とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

一日目

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匿名ユーザー

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「あー、だりー。畜生、あのゴリラめぇ……」
 もう夏は終わるころだというのに太陽に照りつけられてくたくたの上条は涼しいスーパーへと足を運んでいた。
 学校帰りに呼び止められて二時間説教を喰らった。しかも理由はちょっと授業でボーっとして、話を聞いていなかったことがばれたから。
 だからと言って二時間も立ちっぱなしで説教、ありえない。
 ふと、後ろから少女の声が聞こえてきた。
『おにーちゃぁああんっ!』
 だれか、兄妹がいるらしい。まぁ勝手にやってくれ、だ。上条は振り返らなかった。
 上条は今、今日の夕食の献立だけを考えていたいのだ。手抜きだとインデックスが噛みついてくる。
 それにしても、あの噛みつきは、淑女(レディー)としていかがなものだろうか。
 とぼとぼと歩いているともう一度、あの可愛らしい少女の声が、しかも明らかに上条当麻に向かって放たれた。
「おにーちゃんってば! ……とうまっ!」
「……ぇ、えーっ?」
 振り返ると真っ白いワンピースを着た自分と変わらないぐらいの歳の少女が。
 いやいやいや、お兄ちゃんと呼ばれる心当たりは無い。
 では、彼女は、昔の『上条当麻』の、知り合い? でも、妹はいないのだと思って――。
「……乙姫…………?」
 夏に会った年下のいとこの名前が浮かんで、即座にそれを打ち消す。
 いや、彼女はこんなところへ来ているはずない。なんていったって此処は学園都市。従妹は学園都市へは来ていないはず。
 でも、他にお兄ちゃんと呼ばれた事なんてない。心当たりはゼロなのだが……。
(じゃあ、こいつは?)
「へ? 当麻、それはいとこでしょーが。私のこと忘れたの?」
 戸惑ったように言う少女。お兄ちゃん、とはふざけて言ったようだった。
 でも、はっきり言って困惑したのは上条だ。全く、こいつは誰だ。
 見覚えの無い顔。鴉のように黒い髪と瞳に雪よりも白い肌、はっきりした目鼻立ちの顔。
 全くもって覚えがない。
「私は、お兄ちゃん……当麻の義理の妹――つまり、上条天花よ?」
 一瞬、上条の思考が真っ白になった。
「…………、はいィィィィィイイイイイイッッ!!!???」
 何拍か後、情けない悲鳴がご近所に響きわたったのであった。



「全くもう、当麻ったら。あ、インデックスちゃんこれあげるよ」
「ひったいふぉうまひょほういうはんへーなの?(一体とうまとどういう関係なの?)」
「口に物を入れたまま喋っちゃ駄目。うん、同い年の義妹ってとこ。会うのは五年ぶりだから当麻が分かんなくてもしょうがないか。その肉私が作ったけど、おいしい?」
「うん! こんなお料理が食べれるなら毎日でもつくってほしいかも!」
 妹と姉のように見える。もしかして、インデックスと気が合わなかったらどうしよう、と上条は思っていたのだが、心配するだけ無駄だったようだ。
「へへへ、家爆破されて行く当てないからそうさせていただけるとありがたいなぁ……」
「……ああわかったよ! 天花、お前はインデックスと寝ろ!」
「えー? お兄ちゃんてばそういう趣味だったのぉ? やだぁ、へ・ん・た・い☆」
「だぁあああっ違うっ! ホントに行く当てないのか?」
 家を爆破されたって何があった、と訊いても謎めいた笑みを浮かべるばかりのついさっき発覚した義妹。
 転校届を出して、今日から当麻の学校に居座るそうだ。
 天花は、穏やかに微笑むと頷いた。
「うん。ないよ、当麻。だから、当麻に会いに来たんだもの」
「……よく覚えてたな」
 天花によると、身寄りの無かった天花を、上条の両親が引き取って、しかしすぐに当麻と一緒に学園都市行きを希望し、しかし当麻と違う学校でそれなりの力を身につけたのだが、色々あって家を爆破されたとか。
「ふふ、覚えてるよお兄ちゃん。じゃ、洗いものしておく。一週間だからさ、お願い」
「何で一週間なんだ?」
「ヒミツ。ね」
 上条は溜息をつくと了承した。
 インデックスの頭を撫でて、洗いものの仕方を教えている天花は、とても楽しそうに見えた。
 インデックスも天花の説明が分かりやすいのか、頑張って洗い始めている。
 ……決して、彼女を調教してくれそうだから許可したわけではない。家がないから許可したのであって、噛みつき癖を消してくれればとか思っていない。
「お兄ちゃん、明日の朝ごはんとお弁当、私が作るからね?」
「あー……いや、わりいし」
「お、お料理は好きなの! それに、宿借りるんだし、ね」
 もはや頼み込むような恰好の天花に気圧されて頷く。
 するとぱっと明るい笑顔になった。
「インデックスちゃん、お料理覚えといて損は無いよ? 明日一緒に作ってみない?」
「私は食べるの専門かも」
「でもね、自分で作った料理ってすっごく美味しいよ? あ、作ってくれたら一つお菓子作って――」
「やるっ!」
 上条は二人のやり取りに少し苦笑した。

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