とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 7-669

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匿名ユーザー

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激しい討論が終った頃には、既に日が沈みかけ夕暮れとなっていた。雷電は、取りあえず当麻をバイクで寮まで送っていた。

「明日は、どうするんだ?」
「俺は、また補修だ…」
「毎日毎日、熱心だな」
「やりたくてやってるわけじゃねぇよ…」
「そうだ…実はちょっと悩みがあってよ」
「…興味ないけど…なんだよ」
「いやさ…敵を倒すときの何かいい台詞ないかな?」
「自分で考えろ」

ホントに興味がないのであろう、当麻は、即座に返事をした。

「そう言うなって…いや昨日映画見て考えたんだが…『地獄で会おうぜ…ベイビー』ってかっこよくねぇ?」
「………2だな…俺も大好きだ…最後の熔鉱炉に降りていくとこなんて、俺泣いたもん」

などと重要な?話をしていると、当麻の学生寮の前に着いた、バイクを止めると当麻がサイドカーから降りて尋ねた。

「お前は、どうすんだ?」
「ん~明日は、ちょっと忙しいな」
「仕事か?」
「いや…調べもの」
「そうか…」
「……なんだ?寂しいか?」
「別に…ただ…なんか最近忙しそうだなって思って」

当麻の問いに曖昧に答える雷電を妙に思っていたが、雷電の方から話を変えてきた。

「お前の方こそ忙しいだろ……同棲は…」

ニヤニヤした顔で言ってくる雷電に、当麻は、少しあきれていた。

「忙しいっていうか…大変だよ…色々と…特に頭にくると人の頭を噛み付いてくる…あの癖には」
「噛み付くのが癖かっ!?…そりゃ大変だなぁ!」

お気楽な感じに言ってくるが、実際に噛み付かれている当麻自信からしてみたら、深刻な問題である。

「結構深刻なんだぞ…まったく…なんであんなに噛み付かれないといけないんだか…理不尽だよ…」
「ふっ……いいか当麻…女の理不尽の付き合うのが男の務めだ」
「…別にうまくねぇぞ…」

それを聞くと雷電は、プッと吹いてしまった。何がツボに入ったのか分からない当麻は、なんだぁ?っといった顔をしている。

「はははっ…いや…すまん……やっぱりお前はお前だと思ってな…」

なぜそのような結論になったのか当麻は理解できなったが、ただ、「お前はお前だな」と言う台詞がうれしかった。
そして、笑いながら、じゃあ…またな、と言って雷電と分かれた。当麻が寮のエレベーターのボタンを押した頃に、
バイクのエンジン音が聞こえて雷電が帰っていったのが分かった。


自分が住むマンションに帰った雷電は、ダイニングのソファーで厚い本を足にのせてペラペラとめくりながら読んでいると
何時もと同じように、珠理が風呂上りで濡れた髪の毛を拭きながら部屋に入ってきた。
普段雷電は、本を読まない訳ではないが、読むものは、大抵漫画や週刊誌などで厚い辞書のようなものを開く姿は珍しかった。

「何読んでのよ?」
「んっ?あぁ…ワリ、借りてる」

雷電が持っているのは、脳科学に関する本であった。

「脳…科学?そんなもの読んで…医者にでもなりたいの?」
「いや…今日旦那のとこに行ってな…当麻の脳について聞いたんだが…」
「当麻がどうかしたの?」
「いや…どうやら危機的状況の時に異常なまでに脳が発達するらしい、特に記憶力がだ…だからちょっと気になってな」
「ふーん、でもわざわざ本を読むのは珍しいわね…医学関係っていうか人体に関する構造は、もう一通り理解してるでしょ?」
「あぁ…別に深い意味はねぇが…」

それだけ聞いて、珠理は部屋から出て行こうとしたが、

「なぁ…珠理」
「何?」
「ここに書いてある、記憶を保管する器官があるだろ…これが、もしぶっ壊れたら…記憶喪失ってやつになるんだろ?」
「えぇ…まぁ記憶喪失の原因になるのは、それだけじゃないけど…」
「じゃあ…もしこの器官が壊れて記憶を失ったら…もとに戻せるのか?」
「……ハッキリ言って…不可能よ」

珠理の回答にピクリと肩を動かしたが珠理は、続けた。

「記憶ってものは、正直言ってまったく解明されていないわ…それを蓄えるであろう脳の器官は分かっても、記憶って物がどのような物で
 どうやって蓄えられているかは…よく分かっていない……だからその器官が完璧に壊れたら…もう取り戻せない」
「もしも…その器官を何とか治してもか?」
「簡単に言うと…その器官は金庫の様な物よ,記憶が財宝としたら…金庫を丸ごと消滅させたら一緒に中身も消える…
 つまり、財宝を失った後に中身のなくなった金庫を直すようなものよ」
「…例え、治しても……中身は空っぽ…か?」
「そう言う事…もしも完璧に治したいなら…それこそ時間を遡るぐらいの事しないと」
「…そうか」
「ちゃんと戻しといてよ…」

部屋から出て行く珠理に、オウっと返事をして、もう一度本を読み始めた。

「……………本当に…誰も救えないな……俺は…」


朝、と言ってもまだ日が昇る前に雷電は出かけた。行き先は、とある病院であった、普通なら急病人でもない限り、
そこの医師には、会えないが雷電は、そこの医師と知り合いでよっぽど忙しくない限り、時間を作って会ってくれるのであった。
さらに、それが今も尚、彼の患者であれば尚更だろう。診察が終わり、白の半袖のTシャツを着ようとする雷電に、
雷電のカルテらしきものを見ながら、カエル顔の医者が話しかける。

「調子はどうだい?」
「あんたになら答える必要はないだろ…」
「直接意見を聞きたいのさ…」
「……最悪だ…」
「…そうかい………もう命を削るのやめてはくれないかい?」
「まだまだ…止めるわけには、いかんな……やるべき事をやり終えるまでは……それに…別に命は惜しくねぇ何度捨てた命だ…」
「君は、ぼくの職業を知っているだろう?せめて僕の前に居るときだけは…そんな事言わないで欲しいね」

何やら説教でもされそうな雰囲気だったので、雷電は、さっさと出て行こうとしたが、

「君には伝えておこうかな…」

カエル顔の医者の台詞にドアノブを握る手の力が緩んだ。

「木山春生を保釈させた」
「なに!?」

ドアノブを放して、カエル顔の医者の顔を見た。驚くのも無理はない、木山が捕まってから、まだ、あまり時間が経っていない。

「どういう風の吹きまわしだ?」
「頼まれてね…それに、子供達を目覚めさせるには彼女の協力が要るしね」
「まったく…人が良すぎだ…あんたは」

頭を掻きながらあきれていると、スッと雷電に何やらA4サイズの紙が入りそうな、茶封筒を渡してきた。
なんだ?と質問しながら封筒を開けて中から何枚かの紙を出した。

「君に渡すべきか迷ったんだが…」
「これは…木山が参加した暴走能力の実験データ?」
「あぁ…子供達を救うために彼女に頼んで、知っている限りのデータをまとめてもらったんだよ」
「…これがなんだ?」
「君はコレについてどこまで知っている?」
「あぁ?いや別に…実験が失敗に終ったって事ぐらいしか…」
「……最後の実験参加者のリスト見てみるんだ…それですべて分かる」
「んんー?」

何か分からない雷電であったが書類の束一番下にあった。参加者リストを見て、目を見開いた。
そして、その中で知り合いである木山以外の人物の名前を口にした。

「実験…主導者……木原………幻生!!」

最後の名前を言う時は、ほとんど叫びに近かった。雷電は、書類に後が残るほど力を込めて握り締めた。
そんな雷電と違い落ち着いた様子でカエル顔の医師は話す。

「それで僕は全てを悟ったよ…」
「あの蛆虫が!!……まだ研究に!?」
「あぁ…今は、行方不明だけどね…死んだという噂もあるよ」

歯をぎりぎりと鳴らし怒りをあらわにしながら、雷電は、なんとか落ち着こうと努力していた。

「………木山の話を聞きたい…どこに居る?」
「今出かけてるよ…彼女の行方を追っている連中がいるから、おそらくは身を潜めてると思うけど」
「ちっ!……どうすればいい?」
「彼女の連絡先は知らないから直接会うしかない…彼女は今日ある場所に潜入する…ある物データを手に入れるため…」


『先進教育局』そこは、かつて木山が勤めていた場所でもあり、
置き去りの子供達を使った『暴走能力の法則解析用誘爆実験』が行われた場所でもあった。
しかし、今は誰もそこに勤めておらず建物は廃墟当然で電気もきていない。電気がきていないので夜は暗く、まともに歩く事は出来ない。
そんな中、木山春生は懐中電灯を使い歩いていた。かつて自分が勤めて、愛する教え子達の意識を奪う実験を行った憎むべき施設の廊下をゆっくりと
いろいろな部屋を回って、何かデータや手がかりとなるものがないか調べていたが、ほとんどの物は持ち出され目当ての物は何一つ残っていなかった。

「ここもだめか」

保釈を手伝ってくれたカエル顔の医者に報告して引き上げようかと考えていると、

「よお…」

と男の声がした。声のする部屋の出口のあたりを見ると、そこには、つい最近殺し合いをしたばかりの知り合いである銀髪の男が立っていた。

「出所おめでとう…」
「………そんな事を言うためにわざわざ来た訳ではないだろう?…」
「あぁ」
「『ポルターガイスト』の件で私を止めに来たか?」
「……そんな事はどうだっていい…」
「なに?」
「俺が聞きたいのは……木原幻生についてだ…」
「木原…だと?…なぜあいつを?」
「どこに居る…」
「…どこって?死んだんじゃ?」
「………死んじゃいねぇよ…あいつは…」

どうも、雷電の目的がいまいち掴めない木原は質問された事に唖然とした。しばらく、会話がなかったが、

「じゃあ、質問を変える…最後にあったのは?」
「……実験が失敗して、あの子達を救うために『樹形図の設計者』を使う許可を貰い行った時…1年ほど前だ…」
「…失敗じゃねぇだろ」
「えっ!?」
「あの実験は…必然的に起こったものだろ…」
「お前……」
「分かるさ…あいつがやった事ならな…」

そう言うと木山に背を向けて暗い廊下へと出て行った。木山はすぐに雷電の後を追って、今度は木山の方から質問した。

「なぜだ!?なぜあの男を!?」

雷電はピタリと止まって、振り返らずに言った。

「あの男は…必ず殺す……俺の手で…」

暗い上に木山の方を向いて喋っていないので顔を見る事は出来ないが、その声は明らかに、怒りで満ちていた。

「何か関係があるのか?お前が所属してたレベル5の部隊の3人が死んだ事と?」
「……死んだんじゃねぇ…殺されたんだ…あの男に」
「何!?どういう…」
「俺たち以外にもお客さんいるらしいぜ」

急に教えられた情報に驚いてあたりを見回してみるが特に誰もいなくもう一度雷電の方を向いたが、既に彼はどこかへ行ってしまった後だった。


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