技術が更なる発展を遂げ、その粋を集めた高層ビルや風力発電用風車が、緻密に計算された都市構造の下、いくつも折り重なるように立ち並ぶ風景。
それでいて環境への配慮も施され、いたるところに自然が溢れてる、まるで近未来を彷彿とさせる風景。
そんな街『学園都市』のとある路地にて、黒い蝶ネクタイに赤いスーツという奇怪な服装に身を包んだ男が、人だかりの中心で喝采を浴びていた。
「わぁー!スゲー!」
「なんでー!」
赤いスーツの男はその歓声に答えるように手を振った。
男「ありがとう!ありがとう!」
そこに帰宅途中なのか、教科書が入るぐらいの黒い鞄をひっさげて通りすがる一人の男子高校生が。
上条「不幸だ・・・・・・ん?」
ちょうどその人だかりを見たとき、彼の目に飛び込んできたのは、黒に金縁の大きな箱の中から頭と足が出ている人を、今まさにノコギリで真っ二つにしようとする瞬間だった。
そしてそのまわりには興奮で沸き立った人々。
異様な光景だった。
上条当麻は思う、このままではあの人が変な服の男に切り刻まれてしまう、と。
急いで彼は人だかりの中心へと飛び込んでいった。
男「それではお見せいたしましょう!究極の奇術を!」
輪の中心に来た当麻は、人体を切断しようとしている赤いスーツの男に向かって若干喧嘩腰に話しかけた。
上条「おい、待てよ。どういうことだ。また魔術師が騒ぎを起こすつもりか。そうはさせねぇ!」
すると赤いスーツの男はノコギリを置いて睨みつけてきた。
当麻も睨み返す。
そして、ハッと何かに気がついたかのように話し始めた。
男「キミが噂の幻想殺しか。師匠から聞いてるよ」
意外な人物から幻想殺しの言葉を聞いて、当麻は耳を疑った。
上条当麻が持つ特別な力『幻想殺し』は外部の人間はもちろん、学園都市内でも知る者は一握りしかいないはずである。
上条「何!なんで俺の能力を知ってる!?」
赤いスーツの男はニヤニヤしながら、余裕綽々とでも言いたげに当麻を挑発する。
男「それは教えられないね~。でもキミは僕には勝てない。なぜなら僕の術はキミの幻想殺しでは打ち消せないからだ」
上条「なんだと!」
赤いスーツの男は何もかも知っていた。
これまでに上条当麻が魔術師と数々の激戦を繰り広げ、その右手に宿る『幻想殺し』によって勝利を勝ち取ってきたことを。
男「奇術は魔術や科学と違ってタネがある。全て現実なんだよ。だからキミには打ち消せない。僕はこの学園都市に『奇術』のすごさを見せつけるためにやってきたのだよ」
当麻は何も知らなかった。
今対峙している相手が自分にとって天敵にも等しい存在であるということを。
上条「奇術だか魔術だか知らねぇが俺はお前を倒す!!」
上条当麻が知ることになるもの。
それは科学でも魔術でもない第三の勢力『奇術』。
男「よく聞こえなかったなぁ?耳が・・・・・・でっかくなっちゃった!」
科学によって生み出された超能力から、魔術の頂点と呼ばれる神の力までをも打ち消す『幻想殺し』ですら敵わないという未知の技。
上条「な、何なんだよ!ふざけやがって!」
その奇怪な服に身を包み、人を切り刻もうとする謎の男は、まだ奇術界からの刺客にすぎなかった。
男「さあ、マギー審司の楽しいショーの始まりだ!!」
これは『とある魔術の禁書目録』のストーリーの裏で起こっていながら、本編に全く登場しなかった第三勢力との激闘の物語である。