【初出】
禁書SS自作スレ>>984-987
禁書SS自作スレ>>984-987
年に数回学園都市が外部に向けて公開されるうちの一つである社会見学祭。
その会場の一つである建物の中へ開始時刻に合わせて続々となおも人が入り込んでいく。そのため現
在は少々人ごみで混雑が生じかけているのだが、ある一角だけは奇妙な空白のスペースが生じてい
た。
その中心にいるのは二人の人物。
周りにいる学生服姿の子供や大学生らしき大人たちがそこからやや距離を置いて注目しているのは、
主に一人の人物である。
周りから注目されている当の女性はしかし、そんなことはこれっぽっちも気にせずに相手の少年である
上条に向かってさらに詰め寄っていく。
「おいおい、ほんとに大丈夫か? こんな開始前からボーっとしてるようだと祭りが始まったらもっと大変
じゃんよ」
未だ突然の出来事に思考が追いつかずに硬直している上条に対して、ズズイッと身を乗り出してくる女
性。
上条の顔を覗き込んでくるために、こちらもつい相手を見返してしまう訳だが、
その会場の一つである建物の中へ開始時刻に合わせて続々となおも人が入り込んでいく。そのため現
在は少々人ごみで混雑が生じかけているのだが、ある一角だけは奇妙な空白のスペースが生じてい
た。
その中心にいるのは二人の人物。
周りにいる学生服姿の子供や大学生らしき大人たちがそこからやや距離を置いて注目しているのは、
主に一人の人物である。
周りから注目されている当の女性はしかし、そんなことはこれっぽっちも気にせずに相手の少年である
上条に向かってさらに詰め寄っていく。
「おいおい、ほんとに大丈夫か? こんな開始前からボーっとしてるようだと祭りが始まったらもっと大変
じゃんよ」
未だ突然の出来事に思考が追いつかずに硬直している上条に対して、ズズイッと身を乗り出してくる女
性。
上条の顔を覗き込んでくるために、こちらもつい相手を見返してしまう訳だが、
(って、その姿勢はやばーーーっ!!)
長身の女性が一般男子高校生の平均身長と同じかそれより少し低い背の上条の顔を覗き込もうとし
ているのである。当然、女性は身を屈めないといけない訳なのだが、その体勢をとると何だか先ほどより
も胸が余計に強調されているような気がする。
さらに、女性はスーツの下に着ているシャツのボタンを二つ目まで外してある為に、首元から覗く鎖骨
のくぼみやらその下の何やら谷間まで見えてしま
ているのである。当然、女性は身を屈めないといけない訳なのだが、その体勢をとると何だか先ほどより
も胸が余計に強調されているような気がする。
さらに、女性はスーツの下に着ているシャツのボタンを二つ目まで外してある為に、首元から覗く鎖骨
のくぼみやらその下の何やら谷間まで見えてしま
ズバン!! という効果音が聞こえそうな勢いで首を逸らすことで目の前の人物のある一点に集中しか
けた視線を無理やりねじり切る。
嘲るなかれ。
上条当麻さんだって若さを持て余す年頃の青少年なんですから。
むしろ目が行きかけた途中で鉄の精神で阻止した自分を褒めてやりたいです。
けた視線を無理やりねじり切る。
嘲るなかれ。
上条当麻さんだって若さを持て余す年頃の青少年なんですから。
むしろ目が行きかけた途中で鉄の精神で阻止した自分を褒めてやりたいです。
が、しかし。
そんな上条の行動を見て女性の眉が僅かに寄せられる。
「こらこら、少年。どういうつもりじゃんよ?」
屈んでいた身体を伸ばし、腕を組みながら上条に問いかけてくる。
心なし声色も不機嫌そうなものになっている。
それはそうだろう。あれではあからさまに女性の事を蔑ろにした行為と言えよう。
対峙している上条がなおもそわそわと落ち着き無く視線をさまよわせている為に、イライラ度は現在進
行形で上昇中のようである。
「人が話をしてるときはちゃんとこっちを見るべきじゃん」
そう言われても上条はそちらを見られないでいる。
女性が腕を組んでいるために先ほどとはまた違う仕方で胸が強調されているからである。
(あれ、でもこの口調、どっかで聞いたことがあるような……?)
と、考え込んでいた上条に対し、ついに女性が行動に出た。
おもむろに後ろから手を伸ばすと、上条の首を巻き込んで脇に絞めにかかる。
視線をまともに向けられないでいた上条は気付くのが遅れたためあっさりと捕まり、完璧にロックされる。
「あくまでシカトとはずいぶんじゃん、少年」
それに答えられるはずも無く、とにかくまずは女性の腕の中から抜け出そうと試みるが、細身な外見か
らは意外なほどにがっちりとホールドされているために徒(いたずら)に暴れてしまうだけとなってしまう。
さらに言えば体勢的に上条の顔の横に何やらが当たっているようなのだが、上条はすでに半分パニッ
クになっているため気付いておらず、当の女性本人はそもそもそういうことには無頓着のようで全然気に
していないようだった。
そんな上条の行動を見て女性の眉が僅かに寄せられる。
「こらこら、少年。どういうつもりじゃんよ?」
屈んでいた身体を伸ばし、腕を組みながら上条に問いかけてくる。
心なし声色も不機嫌そうなものになっている。
それはそうだろう。あれではあからさまに女性の事を蔑ろにした行為と言えよう。
対峙している上条がなおもそわそわと落ち着き無く視線をさまよわせている為に、イライラ度は現在進
行形で上昇中のようである。
「人が話をしてるときはちゃんとこっちを見るべきじゃん」
そう言われても上条はそちらを見られないでいる。
女性が腕を組んでいるために先ほどとはまた違う仕方で胸が強調されているからである。
(あれ、でもこの口調、どっかで聞いたことがあるような……?)
と、考え込んでいた上条に対し、ついに女性が行動に出た。
おもむろに後ろから手を伸ばすと、上条の首を巻き込んで脇に絞めにかかる。
視線をまともに向けられないでいた上条は気付くのが遅れたためあっさりと捕まり、完璧にロックされる。
「あくまでシカトとはずいぶんじゃん、少年」
それに答えられるはずも無く、とにかくまずは女性の腕の中から抜け出そうと試みるが、細身な外見か
らは意外なほどにがっちりとホールドされているために徒(いたずら)に暴れてしまうだけとなってしまう。
さらに言えば体勢的に上条の顔の横に何やらが当たっているようなのだが、上条はすでに半分パニッ
クになっているため気付いておらず、当の女性本人はそもそもそういうことには無頓着のようで全然気に
していないようだった。
ところで、この状況を周りから見るとどのように映るのか?
当初こそ何事かと見ていた周囲の人だかりも、今では単に学生が女性に可愛がられている様にしか
見えないために半分以上はあきれ返り、さらには上条がもがいているのが自分から女性に抱きついて
いるように見えるために半分近くは嫉妬を抱き、ごく一部は殺意すら立ち上らせている。
そんな事とは露知らず、あいからわずじゃれあっている(ようにしか見えない)上条だったが、何とか腕
の拘束から逃れようと必死でもがき、とうとう次の瞬間、
見えないために半分以上はあきれ返り、さらには上条がもがいているのが自分から女性に抱きついて
いるように見えるために半分近くは嫉妬を抱き、ごく一部は殺意すら立ち上らせている。
そんな事とは露知らず、あいからわずじゃれあっている(ようにしか見えない)上条だったが、何とか腕
の拘束から逃れようと必死でもがき、とうとう次の瞬間、
周囲の人だかりから高速で飛来した何かの直撃を後頭部に受けて吹っ飛び、そのまま床に沈んだ。
(ぐおぅ、な、なんだぁ…?)
何とか必死で首をめぐらせると、ゴトリ、と音を立てて目の前に自身を襲った凶器が落ちてきた。
「社会見学祭案内パンフレット……?」
倒れこんだままそれに書かれている名前を呟く上条。
いや、あれをパンフレットと呼んでいいのか?
見ればそのパンフレットなる物の厚さは、ともすれば手の平よりはみ出るかもしれない位ある。
(誰だよあんなの投げつけてきたのは!)
ようやく思考が追いついてフツフツと怒りが湧いてきた上条の視線の先に革靴を履いた足が現れ、そ
の投擲鈍器に手を伸ばして拾い上げた。
持ち上げられる本を追うままに視線を上げて持ち主を見ると、先程別れた吹寄制理が本の埃を払いな
がら周囲の人だかりを解散させているところだった。
周りの人の流れが幾分元に戻ったのを見てから女性に向かって頭を下げる吹寄。
「どうも、この馬鹿がご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません」
「あっはっは、迷惑って事は無いじゃん。……それにしても、相変わらず小萌センセのとこには面白いの
が集まってるみたいじゃん」
「いえ…、うちのクラスの全員がこんな馬鹿ばっかりではありませんから」
自分を無視して冷静な応対をしている吹寄に対して
「おい、俺に対しては何にも無しなのかよ……?」
恨みがましく上条が下から呟くと、
「黙れ馬鹿、今度は角でどつくわよ?」
「何でもないです」
「社会見学祭案内パンフレット……?」
倒れこんだままそれに書かれている名前を呟く上条。
いや、あれをパンフレットと呼んでいいのか?
見ればそのパンフレットなる物の厚さは、ともすれば手の平よりはみ出るかもしれない位ある。
(誰だよあんなの投げつけてきたのは!)
ようやく思考が追いついてフツフツと怒りが湧いてきた上条の視線の先に革靴を履いた足が現れ、そ
の投擲鈍器に手を伸ばして拾い上げた。
持ち上げられる本を追うままに視線を上げて持ち主を見ると、先程別れた吹寄制理が本の埃を払いな
がら周囲の人だかりを解散させているところだった。
周りの人の流れが幾分元に戻ったのを見てから女性に向かって頭を下げる吹寄。
「どうも、この馬鹿がご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません」
「あっはっは、迷惑って事は無いじゃん。……それにしても、相変わらず小萌センセのとこには面白いの
が集まってるみたいじゃん」
「いえ…、うちのクラスの全員がこんな馬鹿ばっかりではありませんから」
自分を無視して冷静な応対をしている吹寄に対して
「おい、俺に対しては何にも無しなのかよ……?」
恨みがましく上条が下から呟くと、
「黙れ馬鹿、今度は角でどつくわよ?」
「何でもないです」
さすがは鉄の女。見事なまでの対処の仕方です。ハイ。
っていうか、あんなものを角を使ってどつくとかあんたは鬼ですか?
っていうか、あんなものを角を使ってどつくとかあんたは鬼ですか?
と、起き上がりながら先程の吹寄の言葉を思い出して
「なぁ、知り合いなのか?」
上条が尋ねると、
「あんたね、体育の黄泉川先生でしょうが」
あっさりと言われた答えに固まる上条。
「……え? 体育の黄泉川先生って、あの、いっつもジャージで過ごしてるあの……? うそだろー!?」
「何であんたは分かんないのよ?」
「いやむしろわかんない方が普通だろ!? いつもと違うかっこうしてるし体育の授業だって俺らのクラス
の担当じゃ無いし! むしろ吹寄の方が何で分かったのか聞きたいくらいだし!」
「私は大覇星祭の運営委員や一端覧祭の実行委員で警備員(アンチスキル)の先生方と打ち合わせる
機会も多かったし、そもそも自分の学校の先生が分からないっていうのはそもそもどういうことなのよ?
……ということは貴様は相手が誰かも知らないのにあんな事をやってたっていうのね? これはやはり制
裁を加えるべきかしら?」
言いながら手に持つ本(と言っていいのか疑問に思える代物)を構えだす吹寄。
対して上条は必死で弁解を始める。
「待って待って、吹寄さんのその認識にはちょっとした誤解がありませんか?!」
そんなものは聞く耳持たぬとばかりにジリジリと間合いを詰めてくる吹寄に対して、会話の外にいた黄
泉川から声が掛かる。
「こらこら、いいのか? そんなふうに扱ったらせっかく苦労して貰ってきた『パンフレット』が台無しになっ
ちゃうじゃん?」
ピタリ、と吹寄の動きが止まる。
常に冷静な彼女にしては珍しく、動揺が割と顔に出ている表情で黄泉川に向き直る。
「いやぁ、いるもんじゃん、わざわざ『パンフレット』を持とうとする学生も。なんだ、やっぱり小萌センセの
トコは面白くてイイ子ばっかりじゃんよ」
なぜか物凄く嬉しそうな黄泉川と、恥ずかしのを悟られまいとしてうろたえ気味な吹寄。
まあ実際、直前に否定した自分がその範疇に入っていると指摘されたのなら無理も無いことではある
のだが。
ただまあ、吹寄にとっての救いは黄泉川に向き直っているために上条に背を向けている事であろう。
そんな心情など露知らず、突然動きを止めた吹寄に対して上条が横から顔を窺(うかが)うように、
「どうした吹寄。あ、そうだ。その『パンフレット』ってなんなの?」
と尋ねてきたために、反射的に鈍器による制裁を加えたのは不可抗力であろう、と納得している吹寄。
そんな吹寄とその足元にのびている上条を見ながら黄泉川は一人頷いているのであった。
「なぁ、知り合いなのか?」
上条が尋ねると、
「あんたね、体育の黄泉川先生でしょうが」
あっさりと言われた答えに固まる上条。
「……え? 体育の黄泉川先生って、あの、いっつもジャージで過ごしてるあの……? うそだろー!?」
「何であんたは分かんないのよ?」
「いやむしろわかんない方が普通だろ!? いつもと違うかっこうしてるし体育の授業だって俺らのクラス
の担当じゃ無いし! むしろ吹寄の方が何で分かったのか聞きたいくらいだし!」
「私は大覇星祭の運営委員や一端覧祭の実行委員で警備員(アンチスキル)の先生方と打ち合わせる
機会も多かったし、そもそも自分の学校の先生が分からないっていうのはそもそもどういうことなのよ?
……ということは貴様は相手が誰かも知らないのにあんな事をやってたっていうのね? これはやはり制
裁を加えるべきかしら?」
言いながら手に持つ本(と言っていいのか疑問に思える代物)を構えだす吹寄。
対して上条は必死で弁解を始める。
「待って待って、吹寄さんのその認識にはちょっとした誤解がありませんか?!」
そんなものは聞く耳持たぬとばかりにジリジリと間合いを詰めてくる吹寄に対して、会話の外にいた黄
泉川から声が掛かる。
「こらこら、いいのか? そんなふうに扱ったらせっかく苦労して貰ってきた『パンフレット』が台無しになっ
ちゃうじゃん?」
ピタリ、と吹寄の動きが止まる。
常に冷静な彼女にしては珍しく、動揺が割と顔に出ている表情で黄泉川に向き直る。
「いやぁ、いるもんじゃん、わざわざ『パンフレット』を持とうとする学生も。なんだ、やっぱり小萌センセの
トコは面白くてイイ子ばっかりじゃんよ」
なぜか物凄く嬉しそうな黄泉川と、恥ずかしのを悟られまいとしてうろたえ気味な吹寄。
まあ実際、直前に否定した自分がその範疇に入っていると指摘されたのなら無理も無いことではある
のだが。
ただまあ、吹寄にとっての救いは黄泉川に向き直っているために上条に背を向けている事であろう。
そんな心情など露知らず、突然動きを止めた吹寄に対して上条が横から顔を窺(うかが)うように、
「どうした吹寄。あ、そうだ。その『パンフレット』ってなんなの?」
と尋ねてきたために、反射的に鈍器による制裁を加えたのは不可抗力であろう、と納得している吹寄。
そんな吹寄とその足元にのびている上条を見ながら黄泉川は一人頷いているのであった。
吹寄からの理不尽ともいえる制裁を喰らった上条だが、常日頃から食欲シスターさんからの噛み付き
攻撃を受けている身としては回復も早いわけで、早々に復活した上条は先程から話題に出ている『パン
フレット』について今度は黄泉川に尋ねる。
「っつーか、ほんとに何なんですか? 『パンフレット』なんて見たことありませんよ?」
「ああ、そりゃそうじゃん。ありゃ主に学園都市外から来た『祭り』参加者に向けて用意されてるもんだか
らなぁ。もともと学園都市内にいて、しかも学生だったらまず見かけることは無いだろうじゃん」
「???」
攻撃を受けている身としては回復も早いわけで、早々に復活した上条は先程から話題に出ている『パン
フレット』について今度は黄泉川に尋ねる。
「っつーか、ほんとに何なんですか? 『パンフレット』なんて見たことありませんよ?」
「ああ、そりゃそうじゃん。ありゃ主に学園都市外から来た『祭り』参加者に向けて用意されてるもんだか
らなぁ。もともと学園都市内にいて、しかも学生だったらまず見かけることは無いだろうじゃん」
「???」
そう言われてもいまいち理解し切れていない上条。
そんな上条に向かって苦笑しながら説明を続けていく黄泉川。
ちなみに、件の『パンフレット』を持っている吹寄はあまりこの話題を続けて欲しくは無さそうだが、教師
である黄泉川に対して強く出る事が出来ず、居心地が悪そうである。
そんな上条に向かって苦笑しながら説明を続けていく黄泉川。
ちなみに、件の『パンフレット』を持っている吹寄はあまりこの話題を続けて欲しくは無さそうだが、教師
である黄泉川に対して強く出る事が出来ず、居心地が悪そうである。
「少年に聞くけど、今日は何しにここへ来たんじゃん?」
「? 社会見学ですけど?」
唐突な黄泉川からの質問に戸惑いながらも上条が答える。
「なら、その社会見学は何をするもんじゃん?」
「え? 社会見学ってのは、だから、自分たちがいる社会の仕組みを見て学ぶって事でしょう?」
何だかつい最近似たような説明をした覚えがあるなあ、と思いながら答えると、
「じゃあ、その見学する社会ってのはどういうもんなんじゃん?」
さらに黄泉川が尋ねてくる。
「それは、えっと……自分の周囲にある環境とか、生活基盤の仕組みの事じゃないんですか?」
黄泉川からの質問の意図が分からないまま答える上条。それに対して、なおも質問が被せられる。
「? 社会見学ですけど?」
唐突な黄泉川からの質問に戸惑いながらも上条が答える。
「なら、その社会見学は何をするもんじゃん?」
「え? 社会見学ってのは、だから、自分たちがいる社会の仕組みを見て学ぶって事でしょう?」
何だかつい最近似たような説明をした覚えがあるなあ、と思いながら答えると、
「じゃあ、その見学する社会ってのはどういうもんなんじゃん?」
さらに黄泉川が尋ねてくる。
「それは、えっと……自分の周囲にある環境とか、生活基盤の仕組みの事じゃないんですか?」
黄泉川からの質問の意図が分からないまま答える上条。それに対して、なおも質問が被せられる。
・・・・・・・・・・・・・
「なら、学園都市にいる学生にとって、学ぶべき周囲の環境とか生活基盤の仕組みは何処のことだと思
う?」
「なら、学園都市にいる学生にとって、学ぶべき周囲の環境とか生活基盤の仕組みは何処のことだと思
う?」
その質問に、未だ意図は分からないままながらも何か引っかかりを覚える上条。
そう、そもそも社会見学とは、自分たちが生活している社会がどのように成り立っているのかを理解す
るために様々な業種の現場に赴き、実際に見学したりその仕組みを体験したりする事が多い。
ただし、それはあくまで一般的なものである。
上条たちが住んでいるこの学園都市は超能力開発の為に一般社会とは隔絶されたものである。
さらには数多くの研究機関が集まって独自の科学技術を擁しており、その生活基盤の仕組みもかなり
『外』とは違ったものとなっている。
そうした結果、都市内における科学技術は『外』のそれより二十年進んでいるとされ、さらに、独自の倫
理観、価値観といったものが存在する。
その結果はどうなるのか?
普段学園都市内で生活している学生にとってはあまり意識する事は無いが、都市内にいる人間と『外』
においては様々な認識のズレ、というものが確かに生じているのである。
ならば、学ぶべき社会とはどちらのことを指すのか?
そう、そもそも社会見学とは、自分たちが生活している社会がどのように成り立っているのかを理解す
るために様々な業種の現場に赴き、実際に見学したりその仕組みを体験したりする事が多い。
ただし、それはあくまで一般的なものである。
上条たちが住んでいるこの学園都市は超能力開発の為に一般社会とは隔絶されたものである。
さらには数多くの研究機関が集まって独自の科学技術を擁しており、その生活基盤の仕組みもかなり
『外』とは違ったものとなっている。
そうした結果、都市内における科学技術は『外』のそれより二十年進んでいるとされ、さらに、独自の倫
理観、価値観といったものが存在する。
その結果はどうなるのか?
普段学園都市内で生活している学生にとってはあまり意識する事は無いが、都市内にいる人間と『外』
においては様々な認識のズレ、というものが確かに生じているのである。
ならば、学ぶべき社会とはどちらのことを指すのか?
そうした事についてようやく考えが至った上条を見ながら、黄泉川は説明を続ける。
「学園都市にいる少年たちにとって、身近な環境ってのはもちろん学園都市の中の事なんだろうけどさ、
いつまでもここにいるってわけでもないじゃん。なら、学ぶべき社会ってのは自ずと解るもんじゃん」
いつまでもここにいるってわけでもないじゃん。なら、学ぶべき社会ってのは自ずと解るもんじゃん」
そう、いくら超能力開発の目的のために集め入れられた学生たちであろうと、一生をこの学園都市の中
で過ごすというわけではない。
大半の者はいずれここから『外』に出て行くことになる。(逆に言えば、一生を学園都市内で過ごす事に
なる者もいることはいるのだが…)
つまり、学生たちにとって、知っておくべき社会とは、自分が住まう学園都市の中だけでなく、『外』につ
いてもそれが言えるのである。
で過ごすというわけではない。
大半の者はいずれここから『外』に出て行くことになる。(逆に言えば、一生を学園都市内で過ごす事に
なる者もいることはいるのだが…)
つまり、学生たちにとって、知っておくべき社会とは、自分が住まう学園都市の中だけでなく、『外』につ
いてもそれが言えるのである。
「まあそんなわけで『外』の情報についても知っておいてもらいたい訳だけども、学園都市から『外』に学
生を集団で出すのは難しいじゃん」
「あ、はい」
過去、といっても記憶にあるのは夏休み以降からだが何度か学園都市から『外出』している上条はそ
のときにクリアした様々な条件を思い出しながら頷く。
ある意味機密データの固まりである生徒に対して行われた措置を、一人や二人ならともかく大量に行う
のは不可能ではないが、しかし、非常に煩雑なものとなるだろう。
「その代わりと言っちゃなんだけど、生徒を『外』に出すよりも、逆に『外』にあるものを都市内に入れた方
が情報の管理や対策、制限も掛けやすいわけじゃん。けど、そうやって『外』の企業やらを都市内で見学
させると、今度は都市内にある企業や研究機関からも自分たちも関心を持ってもらいたいって考え出し
たのさ。そうなると、いっそのことまとめてやった方が便利だってことでこうやって何箇所かの会場で集め
てそこに参加してもらうようになったわけじゃん」
生を集団で出すのは難しいじゃん」
「あ、はい」
過去、といっても記憶にあるのは夏休み以降からだが何度か学園都市から『外出』している上条はそ
のときにクリアした様々な条件を思い出しながら頷く。
ある意味機密データの固まりである生徒に対して行われた措置を、一人や二人ならともかく大量に行う
のは不可能ではないが、しかし、非常に煩雑なものとなるだろう。
「その代わりと言っちゃなんだけど、生徒を『外』に出すよりも、逆に『外』にあるものを都市内に入れた方
が情報の管理や対策、制限も掛けやすいわけじゃん。けど、そうやって『外』の企業やらを都市内で見学
させると、今度は都市内にある企業や研究機関からも自分たちも関心を持ってもらいたいって考え出し
たのさ。そうなると、いっそのことまとめてやった方が便利だってことでこうやって何箇所かの会場で集め
てそこに参加してもらうようになったわけじゃん」
「黄泉川先生、あの、そのことは今関係ないんじゃないですか?」
早くこの場から離れたい、というよりも、自分の持つ『パンフレット』について話されるのに抵抗があった
吹寄だが、あまりにもかけ離れた話題が続いているように思えるために、思わず会話に参加してしまう。
「まあまあ、話しはこれからじゃん。いきなり本題に入ってもいいけど、そこに行くまでの背景についても
知っていて欲しいわけじゃんよ。なんでそうなったのか、それを知っているといないとではえらい違いがあ
るもんじゃん」
早くこの場から離れたい、というよりも、自分の持つ『パンフレット』について話されるのに抵抗があった
吹寄だが、あまりにもかけ離れた話題が続いているように思えるために、思わず会話に参加してしまう。
「まあまあ、話しはこれからじゃん。いきなり本題に入ってもいいけど、そこに行くまでの背景についても
知っていて欲しいわけじゃんよ。なんでそうなったのか、それを知っているといないとではえらい違いがあ
るもんじゃん」
(あー、この人もやっぱ教師なんだなぁ……)
吹寄の言葉に答えてから説明を続ける黄泉川を見ながら、上条はそんな事を考えていた。
吹寄の言葉に答えてから説明を続ける黄泉川を見ながら、上条はそんな事を考えていた。