とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 7-967

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匿名ユーザー

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「うわっ、ちょ、どうしたの初春?」
佐天の腰にガシッとしがみつき、押し倒したのは初春だった。
「……………」

初春は佐天のお腹に顔を押し付けたまま何かしゃべっているようだ。
「え?」
くぐもっていて聞き取れず、聞き返す佐天。
「…………佐天さんが」
「わ、私が?」
「……目が覚めたら佐天さんがいなくて、消えちゃったかと思いました」
初春は自分の顔を佐天のお腹にすりつけながら言う。
「勝手にどっか行かないでください」
「そ、そんな、大袈裟だって初春。てか、ちょっと離れて……」
佐天は初春の下から身体を引き抜こうとしたが、

「お………?」

初春は佐天にがっちりとしがみついており、初春を引きずったままずりずりと下がるだけで一向に抜ける気配がない。
「おーい、初春?えっと、初春さん?」
なおも後ずさる後ずさる佐天。
だが、狭い病室の中。
佐天の身体はすぐに病室の奥に置かれたベッドによってそれ以上の後進を阻まれてしまった。
「初春……?」
と、そこでようやく初春が顔を上げた。
その顔に佐天は驚く。
初春の眉が、これまで一度も見たことがないくらいに見事な逆ハの字を描いていたからだ。
「何か、怒っていらっしゃる………?」
おそるおそるの佐天の声に、初春は、きっ、と佐天の顔に睨みをきかせると言った。
「ええ怒ってます。怒っていますとも。佐天さんが私の言うことを全然聞いてくれませんでしたから」
「いや、あれ……?だってあの時は丸く収まってめでたしめでたししてたじゃん……?」
「あの時はあの時、今は今です。佐天さん、もう二度とあんな危ないことしないでください。絶対にです。わかりましたか?わかったら、はい、と頷きましょう。そして復唱して下さい。『私は二度とあんな危ないことしません』」
ずいずいと顔を近づけて迫ってくる初春。
「ははは……う、初春ぅ~、どうどう。ストップストップ。そんなに顔近づけると、チューしちゃうぞ?」
と、

軽口を叩いた佐天の唇が、

初春の唇によって塞がれた。


初春はたっぷり30秒ほど佐天の唇を奪い続けてから、ようやく身を起こした。

「……………………………………………………………………………………へ?」
最早完全に思考停止し、ここはだれわたしはどこ状態にまで処理能力の落ちてしまった佐天に、しかし初春の攻撃は続く。
「別にチューくらい何てことはありません。女の子同士のチューはノーカンだと古来よりの伝統で決まっているんです。そんなものは何の脅しにもなりません」
「う……初春が、ダーク化してる!?ダーク初春になってる!?」
「えぇ、えぇ。いいですよ。佐天さんが言うこと聞いてくれないんなら仕方ありません。私だって悪い子になりますよ。チューだってしますし、パンツだって見せましょう」
そう言って初春はバッと自分のスカートをたくしあげた。
「さぁどうぞ!いくらでもパンツ確認をすればいいじゃないですか!今日の私のパンツは何ですか?さぁ言ってみてください!」
「え………えっと、可愛いひよこのプリントパンツです」
何の罰ゲームだろう。
というかパンツ見せてる初春よりどうして自分の方が恥ずかしいんだろう、と麻痺した思考で考える佐天。
「参りましたか佐天さん。さぁ復唱を。『私は二度とあんな危ないことしません』」
「わ、私は…………、」
勢いに押されそうになるが、途中で止める佐天。
「ううん……それは嫌だ。初春がまたあんなことになったら、やっぱり私は戦う」
それは、さっき決めたばかりの本物の覚悟だ。
が、初春は納得しない。
初春はスカートをたくしあげる手を放すと、それを佐天の患者服に伸ばし、再び佐天の身体にしがみつく。
「あぁ!もう!佐天さんは!もう!佐天さんは!全く!」
そしてひとしきり叫んだ後に、初春はぽつりと言うのだった。

「………そんな嬉しいこと言わないでくださいよ」

「へ…?初春今何て」
「何も言ってません!!言ってませんよ!!」
初春は照れ隠しに佐天の身体を前後に揺する。
と、

プチン

と小さな音が鳴り、佐天の患者服の前がはだけた。


患者服は所謂、薄緑色をした甚平のような構造をしているのだが、前は紐ではなくボタンで止めるようになっていたため、簡単に外れてしまったのだ。
「わっ、わわっ!」
慌ててはだけた胸を隠そうとしたところで、佐天は気付いた。
自分がブラジャーを装着していないことに。
(え……何で!?もしかして包帯とか巻くのに邪魔だから外されてた?そして包帯の感触のせいでブラつけてないことに気付かなかった!?初春のすりすり攻撃があんなにダイレクトに響いたのはそういうことだったのか!)
などと佐天が思っていると、
「……佐天さん」
はだけた胸を凝視して、初春は淡々とした口調で
「何だか心なし胸が大きくなっているような」
と言うと、

唐突に佐天の胸を揉み始めた。

「ちょ、初春何やってんの!?」
顔を赤くして、初春の所業に抵抗する佐天。
だが初春の方は、普段と立場が入れ替わったかのような状況に気を良くしたのか
「ふふ、ふふふふ……」
と不気味な笑い声を上げながら佐天の胸をまさぐり続ける。
「初春、ストップ!ちょっとやめっ……」
「ふふふふふ…」
ニヤニヤと笑うだけで取り合おうとしない初春に、最早言葉は通じないと判断した佐天は、初春の魔の手から逃れようとベッドの上に上がろうとする。
だが、
「ちょ、何これ足が上がんない………って、えぇ!?」
佐天は見た。
患者服の下――ズボンが半分程ずり下がり、佐天の足の動きを封じていることに。
(初春から逃げようとしてる時に脱げたっ!?)
更にその下のショーツまで巻き込まれており、かろうじて局部が隠れているような状況。
端的に言えば今の佐天は見事な半裸だった。
そして、佐天が自らの状況確認に必死なこの数秒を見逃す初春ではなかった。
初春は中途半端にベッドに片足をかけている佐天ごとベッドに飛び乗る。
そして即座に佐天を下に、自分を上に、という有利な体勢に持っていく。
その拍子にスカートや制服がめくれ上がっていろいろとあられもない状態になってしまった初春だったが、普段のスカートめくりの仕返しとでも言わんばかりに悪戯に夢中な初春は気に留めない。
「初春!?何その早業!?」
「これくらい、風紀委員の研修で習いますよ」
「風紀委員の技術をこんなことに使わないっ!」
「ふふふふふふふ……」
初春の瞳が弓のように細くなっていく。
「ちょ……やめっ、駄目だって!ねぇ、初春っ!?」
初春が手をわきわきさせながら佐天の胸元へダイブしようとしたその時――

「ですから!出来ればそういうことは!上条さんのいないところでやって欲しいと言うか!そもそも人の部屋でやることじゃねぇって言うか!」

二人は頭上から降ってくる声を聞いた。
いや、声なら先程からずっと聞こえていたのだが、認識していなかったのだ。

声の主は病室の主。
上条当麻だ。

当麻はベッド脇に取り付けられた窓の窓枠に全身を使って――律儀にも片腕で両目を隠し、残る三体を使って――蜘蛛のように張り付いていた。
おそらく佐天達がベッドに上がってきた為に逃げ場を求めた結果なのだろう。


佐天は、初春の乱入と突拍子のない行動に当麻の存在を完全に忘れていた。
初春は、佐天しか見えていなかったのだろう、今の今までこの病室の主に気がついていなかったようだ。

第三者の突然の出現により、初春が我に返る。
自分の着衣の乱れを認めた初春は、無意識に口を開いた。
「きゃ………」
「待ったぁ!止めて!叫ばないで!上条さんの人間性とか諸々がぶっ壊れるから!」
必死で初春を止めようと両手を突き出した瞬間、
「あ」
当麻は支えを失って窓枠からベッドに落ちた。
丁度佐天と初春を抱き抱えるような格好になって。


そして、同時に聞こえてくる足音。
複数のそれらは当麻の病室の前で止まり――


「あんたがまた入院したって言うから、わざわざ見舞いに来てやったわよ。か、勘違いしないでよね!友達のお見舞いのついでなんだから!」
「などと言いつつ、お姉さまは昨日料理本を引っ張り出して四苦八苦しながら焼いた手作りクッキーを持参していたりします、とミサカは告げ口します」
「とうま、さっきはごめんなさい。いきなり噛みついて……シスターとして、少し思慮に欠けた行いだったかも」
「隣の病室だったの。だったら一緒に。ごはん……とか」
「上条ちゃーん。先生がお見舞いに来てあげましたよー。あぁ、競技の出番はうまく調整しておきましたから大丈夫ですよー」


来客達は一斉に当麻に話しかけ――そして、一斉に沈黙した。


「………………………………………………………………………………えっと、皆さん。ひとまず落ち着いて私めの話を聞いていただけますか?」

「あ、ゲーセンのコイン切らしてたや。まぁいいか500円玉で」
「近くにいるミサカ達は武器になるような物を持ってすぐに上条当麻の病室に集合するように、とミサカはミサカネットワークに指示を飛ばします」
「とうま~?懺悔は終わったかな?」
「耳掃除リターンズ。ただし今度は五寸釘で。いっぺん、死んでみる?鼓膜的な意味で」
「あぁ、もしもし。ステイルちゃんですか?今すぐ焼き払って欲しい子がいるんですけど。40秒で来てください」

「ストップ!ストーップ!誤解!誤解だって!」
当麻の言葉に、しかし誰も耳を貸さない。
彼女達でなくとも、半裸の女の子2人をベッドに横たえ、その上に覆い被さっている男、という図を好意的に解釈できる存在など世界中に一人としていないだろう。

「いやいや、流石に全員一気は上条さんも死んじゃうって!」
必死の当麻の訴えに対する5人の答えは――


「「「「「じゃあ死ねば?」」」」」


「ふ、不幸ぅぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

************
そして――。
阿鼻叫喚の地獄絵図となった病室の隅で。

佐天と初春は互いに顔を見合わせると
「ふふっ」
「あははっ」
――どちらともなく笑顔を溢したのだった。


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