非の打ち所も無い素晴らしき青空の下、御坂美琴はコンビニでの立ち読みを終え、行き先もなくふらふらと街を歩いていた。
せっかくの休日というのに、いつもなら買い物に誘ってくる黒子は朝早くからどこかへ出掛け、自分は昨晩の一件に頭を悩ませている。
せっかくの休日というのに、いつもなら買い物に誘ってくる黒子は朝早くからどこかへ出掛け、自分は昨晩の一件に頭を悩ませている。
「あー、もう……なんでお持ち帰りしちゃったかなぁ……」
腕を組んで考えるが、後悔先に立たず。溜め息が出るばかり。
「喉渇いたわ……」
丁度、いつもの公園の近くを通りかかったのもあり、そのまま自販機の元へ。
「…何やってんの?」
「あちちち!」
「あちちち!」
思わずジト目となった美琴が見たのは、温かい、いや、熱湯となったコーラでジャグリングしていた上条の姿だった。
「アンタもつくづくツイてないわねぇ……今時熱々のコーラって……。何時の時代の人?」
「うるせぇやい。上条さんにはこれ位がデフォなんです」
「あはは、なにそれ」
「うるせぇやい。上条さんにはこれ位がデフォなんです」
「あはは、なにそれ」
噴き出す美琴に、上条は目の幅涙をぶわっと流した。
そんな姿を憐れんでか、美琴は自販機に手を触れ、帯電し始める。
そんな姿を憐れんでか、美琴は自販機に手を触れ、帯電し始める。
「おいやめろバカ」
「早くもこの自販機は終了ね」
「早くもこの自販機は終了ね」
※自販機荒らしは犯罪です。絶対に真似しないでください。
「お…お?一本だけ出てきた」
「何回練習したと思ってんのよ」
「えー」
「何回練習したと思ってんのよ」
「えー」
ふと、上条が缶ジュースを二本持っているのに気付いた。またあのシスターか、と思考を巡らせる。
「あー…知り合いの分だからな?」
「はいはい、またいつものシスターね」
「? 違うぞ?」
「へ? そ、そう…」
「はいはい、またいつものシスターね」
「? 違うぞ?」
「へ? そ、そう…」
変な奴、と言いたげに上条は首を傾げた。逆に、美琴は自分の考えが外れて安堵した。が、
(な、なんで安心しちゃってんの私のココロー!)
視界がぐるぐる回る。以前にも似た感覚に陥るも、目一杯踏ん張りを入れる。
「…大丈夫か?」
「ふぅ…なんとか……」
「ふぅ…なんとか……」
危うく能力が暴発するところだった。ひとまず落ち着いたので、自販機にコインを投入する。
「今日は普通だな」
「あ、当たり前よ。毎回毎回蹴り飛ばしてジュースを出すなんてはしたないことしないわよ?」
「前はやっtげふん」
「あ、当たり前よ。毎回毎回蹴り飛ばしてジュースを出すなんてはしたないことしないわよ?」
「前はやっtげふん」
きっ、と睨みつけ、上条の防御が下がった。
「いつもそうだと可愛いんだけどな。人を待たせてるから俺は行くぜ」
「へ?あ…うん。またね」
「じゃーな」
「へ?あ…うん。またね」
「じゃーな」
あれ今なんて言った? 美琴の頭の中には上条の言葉が駆け巡る。再び回り出した視界。そして自販機終了のお知らせ。一発放出後は意識がはっきりとしたが顔の火照りが収まらず、美琴は足早にその場を立ち去った。
学園都市を一望出来ると評判のホテル。その一室を、『グループ』と呼ばれる学園都市暗部組織のひとつが貸切にしている。
「聞きました? 昨日のニュース」
部屋の真ん中にあるソファに腰掛けている海原光貴が言った。
「ああ、未確認生命体ね」
「ファンガイアだって色々と手一杯だっていうのになァ」
「ファンガイアだって色々と手一杯だっていうのになァ」
同じ様に、胸にさらしをまいた露出狂ショタコうわなにするやめ(ry結標淡希と学園都市第一位の一方通行がそれぞれ反応を見せた。
その会話の中に、ファンガイア、未確認生命体と聞き慣れない言葉が飛び交う。未確認生命体は昨日、黒髪ツンツン頭の少年が倒したクモの怪人のことであるが、学園都市上層部てそう名付けられた。
その会話の中に、ファンガイア、未確認生命体と聞き慣れない言葉が飛び交う。未確認生命体は昨日、黒髪ツンツン頭の少年が倒したクモの怪人のことであるが、学園都市上層部てそう名付けられた。
「ところで土御門、なンで俺達が化け物退治なンかしなくちゃならねェンだ?」
土御門、と呼ばれた金髪サングラスにアロハシャツの奇抜な格好の人物は手近にあった資料を手に取り、答えた。
「しょうがないにゃー。『警備員』に任せるにしても、能力者にやらせるにしても危険過ぎるからな」
「そうは言っても通常兵器で太刀打ち出来ねェだろ」
「そのために『アレ』が与えられたのでしょう?」
「そうは言っても通常兵器で太刀打ち出来ねェだろ」
「そのために『アレ』が与えられたのでしょう?」
テーブルに置かれたひとつの何かのグリップのような物を海原が指差し、土御門が続ける。
その開発ネームは『Intercept・X・Attacker』というらしい。
その開発ネームは『Intercept・X・Attacker』というらしい。
「イクサシステム……」
「まだ三回しか使ってないけどな」
「着心地はどうなの?」
「特に何も無ェな。段々使い勝手もわかってきた」
「まだ三回しか使ってないけどな」
「着心地はどうなの?」
「特に何も無ェな。段々使い勝手もわかってきた」
装着者に任命されたのは一方通行だった。色合い的にも気に入り、リハビリにも丁度良いとは本人の談。
「ファンガイアサーチャーに反応だわ」
「一方通行」
「場所は?」
「一方通行」
「場所は?」
部屋の隅に置かれたPC機材を、結標がぎこちない動きで操作する。これも上層部から支給された物で、これの情報を基に一方通行が出撃するのだ。
「第七学区のファミレス近くよ」
「了解」
「了解」
そう言って、部屋から一方通行が飛び出した。
「案外、ノリノリじゃない」
「変身してみたいですね」
「俺もだにゃー」
「変身してみたいですね」
「俺もだにゃー」
男の夢ですね、わかるか海原、と手を握りあう野郎二人を結標は冷めた目で見つめた。
行く宛も無く彷徨う作業の再開だお。何か上条に上手い具合に撒かれたような気がするが、其処まで頭が回らない。先程ので未だにぼやけているのである。
「騒がしいわね…」
とあるファミレスの前をふらふらと力無く漂うクラゲの如く歩く美琴の耳につんざく悲鳴が響いた。それに気を取り直して辺りを見回し、状況確認を行う。
(逃げ惑う…?)
茶色の髪を揺らし、視線を素早く走らせてひとつの異常をまず見つけた。
時空の歪み。そこを中心に人々が走り出している。
時空の歪み。そこを中心に人々が走り出している。
「リント……ボゾグ…」
よく見ると、鼠に似た姿の異形が人々を襲っているではないか。今もまた、幼き子供が狙われている。スカートのポケットからコインを数枚取り出し、狙い撃つ。
超電磁砲。
自身の通り名である能力攻撃を、怪人にぶつける。
超電磁砲。
自身の通り名である能力攻撃を、怪人にぶつける。
「…効いてない!?」
「ボゾグ…ボゾグ!」
「やば…こっちくんな!」
「ボゾグ…ボゾグ!」
「やば…こっちくんな!」
叫んでみても言葉が通じない。もう数発程撃ってはみるが、やはり効き目無し。だが、子供が逃げる時間は稼げた。
「…見たところ、ネズミさんみたいな形ね」
不気味な姿だが、しっかり見れば動物に似ていたが、美琴としてはこんな不細工な鼠に殺されるなど笑止。
「能力が効ないなら……これで!」
「ボンバベシ、ゴセビパツグジョグギバギ!」
「ちょっ、きゃあ!」
「ボンバベシ、ゴセビパツグジョグギバギ!」
「ちょっ、きゃあ!」
蹴りを受け止められ、パンチをされてよろけてしまう。それでも、ダメージは皆無。
「こ、こっちは初めてなのよ!?」
「……?」
「…ああもう!」
「……?」
「…ああもう!」
殴りかかってくる鼠グロンギのパンチを手で掴み、逆にこちらが腹部に決める。攻撃の手を休めず、更に一撃、二撃と続ける。
「いい感じね…」
「…ボゾグ!クウガ!」
「グギグギうっさいわね!」
「…ボゾグ!クウガ!」
「グギグギうっさいわね!」
固く握り締めた右拳が、苛立ちがこもってグロンギの顔面を直撃する。
「まだまだ行くわよ!」
拳を握り直し、グロンギに近寄りーーー、
「痛っ! 何!?」
真横からの突然の強襲に、美琴クウガが吹き飛ばされた。
突進の主の方を見ると、
突進の主の方を見ると、
「……また鼠?」
ここは浦安か、とつっこんでしまう美琴。そんな世界的ではなく学園都市です。
「…ってか一気に増えた!?」
計四体。新たに現れたのが三匹でどれも同一種である。
「不利過ぎよ!」
文句を垂れるが、どうやら向こうの方も新たな敵に困惑している様子。仲間では無いようなのだ。
「くっ…」
今は先の方をどうにか退けなくては。
再度攻撃を仕掛けに鼠三匹を素通りしてグロンギに向かう。
「痛」
鼠三匹に絡まれた。調子に乗ったグロンギまで襲う。
かなりまずい状況。逃げ出す機会を窺うが、絶え間なく降り注ぐ暴力の嵐に、美琴は耐えるしかないが、いずれ力尽きてしまう。
かなりまずい状況。逃げ出す機会を窺うが、絶え間なく降り注ぐ暴力の嵐に、美琴は耐えるしかないが、いずれ力尽きてしまう。
(嘘でしょ……)
肉体が強化されているとはいえ、地味に痛みがある。
気が遠くなりかけ、諦めが脳裏を掠め始める………。
気が遠くなりかけ、諦めが脳裏を掠め始める………。
「居やがったなファンガイア! その命、神に還しやがれ!」
聞き覚えのある声に、美琴はそちらを振り向いた。
上条ではない声。黒では無く、白い人物。その人物は手に持ったナックルで、美琴に群がるファンガイアと呼ばれた鼠怪人をぶん殴り、払いのけた。
上条ではない声。黒では無く、白い人物。その人物は手に持ったナックルで、美琴に群がるファンガイアと呼ばれた鼠怪人をぶん殴り、払いのけた。
「おい、赤いの。大丈夫かァ?」
「あ、ありがと…一方通行」
「…この声、『超電磁砲』か?」
「あ、ありがと…一方通行」
「…この声、『超電磁砲』か?」
どうやら一方通行も美琴のことを認識したようで、手を貸して立ち上がるのを手伝った。
「何があったか聞きてェとこだが……やれるか?」
「なんとかね。アンタは?」
「見てりゃあわかる」
「なんとかね。アンタは?」
「見てりゃあわかる」
ナックルを持ち直し、もう片方の手に打ちつける。
『レ・ディ・イ』
機械音声が告げる。
一方通行が持つイクサナックル。手に当てることで、ナックル側が装着するに相応しいかを識別し、可能の場合に機械音が流れる。
「変身!」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
『フィ・ス・ト・オ・ン』
腰に巻かれていたベルトに、ナックルを装着させ、白い聖職衣をモチーフとした強化装甲服が形成されて一方通行を包む。
「!?」
「これで納得したか?」
「う、うん」
「行くぜ、『超電磁砲』」
「ええ!」
「これで納得したか?」
「う、うん」
「行くぜ、『超電磁砲』」
「ええ!」
クウガとイクサ、それぞれの敵へ向かって駆ける。
鼠グロンギとの間合いが至近距離となり、拳と蹴りを織り交ぜ、戦う。鼠ファンガイア三匹と交戦するイクサは、イクサカリバーという銃兼長剣となる武器を巧みに操り、牽制しつつダメージを与えてゆく。
鼠グロンギとの間合いが至近距離となり、拳と蹴りを織り交ぜ、戦う。鼠ファンガイア三匹と交戦するイクサは、イクサカリバーという銃兼長剣となる武器を巧みに操り、牽制しつつダメージを与えてゆく。
「一気にケリをつける…!」
鼠ファンガイアと距離を離し、イクサカリバーの弾薬スロット部を上に押し込み、一方通行はベルトの横から、金色の笛のようなアイテム『フエッスル』を手に取り、ベルト本体にリードさせる。
『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』
「イクサ・ジャッジメント!」
「イクサ・ジャッジメント!」
光を纏う赤い刀身で鼠三匹を斬りつけ、三匹はステンドグラス状となって砕けた。
「は、早い!」
それを見ていた美琴の口から感嘆の句が零れた。
「一人で大丈夫かァ?」
「あたしにだってこれ位はぁ!」
「あたしにだってこれ位はぁ!」
あの一方通行に心配され、美琴は躍起になって拳でグロンギを後退させ、
「喰らいなさい!」
跳躍し、グロンギの胸部へと蹴りを放つ。ヒットした部位にクウガの紋様が刻まれ、そこから封印のエネルギーが流れ込み、ベルトのバックルに到達すると、
「ジュスガバギ……クウガ!」
「やった!」
「やった!」
死に際に断末魔の叫びを上げ、爆発四散した。
後ろを振り返ると、既に一方通行の姿は無く、その場には美琴だけが残された。
後ろを振り返ると、既に一方通行の姿は無く、その場には美琴だけが残された。
「つ、疲れた……」
変身が解け、疲労が込み上げてくる。こんな時にいない同居人を少しだけ恨み、美琴は学生寮へと歩を進めた。
次第に、通報を受けた『警備員』や『風紀委員』、野次馬が集まって来たが、面倒なので美琴は足早に立ち去ることにした。
次第に、通報を受けた『警備員』や『風紀委員』、野次馬が集まって来たが、面倒なので美琴は足早に立ち去ることにした。
(クウガ…グロンギ…)
先程の変身の際に、頭に直接刺激された単語。女子中学生の体力には結構キツいものがあった為、今は深く考えないことにした。
道中、幾度か力尽きかけたがなんとか寮まで辿り着き美琴は部屋のベッドにダイブする。同居人は未だ帰っておらず、数十分前のことを思い詰めるのには好都合である。
(ベルトの名前が『アークル』、それに埋め込まれているのが霊石『アマダム』……)
脳裏にフラッシュバックした古の戦いの記憶。超古代、という言葉がまさしく当てはまる。長らく封印されていたグロンギだが、何かが原因で復活し、それが元でこの『アークル』は現れたのだろうか。
「難しいわねぇ……」
クウガ。
そういえば、と思い、巨大匿名掲示板を覗いてみた。昨日のように、目撃者がいるかもしれないのだ。
そういえば、と思い、巨大匿名掲示板を覗いてみた。昨日のように、目撃者がいるかもしれないのだ。
「これかしら…」
『さっき変な怪人に襲われて仮面ライダーに助けてもらった』(351)
目に留まったスレを見てみると、恐らく、いや、やはりと言った内容が書いてあった。
赤い仮面ライダーと白い仮面ライダー。…昨日のはピンク……マゼンタの仮面ライダーだったはず、という書き込みばかりだった。
赤い仮面ライダーと白い仮面ライダー。…昨日のはピンク……マゼンタの仮面ライダーだったはず、という書き込みばかりだった。
「これで私も仮面…ライダー……」
いざなってみてわかる複雑な心境。自分一人が何かを言われるのはいいが、黒子や初春さん達まで言われるのではないかと思い込んでしまいかける。
だが、次第に意識が遠退き始め、瞼が重くなり、ちらつく黒いツンツン頭に手を伸ばそうとして、美琴の意識は深く落ちた。