とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 7-704

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匿名ユーザー

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ハロを抱えて、もと来た道を戻っていく当麻は、先ほどのモニターで見た事をずっと考えていた。
地上に出る事のできる階段を上って扉を開けると

「当麻…」

顔を上げると、赤い眼鏡を掛けて、赤い無地のTシャツの上に黒いロングコートを着た女性が立っていた。

「珠理さん…」
「……彼の過去を?」
「………はい」
「……そう…彼は迷ってた…あなたに教えるべきか…何も教えずにいるか」
「…………俺は…雷電に会いたいです」

珠理は黙っていたが自分をまっすぐに見つめてくる当麻の目を見て言った。

「ついて来なさい……彼は、近くにいるわ」

当麻に背を向けて歩き出す珠理に付いていき、彼女の隣に並んだ。珠理は、前を見つめながら、

「『旦那』さんから連絡があった時は…まさかと思ったんだけど」
「……じいさんが?」
「あんたがここにいるって…」
「珠理さんは、雷電の…」
「知ってるわ…何があったか…そして何をしようとしているのか」

2人はそれだけ会話をすると、発電所から出て車にも乗らずに歩き出した。


暫く歩いていくと、発電所から一キロも離れていない、山の麓の所に、なにやら墓石が並ぶ墓地の様な所にでた、第10学区に唯一墓地があるのは知っていたが、
実際に見てみると、普通の日本の墓石もあれば、外国の戦争映画でよく出てくるようなデザインのものもあり、中には十字架の形のものもあった。
どうやら、天下の学園都市は宗教をごっちゃにすることは何の問題もないようだ。だが、神様を信じていないこの街では当たり前の事かもしれない。
墓地は見たところ、当麻が使うバーチャルルームよりもずっと狭く、あたりは雑草もまともにない広い荒野の中にポツンとあり、お寺も教会もないので
誰が管理しているのかまったく分からなかった。

「こっちよ」

言われるがままに墓地を抜けていくと、墓地から離れた所に一つの墓があり、その前に探していた友達が立っていた。
雷電はおそらく此処に来るまでに乗っていたであろうバイクの為の黒い皮のウエアとズボン姿であった。彼は振り返り、当麻を見ると顔をわずかに緩めて言った。

「……よっ」
「あぁ」

2人は久しぶりに会った割りにあまりに冷めた挨拶をした。

「…その墓は?」
「……アリアのものだ…知ってるだろ?」
「お前と同じ部隊いた…隊長だろ」

当麻は先ほど見た情報を的確に伝えた。雷電はまた彼女の墓を見つめた。

「あぁ…本名は知らんがな…俺と同じようにな…この世に存在しない事になっているからな」
「……いい隊長だったんだろ?」
「あぁ…それに…いい女だった…俺の憧れであり、友であり……大切な人だった」
「お前が殺したのか?」
「…………あぁ」
「……どうして!?大切な人だったんだろ!?」
「どこまで知ってるんだ?」
「俺が見た報告書には、ただお前が殺したって…でも俺は信じない!」
「ふっ…そうか……何から言うべきかな」


雷電は、当麻でも墓でもない方を見つめて語りだした。

「今から20年以上前、まだ、学園都市が今ほど発達していなかった頃に、俺は学園都市に連れて来られた、世界中の科学の最先端を目指していた学園都市だが
 今ほど優秀な科学者もいなく、日本で今ほどの立場を築き上げていなかった、が唯一学園都市を支えていたのが超能力の開発だった
 だが、それだけで研究を続けていく事は不可能、そこでまず学園都市がやった事は…能力を使った戦争の請負だ」
「超能力を戦争に利用したのか…」
「あぁ…最初は国の名も知られていない小国の内戦などを引き受けて小金を稼ぎ、さらに実戦の中で能力者達のデータを取ることができ
 中には実戦を続ける事でレベル上げていく奴もいた…能力者達は必死に力を得ようとした…そうしなきゃ、死んじまうからな」
「……連れて来られたってのは?」
「俺は日本で生まれたわけじゃない…生まれて俺はすぐに捨てられた、親の名前も顔も知らずに育った、自分の名前も知らずにな…
 気付けば俺は、俺と同じように親のいない奴らと一緒に売られていた」
「売られる?」
「親がいないから誰も探しはしない、そういう子供達を狙った奴らに捕まった…奴隷商人みたいな奴らだ、日本じゃ考えられないだろうけどな」
「そんなことが…まだ…」
「世界中探せばいくらでもいるさ…そんな奴ら………そして俺はそいつらに売られて学園都市に来た、何歳だっか分からない…
 数を数えるなんてことも知らずに育ったからな、20年と言ったのも、ここに来てから20年ってことだ、正確に俺が何歳で来たのかは分からん…
 連れて来られてすぐに俺は能力開発をする為に脳をあちこちいじられた………俺のように連れて来られた子供達は400~500人
 だが、能力開発に耐えられたのは、68人……そしてすぐに俺は戦場に借り出された」
「能力開発をしてすぐか?」
「あぁ…いくら力があると言っても、所詮は何も知らん子供達、次々と命を落としていった…生き残れたのは偶然だ…俺の力が肉体再生だから、死ななかっただけだ
 怖かったが俺は戦った…死にたくなかったからな……最初のを合わせて戦場にでた回数は4回、そして生き残ったのは、68人のうち、たった5人……
 暫くして…次の奴らが来た」
「次?」
「俺たちと同じように能力開発を受けてすぐの奴らの第2陣が来た…そこでコイツと出会った」

雷電は、ポケットから小さなUSBメモリのようなものを出して当麻に見せた。

「ガイア…メモリ?」
「あぁ今は空だが…実験体B-407…シオンだ」
「シオン?」
「戦場で出会った青い髪の女みたいな顔立ちの男だった、俺と会ったときは、レベル4の『空間移動』だった」
「…そうか、お前が使う『空間移動』は」
「あぁ…コイツのDNAを使っている……」

ガイアメモリは能力者のDNAを使って自分のDNAを書き換える事によって、自分を能力を使える体へと変化させる、雷電が使っているのもコレであり
彼の言うシオンのDNAを打ち込む事で『空間移動』を可能にしているのだ。

「特に会話もなかった…お互いに生き残るのに必死だったからな…第2布陣が来て数が整うと次の戦場に連れて行かれた、そこで第1陣は俺以外は全滅
 53人いた第2陣も3回の戦いでシオン以外全滅…そして第3陣…それの繰り返しだ、数が減ると代わりをよこされて補充する、それの繰り返し」

黙々喋り続ける雷電を当麻はただ黙って見つめていた。雷電はさっきと違うガイアメモリを出した

「第3陣ではコイツだ…実験体C-211…ライト」
「…『光子流動』の能力者か?」
「そうだ、背は俺と同じくらいで髪は茶髪、なかなかのイケメンだったな……シオンとライトのおかげで戦いがかなり楽になった
 だけど、やはり戦場では人が死んでいく第3陣もライトと数名の能力者以外全て死んだ…そして、第4陣が来た
 その4陣でやってきたのが彼女だ…実験体D-001『アリア』だ」


20年前のとある日の思い出

あたりは暗くなって星空と月が見える時間になったいた、風で運ばれてくる空気は火薬と血の臭いで満ちており、それだけでどれほどの事があったのか容易に想像できる。
そんな中、雷電ことディックは、一人で星と月を見ながら座って酒を飲んでいた。おそらくその姿を見れば大抵の人は喋りかけないでくれ的、
空気を出しているのに気付くであろうが、そんな空気を無視して彼の後ろから声がした。

「もぉーまた、こんな所で一人でいる!」

首だけをを反り返し、逆さに見える世界の中で一人の鮮やかな緑色の長い髪の少女を見つめた。

「…またか」

あからさまに嫌そうな顔をするディックに少女はグイグイと近づいてきた。

「はいはいっ!あからさまに嫌そうな顔しない!!戻ってみんなと食事!!」
「いいよ…コレあるから」

持っている酒瓶を見せて、少女の誘いを断った。そして、反っている首を元に戻し、酒を飲み始めた。その姿を見て、フーっとため息を少女はついた。

「…まったく……隣、いい?」
「ダメって言っても座るだろうが…お前は」
「せーかい!」

そう言って、少女は雷電の隣に座った。

「未成年のくせに、お酒なんて飲んじゃダメだよ!」
「言ったろ…俺は何歳分かねぇんだよ」
「同じくらいでしょ?」
「どうだかな?」

少女の意見を無視して、また酒を飲もうとするディックに、少女は彼の手を掴み、酒瓶を取り上げる。

「あっ!?返せよ…」
「だ~めっ!」

取り上げた酒瓶を遠くに投げ捨て、酒瓶がガシャン!という音で割れるのを確認した、ディックは

「あぁぁぁあ!!てめぇ!せっかく、くすねて来たのに!」
「お酒は二十歳になってから!」
「ちっ!はぁーもういいわ」
「よくないっ!…ほらっ帰ろ…」

少女は立ち上がり、右手を差し出したが、ディックはその手を掴まなかった。

「いいよ…俺は…もう少しここにいる」
「だぁぁぁめっ!!せっかく今日も生き残ることが出来たんだから!みんなでお祝い!!」
「お祝いって…昨日もやったろ?」
「確かに昨日もやった、でもっ!…今日、参加できない人もいる」

今日も昨日もその前の日も戦いがあった、そしてまた何人もの若者がその命を落としていった。

「生き残れなかった人のために、生きている私たちはもっと笑顔にならなきゃ…こんな所で一人で俯いてると、死んじゃったみんなに怒られるよ!!」
「はぁー…酒が欲しい」

立ち上がったディックに少女は笑顔になった。

「だめ!未成年はジュース」
「だから歳が分かんねぇんだよ…何時になったら飲んでいいんだ?」
「うーん……そうだなぁ~……じゃあ私が二十歳になったら」
「はぁ?なんでだ?」
「だって…多分同じくらいだし…そうすれば一緒に飲めるようになるでしょ?」
「…3年も待たないといけないのか」

ため息をついていると、仲間がワイワイと騒ぐ隠れ家(うるさくて隠れていない)から2人を呼ぶ声がした。

「ほら…いくよ!ディック!」
「たくっ…引張るなよ…アリア」


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