小さい頃は電撃が夜空の星の煌きのように見えてLv5になったら星空を作れるかもしれないと思って頑張った。
医者に生体電気を操れれば筋ジストロフィの患者を治すことができるかもしれない
という話を聞かされてからは彼らに希望の光を与えたいと思いDNAマップを提供し,
自分も彼らのためにひたすら努力した。
他の子がおしゃれしたり、テレビをみたり、遊んでる間も彼女は一人Lvを上げることだけを考えていた。
彼女が妙に子供趣味だったり、ファッションセンスがないのは、そのせいかもしれない。
途中何度も壁にぶつかったが負けず嫌いの彼女は諦めなかった。
その結果彼女は学園都市で第3位のLv5『超電磁砲』とまで呼ばれるようになる。
その能力と自分の家が裕福ということもあり、学園都市有数のお嬢様学校、
常盤台中学に入学し周りの生徒達からは尊敬の念をこめて御坂様とまで呼ばれるようになった。
休み時間のたびに物珍しい顔で違うクラスの生徒が彼女の教室を覗き込み、
彼女の席は人だかりができた。お嬢様達は彼女を自分の派閥に組み込もうとしていたのである。
しかし、彼女はどの派閥にも入らなかった。なぜならお嬢様たちが御坂美琴だから自分を誘っているのではなく
『超電磁砲』だから誘っているということを見抜いていたから。
彼女は自分を『御坂美琴』として見て欲しかった。クラスの子と話していても、
みんな彼女に遠慮して普通に話してくれない、落としたものを拾ってあげると
お礼ではなく御坂様に拾わせてしまって申し訳ありませんと涙目で謝られる。
すごい賑やかだったのに自分が教室に入ると急に静かになってしまう。
極めつけは彼女のルームメイトだった。同じ学年なのに敬語、
彼女が何か掃除などをしようとしても御坂様に悪いといってさせてもらえない。
お風呂も彼女より先にはいろうとはしないし。彼女が寝ないと自分も寝ない。
すべて御坂様優先なのである。彼女が「今日の学校はどうだった?」と尋ねても
「御坂様に私の面白くも無い話なんて滅相も無いです。御坂様はいかがだったのですか?」と、まともな会話もできない。
別にみんな彼女を虐めているわけでもないし、嫌っているわけでもない、
御坂様に変なところを見られたくないだけなのだ。
みんな彼女の前では仮面を被ってしまう。本当の姿を彼女に見せてくれない。
彼女は輪の中心に立つことはできても輪に入ることはできないのだ。
自分を自分として見てくれないことに嫌気がさした彼女はできるだけ
常盤台の生徒と会わないように、学校が終わり、門限までの間学園都市をぶらつき時間潰すようになった。
容姿が整っているため、スキルアウトに襲われることもよくあった。しかし彼女はそれを楽しんでいた。
単純に日頃の鬱憤を晴らすことができる。というのもあったが、理由のほとんどは彼女が能力を使い返り討ちにするまでの間
彼らは自分をただの女の子として見てくれるからである。
それほどまでに彼女はナチュラルに飢えていた。
そんな生活が1年続き2年生になったとき、ある風紀委員の少女と出会った。
その少女__白井黒子はLv5に偏見を持っていたが、彼女の飾らない態度や、後輩にも優しく接する態度、を見て自分の偏見とのギャップ、
そして風紀委員の仕事で苦戦していた際に彼女に助けられたことにより、次第にそして密かに彼女を慕うようになっていった。
ある日とうとう黒子は寮監に自分を彼女のルームメイトにするよう必死に頼み込んだ。その必死さと、
ジャッジメントの仕事が評価されていることもあり特別に許可された。
そんなことを全く知らない彼女はその晩いきなり黒子に襲われ思わず寮内で能力を使ってしまい、
寮監に罰をうけることになったが、それがキッカケで彼女達は仲良くなった。
黒子の変態行為には困っていたが、彼女は嬉しかった。自分の素を出すことができる本当の友達ができて。
しかし黒子は一つ下の後輩、学校に行くまでは一緒だがそれからは会うことはできない。
彼女は教室に入る。その途端にクラスの子達は静かになり、ひそひそと静かな声で話し始める。
それに慣れている彼女は黙って席に着き寝たフリをする。
授業中先生に難しい問題をあてられ、解答すると何故か自分の時だけ拍手が起こり、
体育のソフトボールの時間にはみんなが遠慮して試合にならないため一人木陰でぼーっとする。
昼休みは学食に一人で行くのも面倒なので立ち入り禁止の屋上で一人で弁当を食べる。
クラスメイトに一緒に食べませんか?と誘われるが、みんな彼女に対して遠慮し、会話が弾まないため、悪いと思い断っていた。
Lv5、御坂様、という、どうしようもない完全な壁ができてしまっているのだ。
自分を自分として見てくれる存在を一人得たことで、一人で居るときの寂しさは増し、
弁当を食べながら涙を流すこともあった。
そして待ちに待った下校、校門で黒子が待っている。泣きそうなほどに嬉しいが、素直じゃない彼女は素っ気無い態度をとる。
それから一緒に買い物に行ったり、ご飯を食べたり、お気に入りのぬいぐるみを馬鹿にされて喧嘩したり、普通の女の子の時間を過ごした。
彼女は幸せだった。以前まで毎日だった一人での外出もめっきり減っていた。
しかし黒子は風紀委員の仕事で忙しいことが多く、彼女が居ないときは以前のように一人外出していた。
そんなある日彼女はある不幸な少年と出会う。その少年の名は上条当麻。
その日は黒子が忙しかったため一人でゲームセンターに行っていた。
UFOキャッチャーのゲコ太人形をとろうと粘っているうちに門限の時間が過ぎてしまい、諦めて寮への道を歩いていると
不良に絡まれた。本当にこの学園は馬鹿ばっかりだと思っていると一人の少年が割って入ってくる。
どうやら自分を助けようとしているらしい、今まで自分を助けようとしてくれた人など一人も居なかったため
彼女は心底感心していた、しかし少年が彼女を馬鹿にした発言をしたため腹が立った彼女は試してみたくなった。
私が超電磁砲だと知ったらこの少年も他の人たちと同じように態度が変わるのだろうかと。
そして不良たちに電流をお見舞いしてみる。少年には少し軽めに、
不良達は黒焦げになり、残った不良は仲間を引きずって逃げていく。
それを見てやっぱりそうだよね…。と思いながら、少年のほうを見る
しかし少年は立っていた。それも無傷で、
彼女は驚いた。軽めに撃ったとはいえ数分は痺れて動けないくらいの電撃を放ったつもりだった。
当麻「危ねぇじゃねぇか!」
と、少年は怒りながらいう。
美琴「あ…アンタなんでなんとも無いのよ…?何の能力?Lvはいくつ?」
と驚いた少女は矢継ぎ早に少年に尋ねる。もしかしたら自分と同じLv5なのかもしれない。
当麻「んーと…異能なら何でも消しちまう『幻想殺し』って能力らしいんだが…。システムスキャンによるとLv0だ」
少年は頭を掻きながら言う。
美琴「…Lv0ですって!?それに、幻想殺し??そんな能力聞いたこと無いわよ!!」
当麻「そんなこといっても…まぁ、とりあえず、今日は早く帰りなさい!かよわい女の子がこんな遅くまで
ぶらぶらしてちゃいけません。相手が俺みたいに能力効かない奴だったらどうするんですか!」
美琴「か、、かよわくなんかないわよ!アタシはね!学園都市のLv5『超電磁砲』の御坂美琴なのよ!
いいわ、今から勝負しなさい!ってちょっと!待ちなさいってば」ビリビリ
当麻「ピキーン んじゃ!忙しいんでさいなら~気をつけて帰れよ~」ダダッ
少年は彼女の電撃を消し去り逃げていった。彼女はそのまましばらくその場に立っていた。自分の能力を完璧に防ぎ
自分のことをか弱いとまで言ってきた少年。彼女はいつのまにか、その少年のことを考えていた。
その日から黒子が風紀委員の仕事で忙しい日はあの少年を探すためだけに外出するようになった。
少年を見つけては電撃を放ち、それを防がれては追いかける。少年にとって、それは非常に不幸なことだっただろうが
少女はとても楽しかった。しかし少女はそれが何故だかは分からない。思う存分電撃を放てるからだろうか?
しばらくの間追いかけっこだけだったが、ようやく勝負に持ち込められる日が来た。
河川敷で少年と少女は向かい合う。
当麻「本気でやっていいんだな?」キリ(イケメンAA)
美琴「ええ…どっからでもかかってきなさい!…アタシの力みせてあげるんだからっ!!」ビリリー
当麻「なっ砂鉄の剣!?獲物使うのはなしだろ!」
中略
美琴「とった!飛んでくる電流は打ち消せても直接流せば!」ガシッ
少女が少年の右手を掴んで電流を流そうとする。しかし…。
美琴「えっ電流が…流れていかない!?」
当麻「………」バッ
美琴「ぴぃ!?」プルプル
美琴は涙目になって俯いている。美琴は怖かった。相手は高校生の男である。なぜか能力は全く使えないし、
ここは人気の無い河川敷、このまま乱暴されるかもしれないと目をつぶって震えていた…が、
いつまでたっても何もされない。
美琴「プルプル ………あれ?」
当麻「マイリマシター」
美琴「……ふ・ざ・け・ん・なぁあああああああああああああ!!!///」
というふうに勝負は彼女の惨敗で終わったが…。彼女は悔しいとか、そういった感情は沸いてこなかった。むしろ何かが凄く満たされるようで
その日は枕を抱きしめてぐっすり眠ることができた。だが彼女はまだそれが何かが分からない。
次の日もそのまた次の日も何故かまた少年を探しに出かける。
彼とよく出会う公園のベンチに座って待ち伏せてみるが、ここ数日全く出会えない。
何かまたトラブルに巻き込まれてるのかな…。と彼女はため息をつき帰路につく。
翌日黒子と別れ教室に入る。少年を探して疲れているので席に着き少し寝ようとしていると彼女の耳にある会話が飛び込んできた
「聞いた?Lv5の軍事用クローンが作られてるって噂。あれってもしかして御坂様のことじゃ……」
えーうそぉ~、と周りが騒いでこっちをチラチラみている。何を馬鹿げたことを、どうせ自分のことを気に入らない派閥の
連中が流したデタラメだろと彼女は心の中で独りごちる。
たびたびこの手の嫌がらせを彼女は受けていた。夜中まで帰ってこないのは援助交際をしているからだ、とか
人を殺したことがあるとか、本当に中学生のお嬢様が考えるような、しょーもない噂ばかりだった。
そんな噂が流れるたびに黒子が「噂を流した犯人をジャッジメントしますの!」と暴れまわって大変だった。
しかしそれはいつものようなただの噂ではなかった。出会ってしまったのである、自分のクローンに。
最初は自分と同じクローンなんて気持ち悪いと思っていた。
だが、ゲコ太の缶バッジを取り合いしたり。アイスクリームを一緒に食べたり、双子と間違えられたり
1日一緒に過ごすことでクローンにもちゃんと感情があるということがわかった。
そして何より、自分に姉妹ができたような気がして嬉しかった。
そんな自分の姉妹を目の前で圧殺された。
その日から彼女は少年のことも忘れ毎晩実験施設の破壊工作を続けるようになる。
病と闘う子供たちのために提供したDNAマップ__最初から軍事利用のためだったのかもしれないが__
をおかしな実験に利用されることが嫌だったから。姉妹を助けたかったから。
そして数日後、全ての施設の破壊に成功した。これでこの馬鹿げた実験も終わる。
そう思うと、ふと久しぶりに、あの少年に会いたくなった。いつも少年と出会う公園に行く。
いた!自販機の前で何かごそごそしている。そんな少年に彼女は話しかけた。
何故か態度がよそよそしい、なんでだろ?と思いながら会話を続けていると、ふと自分のクローンが立っているのが見えた。
少年に一言いい、クローンの元へ向かう。「なんでこんなところに居るのか」という質問の返事を聞いた彼女は絶句した。
実験はまだ終わっていなかったのだ。彼女がいくら施設を破壊しても他の機関が引き継いでしまう。そしてこの姉妹も今から
殺されに行くところだというのだ。呆然としている彼女をおいて姉妹は行ってしまった。
どうすればいいのか分からない彼女は途方にくれていた。さっきまで少年と話していたことなどとうに忘れている。
そして寮のベッドに倒れこむ。黒子は彼女が疲れているんだと思いそっとしてくれていた。
そんな気遣いをしてくれる黒子に彼女は話しかける。
美琴「…黒子…ありがとね。」
黒子「きゅ…急に何をおっしゃいますの?お姉さま」
いつもと違うお姉さまを心配する黒子。
美琴「いや…なんでもない…ハハハ」
黒子「何かあったんですの?お姉さま、黒子に何でも話してくださいまし、黒子はいつでもお姉さまの味方ですの。」
美琴「…何にもないわ。大丈夫、本当に今までありがとね。 じゃ!おやすみ!」ガバッ
黒子「…はい。。おやすみなさいですの(私にも話してくださらないのですね…。)」
その夜彼女は決意した。妹達を守るために自分が犠牲になることを。
朝早くに彼女は目覚めた。「…お姉さまぁ…ムニャムニャ」と寝言をいっている黒子の頬に謝りながらキスをする。
キスした瞬間ヌヘヘとか言っている気がしたが気のせいと思うことにした。制服に着替え寮を出る。今日の実験は夜らしい。
まだ時間がある。なんとなく少年に会いたくなり少年を探した。なんだか、いつもアタシが探しているなぁ
と思いながら少年と出会った場所や、公園、橋などをブラブラしたが、会うことはなかった。
時間まであと30分となった。いざ自分が死ぬとなると怖くなってくる。
どうしてこんなことになってしまったんだろうか。彼女は考える。
小さい頃は電撃が夜空の星の煌きのように見えてLv5になったら星空を作れるかもしれないと思った。
医者に生体電気を操れれば筋ジストロフィの患者を治すことができるかもしれない
という話を聞かされてからは彼らに希望の光を与えたいと思いDNAマップを提供し,
自分も彼らのためにひたすら努力した。
他の子がおしゃれしたり、テレビをみたり、遊んでる間も彼女は一人Lvを上げることだけを考えていた。
途中何度も壁にぶつかったが負けず嫌いの自分は諦めなかった。
ふと気付くと自分は輪の中心に立っていた。どうしても輪には入れない。
何がいけなかったんだろうか…。Lv5になったことだろうか?自分のコミュニケーション能力の不足のせいだろうか?
誰か助けて欲しい。自分をたった一人の自分を救って欲しい。
今まで誰にも救いを求めず、努力で壁を乗り越えてきた彼女が初めて救いを求めた、
その時、あの少年が現れた。
だが彼女は少年に救いを求めなかった。そして死地へ赴こうとする。しかしそんな彼女の前に少年は立ちふさがった。
彼女に死んでほしくないと少年はいう。お前が死ぬ理由なんてねえじゃねぇか。と、
自分の決意を揺るがしてくる。
このままでは自分の決意が崩されてしまう…そう思った彼女は少年に電撃を放つ。
少年に効かないことは分かっていたが、自分の覚悟がどれほどなのかを少年に分からせようと思っていた。
しかし少年は最後まで電撃を防がなかった。
彼女は気絶した少年を泣きながら介抱する。少年と最初に出会ったときに思った疑問、自分が『超電磁砲』だと知ったら
彼はどうするだろうかという疑問。その答えが分かった。てっきり彼は能力があるから自然に接してくれるのだと思っていた。
彼女はそれでもいいと思っていた。彼には電撃が通用しない。彼の身体に触れると電撃が使えない。
そう、彼と居ると自分が『超電磁砲』だということを忘れられる。彼は自分をただの中学生『御坂美琴』にしてくれるから。
しかしそれは間違いだった。彼は能力がなかったとしても、逃げ出さず、そのままの彼で自分を受け止めてくれる。
彼はアタシが『超電磁砲』だったとしても『御坂美琴』として見てくれる…。そんな少年の姿に彼女の幻想(決意)は完全にぶち壊されてしまった。
そして彼女は少年に救いを求めた。
彼は少女を救い出してくれた。あの大きな右手で。
今日も御坂美琴は一人外出する。非番で暇な黒子を無視して、
そして愛しい彼に言う。
美琴「アタシはビリビリじゃなくて、御坂美琴!アンタのことが好きで好きでしょうがないただの中学生よ!」
fin.
美琴「これでよしっと!」パタン
御坂美琴が書いていたノートを閉じる。
当麻「おい、何やってんだ?ビリビリ」
美琴「いや、なんとなく自伝ってのを書いてみたくなってね~。」
当麻「ほうほう。ちょっと見せてみろよ。」
美琴「駄目!絶対アンタには見せないんだから!」
当麻「へいへい、さいですか~。じゃあ別にいいですよっと。」
上条は手を振りながら去っていく。そんな彼を見ながら小声で呟く。
美琴「ふふ……。いつか最後の文…正直に言える日が来るのかな…。」
おわり