「って、ちょっと待てこれはやばいだろッ!?」
5m近く浮いている上条のつま先に、炎が触れたり触れなかったりする。
「あーもう!何やってんのよっ!!」
いらついた声で美琴が言い、自身の髪の毛から電撃を生み出して上条の足元の炎をえぐる。
「ッ!?いや美琴、今のはおそらく厚意でやった(と信じたい)行動をとったが、こっちもこっちで危ないぞ!?」
「うるさいわね!そんなに火だるまにされたいならご自由にっ!」
「てか、何でお前そんなに不機嫌!?」
とか何とか、コメディじみたやり取りをやっている上条たちだったが、再び炎の威力が増すと騒ぎ出した。
「いやマジでやばいマジでやばい。美琴!この炎ってどうやって生み出してるものなんだよ!」
「はぁ!?そんな初歩的なこともあんた分からないわけ?まったく不勉強にもほどが――――」
「とりあえず説教は後!まずはこっち(炎)だろ!?」
「だから、発火能力者(パイロキネシスト)による者よ」
「…いや、あの…では、パイロ何たらさんはどうやって炎を…あぢぃっ!?」
「ったくっ!!」
美琴が先ほどよりかなり攻撃的な電撃を地面に放つ。それにより少しは炎が吹き飛ぶ。
「対象物の運動力を上昇させて摩擦熱を起こし、炎を出してるのよ。ただそれだけ」
「…あの、この場合での対象物とは…?」
「空気とか、それに含まれる塵とかじゃないかしらね?」
「…そんな物の運動を操れんのかよ…」
上条がうんざりした声で言う。
「というか、こんなにのんびりしていて大丈夫なんでしょうか?」
「じゃあ、他にどうしろっての?」
「…」
上条は無言。代わりのように美琴が口を開く。
「しっかし、相手はどうやってこっちの居場所が分かってんのかしら?視覚系能力者でもいんのかっての」
「…」
やはり上条は無言。
と、思われたが、
「あ、そういや…さっきの一方通行(アクセラレータ)の声はどうしてこっちに届いたんだろうな?」
「?何のこと言ってんのあんた?」
さっきの一方通行(アクセラレータ)の声について放したところ、美琴に不思議そうな顔をされた。
「は?お前、聞こえなかったのか?」
「…」
今度は美琴が無言になる。
「…空気のベクトルでも操ってるのかもね…だけど、そんなこと出来るんならさっさと炎のベクトルを操ればいいのに…」
半分独り言のような美琴の声。
「…って、あれ、炎って…?」
上条が、美琴の言葉で思い出した炎について、疑問を投げかける。
「なんか、消えてますけど」
あたりを見渡す限り、くすぶる程度の炎ならあるが、それ以外のものは見当たらない。
「…今の状況、どうなってんのよ…?」
美琴が不安そうに言う。
「いや、てか」
上条が、なぜかものすごく不便そうな顔をして、
「炎消えてんのに、なぜ僕たちは中に浮いてなければならないのでしょうか?」
「…」
しばらく、沈黙の時間が流れそうだな…
一応一時的に危機は去ったのに、なんか釈然としていない上条は脳内でつぶやいた。
5m近く浮いている上条のつま先に、炎が触れたり触れなかったりする。
「あーもう!何やってんのよっ!!」
いらついた声で美琴が言い、自身の髪の毛から電撃を生み出して上条の足元の炎をえぐる。
「ッ!?いや美琴、今のはおそらく厚意でやった(と信じたい)行動をとったが、こっちもこっちで危ないぞ!?」
「うるさいわね!そんなに火だるまにされたいならご自由にっ!」
「てか、何でお前そんなに不機嫌!?」
とか何とか、コメディじみたやり取りをやっている上条たちだったが、再び炎の威力が増すと騒ぎ出した。
「いやマジでやばいマジでやばい。美琴!この炎ってどうやって生み出してるものなんだよ!」
「はぁ!?そんな初歩的なこともあんた分からないわけ?まったく不勉強にもほどが――――」
「とりあえず説教は後!まずはこっち(炎)だろ!?」
「だから、発火能力者(パイロキネシスト)による者よ」
「…いや、あの…では、パイロ何たらさんはどうやって炎を…あぢぃっ!?」
「ったくっ!!」
美琴が先ほどよりかなり攻撃的な電撃を地面に放つ。それにより少しは炎が吹き飛ぶ。
「対象物の運動力を上昇させて摩擦熱を起こし、炎を出してるのよ。ただそれだけ」
「…あの、この場合での対象物とは…?」
「空気とか、それに含まれる塵とかじゃないかしらね?」
「…そんな物の運動を操れんのかよ…」
上条がうんざりした声で言う。
「というか、こんなにのんびりしていて大丈夫なんでしょうか?」
「じゃあ、他にどうしろっての?」
「…」
上条は無言。代わりのように美琴が口を開く。
「しっかし、相手はどうやってこっちの居場所が分かってんのかしら?視覚系能力者でもいんのかっての」
「…」
やはり上条は無言。
と、思われたが、
「あ、そういや…さっきの一方通行(アクセラレータ)の声はどうしてこっちに届いたんだろうな?」
「?何のこと言ってんのあんた?」
さっきの一方通行(アクセラレータ)の声について放したところ、美琴に不思議そうな顔をされた。
「は?お前、聞こえなかったのか?」
「…」
今度は美琴が無言になる。
「…空気のベクトルでも操ってるのかもね…だけど、そんなこと出来るんならさっさと炎のベクトルを操ればいいのに…」
半分独り言のような美琴の声。
「…って、あれ、炎って…?」
上条が、美琴の言葉で思い出した炎について、疑問を投げかける。
「なんか、消えてますけど」
あたりを見渡す限り、くすぶる程度の炎ならあるが、それ以外のものは見当たらない。
「…今の状況、どうなってんのよ…?」
美琴が不安そうに言う。
「いや、てか」
上条が、なぜかものすごく不便そうな顔をして、
「炎消えてんのに、なぜ僕たちは中に浮いてなければならないのでしょうか?」
「…」
しばらく、沈黙の時間が流れそうだな…
一応一時的に危機は去ったのに、なんか釈然としていない上条は脳内でつぶやいた。
Ⅵ
「チッ…」
一方通行(アクセラレータ)が目の前にいる『敵』をにらみつけて、小さく舌打ちする。
目の前の敵は、3人。
「ふむ。その少女は戦力にはならないのだな?」
「あら。そちらの戦力にはならなくても、こちらの戦力にはなりそうですわよ?」
「…それは、あの少女が彼に対する人質になる、と言っているのですか?」
その全ては超能力者(レベル5)。しかも、能力などはまったく分かっていない。ここにくるのには空間移動(テレポート)を使って来ていたから、2人は空間移動の能力は持っていないだろうが。
「はン。俺に人質なンて有効だと思うのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)は、10m程度はなれた場所に待機させている打ち止め(ラストオーダー)のほうをチラッと見、すぐに相手に向き直り獰猛な笑みを浮かべながら言った。
「ええ。まず、そのような虚勢を張るところからして効果はかなりあるものだ、と予測できます」
「…まァ、勝手にしやがれ」
ペッと、近くに唾を吐きながら言う。
正直、一方通行(アクセラレータ)だけで超能力者(レベル5)の3人くらい倒すのは分けないだろう。
もともと次元が違うような強さを持っているのだから。
だが。
打ち止め(ラストオーダー)を人質にとられれば、形勢はその瞬間に逆転するだろう。
「打ち止め(ラストオーダー)、もっと下がってろ」
「…うん」
打ち止め(ラストオーダー)が小さくうなずき、彼らに背中を見せずに小走りに下がる。
「本当に人質として有効なようだな…ならば」
一方通行(アクセラレータ)はこの能力者を同時に相手しても、打ち止め(ラストオーダー)を奪われるとは思わなかった。
しかし、そんな幻想はすぐに壊される。
「ッ!?」
打ち止め(ラストオーダー)が、声にならない悲鳴を上げ、一方がそちらを振り返ると、
もうそこに彼女はいなかった。
とっさに首を元に戻す。
そこには、
「人質ゲットー」
やる気なさそうな女に頭をわしづかみにされている、打ち止め(ラストオーダー)の姿があった。
一方通行(アクセラレータ)が目の前にいる『敵』をにらみつけて、小さく舌打ちする。
目の前の敵は、3人。
「ふむ。その少女は戦力にはならないのだな?」
「あら。そちらの戦力にはならなくても、こちらの戦力にはなりそうですわよ?」
「…それは、あの少女が彼に対する人質になる、と言っているのですか?」
その全ては超能力者(レベル5)。しかも、能力などはまったく分かっていない。ここにくるのには空間移動(テレポート)を使って来ていたから、2人は空間移動の能力は持っていないだろうが。
「はン。俺に人質なンて有効だと思うのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)は、10m程度はなれた場所に待機させている打ち止め(ラストオーダー)のほうをチラッと見、すぐに相手に向き直り獰猛な笑みを浮かべながら言った。
「ええ。まず、そのような虚勢を張るところからして効果はかなりあるものだ、と予測できます」
「…まァ、勝手にしやがれ」
ペッと、近くに唾を吐きながら言う。
正直、一方通行(アクセラレータ)だけで超能力者(レベル5)の3人くらい倒すのは分けないだろう。
もともと次元が違うような強さを持っているのだから。
だが。
打ち止め(ラストオーダー)を人質にとられれば、形勢はその瞬間に逆転するだろう。
「打ち止め(ラストオーダー)、もっと下がってろ」
「…うん」
打ち止め(ラストオーダー)が小さくうなずき、彼らに背中を見せずに小走りに下がる。
「本当に人質として有効なようだな…ならば」
一方通行(アクセラレータ)はこの能力者を同時に相手しても、打ち止め(ラストオーダー)を奪われるとは思わなかった。
しかし、そんな幻想はすぐに壊される。
「ッ!?」
打ち止め(ラストオーダー)が、声にならない悲鳴を上げ、一方がそちらを振り返ると、
もうそこに彼女はいなかった。
とっさに首を元に戻す。
そこには、
「人質ゲットー」
やる気なさそうな女に頭をわしづかみにされている、打ち止め(ラストオーダー)の姿があった。
その、打ち止め(ラストオーダー)の呆然とした顔を見た瞬間、
「っとぉ。ちなみに、私は超能力者(レベル5)の『電撃使い(エレクトロマスター)』だけど」
足の裏のベクトルを半分操作した一方通行(アクセラレータ)の思考を先読みしたかのように、打ち止め(ラストオーダー)をわしづかみにしている女が言った。
「…テメェ。今、自分が何してンのかちゃンと理解してンのかァ?」
あくまで、冷静を保った『ような』表情をして一方通行(アクセラレータ)が言う。
「うん?それは、このこの頭ん中に今すぐ8億ボルトの電流流してほしいってこと?」
その一方通行(アクセラレータ)の表情と声をあざ笑うかのように女が言う。
くそっ、と小さく一方通行(アクセラレータ)がつぶやいた。
とりあえず、打ち止め(ラストオーダー)の奪還が最重要項目だ、と一方通行(アクセラレータ)は考える。おそらくあいつらは打ち止め(ラストオーダー)を乱暴に扱えな
「っとぉ。ちなみに、私は超能力者(レベル5)の『電撃使い(エレクトロマスター)』だけど」
足の裏のベクトルを半分操作した一方通行(アクセラレータ)の思考を先読みしたかのように、打ち止め(ラストオーダー)をわしづかみにしている女が言った。
「…テメェ。今、自分が何してンのかちゃンと理解してンのかァ?」
あくまで、冷静を保った『ような』表情をして一方通行(アクセラレータ)が言う。
「うん?それは、このこの頭ん中に今すぐ8億ボルトの電流流してほしいってこと?」
その一方通行(アクセラレータ)の表情と声をあざ笑うかのように女が言う。
くそっ、と小さく一方通行(アクセラレータ)がつぶやいた。
とりあえず、打ち止め(ラストオーダー)の奪還が最重要項目だ、と一方通行(アクセラレータ)は考える。おそらくあいつらは打ち止め(ラストオーダー)を乱暴に扱えな
「意識を逸らしすぎではないか?」
反射的に後ろを振り向く一方通行(アクセラレータ)。だが、そこには誰もいない。
「なかなかに動揺しているようだな。そんな状態では、私一人とはいえ倒せないぞ」
また同じ男の声がした。
どこにいるのか、探ろうとした一方通行(アクセラレータ)は、
「ッ!?」
とっさに足の裏のベクトルを操り、その場を飛びぬく。
「なかなかに動揺しているようだな。そんな状態では、私一人とはいえ倒せないぞ」
また同じ男の声がした。
どこにいるのか、探ろうとした一方通行(アクセラレータ)は、
「ッ!?」
とっさに足の裏のベクトルを操り、その場を飛びぬく。
次の瞬間、一方通行(アクセラレータ)が一瞬前までいた大地が爆発したかのように吹き飛んだ。
一方通行(アクセラレータ)がベクトルを操作した場合、足元の地面は確かに少しは爆発したような運動をする。だが、ここまで激しくねェ、と一方通行(アクセラレータ)は心の中でつぶやく。
「ほう、今の攻撃がかわせるか。さすがは学園都市第1位、少し見くびっていた」
またすぐ近くで男の声がした。
無言で一方通行(アクセラレータ)は声のしたほうに腕を振る。その腕が少しでも相手の体に触れればその時点で一人戦闘不能だ。
だが、その腕は宙を切った。
一方通行(アクセラレータ)は途中でその腕を止め、周りを見渡す。
だが、どこを見渡してもあの男はいない。打ち止め(ラストオーダー)を掴んでいるあのクソ女は憎たらしい笑みを浮かべて構えもしないで立っているし、能力も分からない無表情な女はその女の後ろにただ突っ立っている。
やはり、どこを見てもあいつはいない。
と、突然。
「まだ、確認してない場所があるはずだが。それさえも分からない、とはさすがに言わせぬぞ」
頭上から、あの男の声が聞こえた。
「ほう、今の攻撃がかわせるか。さすがは学園都市第1位、少し見くびっていた」
またすぐ近くで男の声がした。
無言で一方通行(アクセラレータ)は声のしたほうに腕を振る。その腕が少しでも相手の体に触れればその時点で一人戦闘不能だ。
だが、その腕は宙を切った。
一方通行(アクセラレータ)は途中でその腕を止め、周りを見渡す。
だが、どこを見渡してもあの男はいない。打ち止め(ラストオーダー)を掴んでいるあのクソ女は憎たらしい笑みを浮かべて構えもしないで立っているし、能力も分からない無表情な女はその女の後ろにただ突っ立っている。
やはり、どこを見てもあいつはいない。
と、突然。
「まだ、確認してない場所があるはずだが。それさえも分からない、とはさすがに言わせぬぞ」
頭上から、あの男の声が聞こえた。
とっさに、一方通行(アクセラレータ)が天を仰ぐ。
そこには、
空中10m近くを浮いている人間がいた。
「10mくらいならなんともないと思っていたが…少々酸素濃度が薄いな」
『そこ』にいるのが当然、とでもいいたげな口調で言う男。
「…念動力(テレキネシス、か」
「ご名答。しかし、一般のものとは違うが」
そう男がいい、いきなり一方通行(アクセラレータ)の頭めがけて急降下してくる。
普通なら頭を庇うか、その場を逃げるかするだろう。しかし、一方通行(アクセラレータ)はその能力ゆえそれをしない。むしろ、今男が行っている行為は地獄の口に自分から飛び込むようなものだ。
『一方通行(アクセラレータ)』に触れられたら、それでおしまい。
だが、一方通行(アクセラレータ)はその光景を見て目を細めた。
一方通行(アクセラレータ)の髪に触れる寸前のところで、男が『停まって』いる。
どういう原理でそうなっているかは一方通行(アクセラレータ)には分からない。だが、例えどういう原理があろうとも、一人の少年の右手を除けば一方通行(アクセラレータ)の皮膚は『殺人兵器』だ。
その『殺人兵器』である右手を一方通行(アクセラレータ)は無造作に伸ばす。
…はずだった。
「…あァ?」
一方通行(アクセラレータ)の腕が動かせない。
いや、冷静になってみると体中が動かせなくなっていた。
さらに冷静に現状を分析しようとする一方通行(アクセラレータ)に、
「だから、貴殿はいささか緊張感がかけすぎではないか?」
少し怒ったような口調で男が言った。
「緊張感ン?そンなもン、一般人にしか必要とされてねェだろォが。何で俺がわざわざテメェごときに『緊張』なんて面倒くさいことしなきゃならねェんだよォッ!」
後半部分を叫ぶように言い放った一方通行(アクセラレータ)の腕が開放される。
どういう理論で腕が動かなくなったのかは分からなかったが、とりあえずベクトル操作で解除できた以上、『向き』はあるのだろう、その原因には。
だが、一方通行(アクセラレータ)はそんなことをまったく考えずに、勢いよく天に向かって手を突き出した。
まるで、勝利を勝ち取った者のように。
だが、
また、一方通行(アクセラレータ)の手は宙を切った。
そこには、
空中10m近くを浮いている人間がいた。
「10mくらいならなんともないと思っていたが…少々酸素濃度が薄いな」
『そこ』にいるのが当然、とでもいいたげな口調で言う男。
「…念動力(テレキネシス、か」
「ご名答。しかし、一般のものとは違うが」
そう男がいい、いきなり一方通行(アクセラレータ)の頭めがけて急降下してくる。
普通なら頭を庇うか、その場を逃げるかするだろう。しかし、一方通行(アクセラレータ)はその能力ゆえそれをしない。むしろ、今男が行っている行為は地獄の口に自分から飛び込むようなものだ。
『一方通行(アクセラレータ)』に触れられたら、それでおしまい。
だが、一方通行(アクセラレータ)はその光景を見て目を細めた。
一方通行(アクセラレータ)の髪に触れる寸前のところで、男が『停まって』いる。
どういう原理でそうなっているかは一方通行(アクセラレータ)には分からない。だが、例えどういう原理があろうとも、一人の少年の右手を除けば一方通行(アクセラレータ)の皮膚は『殺人兵器』だ。
その『殺人兵器』である右手を一方通行(アクセラレータ)は無造作に伸ばす。
…はずだった。
「…あァ?」
一方通行(アクセラレータ)の腕が動かせない。
いや、冷静になってみると体中が動かせなくなっていた。
さらに冷静に現状を分析しようとする一方通行(アクセラレータ)に、
「だから、貴殿はいささか緊張感がかけすぎではないか?」
少し怒ったような口調で男が言った。
「緊張感ン?そンなもン、一般人にしか必要とされてねェだろォが。何で俺がわざわざテメェごときに『緊張』なんて面倒くさいことしなきゃならねェんだよォッ!」
後半部分を叫ぶように言い放った一方通行(アクセラレータ)の腕が開放される。
どういう理論で腕が動かなくなったのかは分からなかったが、とりあえずベクトル操作で解除できた以上、『向き』はあるのだろう、その原因には。
だが、一方通行(アクセラレータ)はそんなことをまったく考えずに、勢いよく天に向かって手を突き出した。
まるで、勝利を勝ち取った者のように。
だが、
また、一方通行(アクセラレータ)の手は宙を切った。
だが、
今回はそれで終わらない。
そのまま、一方通行(アクセラレータ)は周りの大気のベクトルを操作し、自分を中心にして突風を巻き起こす。もちろん、打ち止め(ラストオーダー)がとらわれている場所を除いて。
ズゴォォォォッ!!!
もはや風が起こす音か、と疑いたくなるような音があたりに響いた。
今回はそれで終わらない。
そのまま、一方通行(アクセラレータ)は周りの大気のベクトルを操作し、自分を中心にして突風を巻き起こす。もちろん、打ち止め(ラストオーダー)がとらわれている場所を除いて。
ズゴォォォォッ!!!
もはや風が起こす音か、と疑いたくなるような音があたりに響いた。
しかし、
やはりあの男は無傷だった。
服にかかった埃を払い落とすような動作を男がする。
そしてため息をつき、
「まさか、もうこれで手札(カード)を使い果たした、とは言わんな?」
瞬間。
男が消えた。
その事実が一方通行(アクセラレータ)に知覚できた瞬間、
やはりあの男は無傷だった。
服にかかった埃を払い落とすような動作を男がする。
そしてため息をつき、
「まさか、もうこれで手札(カード)を使い果たした、とは言わんな?」
瞬間。
男が消えた。
その事実が一方通行(アクセラレータ)に知覚できた瞬間、
一方通行(アクセラレータ)の体が真後ろに10m近く吹っ飛ばされた。
「え…?」
打ち止め(ラストオーダー)が、悲鳴でもなく間の抜けた声を漏らす。
「はん。学園都市第1位っつっても、所詮はこの程度、ってとこなの?」
打ち止め(ラストオーダー)の頭をわしづかみにしている女が言った。
「まあ、詰まる所ただの『人間』であることには変わりませんから」
隣にいた無表情な女も言う。
そして、
「…失望したな。こんなものが『1位』ならば、絶対能力者(レベル6)は必要な―――――」
男の声が、途中で途切れた。
打ち止め(ラストオーダー)が、悲鳴でもなく間の抜けた声を漏らす。
「はん。学園都市第1位っつっても、所詮はこの程度、ってとこなの?」
打ち止め(ラストオーダー)の頭をわしづかみにしている女が言った。
「まあ、詰まる所ただの『人間』であることには変わりませんから」
隣にいた無表情な女も言う。
そして、
「…失望したな。こんなものが『1位』ならば、絶対能力者(レベル6)は必要な―――――」
男の声が、途中で途切れた。
目の前で、一方通行(アクセラレータ)が起き上がったからだ。
今、この地帯は両者の激突、特に一方通行(アクセラレータ)が起こした突風により、地面のアスファルトは地震が起きたかのように亀裂が入っている。そこにかなりの速さで打ち付けられれば、少なくとも『人間』ならば戦闘不能には陥るはずだ。
だが、
一方通行(アクセラレータ)は傷ひとつすら負っていない。むしろ、その口元には避けるような笑みが浮かんでいる。
「さァて」
その口から、心底楽しそうな声が発される。
「ンじゃァ、そろそろ時間も稼げただろうし…」
さらに一方通行(アクセラレータ)の口が不気味に開いていく。
「それよりも、俺のほうが持たねェ。…弱者のふりするなンざァ、考えられるかってのォッ!!」
その一方通行(アクセラレータ)を見た男が、思わず後ず去りする。
「そろそろ終いだぜェ!雑魚どもォォォ!!!」
だが、
一方通行(アクセラレータ)は傷ひとつすら負っていない。むしろ、その口元には避けるような笑みが浮かんでいる。
「さァて」
その口から、心底楽しそうな声が発される。
「ンじゃァ、そろそろ時間も稼げただろうし…」
さらに一方通行(アクセラレータ)の口が不気味に開いていく。
「それよりも、俺のほうが持たねェ。…弱者のふりするなンざァ、考えられるかってのォッ!!」
その一方通行(アクセラレータ)を見た男が、思わず後ず去りする。
「そろそろ終いだぜェ!雑魚どもォォォ!!!」
Ⅶ
「しっかしさぁ、あんたも馬鹿だよね~」
目の前にいる少年が言う。
「何がですの?」
無表情な顔をした黒子が問う。
「人(他人)のために自ら命を賭ける、って言う行為が、だよ!まったく、何でそんなことしたかなぁ!?もしかして、僕(超能力者)に勝てるとか思っちゃった!?ハッ!その気になれば今すぐにでもあんたを殺せる相手に対して!?もうほっんと―――――」
「お黙りなさいな。おしゃべりな男はあいにくタイプじゃないんですわよ」
…じゃあどんな男がタイプなんだ、と聞かれたらいろいろと話がまずい方向に進みそうな発言を黒子がした。
それを聞いた少年は、
「…ああ、だめだ。だめだねもう。救いようがないって言うか…もう殺さなくちゃ気がすまねぇな。
ってことで、とっととはじめちゃっていい?」
完全な無表情になった少年が言った。
「どうぞご自由に。そもそも、私はあなたに『戦闘を始めるな』なんて言葉はかけてないと思いますが?」
その言葉と同時に、
黒子が空を仰ぎ、わけの分からない言葉を発した。
「ッ!?」
何かを感じた少年が、とっさに防御体制を取ろうとする。
と、そこに。
黒子のあまり脂肪も筋肉もついていない足が現れた。
そのまま黒子の足は少年に叩きつけられる。
少年は1m程度後ろにのけぞり、その場から消えた。
それと同じタイミングで、黒子も空間移動(テレポート)を発動する。
結果、一瞬前まで黒子がいた空間に少年が忽然と出現し、その少し横に、いつの間にか金属矢を手中に収めた黒子が出現した。
その『予想外』な事実に少年は思考、行動を停止し、その『予想通り』の事実に黒子は金属矢を空間移動(テレポート)させる。
少年が後ろに縫い付けられるように倒れこむ。
その少年に、黒子が覆いかぶさるようにのしかかる。
華奢な少女とはいえ、『人間』の体重だ。
少年は『ぐっ』とうめいて口から空気を吐き出した。
そして黒子はスカートを一切躊躇することなくめくり、太ももに巻きつけてあるベルトから金属矢を数本取り出し、さらに少年を縫いとめるように空間移動(テレポート)させる。
ギンギン、と不自然な音が響き、少年の服が地面に縫い付けられる。
と同時、黒子の足が地面を思い切り叩きつける。
それにより少年の演算が途中で途切れ、空間移動(テレポート)が失敗する。
誰がどう見ても、大能力者(レベル4)の白井黒子のほうが圧倒的に有利だった。
目の前にいる少年が言う。
「何がですの?」
無表情な顔をした黒子が問う。
「人(他人)のために自ら命を賭ける、って言う行為が、だよ!まったく、何でそんなことしたかなぁ!?もしかして、僕(超能力者)に勝てるとか思っちゃった!?ハッ!その気になれば今すぐにでもあんたを殺せる相手に対して!?もうほっんと―――――」
「お黙りなさいな。おしゃべりな男はあいにくタイプじゃないんですわよ」
…じゃあどんな男がタイプなんだ、と聞かれたらいろいろと話がまずい方向に進みそうな発言を黒子がした。
それを聞いた少年は、
「…ああ、だめだ。だめだねもう。救いようがないって言うか…もう殺さなくちゃ気がすまねぇな。
ってことで、とっととはじめちゃっていい?」
完全な無表情になった少年が言った。
「どうぞご自由に。そもそも、私はあなたに『戦闘を始めるな』なんて言葉はかけてないと思いますが?」
その言葉と同時に、
黒子が空を仰ぎ、わけの分からない言葉を発した。
「ッ!?」
何かを感じた少年が、とっさに防御体制を取ろうとする。
と、そこに。
黒子のあまり脂肪も筋肉もついていない足が現れた。
そのまま黒子の足は少年に叩きつけられる。
少年は1m程度後ろにのけぞり、その場から消えた。
それと同じタイミングで、黒子も空間移動(テレポート)を発動する。
結果、一瞬前まで黒子がいた空間に少年が忽然と出現し、その少し横に、いつの間にか金属矢を手中に収めた黒子が出現した。
その『予想外』な事実に少年は思考、行動を停止し、その『予想通り』の事実に黒子は金属矢を空間移動(テレポート)させる。
少年が後ろに縫い付けられるように倒れこむ。
その少年に、黒子が覆いかぶさるようにのしかかる。
華奢な少女とはいえ、『人間』の体重だ。
少年は『ぐっ』とうめいて口から空気を吐き出した。
そして黒子はスカートを一切躊躇することなくめくり、太ももに巻きつけてあるベルトから金属矢を数本取り出し、さらに少年を縫いとめるように空間移動(テレポート)させる。
ギンギン、と不自然な音が響き、少年の服が地面に縫い付けられる。
と同時、黒子の足が地面を思い切り叩きつける。
それにより少年の演算が途中で途切れ、空間移動(テレポート)が失敗する。
誰がどう見ても、大能力者(レベル4)の白井黒子のほうが圧倒的に有利だった。
そして黒子はそのまま少年の右手首を掴み、強引にひねる。
「!?」
少年がとっさのことに手を振り解こうとするが、なぜか振りほどけない。それほどに少年の精神状態はボロボロだった。
ゴギッ
という音と共に、少年の悲鳴とも雄叫びとも捉えられる叫びが響いた。
だが、黒子は興味なさそうな顔をし、あろうことか今度は左足の足首を掴みにかかる。
「ふっふざけんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!!」
少年が叫び、その左足を黒子の顔に打ちつけようとする。
ガスッ
今度は黒子の顔から音がした。
にたぁ、と笑う少年に対し、黒子は
ゾッとするような笑みを少年に返す。
そして、自分の顔に触れている足を掴み、一回勢いをつけるようにひざを後ろに曲げ、そのまま――――
ブチブチッ、という音が両者の耳に届いた。
あまりのことに少年は無表情になる。
黒子はその手を離し、少年の足は支えを失い地面に打ち付けられる。
その、トン、という音と呼応して
やはり同じような声があたりに轟いた。
おそらく少年の足は、筋肉と神経が千切れたのだろう。黒子の腕力では、それが精一杯だ。
だが、もちろんそれでも十分な威力がある。
もはや、少年は戦意を失っていた。いや、失うほかなかった。
「!?」
少年がとっさのことに手を振り解こうとするが、なぜか振りほどけない。それほどに少年の精神状態はボロボロだった。
ゴギッ
という音と共に、少年の悲鳴とも雄叫びとも捉えられる叫びが響いた。
だが、黒子は興味なさそうな顔をし、あろうことか今度は左足の足首を掴みにかかる。
「ふっふざけんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!!」
少年が叫び、その左足を黒子の顔に打ちつけようとする。
ガスッ
今度は黒子の顔から音がした。
にたぁ、と笑う少年に対し、黒子は
ゾッとするような笑みを少年に返す。
そして、自分の顔に触れている足を掴み、一回勢いをつけるようにひざを後ろに曲げ、そのまま――――
ブチブチッ、という音が両者の耳に届いた。
あまりのことに少年は無表情になる。
黒子はその手を離し、少年の足は支えを失い地面に打ち付けられる。
その、トン、という音と呼応して
やはり同じような声があたりに轟いた。
おそらく少年の足は、筋肉と神経が千切れたのだろう。黒子の腕力では、それが精一杯だ。
だが、もちろんそれでも十分な威力がある。
もはや、少年は戦意を失っていた。いや、失うほかなかった。
ここで少年が戦う意思を持っているならば、あの『悪魔(少女)』に何をされるか、分かったものではない。
「…なんでだよ」
少年がポツリと呟く。もはや痛みは感じていないようだった。
「何で、空間移動(テレポート)が出来なかった」
独り言のような問いかけに、黒子は静かに応える。
「学園都市には様々な能力者が存在していますが、どれも『演算』する必要がありますの」
一泊置き、黒子は続ける。
「もちろん、能力や使用者のレベルによって、その演算の高度は違ってきますわ。その中でも私たち、空間移動(テレポート)を持つ能力者は、最高級の演算能力を求められますの。それこそ、少しの不安、痛みだけでも演算が中断されるほどの。もちろんいきなりわけの分からない言葉を発せられたり、近くで地面をならされたり、などされては演算など出来はしませんわ」
黒子は淡々という。
「チッ…だからあの時…」
黒子の行った行動には、そのような意味があったのだ。
だが、ふと疑問に感じたことを少年は問う。
「だけど、何であんたは僕が空間移動(テレポート)を使うタイミングが分かった?」
「直感、状況、表情、その他諸々…特にあなたは自分の行動を気にしていないようでしたから、タイミングを計るのは簡単でしたわよ」
なんでもないことのように黒子が言う。
「…ハハッ。それに同じ能力者だしな…だから超電磁砲(レールガン)に任せなかったのか」
「いえ」
少年の言葉を、黒子は即座に否定する。
「あの判断を下したとき、そんなところまで私は思考がいってませんでしたわよ」
「…じゃあ、何で」
「決まってますわ」
黒子が、やっと表情を緩めながら言う。
「これは、あなたにも言えることなんですが…」
そう前置きし、
「…なんでだよ」
少年がポツリと呟く。もはや痛みは感じていないようだった。
「何で、空間移動(テレポート)が出来なかった」
独り言のような問いかけに、黒子は静かに応える。
「学園都市には様々な能力者が存在していますが、どれも『演算』する必要がありますの」
一泊置き、黒子は続ける。
「もちろん、能力や使用者のレベルによって、その演算の高度は違ってきますわ。その中でも私たち、空間移動(テレポート)を持つ能力者は、最高級の演算能力を求められますの。それこそ、少しの不安、痛みだけでも演算が中断されるほどの。もちろんいきなりわけの分からない言葉を発せられたり、近くで地面をならされたり、などされては演算など出来はしませんわ」
黒子は淡々という。
「チッ…だからあの時…」
黒子の行った行動には、そのような意味があったのだ。
だが、ふと疑問に感じたことを少年は問う。
「だけど、何であんたは僕が空間移動(テレポート)を使うタイミングが分かった?」
「直感、状況、表情、その他諸々…特にあなたは自分の行動を気にしていないようでしたから、タイミングを計るのは簡単でしたわよ」
なんでもないことのように黒子が言う。
「…ハハッ。それに同じ能力者だしな…だから超電磁砲(レールガン)に任せなかったのか」
「いえ」
少年の言葉を、黒子は即座に否定する。
「あの判断を下したとき、そんなところまで私は思考がいってませんでしたわよ」
「…じゃあ、何で」
「決まってますわ」
黒子が、やっと表情を緩めながら言う。
「これは、あなたにも言えることなんですが…」
そう前置きし、
「人間は、人を傷つけることを目的として行動するときより、人を守ることを目的として行動した方が、チカラが出るものなんですわよ」