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旗男の苦痛~翻弄する寝癖~

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匿名ユーザー

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鮮やかな朝焼けに包まれる学園都市。その中のとある学生寮の一室の、洗面所から悲鳴が上がった。
「ぬぉおおおおう!!なんじゃあこりゃああああ!!」
悲鳴の主は不幸体質全開の少年、上条当麻だ。
「と、とりあえず水で濡らせば……」
キュッ、と栓を回して水を出し、手先を濡らして患部を触る。
「………、」
効果無し。
上条は濡らす量が足りないのだと思い、更に濡らすが、やはり効果が無い。
「くそっ、こうなったら……、あったあった」
すぅ、と息を吸い込み、
「てれれれってれ~♪ワックス~(のぶ代風に)」
濡れた手を拭き、蓋を開けて少量を手に取り、先程と同じように患部に付ける。
「よし、これでなんとかなったな」
ふう、と上条は溜め息を付くと、もさっ、と患部が崩れ落ちる。
「! ま、まぁこんなこともあり得るよな」
上条は驚愕したものの、冷静に治療する。
「おkおk、これで…」
もさっ。
………………………、
ふざけんなーっ!と少年の叫び声が木霊した。
「とうま、朝っぱらから何を一人ではしゃいでいるの?すごく近所迷惑なんだよ?あたしのお腹も減ってるんだよ?」
少年の悲鳴に、不機嫌そうな声色で銀色シスターが洗面所を覗き込んできた。

「ご、ごめん、インデックス。だけどお腹減ってるのとこれは関係ないだろ?」
洗面所入口でこちらを覗き込んでいるインデックスを見る。
「…誰?」
こちらを見ている少女は何やら警戒している。
「誰、って、俺だよインデックス」
「とうまはどうしたの?」
「いや、だから俺!上条当麻だって!」
「そんな嘘付いても無駄だよ?とうまはね、頭がウニウニしいんだから。そんなぺたーってなんかしてないんだよ?」
「ウニウニしいってなんだよ!俺の頭は魚介類か!」
「それよりもとうまは?」
「だから俺だって!寝癖がすごいけど俺だって!」
必死に上条当麻であることを証明しようとしているのだが、全く信用してくれないインデックス。
そんなインデックスに、上条はあることを閃く。
「なぁ、インデックス」
「なに?」
インデックスの警戒心MAXな声に、うっ、と上条はたじろぐが、負けずに、
「俺の頭を噛んでみろ。そうすれば俺だってわかる筈だ!」
流石俺!でも痛いけど俺名案!、と上条が心の中で自画自賛していると、
「嫌だよ。なんでどこの馬の骨ともわからない人の頭を噛まなきゃいけないの?」
「そんなに信用無いの俺!?ってか、もう時間ねぇ!インデックス、昨日の残りが冷蔵庫に入ってるから勝手に食べてろな!」
上条は信用してもらえないことに虚しくなったが、時間を確認すると、時間的に限界がきていた(頭のセットに手間取りすぎた)。
「あっ!」
「行ってきます!」
未だに不審がるインデックスに挨拶し、学生鞄を持ち、玄関を飛び出し、上条は学園都市を走り出し、学校を目指した。

猛スピードで走り、遅刻寸前で校門に滑り込んだ上条は、ぜぇぜぇと息を切らしながら教室へと向かった。
「くっそー、朝からツイて無さ過ぎだろ俺……。って、デフォか」
自分の机に突っ伏し、自虐的に言ってみたものの、虚しさ全開である。
最早ギャグである。
「おい、そこは上条当麻の席だろう?何故上条当麻では無い人物が座っている?」
ぐったりしていると、突然声がしたので、上条は顔を上げると、そこに立っていたのは、吹寄制理だった。
(あー…吹寄か)
目の前に仁王立ちしている少女を見る上条。
「いや、上条当麻だから」
冷静にツッコミを入れる、おk。クリアだ。
「私が知る上条当麻は少なくとも、頭がウニウニしく尖っているのだが」
いかにも疑ってます視線を上条にぶつける吹寄に上条は、
「ツンツン頭=俺、ってなんだよ!ツンツン頭じゃない俺だってたまにありますから!」
「む、むぅ……なら貴様は上条当麻なんだな?」
「あぁ、そうだ」
「そんなヘタレた髪型をしているのに?」
「そうだって!」
「本当に上条当麻なのか」
あまりにも上条が上条当麻だと言い張る為、吹寄は渋々自分の席へと戻って行った。

吹寄が立ち去ったので、全力疾走の疲れを癒すべく、上条は再び机に倒れた伏した。
「君。そこは上条君の席」
(…今度は姫神かよ)
何時の間にか近付いて来ていた姫神に声を掛けられ、上条は再び起き上がった。
「いや、俺だよ俺。上条当麻だって」
「嘘。上条君はもっとツンツン髪のウニみたいなトゲトゲしい。いわばウニウニしい頭をしている筈。それに俺俺詐欺とか。ちょっと古い」
「本日三度目かな?ウニウニしいって聞くの。てか上条さんだってたまに酷い寝癖なときもあるんです!」
「そんな。バカな」
軽く俺俺詐欺発言をスルーしたが、何故こんなにも皆は髪型で人を判断するのかと疑問に思う上条。
「本当に。上条君?」
「あぁ、本当だ。信じてくれよ姫神……」
うーん、と顎に手を当てて考えるような仕草をする姫神。
「わかった。もう一度確認するけど。上条君なのね?」
「そうだ」
上条の答えを聞くと、姫神は自分の席へと向かっていった。
もっかい寝るかおやすみー、と独り言を呟いて、上条はまた机に倒れ込もうとした。
「だから義妹こそ至高なんだって何度言えばわかるにゃー」
「土御門はんは毎日にゃんにゃん出来るんやろうが、普通は居ないんや!」
「い、居ないんかにゃー!?」

教室の外から何やら騒がしい声が聞こえてきたので、睡眠中止。
(……朝っぱらからどんな話してんだよ)
「なぁカミやん!聞いてくれにゃー!」
「上条ちゃん、土御門はんが義妹義妹ってしつこいねん!」
土御門元春と青髪ピアスは教室に入ってくるなり、机に突っ伏す上条へと声を掛けたが、
「「あれ?カミやん(上条ちゃん)が居ないにゃー(おらへんで)?」」
おっかしいにゃー、ホンマでんな、と上条を探す二人。
「あ!カミやんの席に座ってるのは誰にゃー!」
「見慣れない面してまっせ、コイツ」
好き勝手言い出した二人は上条を、左右から圧縮した。
「痛ェ!何すんだよ!俺だよ俺、上条当麻!」
「にゃー、カミやんはもっとこう…」
「建てたフラグ並か、それ以上の髪が立ってるはずでっせ」
「旗を建てる度に髪も立つんだにゃー」
「そんなわけあるか!てかお前らもかよ!俺は髪の毛が立ってないと別人に見えるのかよ!」
ぎゃーぎゃーわーわー、と騒いでいると、始業チャイムが鳴った。
「はーい、みんな自分の席に座るですよー」
チャイムと同時に、とても教師とは思えない背丈の小萌先生が入ってきて、皆それぞれの席に戻っていく。

「あら?上条ちゃんの席に座る、見慣れない子羊ちゃんは誰ですかー?」
上条の席の方を見て、不思議そうに首を斜めにする小萌先生。
(こ、小萌先生まで…orz)
はぁ、と上条は溜め息を吐くと、
「俺ですよ、上条当麻です」
「えぇ!?上条ちゃんはもっと黒々しくてウニウニしい頭のはずですー!そんなペッタリした髪型をした生徒が上条ちゃんには見えないですよー!」
「ねぇ、何?ウニウニしい、って表現流行ってんの?俺にだって寝癖が酷いことありますって!」
そんなバカな、と言いたげな表情の小萌先生やクラスメイト達を見て、上条は深く溜め息を吐いた。
不幸だ……。

ホームルームが終わると、舞台は変わって放課後。部活に行く生徒や、帰宅する生徒の中に紛れて、本日は絶賛ぺったりのっぺり髪日和の上条当麻は居た。
「くっそー。今日はいろいろと散々な目に遭ったぜ……って、いつものことだな…」
何も入ってるわけでもない鞄を重たそうに肩に掛け、上条はどんよりと歩いていると、

「今日こそ電撃浴びせてひくつかせてやるから覚悟しなさい!」

と、背後から少女の声が聞こえてきたのだが、「食糧はまだ残ってたよな。一応タイムサービスでも見ていくか」などと上条は家計のことを考えている。
「いつもいつも……無視してんじゃないわよーっ!!」
どばん!と心臓に悪い音がして、上条は右手を握り締めて後ろを振り向く。
「いきなり電撃浴びせようとすんじゃねーよ!」
「アンタが無視するからでしょ!」
上条は後ろでバチバチしているチューガクセーに叫ぶ。
「こっちは家計のこと考えてたんだよ!」
「そんなの家に帰ってからにすればいいじゃない!」
レベルの低い言い争いを繰り広げる上条と美琴は、睨み合う。
(面倒な奴に会ったな……ん、あれ?)
体に蒼い電撃を纏う美琴を見つめ、上条はあることに気づく。
「な、何よ?」

上条の自分を見つめる視線に気付き、美琴は恥ずかしそうに目を逸らす。
「な、なぁ御坂。お前…俺が誰か解るのかよ?」
「は?アンタ何言ってんの?」
アンタはアンタじゃないの?と美琴は上条の言ってることを心底不思議に思って見る。
(こいつ…俺のことを俺だとわかってやがる…!ウワーン(つД´))
今日一日中、散々上条当麻ではないだろ、と間違われ続けてボロボロだった上条の心に、美琴の存在は大きかったようで、
「ちょ!?え、何々!?」
「御坂、お前だけだ!俺を……今日の俺を『上条当麻』だと認識してくれたのは!」
思わず抱き締めてしまった。普段の冷静な上条ならば選択しなかったであろう選択を取ってしまったのだ。
この後、白井黒子に見つかり死にかけて、インデックスに家に入れて貰えなかったりと散々な目に遭ってしまうのだがそれはまた別の話。


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