの話である。
どうして彼女の周りにはこういう女心を知らない馬鹿が多いのかと思うと嫌になる。口の中にはまだ男の唾液が残っていた。
だが、美琴にはどうしようもない。ただ、起き上がりコッチに向かってくる馬鹿をどうやって殺そうかと今はひたすら悩むレベル5のお嬢様であった。
そして、彼女が契約したのが最強クラスのランサー、ペルセウスであることを知るのはしばらくしてからのことだった。
どうして彼女の周りにはこういう女心を知らない馬鹿が多いのかと思うと嫌になる。口の中にはまだ男の唾液が残っていた。
だが、美琴にはどうしようもない。ただ、起き上がりコッチに向かってくる馬鹿をどうやって殺そうかと今はひたすら悩むレベル5のお嬢様であった。
そして、彼女が契約したのが最強クラスのランサー、ペルセウスであることを知るのはしばらくしてからのことだった。
―――― プロローグ 完 ――――