【初出】
禁書SS自作スレ>>993
禁書SS自作スレ>>993
◇◇◇
大覇星祭の運営委員である吹寄制理は自分の参加してない競技の際は積極的に運営に参加する。
しかしこの時ばかりは自分の積極性を恨まずにいられなかった。 先ほどゴールテープを切ったばかりの一着の選手を見て吹寄は不快な気分になった。
それこそこれみよがしに大きな舌打ちを打つのだが、当の本人はまったく気づいていない。
本来なら自分の所属する学校の選手が一着でゴールしたのだ、これは素直に喜ぶべき事柄なのだろう。
控えていた他の運営委員の女子が一位の選手―上条当麻に手馴れた様子でスポーツタオルを頭から被せて臨時の待機場所に誘導する。
(カ、カルシウム・・・カルシウムが足りないんだきっと)
自分の運営委員のパーカーのポケットをごそごそと漁り、コンビニなどで売ってる小さな栄養剤の入った容器を取り出して蓋を開ける。
ザザザザァァァ、ためらうことなく大きく口を開けてカルシウムの錠剤を流し込む。
近くにいた運営委員のパーカーを着た女子がヒィッ!?っと御機嫌斜め45度な吹寄の様子に気づき小さな悲鳴を上げる。
カルシウムの錠剤を乱暴に噛み砕き、同じようにパーカーのポケットから取り出したスポーツ飲料の小さなペットボトルの中身を使って強引に飲み込む。
ばりごりごり・・・・ぐび・・ぐび・・・ぐび・・・ごっくん
「ふー・・・カルシウム補給完了」
さきほどの黒いオーラを鎮めてみる。 沈静化成功。と声に出さずに呟く。
到着選手の待機場所に向かいながら吹寄制理は考える。
(確かにこの競技は人を借りてくる競技だけど、あの体勢でずっと運んできたのかしら、上条当麻)
別に彼女が不機嫌になる理由なんて何もない、あの少年は彼女にとってはクラスにいる三バカの一人
ちなみに[クラスの三バカ]というのはほかならぬ吹寄自身が彼ら―上条当麻 土御門元春 青髪ピアスの少年に対して付けたものだ。
目を離すとすぐに規格外の事をして彼女の仕事を増やす。いわばトラブルメーカーなのだ、しかし同時にムードメーカーでもある。
それは吹寄自身も認めてる。 あの少年は夏休みからなのだがしょっちゅう大怪我をしては入院してすぐに退院するという奇妙なサイクルを送っている。
しかもそれらのすべてが女の子絡みだ。 上条当麻の行くところ女の子あり、といった揶揄もあながち間違っていない。
今回だってそうだ、スポーツのエリート校の嫌味な教師に彼のクラスの担任である月読小萌が酷く傷つけられたことが切欠でやる気がなくなっていたクラスの
嫌味な教師風にいえば―[落ちこぼれ]達をどんな相手にも屈しない最強の[猛者]に変えてしまったのだ。
あいかわらずとんでもない影響力だ。
吹寄制理はカルシウムを摂取して幾分かマシになった頭で考えを整理して例の少年に視線を向けてみた。
「―――で―――」
「あら―が――――だ――わ」
なにやら連れて来たツインテールの少女と話してるようだがここからは遠くて聞き取れない。ただでさえ雑音が多いのだ。
自分の不機嫌さを隠すかのように吹寄は新たな選手の為にゴール地点へ向かって歩いていった。
◇◇◇