■28~決着
女の右足が上条の顔に届くよりも早く、上条の右足が女の顔を捉えた。
女は崩れ落ち、その場に倒れた。
女は崩れ落ち、その場に倒れた。
「はぁ、はぁ、クソお!!」
上条は行き場のない怒りを地面にぶつけたが、
自分を助けてくれた制服の少女の事を思い出し我に帰る。
上条は行き場のない怒りを地面にぶつけたが、
自分を助けてくれた制服の少女の事を思い出し我に帰る。
(アイツは大丈夫か?)
その時パシュッと音が聞え、三人の人影が現れた。
その中に金髪グラサン男がいる事を確認し、安堵したが、
一人の結標と呼ばれる女が、さっきまで戦っていた少女と、
制服の少女をテレポートさせ、最後に自分も消えた。
その中に金髪グラサン男がいる事を確認し、安堵したが、
一人の結標と呼ばれる女が、さっきまで戦っていた少女と、
制服の少女をテレポートさせ、最後に自分も消えた。
「待てっ!」
そう言って少しよろめく上条を見て金髪の男が声を発した。
「大丈夫だ、カミやん。くわしい話はこの女が話してくれる。」
「この子は?」
「まあ、それも含めて本人から聞いてくれ。俺はまだやる事があるからまたな。」
そう言って、金髪の男は去って行った。
そう言って、金髪の男は去って行った。
■29~サルベージ
しばらく呆然としていると、女の方から口を開いた。
「始めまして上条当麻。私は、メンタルアウトと呼ばれています。」
しばらく呆然としていると、女の方から口を開いた。
「始めまして上条当麻。私は、メンタルアウトと呼ばれています。」
「メンタルアウト・・、かつての学園都市五位の能力者の通称か。」
「はい。あなたは、一部、御琴の事情を知ったみたいですね、」
「ああ、ミコトの蹴りがきっかけでな。そうか、お前心が読めるのか・・」
以下は、上条が見たものと、メンタルアウトの説明を合わせたものだ。
■30レス目「少年と少女の出会い」
上条は、ハイキックをもらって倒れた後、とある少女とある小さな少年の
夢を見ていた。
少年は、不幸を引き寄せる体質のせいで、両親を除く周りの者から
忌み嫌われていた。そんな少年が屈折しなかったのも一重に両親の
愛情があったからではあるが、それでも小さな少年にとって
その現実は耐え難いものであり、日に日に少年の心は蝕まれていった。
夢を見ていた。
少年は、不幸を引き寄せる体質のせいで、両親を除く周りの者から
忌み嫌われていた。そんな少年が屈折しなかったのも一重に両親の
愛情があったからではあるが、それでも小さな少年にとって
その現実は耐え難いものであり、日に日に少年の心は蝕まれていった。
そんなある日のとある公園で少年は一人の少女に出会った。
少女は自販機でジュースを買おうとしているのだが、
背が低くてジャンプしてもコインを入れられないようだ。
見かねてその少女より少し背の高い少年が代わりにジュースを買ってやると
少女はとても可愛い笑顔でお礼を言った。
その後も、度々その公園で二人は偶然会うようになり仲良くなった。
少女は自販機でジュースを買おうとしているのだが、
背が低くてジャンプしてもコインを入れられないようだ。
見かねてその少女より少し背の高い少年が代わりにジュースを買ってやると
少女はとても可愛い笑顔でお礼を言った。
その後も、度々その公園で二人は偶然会うようになり仲良くなった。
■31~とある日の少年の告白
「ぼくさ、不幸体質なんだって。
そのせいでいろんな人に迷惑かけちゃうんだ。
だからミコトちゃんもぼくに近づかない方がいいよ」
「ぼくさ、不幸体質なんだって。
そのせいでいろんな人に迷惑かけちゃうんだ。
だからミコトちゃんもぼくに近づかない方がいいよ」
少年は本心からその言葉を口にした。自分のせいで人が傷つく
のは見たくない。それが、この笑顔の眩しい少女ならなおさらだ。
のは見たくない。それが、この笑顔の眩しい少女ならなおさらだ。
「不幸体質?て事は他の人の不幸をとうま君が肩代わりしてるんだ。
とうま君て、とっても強いんだね。それにすごく優しい。」
とうま君て、とっても強いんだね。それにすごく優しい。」
「優しい?僕が?」
「うん。お父さんが言ってたけど、辛い経験をしたことある人だけが
本当の優しさを持ってるんだって。それに、
自分が不幸なのに、私の事心配するなんて優しいよ。
あたしは、そういうとうま君が好きだな。
そうだ!あたしが、とうま君のこと幸せにしてあげる。」
本当の優しさを持ってるんだって。それに、
自分が不幸なのに、私の事心配するなんて優しいよ。
あたしは、そういうとうま君が好きだな。
そうだ!あたしが、とうま君のこと幸せにしてあげる。」
「え、あ、ありがとうミコトちゃん。
じゃあ、僕はミコトちゃんの事を何があっても守るよ!」
じゃあ、僕はミコトちゃんの事を何があっても守るよ!」
「じゃあ約束ね」
少女は指きりげんま~と言って、笑顔で少年の小指に自分の小指を絡ませた。
少女の言葉を聞いて、少年はなぜか泣いていた。
なぜ泣いたのかは、幼い少年にとって理解できないものだった。
ただ、この日から少年は大きく変わっていく。
上条当麻の芯の部分は、たぶんこの時形成されたのだろう。
少年時代の何気ない出来事が、その後の基盤を形成することは
とりたてて珍しい話ではない。
その後、少女は学園都市に行ったたようだ。
なぜ泣いたのかは、幼い少年にとって理解できないものだった。
ただ、この日から少年は大きく変わっていく。
上条当麻の芯の部分は、たぶんこの時形成されたのだろう。
少年時代の何気ない出来事が、その後の基盤を形成することは
とりたてて珍しい話ではない。
その後、少女は学園都市に行ったたようだ。
■32~運命の歯車
御琴と呼ばれる少女は、努力を積み重ねて中学一年にして
レベル5まで上りつめていた。何もかもが順調かのように見えた
が、転機はすぐに訪れた。御琴に暗部組織への召集が来たのだ。
学園都市としては、巨大な力を持つ能力者には枷をしておきたい。
御琴への枷は暗部として活動させることだった。
当然御琴は断ったが、その軽率な返答をすぐに後悔した。
いや後悔という生易しい言葉ではすまないかもしれない。
御琴と呼ばれる少女は、努力を積み重ねて中学一年にして
レベル5まで上りつめていた。何もかもが順調かのように見えた
が、転機はすぐに訪れた。御琴に暗部組織への召集が来たのだ。
学園都市としては、巨大な力を持つ能力者には枷をしておきたい。
御琴への枷は暗部として活動させることだった。
当然御琴は断ったが、その軽率な返答をすぐに後悔した。
いや後悔という生易しい言葉ではすまないかもしれない。
御琴の寮の部屋に、箱につめられ、バラバラに刻まれた叔父が送られてきた。
「お前が断ったり、自殺を図れば、お前の両親も同じ目に。」
との警告文も箱と一緒に送られてきていた。
御琴は復讐を誓いつつ暗部組織に入った。他に選択肢はなかった。
「お前が断ったり、自殺を図れば、お前の両親も同じ目に。」
との警告文も箱と一緒に送られてきていた。
御琴は復讐を誓いつつ暗部組織に入った。他に選択肢はなかった。
組織の名前はカテゴリー。その組織の中には、
御琴の同じ中学で親友であるメンタルアウトと呼ばれる少女もいた。
御琴は、カテゴリーに回ってきた仕事を率先してこなした。
親友である少女の手を汚さぬように、自分以外がなるべく汚れないように。
メンタルアウトはこんなときでも人を思いやれる、御琴の優しさに
心を打たれ、御琴のためならば何でもやるという決意をした。
御琴の同じ中学で親友であるメンタルアウトと呼ばれる少女もいた。
御琴は、カテゴリーに回ってきた仕事を率先してこなした。
親友である少女の手を汚さぬように、自分以外がなるべく汚れないように。
メンタルアウトはこんなときでも人を思いやれる、御琴の優しさに
心を打たれ、御琴のためならば何でもやるという決意をした。
■33~もう一人のミコト
ある日、御琴は仕事で、アマイアオという研究者の抹殺依頼を受けた。
目標の研究所に入ると、自分とそっくりの少女が
培養液に入っているのを目にする。
ある日、御琴は仕事で、アマイアオという研究者の抹殺依頼を受けた。
目標の研究所に入ると、自分とそっくりの少女が
培養液に入っているのを目にする。
「シスターズ、か。」
御琴は暗部にいるため、当然にシスターズの計画を知っていたが、
どうやら、アマイという男は一人で、独自の研究をしているようであり、
そのために抹殺命令が出たようだ。
アマイは研究所にはおらず、クローンの処置については、何も言われていない。
とりあえず培養液の中から少女を出す。
すると、目を覚ましたクローンが、
どうやら、アマイという男は一人で、独自の研究をしているようであり、
そのために抹殺命令が出たようだ。
アマイは研究所にはおらず、クローンの処置については、何も言われていない。
とりあえず培養液の中から少女を出す。
すると、目を覚ましたクローンが、
「え??わたし??なんで?どういうこと」としゃべりだし、
パニック状態になって、能力を暴走させた。
パニック状態になって、能力を暴走させた。
(どういうこと?シスターズの能力は、報告によればレベル
2~3のハズ。この力は私と同等じゃない!?
しかも、この子感情がある?)
2~3のハズ。この力は私と同等じゃない!?
しかも、この子感情がある?)
このままにはしておけないので、御琴は、女の首筋を叩いて気絶させ、
メンタルアウトに現場にきてもらい、女を調べてもらう。
メンタルアウトに現場にきてもらい、女を調べてもらう。
■34~フルチューニング
「このクローンは暗部に入る直前までの御琴の記憶を受け継いでいるみたい。」
「このクローンは暗部に入る直前までの御琴の記憶を受け継いでいるみたい。」
「なるほどね。能力は遺伝のみならず、経験にも左右される。
同一の遺伝子体に、私の記憶も移植すれば、レベル5が作れる
と考えたわけね。確かに、理にかなってるわ。」
同一の遺伝子体に、私の記憶も移植すれば、レベル5が作れる
と考えたわけね。確かに、理にかなってるわ。」
「自我を持つレベル5が量産されたら、学園都市の存続にかかわる。
だから抹殺計画が出されたのかもしれないね。」
だから抹殺計画が出されたのかもしれないね。」
しばらく御琴が黙っているので、メンタルアウトは聞いた。
「どうするつもり?」
「どうするつもり?」
少しの間の後、御琴は答えた。
「この子には普通の生活を、私のできなかったことを、
して欲しいと思うの。迷惑かもしれないけど、協力してもらえないかな?」
「この子には普通の生活を、私のできなかったことを、
して欲しいと思うの。迷惑かもしれないけど、協力してもらえないかな?」
「当り前にOKよ。私は御琴のためなら何だってするわよ。」
「ありがとう。」
「で、私は何をすればいいのかな?」
「とりあえず、私と全く一緒の名前っていうのも、アレだから、
この子の記憶にある自分の名前を美琴に変換して、
私の暗部に入った後の空白の記憶を、ごく辺りさわりない記憶で
埋めて欲しい。あとは、学校で、たまにこの子の顔見て
異変がないか観察してくれればいいよ。」
この子の記憶にある自分の名前を美琴に変換して、
私の暗部に入った後の空白の記憶を、ごく辺りさわりない記憶で
埋めて欲しい。あとは、学校で、たまにこの子の顔見て
異変がないか観察してくれればいいよ。」
「学校って?私達辞めたことになってるけど」
「それも込みで操作して欲しいかな。
もちろんアンタは毎日学校通ようこと。
こっちにはもうあまり顔を出さなくていいから。大丈夫、
上の方にはあたしからいっとく。
今までしっかり仕事こなしてきたから、信頼は得ているハズだし。」
もちろんアンタは毎日学校通ようこと。
こっちにはもうあまり顔を出さなくていいから。大丈夫、
上の方にはあたしからいっとく。
今までしっかり仕事こなしてきたから、信頼は得ているハズだし。」
「でも・・」
「アンタにしか頼めないことなの。お願い!!」
「分かったわ・・。任せちゃいなさい!」
今回の件に関しては、自分に仕事を与えたという名目で、
メンタルアウトを事実上、暗部から脱退されることも目的の一つであろう。
御琴は一度言った事を撤回することはめったにない。
メンタルアウトは、これ以上言っても仕方ないことが分かっているだけに、
とりあえずは御琴の好意を素直に受け取ることにした。
メンタルアウトを事実上、暗部から脱退されることも目的の一つであろう。
御琴は一度言った事を撤回することはめったにない。
メンタルアウトは、これ以上言っても仕方ないことが分かっているだけに、
とりあえずは御琴の好意を素直に受け取ることにした。
■35~上条と美琴
美琴を振り切った上条は、ベンチに座ってため息をつき、
続けて嬉しそうに独り言を言った。
美琴を振り切った上条は、ベンチに座ってため息をつき、
続けて嬉しそうに独り言を言った。
「あんのビリビリ中学生。会うたびに勝負勝負いいやがって。
だいたいあれで常盤台なんて詐欺だろー。
どこがお嬢様なんだっーの。
ん?そー言えばあいつミサカミコトって言ってたな。ミコト・・。
まさかな?でもまあミコトちゃんならあれ位のオテンバ娘に
なってても不思議じゃないかハハ。
折りを見てちょっと聞いてみるか・・」
だいたいあれで常盤台なんて詐欺だろー。
どこがお嬢様なんだっーの。
ん?そー言えばあいつミサカミコトって言ってたな。ミコト・・。
まさかな?でもまあミコトちゃんならあれ位のオテンバ娘に
なってても不思議じゃないかハハ。
折りを見てちょっと聞いてみるか・・」
上条は御琴の事を覚えていた。ずっと昔の記憶であっても、
自分が変わるきっかけとなった思い出は忘れないものだ。
一方美琴の方は、御琴の記憶を受け継いでいるはずなのだが、
気付いていなかった。
そして、上条は美琴がいつもビリビリしてくるため、
話す機会がないうちに上条は記憶を失ってしまった。
自分が変わるきっかけとなった思い出は忘れないものだ。
一方美琴の方は、御琴の記憶を受け継いでいるはずなのだが、
気付いていなかった。
そして、上条は美琴がいつもビリビリしてくるため、
話す機会がないうちに上条は記憶を失ってしまった。
■36~御琴の感謝
とある日、美琴は、シスターズの実験を止めるため、死ぬ事を決意した。
そして、その事はメンタルアウトを通して、御琴にも伝わっていた。
御琴は、シスターズが大量に生産され、
殺されている事実については黙認していた。
もちろん、枷がないなら今すぐにでも止めたい
と思っていたのは確かだが、御琴にとっては、
両親の命がまず第一であり、下手に動くと制裁がある。
シスターズとは直接接触がないこと、
また、シスターズは感情がない人形という情報から、
感情移入することを抑えていたため、
なんとか踏み留まることができていた。
しかし、美琴が殺されるとなれば、別である。
御琴にとって美琴は、娘のような、妹のような、それでいて自分自身のような、
言葉では表現しつくせない関係であり、とても大切な希望なのである。
例え向こうが自分の事を知らなくとも。
実のところ暗部で凄まじく経験を積んだこともあり、
御琴の能力はこの時既にアクセラレータを上回っていた。
最悪アクセラレータを殺し、学園都市から脱出し、
両親を逃がすことを画策する。
ただ、御琴は発展した科学の前では、世界中どこにも逃げ場は
ない事もよく知っている。
とある日、美琴は、シスターズの実験を止めるため、死ぬ事を決意した。
そして、その事はメンタルアウトを通して、御琴にも伝わっていた。
御琴は、シスターズが大量に生産され、
殺されている事実については黙認していた。
もちろん、枷がないなら今すぐにでも止めたい
と思っていたのは確かだが、御琴にとっては、
両親の命がまず第一であり、下手に動くと制裁がある。
シスターズとは直接接触がないこと、
また、シスターズは感情がない人形という情報から、
感情移入することを抑えていたため、
なんとか踏み留まることができていた。
しかし、美琴が殺されるとなれば、別である。
御琴にとって美琴は、娘のような、妹のような、それでいて自分自身のような、
言葉では表現しつくせない関係であり、とても大切な希望なのである。
例え向こうが自分の事を知らなくとも。
実のところ暗部で凄まじく経験を積んだこともあり、
御琴の能力はこの時既にアクセラレータを上回っていた。
最悪アクセラレータを殺し、学園都市から脱出し、
両親を逃がすことを画策する。
ただ、御琴は発展した科学の前では、世界中どこにも逃げ場は
ない事もよく知っている。
「ごめんね、お父さん、お母さん。
迷惑かけちゃうかもしれないけど、絶対守るから許して」
迷惑かけちゃうかもしれないけど、絶対守るから許して」
そう呟いて、アクセラレータの下に向かおうとしたところ、
とある橋の上で落雷が落ちるのを見た。
とある橋の上で落雷が落ちるのを見た。
「なんで、あんなところで、美琴の能力が?」
不審に思い御琴は走り出した。そこで見たものは、
美琴を止めるために立っていた上条当麻であった。
不審に思い御琴は走り出した。そこで見たものは、
美琴を止めるために立っていた上条当麻であった。
「とうまくん!?」
御琴は、上条当麻の事を覚えていた。御琴にとっては、
上条当麻が御琴から影響を受けたのと同じくらい大きな影響を
上条当麻から受けている。
御琴にとって上条は、他の人にはない強さを持っていて、
それでいてとても優しい、自分の指針となった人物だった。
上条当麻が御琴から影響を受けたのと同じくらい大きな影響を
上条当麻から受けている。
御琴にとって上条は、他の人にはない強さを持っていて、
それでいてとても優しい、自分の指針となった人物だった。
御琴は、その後も観察を続け、上条当麻がアクセラレータを倒したのを
見届けた後、静かに泣いた。そして、誰にも聞えない声で呟いた。
見届けた後、静かに泣いた。そして、誰にも聞えない声で呟いた。
「約束、守ってくれたね。ありがとうとうま君。」
■37~計画
御琴は、仕事をこなすうちに、暗部におけるそれなりの地位と人望を獲得していた。
そんな御琴を上層部の連中は危険視していた。
もともと、御琴が暗部に入った経緯が経緯だけに、
いつ反旗を翻してもおかしくないからだ。
それに御琴自身の能力も学園都市の中で、
太刀打ちできるものがいないほどになっていた。
アイレスターにとっても、御琴は、「プランの進行を阻む強い不確定因子」、
として認識されるようになった。
御琴は、仕事をこなすうちに、暗部におけるそれなりの地位と人望を獲得していた。
そんな御琴を上層部の連中は危険視していた。
もともと、御琴が暗部に入った経緯が経緯だけに、
いつ反旗を翻してもおかしくないからだ。
それに御琴自身の能力も学園都市の中で、
太刀打ちできるものがいないほどになっていた。
アイレスターにとっても、御琴は、「プランの進行を阻む強い不確定因子」、
として認識されるようになった。
最初のうちは、死の可能性が高い仕事を任命して、
仕事のミスという名目で死んでもらう事を狙っていたが、
御琴は仕事を必ずやり遂げ生還してくる。
業を煮やした上層部は、御琴の殺害計画を立てた。
強力なAIMジャマーの射程距離に御琴をおびきよせ、
能力を封じた上で射殺するというものだ。
仕事のミスという名目で死んでもらう事を狙っていたが、
御琴は仕事を必ずやり遂げ生還してくる。
業を煮やした上層部は、御琴の殺害計画を立てた。
強力なAIMジャマーの射程距離に御琴をおびきよせ、
能力を封じた上で射殺するというものだ。
計画は実行された。
■38~死の間際での・・
御琴は、死ぬ間際においても、抵抗はしなかった。
やっとこの運命から解放される、そんな思いがあったのかもしれない。
ただ、ある言葉を聞くまでは。
御琴は、死ぬ間際においても、抵抗はしなかった。
やっとこの運命から解放される、そんな思いがあったのかもしれない。
ただ、ある言葉を聞くまでは。
「抵抗しないみたいだな。安心しろよ。すぐに両親の元に送ってやる」
「!?両親には手を出さないって約束だったじゃない!!」
「元々、お前の両親は学園都市にとって邪魔だったんだよ。
人質としての価値もなくなった今、殺さない方がおかしいだろ?」
人質としての価値もなくなった今、殺さない方がおかしいだろ?」
下卑た男が発言し終わるや否や、御琴の能力が発動した。
「な!?能力は使えないはずじゃ?」
複数のAIMジャマーの装置はボンっという音をそれぞれ立てて破壊された。
「そんなもの私に効くと思っていたのか。許さない。
ここにいるお前らも、上層部のクソどもも。
そして、私をこんな目に合わせた世界も。
こんなクソみたいな世界はもういらない。全て壊す。」
ここにいるお前らも、上層部のクソどもも。
そして、私をこんな目に合わせた世界も。
こんなクソみたいな世界はもういらない。全て壊す。」
「ひぃ!」
御琴は世界を恨み、神を恨んだ。かつての御琴は、もういない。
辺りは光につつまれ、一瞬でそこにいた男達は原型がなくなった。
これは上条がロシアに渡ったすぐ後の話である。
辺りは光につつまれ、一瞬でそこにいた男達は原型がなくなった。
これは上条がロシアに渡ったすぐ後の話である。
■39~プランの変更
その後、御琴は、数年かけて、アイレスターを殺し、
上層部の人間を一人残らず全て殺した。
今、学園都市の暗部は御琴によって動かされている。
その目的は、学園都市を含め世界を破壊しつくすこと、である。
上層部の人間を一人残らず全て殺した。
今、学園都市の暗部は御琴によって動かされている。
その目的は、学園都市を含め世界を破壊しつくすこと、である。
■~40 メンタルアウトの願い
一通り話終えた後、しばらくの沈黙の後、メンタルアウトは口を開いた。
一通り話終えた後、しばらくの沈黙の後、メンタルアウトは口を開いた。
「私は、御琴が悪いとは到底思えません。
人の心には、許容量というものがあります。
そして、それは皆が思っているよりも遥かに小さい。
私はこの能力の性質上、誰よりもそれは分かっています。
御琴は、普通の人間ならば、簡単に心が壊れる出来事に常にさらされてきました。
それでもなお、他人を気遣うことにスペースを割きつつも、
前に進もうとしてきた。
そんな御琴に対して待っていたのがあの仕打ちです。
私にとっては、そんな世界の方が許しがたい。
そして、それは皆が思っているよりも遥かに小さい。
私はこの能力の性質上、誰よりもそれは分かっています。
御琴は、普通の人間ならば、簡単に心が壊れる出来事に常にさらされてきました。
それでもなお、他人を気遣うことにスペースを割きつつも、
前に進もうとしてきた。
そんな御琴に対して待っていたのがあの仕打ちです。
私にとっては、そんな世界の方が許しがたい。
あなたの話をするときは、いつ御琴は楽しそうでした。
御琴はあなたにとめてほしかったのだと
思います。もともとあなたの抹殺計画に
御琴が直接関与することはない予定でした。
また、こんな迂遠な方法をとらなければ
御琴があなたを殺すことはたやすかったはずです。
御琴のような高レベルの能力者は、防衛本能により能力が発動するため
自殺しようと思ってもできません。
そして、御琴が生きていくのは辛い事だと思います。
だから私は、暗部に入ってからの御琴の記憶を消そうと思います。
そして、あなたにはあの子の傍にいてやって欲しいんです。
無茶な事と承知してますが、お願いします。」
御琴はあなたにとめてほしかったのだと
思います。もともとあなたの抹殺計画に
御琴が直接関与することはない予定でした。
また、こんな迂遠な方法をとらなければ
御琴があなたを殺すことはたやすかったはずです。
御琴のような高レベルの能力者は、防衛本能により能力が発動するため
自殺しようと思ってもできません。
そして、御琴が生きていくのは辛い事だと思います。
だから私は、暗部に入ってからの御琴の記憶を消そうと思います。
そして、あなたにはあの子の傍にいてやって欲しいんです。
無茶な事と承知してますが、お願いします。」
「傍にいるのが俺なんかで、いいのか?」
「きっと、あなたじゃないとダメだと思います」
「分かったよ。約束してたしな。
まあすでに破っちゃってるかもしんないけど、
今度は何があっても俺がミコトちゃんを守るよ。」
まあすでに破っちゃってるかもしんないけど、
今度は何があっても俺がミコトちゃんを守るよ。」
「ありがとうございます。」
「いや、お礼をいうのはたぶん俺の方だ。ありがとな。」
全ての話を聞き終えた上条は
戦闘のダメージから、地面に倒れた。
戦闘のダメージから、地面に倒れた。
■41レス目 最後のやりとり
目を覚ますと上条は病院のベットにいた。
どうやら昔よくお世話になった蛙顔のいる病院のようだ。
どうやら昔よくお世話になった蛙顔のいる病院のようだ。
「やっーと目―覚ましたわね。」
「ああ、御坂かー。ってお前、怪我はいいんかよ?」
「あーあの程度のこと美琴様にとっては、カに刺されたもんよー」
「・・・。」
上条は少女の脇腹をツンツンついてみる
上条は少女の脇腹をツンツンついてみる
「いっ。何すんのよこの馬鹿!!」
「わー!御坂さん、病室でビリビリはまずいですって!」
「セクハラしてんじゃないわよまったくー。」
「御坂、マジでありがとな。本当に感謝してる。」
「な、な、何よあらたまって。いいってことよ。
ま、まあ、アンタが困った時はいつでもこの美琴様が助けてあげるんだから、
今の内にたくさん感謝しときなさい!」
ま、まあ、アンタが困った時はいつでもこの美琴様が助けてあげるんだから、
今の内にたくさん感謝しときなさい!」
「なんだそりゃー」
上条は笑っている。少女も笑っている。
上条は笑っている。少女も笑っている。
少女が病室から出て行ったのを確認して、上条は呟いた。
・・・
「本当にありがとな、御坂妹」
「本当にありがとな、御坂妹」
■42~決断
上条は、遊園地に行った時、少女のカバンの中に、
御坂妹にあげたハズのネックレスが入っているのを見ていた。
さらに、少女の告白に違和感を覚えていたのだ。
(まるで、誰かの気持ちを代弁しているような風だった。
仮に美琴なら、思いを伝えるならば、納得いく説明まで求めたはずだ。
途中で言葉をさえぎることはしない。)
上条は、遊園地に行った時、少女のカバンの中に、
御坂妹にあげたハズのネックレスが入っているのを見ていた。
さらに、少女の告白に違和感を覚えていたのだ。
(まるで、誰かの気持ちを代弁しているような風だった。
仮に美琴なら、思いを伝えるならば、納得いく説明まで求めたはずだ。
途中で言葉をさえぎることはしない。)
美琴は、先の戦争で御坂妹をかばって死んでいた。
御坂妹は、生まれて初めて泣いた。
皮肉なことに美琴の死によって、
御坂妹の感情はより人間らしいものになっていった。
御坂妹はかつて、美琴が自分を守ってくれたように、
自分も誰かを守れるように、強くなろうと決めた。
そして、レベル5にまでなったのだ。
御坂妹は、生まれて初めて泣いた。
皮肉なことに美琴の死によって、
御坂妹の感情はより人間らしいものになっていった。
御坂妹はかつて、美琴が自分を守ってくれたように、
自分も誰かを守れるように、強くなろうと決めた。
そして、レベル5にまでなったのだ。
御坂妹の瞳に写った迷い。あれは、美琴を演じるべきかどうか
ということから生じたものだ。。
かえって上条を傷つける結果になることもあるかももしれない。
しかし、やはり上条に、悲しい思いをさせたくはなかった。
かつて自分を救ってくれた、美琴と同じ位大切な人に。
御坂妹はその一心で美琴を演じた。
上条がかつて記憶があるかのごとく演じたように。
そして、あの告白は、美琴が、上条がロシアに渡った後に自分にもらした事を、
伝えたものだった。
なぜそんなことをしたのかは分からなかったが、
そうするべきだと、御坂妹は思ったのだ。
ということから生じたものだ。。
かえって上条を傷つける結果になることもあるかももしれない。
しかし、やはり上条に、悲しい思いをさせたくはなかった。
かつて自分を救ってくれた、美琴と同じ位大切な人に。
御坂妹はその一心で美琴を演じた。
上条がかつて記憶があるかのごとく演じたように。
そして、あの告白は、美琴が、上条がロシアに渡った後に自分にもらした事を、
伝えたものだった。
なぜそんなことをしたのかは分からなかったが、
そうするべきだと、御坂妹は思ったのだ。
「ふふ、お姉様って本当に素直じゃなかったんですね。」
御坂妹はそう一人事を呟いて、笑った。
もう美琴の真似事をすることはないだろう、そんな予感がした。
御坂妹はそう一人事を呟いて、笑った。
もう美琴の真似事をすることはないだろう、そんな予感がした。
今日も空は青い。人の事情などお構いなしといわんばかりに。
FINE