となりのとうまさん
「ふーむ……どうしましょう」
いや、別にタバコを切らしたからといってわざわざ家に戻る様な事は教師としてあんまり望ましくないという事は分かる、分かっているのだが……
身長135cm見た感じ12歳の小学生にしか見えない高校生教師、月詠小萌は道端に寄せた特注の小さな車の中で小さな悩みに頭を抱えていた。
いや、別にタバコを切らしたからといってわざわざ家に戻る様な事は教師としてあんまり望ましくないという事は分かる、分かっているのだが……
身長135cm見た感じ12歳の小学生にしか見えない高校生教師、月詠小萌は道端に寄せた特注の小さな車の中で小さな悩みに頭を抱えていた。
家にあるタバコはあと僅か、しかし今からアパートに戻るとなると始業時間ギリギリになってしまう。ベルと同時に教室に滑り込むなどというどこかの男子生徒のような真似はしたくないのだが、全力で戻り、教室前で息を整えれば何とか…………
そんな事を悩んでいる時点で教師としてどうかとは思うが、同僚から「山盛り灰皿」の名を付けられ、自身もそれを認めている(不名誉な称号だと言う自覚はあるが)小萌にとっては重要なことだった。
「う~~~~~~~~~~」
コンコン
「え?」
コンコン
「え?」
車のドアをノックする音がして外を見ると、学生服を着た高校生くらいの女の子が少し膨らんだ学生カバンを両手に持ってそこに立っていた。
「えっとあの~何か御用なのですか?」
「タバコの販売店ならここから2つ目の信号を右に曲がってすぐの角を左に曲がったところにありますよ、しかも自販機より20円お得。」
「!?ほ、本当ですか!!あ、ありがとうございますどこかの誰かちゃん!!」
「タバコの販売店ならここから2つ目の信号を右に曲がってすぐの角を左に曲がったところにありますよ、しかも自販機より20円お得。」
「!?ほ、本当ですか!!あ、ありがとうございますどこかの誰かちゃん!!」
それからすぐに教えられた販売店でタバコをゲットし、授業にも間に合った小萌だが、それからすぐに気づくことになる。
何であの女子生徒は自分がタバコのことで困っていると知っていたのか、そして…………
「なんで私がすでに成人していると分かったんでしょうか…………?」
「ってな事が昨日あった訳ですよ!イヤー学園都市もまだまだ捨てたもんじゃないですなー、あんな良い人がいるなんて上条さんは感激してしまったわけd」
上条当麻が最後まで言葉を紡ぐ前に右後に立っている金髪サングラスパイ、土御門元春と、左後に立っている超守備範囲、青髪ピアスに両側からグーで思いっきりどつかれた。
後頭部がミシミシと音を上げる。
後頭部がミシミシと音を上げる。
「な、何してくれやがりますがこのお二方は~!!」
くわんくわん、と頭を振りながら質問を放つ上条だったが、それに対して土御門は、サングラスの奥にある瞳をギラリと輝かせると、
くわんくわん、と頭を振りながら質問を放つ上条だったが、それに対して土御門は、サングラスの奥にある瞳をギラリと輝かせると、
「いやべつに~、ただなにげなく手が勝手に動いてしまっただけだにゃ~」
「そうそう、なにげな~く反応してしまったもんやから許されるやろ?」
「許されてたまるか!どういう理屈だそれ!!」
上条は右手を硬く握ると、意味不明な言葉をはく馬鹿どもに突っ込んでいった。
「そうそう、なにげな~く反応してしまったもんやから許されるやろ?」
「許されてたまるか!どういう理屈だそれ!!」
上条は右手を硬く握ると、意味不明な言葉をはく馬鹿どもに突っ込んでいった。
ボカボカポカポカーッ!!とギャグ漫画の様に大乱闘になる教室の一角、時刻は朝、授業開始5分前。その乱闘の真横にいながら、毎回毎回同じようなことで怒っても疲れるだけ、と自分自身に言い聞かせ、授業の準備を始める鉄壁の女こと吹寄制理の目は少し赤みがかっていた。
口元からは外に出ようとする欠伸を必死になって飲み込んでいるのが伺える。
口元からは外に出ようとする欠伸を必死になって飲み込んでいるのが伺える。
昨日、突如襲ってきた眠気に負け、昼寝をしてしまったのがそもそもいけなかった。ちょうど宿題が終わり、注意力がかけていたのだろう。
目が覚めると時刻はすでに夜の11時を回り、辺りは闇と化していた。
目が覚めると時刻はすでに夜の11時を回り、辺りは闇と化していた。
1度でもこの状態を経験した人なら分かるだろう。このパターンに嵌ってしまうともうどう足掻いても寝られない。
努力はしたつもりだった、おなかの空腹感を満たし、眠気を誘ってみたり(取りあえずお腹が空いていた)
寝る前に飲むと最適という事でレモンティーを飲んでみたり(あとでミルクティーの間違いだったと気づいた)
以前セールをやっていたという本屋でちょっと背伸びして買った結構高度な哲学書を読んでみたり(余計に目が冴えた)
寝る前に飲むと最適という事でレモンティーを飲んでみたり(あとでミルクティーの間違いだったと気づいた)
以前セールをやっていたという本屋でちょっと背伸びして買った結構高度な哲学書を読んでみたり(余計に目が冴えた)
だが一番の敗因は『限定!今しかお届けできない超最新鋭商品大放出スペシャル!!』とかいう通販番組を見てしまった事だろう。
すぐに消すつもりだったのだが、あと少し、あともう少し…………と、気が付けば結局最後まで見てしまった。(気になる商品はキッチリメモした)
すぐに消すつもりだったのだが、あと少し、あともう少し…………と、気が付けば結局最後まで見てしまった。(気になる商品はキッチリメモした)
結果、朝を迎え今まさに心地よい眠気が襲ってきた所なのだ。
(ね、眠い……けどこうなる事が読めていたのが幸いね)
吹寄は机の横に引っ掛けてあるカバンの中から「生命の力WX」というラベルが貼られているなんとも怪しげな栄養ドリンクっぽいビンを取り出す。
吹寄は机の横に引っ掛けてあるカバンの中から「生命の力WX」というラベルが貼られているなんとも怪しげな栄養ドリンクっぽいビンを取り出す。
以前通販で買って以来、この少し怪しげな栄養ドリンクに吹寄ははまっていた。
「生命の力WX」は栄養ドリンクにしては珍しく少し辛いのが特徴で、飲むと少量の炭酸と共に辛味が口の中で弾ける。ようは一気に目が覚めるのだ。
「生命の力WX」は栄養ドリンクにしては珍しく少し辛いのが特徴で、飲むと少量の炭酸と共に辛味が口の中で弾ける。ようは一気に目が覚めるのだ。
ビンの蓋をねじ開け、口元に運ぶ。これである程度持つだろう、という期待をこめて…………
結果的に吹寄の眠気は吹っ飛んでいった、それが「本人の意図もしない方法」だったとしても。
結果的に吹寄の眠気は吹っ飛んでいった、それが「本人の意図もしない方法」だったとしても。
飲料を口に運ぼうとしたまさにその瞬間、真横で乱闘している馬鹿3人の方向から、場外にはじき出された上条の筆箱が飛んできて栄養ドリンクに直撃した。
そしてそのまま栄養ドリンク入りのビンはクルクルと空中を回り
ビシャアッ!!という音と共に吹寄の前頭部に降り掛かる。目に入った、痛い。
ビシャアッ!!という音と共に吹寄の前頭部に降り掛かる。目に入った、痛い。
「……………………」
無言でスッ、と席を立つと、コツコツと3人の方へ歩み寄ってゆく。その状況を見ていた生徒曰く「潜在的な恐怖を感じ、一歩も動けなかった」そうだ。
3人の中で1番最初に吹寄に気づいた土御門が「うっひゃ~~!!」と喜声を上げると、青髪も「うっひょ~~~!!」と嬉しい悲鳴を上げる。
前頭部に掛かった栄養ドリンクは頭部だけではなく、吹寄の胸のあたりまで滴っていたため、ブラと胸が透けて見えていたのだ。
この時、吹寄から漂うオーラを感じ取ることが出来ていたならこんな声を上げることは無かっただろう。
この時、吹寄から漂うオーラを感じ取ることが出来ていたならこんな声を上げることは無かっただろう。
最後に上条が
「ちょっ、どうしたんですか吹寄さん!頭はびしょ濡れだし胸の辺りが透けてますよ!?おまけに涙まで流して…………なんか悩みがあるんなら聞くぜ?」
「ちょっ、どうしたんですか吹寄さん!頭はびしょ濡れだし胸の辺りが透けてますよ!?おまけに涙まで流して…………なんか悩みがあるんなら聞くぜ?」
言い終わった瞬間、上条、土御門、青髪ピアスの三名はリアクションをする間もなくブッ飛ばされる事となる。