とある三月の雛あそび
「あ、あのっ」
人影が少ないランベス区のある通りに、声が響く。
声をかけられた人物、赤く染めた長髪の神父が振り向くと、わりと小柄な女性がそこに立っていた。
二重まぶたが印象的な、なかなか可愛らしい少女である。
声をかけられた人物、赤く染めた長髪の神父が振り向くと、わりと小柄な女性がそこに立っていた。
二重まぶたが印象的な、なかなか可愛らしい少女である。
「何か?」
神父が咥え煙草を揺らしながら答えると、
「とっ、突然すいません! あのっ、ステイル=マグヌスさんですよねっ!」
緊張した面持ちで少女が言う。
その、名前。
少女の語る言葉に対し、目を細めながら口を開く。
「失礼だが、人違いでは?」
無論、瞬時に発動できるよう術式は待機させたまま、さり気なく袖口のルーンのカードに手をやって答える。
「あっ、すっ、すいません! わたし、天草式にいる者ですっ!」
ステイルと呼ばれた男の様子に気づいた少女が慌てて自分の身を明かす。
それを聞いたステイルは緊張をやや緩めながらそれでも訝しげに問う。
「何か御用が?」
己が属する『必要悪の教会(ネセサリウス)』の傘下にあるとはいえ、微妙な関係にある天草式のメンバーとは、
それほど交流がある訳では無い。
それでも、英国紳士の一員としてレディに対する最低限の礼儀は弁えるようにする。
「こっ、これをっ」
そんな彼に対して、少女はポケットから小さな包みを取り出すとおずおずと差し出した。
「………」
差し出されたそれを前に、ステイルの動きがしばし固まる。
ややあって、
「いや、その、ぼくは、こういうことは……」
しどろもどろな答えをするステイルに対して、少女が慌てて語る。
「あ、いえっ、これ、あなたにじゃなくてですね……」
言われたステイル、内心では安心したのかがっかりしたのか複雑な気分だが、そこはそれ、英国紳士の一
員として接する。
「学園都市に行かれるって聞いたので、これを届けて欲しいんです」
「………」
自分の受けた任務が協力関係にあるとはいえ、外部に漏れていることに対して色々と言いたい事はあるが、
「まあ、いいだろう、どのみちついでだからね」
「ありがとうございます!」
「で、誰に渡せばいいんだい? あと、一応中身の確認をさせて貰ってもいいかな?」
その問いに、少女は顔を赤らめてもじもじしながら答える。
「あ、中身はお守りみたいなものです。届け先は、上条当麻という方に……」
少女の反応と相手の名前を聞いたステイルの胸中に様々な感情が浮かんでくるが、英国紳士の(以下略)
「分かった中身の確認はもう結構だこれは確実に彼に届けようああ中身が何であろうと構いはしないさむしろ
僕としては奴が日頃の振舞いを思い返すようなものだといい位だがね」
言うと素早く少女から包みを受け取ると返答も待たずに立ち去っていく。
………いや、英国紳士として振舞えてませんよステイルさん?
神父が咥え煙草を揺らしながら答えると、
「とっ、突然すいません! あのっ、ステイル=マグヌスさんですよねっ!」
緊張した面持ちで少女が言う。
その、名前。
少女の語る言葉に対し、目を細めながら口を開く。
「失礼だが、人違いでは?」
無論、瞬時に発動できるよう術式は待機させたまま、さり気なく袖口のルーンのカードに手をやって答える。
「あっ、すっ、すいません! わたし、天草式にいる者ですっ!」
ステイルと呼ばれた男の様子に気づいた少女が慌てて自分の身を明かす。
それを聞いたステイルは緊張をやや緩めながらそれでも訝しげに問う。
「何か御用が?」
己が属する『必要悪の教会(ネセサリウス)』の傘下にあるとはいえ、微妙な関係にある天草式のメンバーとは、
それほど交流がある訳では無い。
それでも、英国紳士の一員としてレディに対する最低限の礼儀は弁えるようにする。
「こっ、これをっ」
そんな彼に対して、少女はポケットから小さな包みを取り出すとおずおずと差し出した。
「………」
差し出されたそれを前に、ステイルの動きがしばし固まる。
ややあって、
「いや、その、ぼくは、こういうことは……」
しどろもどろな答えをするステイルに対して、少女が慌てて語る。
「あ、いえっ、これ、あなたにじゃなくてですね……」
言われたステイル、内心では安心したのかがっかりしたのか複雑な気分だが、そこはそれ、英国紳士の一
員として接する。
「学園都市に行かれるって聞いたので、これを届けて欲しいんです」
「………」
自分の受けた任務が協力関係にあるとはいえ、外部に漏れていることに対して色々と言いたい事はあるが、
「まあ、いいだろう、どのみちついでだからね」
「ありがとうございます!」
「で、誰に渡せばいいんだい? あと、一応中身の確認をさせて貰ってもいいかな?」
その問いに、少女は顔を赤らめてもじもじしながら答える。
「あ、中身はお守りみたいなものです。届け先は、上条当麻という方に……」
少女の反応と相手の名前を聞いたステイルの胸中に様々な感情が浮かんでくるが、英国紳士の(以下略)
「分かった中身の確認はもう結構だこれは確実に彼に届けようああ中身が何であろうと構いはしないさむしろ
僕としては奴が日頃の振舞いを思い返すようなものだといい位だがね」
言うと素早く少女から包みを受け取ると返答も待たずに立ち去っていく。
………いや、英国紳士として振舞えてませんよステイルさん?
預かった包みを懐にしまいながら歩いていると、後ろのほうで『どうでしたか五和?』『彼はちゃんと届けてく
れるんでしょうか?』『まあ後は無事に受け取ってもらえればいいだけですし』『チョコのときは芳しくなかったで
すがこれはあくまで保険ですしね』『いやいやこんなまどろっこしいことをしていないでもっと直接的にいくべき
では?』などという声が聞こえてくるような気もしたがまあ気のせいだろう。
れるんでしょうか?』『まあ後は無事に受け取ってもらえればいいだけですし』『チョコのときは芳しくなかったで
すがこれはあくまで保険ですしね』『いやいやこんなまどろっこしいことをしていないでもっと直接的にいくべき
では?』などという声が聞こえてくるような気もしたがまあ気のせいだろう。
そう、自分はあくまで英国紳士として振舞うだけである。
預かった荷物は確かに学園都市にいる少年に届けよう。
まあ、その後で炎剣の一本や二本くらいは叩き込まないとこの気分は収まらないだろうが。
「ふ、ふふふ、待っていろよ上条当麻。学園都市に行く楽しみが一つ増えた気分だよ」
昏い笑みを浮かべながらステイルは空港への道を歩いていく。
預かった荷物は確かに学園都市にいる少年に届けよう。
まあ、その後で炎剣の一本や二本くらいは叩き込まないとこの気分は収まらないだろうが。
「ふ、ふふふ、待っていろよ上条当麻。学園都市に行く楽しみが一つ増えた気分だよ」
昏い笑みを浮かべながらステイルは空港への道を歩いていく。
まあ、その後学園都市に降り立ったステイルが上条に対して渾身の力で炎剣を叩き込もうとするも、持たさ
れていた包みの中にあった人形(デフォルトにデザインされた上条に似たもの)が突如上条への攻撃を全て防
ぎ、しかし驚くステイルの前でその人形に右手で触れたために人形に掛けられていた厄災除けの効果が消え
去り、ステイルからの攻撃は自分には届かないとたかをくくっていた上条が『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』に追
いかけ回される羽目に合ったりするのは別の話しであるとか無いとか。
れていた包みの中にあった人形(デフォルトにデザインされた上条に似たもの)が突如上条への攻撃を全て防
ぎ、しかし驚くステイルの前でその人形に右手で触れたために人形に掛けられていた厄災除けの効果が消え
去り、ステイルからの攻撃は自分には届かないとたかをくくっていた上条が『魔女狩りの王(イノケンテイウス)』に追
いかけ回される羽目に合ったりするのは別の話しであるとか無いとか。