とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 7-161

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匿名ユーザー

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「なんだビリビリ、きゅうに呼び出して。まさかデートのお誘いか」
「……こんどたのむわ。でも今日は別の用事」
 上条当麻は、ビリビリこと御坂美琴に、蹴飛ばされた跡が残るいつもの自販機の前に、真っ昼間から呼び出されていた。
 真面目の顔の美琴を見て、当麻はまたかと嫌な予感がする。
「実は、デートしてほしいのよ」
「は?」
「……ちょっと待って」
 美琴は寂しそうに苦笑すると、小さく火花を散らせた。
「そろそろ用意はできた、とミサカは待ち人を呼び出します」
「美琴、だよな。妹みたいな話しかたしなかったか」
「最近、ネットワークに繋げるようになったのよ。妹たちほど上手じゃないけど。……ほら、きた」
 美琴にそっくりな顔。だけど頭にゴーグル、視点が曖昧な目。
 散々見慣れたシスターズのひとりだ。
「はあ。キミは何号なんだい?」
「一○×○×号とミサカは自己紹介します。本日は、御一緒することを願います。皆の許可を取った、とミサカは年押ししておきます」
「なんでもいいから、一日一緒にいてあげて。あたしからもお願い」
「いい、けど。俺、デートなんて慣れて……」
「いいから、いてやんなさい!」
 こうして、トウマとミサカX号は、公認デートをすることになったわけだ。

 正真正銘デートなんぞに慣れていない当麻は、とりあえずゲーセンなんぞに行き、クレーンゲームで器用にもゲコ太ストラップを吊り上げた。
 が、アームに引っかかって落ちて来なかった。
「……不幸だ」
「残念、とミサカはインチキをします」
 バチッとX号の手から火花が出て、アームが振動した。その勢いで、ストラップがすとんと落ちて来た。
「わたしのもの、とミサカは歓喜します」
 と、拾い上げながら薄い表情で喜びを表す。
「はいはい、どういたしまして」
 当麻は肩をすくめつつ、笑いかけた。
 ふと目が合う。何か違う。
 いや、たしかに妹たち(シスターズ)もひとりずつ微妙に違うのはわかっていたのだが、なんだろう、この違和感は。
「大人っぽいな、キミは」
 思ったまま、口にする。
 もともと中学生としてはとても大人っぽいところがあるが、X号はむしろ二つか三つくらい年上にすら見える。こころなしか、背も高く、胸も大きいような。
「話は目を見てするべき。ムネではないと、ミサカは照れてみます」
「あはは、やべ」
 やっぱり、少し大きいぞ。
「照れるついでに、腕をくんでみます」
 いきなり、その胸を押し付けるように、当麻の腕にしがみついてきた。
 やわらかい感触がヤ・バ・イ。
「心拍があがっています、とミサカは心配してみます」
「わわ、分かってていってるだろ?」
「はい、とミサカはさりげなく肯定します」

 ランチをしたり、ショッピングしたり。
 ああ、デートしてら。
 当麻がそう思い始めた頃、見慣れた顔にでくわした。って土御門かよ、とげんなりする。
「おっ、レールガンの姉とデートってのは、ほんとだったんだにゃー」
「うっせー! どこから見張ってやった」
「さあね、たまたまだよタマタマ。じゃ、ごゆっくりっ!」
 何事もなく、腕を組んで歩く俺たちの前からさっていく。
 ああ、うっとうしい。まて、こんな思い……まさか、本気で俺は好きになりかけてる? いやいやまさか、ビリビリ本人ならともかく妹……
 姉? と言われた。たしかに。
「にゃー、は放っておいて、デートの続行をミサカは希望します」
「そ、そうだな」
 間違いなく、デートだな。妹だけど。

「今日は、たのしかった。と、ミサカは喜びをつたえます」
「すまんな、慣れてなくて」
 戻って来た自販機前。日はだいぶ傾いている。
「初々しくてすてき、とミサカは笑ってみます」
「あはは、自分で言うなっ!」
 思わず小突く当麻。
 わるくない、いやいい気分だ。ずっとこのまま一緒にいたい気分に。
「では、このへんで。と、ミサカは残念至極ながら別れを告げます」
「またな。俺も今日はたのしかった」
「……さようなら。また会えれば、と心から思いつつこの場を去ります」
 X号はそう言うと、どこか――おそらく研究施設の一つ――に向かって去って行った。

「おつかれさん」
 そこに美琴が現れた。口調からして、本人だ。
 笑顔を浮かべていたが、どうにもなく寂しそうだった。
「楽しませてあげられたみたいね」
「たぶん、な。むしろ、俺が……」
「ネットワークで、全部知ってるわ。だから、謝らなきゃ」
「どうして、謝るんだよ」
「結構、ほんとにいいカンジだったから。だけどさ、もうあのコには会えないから」
 肩を落とす美琴。今にも泣きそうだ。
「調整に失敗しちゃってさ、長くないんだ、もう。これから一気に老化がすすむから、施設にもどったらカプセルに入って、できるだけ長生きさせてあげるだけ」
「ちょっと、オイ。マジかよ」
「冗談でこんなこと言わない。ほら、大人っぽかったでしょ?」
「あーー」
 驚き、そして納得。
 そして追いかけようとしたところで、美琴に手を掴まれた。
「思い出はみんなで共有してる。だから、追いかけないで。楽しい思い出が、悲しいのに変わっちゃう。あたしは今、切り離してるから、悲しい思いはさせてないはず」
「……そう、か」
 当麻は諦め、その場にたちつくした。
「でも、今日ので分かったわ。アンタが思った以上にやさしいこと。あとさー」
「あと?」
「おっぱい好きがっ!」
 ビリビリ!!!
 効かないとわかりつつ、美琴は電撃をぶっぱなした。
 出て来る涙を吹き飛ばすようにして。

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