「ではまず、事の発端、および昨日の戦闘について説明させてもらいます」
機械が、無駄に丁寧な言葉でみなに伝える。
「今回の事件――――今後、反乱事件、と呼ばせてもらいます――――の発端者は、垣根聖督。垣根聖督は、学園都市第2位、垣根帝督…『未現物質(ダークマター)』の父親です。垣根帝督は、『ピンセット』を得るために起こした事件で、学園都市第1位、『一方通行(アクセラレータ)』と遭遇、戦闘を行いました。結果、垣根帝督は敗北。さらに、一方通行(アクセラレータ)による過度な攻撃により、死亡寸前まで追い詰められます。しかし、学園都市統括理事長の指示により、その後脳や心臓、肉片などを回収され、今は3つの容器にそれぞれが収められており、『生存』しています」
会話の途中から出てきた一方通行(アクセラレータ)は、特に表情を変えることなく聞いている。
隣にいる海原…ではなく、アステカの魔術師、だと思われる男や、露出度の高い女子高生などは少し表情を変化させているが、上条には理由が分からない。
「垣根聖督は、どうにかしてその情報を得たらしいのです。そして、ただ単に『生存』しているだけの息子を、元の生活に戻すために今回の『反乱事件』を起こしました」
機械は、「…だと思う」、「…だそうだ」などといった不確定な表現はしなかった。決定事項をただ冷静に報告しているのだ。
「今回の『反乱事件』の目的は、先程述べたとおり、垣根帝督を元に戻すこと。しかし、今の垣根帝督は、学園都市が作った並の核シェルターとは比べ物にならない場所で『生存』しています。そこを突破するためには、相当の戦闘力が必要とされます。ここを単純に『突破』するだけなら、超能力者(レベル5)が一人いれば十分ですが…学園都市は、それを良しとしない。そんな事をすれば自分を潰しにかかるだろう――――そう考えた垣根聖督は、『反乱因子』の作成に取り掛かったのです」
一気に言っていく機械。
「反乱因子、とは?」
そこで、神裂が疑問を口にする。
「まことに申し訳ございませんが、質問はわたしの説明の後、受け付けます。それまでは、お静かに聴いていてください」
やはり無駄に丁寧な言葉で、神裂の質問を跳ね除ける機械。
「では、話を続けさせてもらいます。
先程述べた『反乱因子』は、中途半端な力では学園都市と対立することは出来ません。そして、垣根聖督は垣根帝督の父親であるとともに、学園都市に在住する科学者でもあります」
「へぇ。そりゃァ、結構なレアじゃねェのか?」
一方通行(アクセラレータ)が口を挟んだが、誰にも反応されなかった。
「彼が担当する専攻は、『AIM拡散力場』。もちろん、息子の『未現物質(ダークマター)』のAIM拡散力場も研究対象でした。垣根聖督は、息子の能力だけでなく、様々な能力のAIM拡散力場も研究していました。彼はその研究成果をもとに、人工的に能力者を作り上げていました。これは反乱事件の前からのことです」
「能力者を…人工的に作成、ですって…!?」
美琴が、異様に反応する。似たような遭遇にある彼女だからだろうが、当の『妹達(シスターズ)』は特に反応していなかった。
「反乱事件前に作り上げた能力者は、合計47名。作り上げたものの、無能力者(レベル0)だった者は89名。能力者のうち、低能力者(レベル1)認定者は13名。異能力者(レベル2)判定は18名。9人は強能力者(レベル3)。大能力者(レベル4)は7人作り上げていました。超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)はともに0です。しかし、垣根帝督の敗北に伴い、垣根聖督に一度送られた垣根帝督から、本人のAIM拡散力場を研究に取り入れた垣根聖督は、その研究レベルを格段に増すことに成功。
その後に作られた能力者のレベルも跳ね上がり、強能力者(レベル3)が13人、大能力者(レベル4)が23人、超能力者(レベル5)が8人です」
「…超能力者(レベル5)を、8人も、ねぇ…」
あまり実感が沸かない上条は、とりあえず『凄いな』と思った。
機械が、無駄に丁寧な言葉でみなに伝える。
「今回の事件――――今後、反乱事件、と呼ばせてもらいます――――の発端者は、垣根聖督。垣根聖督は、学園都市第2位、垣根帝督…『未現物質(ダークマター)』の父親です。垣根帝督は、『ピンセット』を得るために起こした事件で、学園都市第1位、『一方通行(アクセラレータ)』と遭遇、戦闘を行いました。結果、垣根帝督は敗北。さらに、一方通行(アクセラレータ)による過度な攻撃により、死亡寸前まで追い詰められます。しかし、学園都市統括理事長の指示により、その後脳や心臓、肉片などを回収され、今は3つの容器にそれぞれが収められており、『生存』しています」
会話の途中から出てきた一方通行(アクセラレータ)は、特に表情を変えることなく聞いている。
隣にいる海原…ではなく、アステカの魔術師、だと思われる男や、露出度の高い女子高生などは少し表情を変化させているが、上条には理由が分からない。
「垣根聖督は、どうにかしてその情報を得たらしいのです。そして、ただ単に『生存』しているだけの息子を、元の生活に戻すために今回の『反乱事件』を起こしました」
機械は、「…だと思う」、「…だそうだ」などといった不確定な表現はしなかった。決定事項をただ冷静に報告しているのだ。
「今回の『反乱事件』の目的は、先程述べたとおり、垣根帝督を元に戻すこと。しかし、今の垣根帝督は、学園都市が作った並の核シェルターとは比べ物にならない場所で『生存』しています。そこを突破するためには、相当の戦闘力が必要とされます。ここを単純に『突破』するだけなら、超能力者(レベル5)が一人いれば十分ですが…学園都市は、それを良しとしない。そんな事をすれば自分を潰しにかかるだろう――――そう考えた垣根聖督は、『反乱因子』の作成に取り掛かったのです」
一気に言っていく機械。
「反乱因子、とは?」
そこで、神裂が疑問を口にする。
「まことに申し訳ございませんが、質問はわたしの説明の後、受け付けます。それまでは、お静かに聴いていてください」
やはり無駄に丁寧な言葉で、神裂の質問を跳ね除ける機械。
「では、話を続けさせてもらいます。
先程述べた『反乱因子』は、中途半端な力では学園都市と対立することは出来ません。そして、垣根聖督は垣根帝督の父親であるとともに、学園都市に在住する科学者でもあります」
「へぇ。そりゃァ、結構なレアじゃねェのか?」
一方通行(アクセラレータ)が口を挟んだが、誰にも反応されなかった。
「彼が担当する専攻は、『AIM拡散力場』。もちろん、息子の『未現物質(ダークマター)』のAIM拡散力場も研究対象でした。垣根聖督は、息子の能力だけでなく、様々な能力のAIM拡散力場も研究していました。彼はその研究成果をもとに、人工的に能力者を作り上げていました。これは反乱事件の前からのことです」
「能力者を…人工的に作成、ですって…!?」
美琴が、異様に反応する。似たような遭遇にある彼女だからだろうが、当の『妹達(シスターズ)』は特に反応していなかった。
「反乱事件前に作り上げた能力者は、合計47名。作り上げたものの、無能力者(レベル0)だった者は89名。能力者のうち、低能力者(レベル1)認定者は13名。異能力者(レベル2)判定は18名。9人は強能力者(レベル3)。大能力者(レベル4)は7人作り上げていました。超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)はともに0です。しかし、垣根帝督の敗北に伴い、垣根聖督に一度送られた垣根帝督から、本人のAIM拡散力場を研究に取り入れた垣根聖督は、その研究レベルを格段に増すことに成功。
その後に作られた能力者のレベルも跳ね上がり、強能力者(レベル3)が13人、大能力者(レベル4)が23人、超能力者(レベル5)が8人です」
「…超能力者(レベル5)を、8人も、ねぇ…」
あまり実感が沸かない上条は、とりあえず『凄いな』と思った。
「はぁっ!!?」
なので上条は、突然響いた大声…いや、もはや叫びに相当驚いた。
その叫びは、高位能力者たちから発せられたものだった。
「って!何をそんなに驚いてんだよ!?」
妙な叫びのせいで、自然と声のトーンが高くなっている上条。
しかし、彼らはそんな上条お構い無しに勝手に話を進めていく。
「そういやァ…どうやって超能力者(レベル5)を8人も用意したのかは気になっていたが…」
一方通行(アクセラレータ)が、机からずり落ちた腕を直し、再び頬杖をつきながら言う。
「まさか…『造る』、なんて方法で用意したなんて…」
美琴は、もはや表情を浮かべていない。彼女の無表情なんて見たことの無かった上条は、少し引いてしまう。
「実際、どのようにして造ったのか、が問題ではなくて?」
割と平静を保っている鏡子が言う。実際は、上条に自分の能力――――心理掌握(メンタルアウト)と、自称百戦錬磨の恋愛テク――――が聞かなかったときのショックが大きすぎたせいで、ショックが緩和されているだけである。
「学園都市第2位のAIM拡散力場…例えそんなものを用いたとしても、超能力者(レベル5)はおろか、大能力者(レベル4)も造り上げることは出来ないと思うが…」
妖夜が、パニックしかけた脳を落ち着かせつつ言った。
「そこら辺は、科学者さんたちにしか理解できない方程式でもあんだろう?」
思いっきり驚いた表情のままなのに、冷静な言葉を投げかける軍覇。結構シュールに見える。
「それでも…超能力者(レベル5)は造れないんじゃ…」
一方通行(アクセラレータ)の隣に座っている、ブレザーな女子高生が無理に冷静を保ちながら言う。
しかし、その声の後に続くように、誰となく言った。
「…超能力者(レベル5)を、人工的に『造った』なら…絶対能力者(レベル6)は…?」
それは、不安を言葉にしているようにも聞こえた。
その言葉を無視し、機械は話を続け始める。
「さらに、垣根聖督は絶対能力者(レベル6)を所持している模様」
「…チッ。予想はしていたが…」
一方通行(アクセラレータ)が、唐突に首筋の電極のスイッチを入れ、言う。
回りの者は当然警戒態勢を一斉に敷くのだが、一方通行(アクセラレータ)はそんなものにかまわずに目を閉じ、何かブツブツ呟いている。
「何かの演算をしているみたいだね、ってミサカはミサカはミサカネットワークが稼動したのを感知したのを感じながら言ってみる」
と、御坂妹の隣に居る打ち止め(ラストオーダー)が、机から身を乗り出しながら言った。彼女は、あまりショックを受けていないようだ。
「…しかし、超能力者(レベル5)8人、絶対能力者(レベル6)も何人か所持、ねぇ…」
美琴が、半分ため息をつきながら言う。
「戦闘力にすれば、超能力者(レベル5)だけでも軍隊8つ分。さらに応用性、コンビネーションなども含むとするならば、少なくとも軍隊12隊分を同時に相手できると考えても良いかと、ミサカはネットワークを介しながら言います」
御坂妹が、打ち止め(ラストオーダー)を椅子に座らせながら、前を見ずに独り言のように言った。
「それに加え、『絶対能力者(レベル6)』…」
妹達(シスターズ)を何か幻想でも見ているような目で見つめている鏡子が、気を取り直しつつ言った。
「未知数の戦力…少なくとも、軍隊3つ分くらいなら無傷で潰せるんじゃねぇのか?」
妖夜が、もはや少し笑いながら言う。おそらく真剣なのだろうが…
「軍隊3つを無傷、でか…根性のかけらも見えんな」
軍覇が、表情を戻しながら言った。
なので上条は、突然響いた大声…いや、もはや叫びに相当驚いた。
その叫びは、高位能力者たちから発せられたものだった。
「って!何をそんなに驚いてんだよ!?」
妙な叫びのせいで、自然と声のトーンが高くなっている上条。
しかし、彼らはそんな上条お構い無しに勝手に話を進めていく。
「そういやァ…どうやって超能力者(レベル5)を8人も用意したのかは気になっていたが…」
一方通行(アクセラレータ)が、机からずり落ちた腕を直し、再び頬杖をつきながら言う。
「まさか…『造る』、なんて方法で用意したなんて…」
美琴は、もはや表情を浮かべていない。彼女の無表情なんて見たことの無かった上条は、少し引いてしまう。
「実際、どのようにして造ったのか、が問題ではなくて?」
割と平静を保っている鏡子が言う。実際は、上条に自分の能力――――心理掌握(メンタルアウト)と、自称百戦錬磨の恋愛テク――――が聞かなかったときのショックが大きすぎたせいで、ショックが緩和されているだけである。
「学園都市第2位のAIM拡散力場…例えそんなものを用いたとしても、超能力者(レベル5)はおろか、大能力者(レベル4)も造り上げることは出来ないと思うが…」
妖夜が、パニックしかけた脳を落ち着かせつつ言った。
「そこら辺は、科学者さんたちにしか理解できない方程式でもあんだろう?」
思いっきり驚いた表情のままなのに、冷静な言葉を投げかける軍覇。結構シュールに見える。
「それでも…超能力者(レベル5)は造れないんじゃ…」
一方通行(アクセラレータ)の隣に座っている、ブレザーな女子高生が無理に冷静を保ちながら言う。
しかし、その声の後に続くように、誰となく言った。
「…超能力者(レベル5)を、人工的に『造った』なら…絶対能力者(レベル6)は…?」
それは、不安を言葉にしているようにも聞こえた。
その言葉を無視し、機械は話を続け始める。
「さらに、垣根聖督は絶対能力者(レベル6)を所持している模様」
「…チッ。予想はしていたが…」
一方通行(アクセラレータ)が、唐突に首筋の電極のスイッチを入れ、言う。
回りの者は当然警戒態勢を一斉に敷くのだが、一方通行(アクセラレータ)はそんなものにかまわずに目を閉じ、何かブツブツ呟いている。
「何かの演算をしているみたいだね、ってミサカはミサカはミサカネットワークが稼動したのを感知したのを感じながら言ってみる」
と、御坂妹の隣に居る打ち止め(ラストオーダー)が、机から身を乗り出しながら言った。彼女は、あまりショックを受けていないようだ。
「…しかし、超能力者(レベル5)8人、絶対能力者(レベル6)も何人か所持、ねぇ…」
美琴が、半分ため息をつきながら言う。
「戦闘力にすれば、超能力者(レベル5)だけでも軍隊8つ分。さらに応用性、コンビネーションなども含むとするならば、少なくとも軍隊12隊分を同時に相手できると考えても良いかと、ミサカはネットワークを介しながら言います」
御坂妹が、打ち止め(ラストオーダー)を椅子に座らせながら、前を見ずに独り言のように言った。
「それに加え、『絶対能力者(レベル6)』…」
妹達(シスターズ)を何か幻想でも見ているような目で見つめている鏡子が、気を取り直しつつ言った。
「未知数の戦力…少なくとも、軍隊3つ分くらいなら無傷で潰せるんじゃねぇのか?」
妖夜が、もはや少し笑いながら言う。おそらく真剣なのだろうが…
「軍隊3つを無傷、でか…根性のかけらも見えんな」
軍覇が、表情を戻しながら言った。
実はこの軍覇、オッレルスに敗れて以来、訓練を死ぬほど積んできていた。その訓練の成果、口調や性格も少し変わっていたのだが…やはり根っこは変わっていないらしい。
「話を続けさせてもらいます」
機械が、話に割り込んでいった。
「絶対能力者(レベル6)の戦闘能力ですが…やはり不明。ですが、単独で軍隊を5つ程度なら捨て身で潰せる、くらいの者、と予想できます」
やはり、機械は冷静な音声で喋っている。
「…ハッ。ふざけやがって」
上条が、半ば呆れ気味に言った。
「ンでェ?俺らは、そンなモンと楽しく殺し合ッてりゃいいのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、少し楽しげな表情を浮かべながら言う。
「まことに申し訳ございませんが――――」
「チッ。それならいい。さっさと進めやがれ」
一方通行(アクセラレータ)が、機械の受け答えを予想したのか、忌々しそうにつぶやく。
「垣根聖督は、これほどの戦力を持っても強行突破をしようとしませんでした。まだ、学園都市には届かない…そう判断したのでしょう。そして、その学園都市を出し抜くために、まずは斥候として超能力者(レベル5)をよこした――――昨日の戦闘は、つまりは情報採取のためのものです」
「超能力者(レベル5)を斥候扱い…良い身分ですこと」
もう殆ど興味無さそうにしている鏡子。まぁ、そうなっても仕方がないといえる。
「ってことは、昨日のはお膳立て…ってことかい?」
それまで、全くの発言をしていなかったステイルが、唐突に発言する。
「はい。そうなります」
珍しく、機械が質問に答えた。そのときに説明していて、簡潔に答えられる質問だったからだろうか…?
「どんだけ、だよ…」
ステイルとは、おそらく違う意味で発言していなかった浜面が、ポツリとつぶやいた。なぜかその声は、浜面自身は部屋の墨にいるのに部屋全体に響き渡る。
「続けます」
機械的な音が、浜面の言葉をかき消す。
「昨日の戦闘で、おそらく戦闘不能に陥った超能力者(レベル5)は4人。ほかの超能力者(レベル5)は無傷です。その無傷の超能力者(レベル5)のうち、一人は精神系能力者であることが判明。能力名は、『精神操作(メンタルコントロール)』…対象を取った人物の精神を、ほとんど自在に操作できる能力、と言っていましたが、真実かは不明。その能力は、『一方通行(アクセラレータ)』の能力である程度『反射』できるものであることが判明しています。その他の超能力者(レベル5)の能力などに関しては、全く未判明です」
「待て」
そこで、一方通行(アクセラレータ)がストップをかける。
「あの女の能力…精神操作(メンタルコントロール)は、一度本人の精神に干渉し、そこから干渉できる精神を拡大させていき、さらに拡大した行動範囲内にて、相手の精神を自在に操る…ざっとこンな能力だ」
一方通行(アクセラレータ)が、一気にまくし立てるようにいった。
「根拠はおありでしょうか?」
機械が、単なる質問時とは異なる応えを示す。
「こっちは学園都市第1位の能力者だぞ。しかも、そいつの能力を一度喰らってンだ。これを信じねェってのほうが、おかしいンじゃねェか?」
一方通行(アクセラレータ)が、ふんと鼻をならして言った。
機械は数秒黙り込み、そして、
「信憑性は90%を越すものと判断。よって、一方通行(アクセラレータ)の意見を正式なものとして取り入れます」
機械が言った。
そのまま、機械は続ける。
「話を戻します。超能力者(レベル5)の戦闘能力などについては、先程述べたとおりです。絶対能力者(レベル6)については、全く予想できません。その能力は、今まで発祥し得なかった能力である、ということは予想できます」
「発祥し得なかった能力、か…」
上条は、自分の右手を見る。
おそらく、そんな能力でもあっさりと打ち消してしまうであろう、自分の力を。
「垣根聖督自身は、単なる人間です。能力者でもありません。よって、垣根聖督本人は戦力のうちに計算されておりません。結果として、『反乱因子』の戦闘能力は、最低で小国一国をつぶせる程度のものであり、最高でローマ正教の3分の2を潰せるもの、と判断されます」
「…ローマ正教…」
神裂が、一人つぶやく。
「3分の2をつぶせる1部隊、ね…」
ステイルが、煙草の煙とともに吐息を漏らす。
「では次に、昨日の戦闘について、ご本人たちから説明をもらいます」
「話を続けさせてもらいます」
機械が、話に割り込んでいった。
「絶対能力者(レベル6)の戦闘能力ですが…やはり不明。ですが、単独で軍隊を5つ程度なら捨て身で潰せる、くらいの者、と予想できます」
やはり、機械は冷静な音声で喋っている。
「…ハッ。ふざけやがって」
上条が、半ば呆れ気味に言った。
「ンでェ?俺らは、そンなモンと楽しく殺し合ッてりゃいいのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、少し楽しげな表情を浮かべながら言う。
「まことに申し訳ございませんが――――」
「チッ。それならいい。さっさと進めやがれ」
一方通行(アクセラレータ)が、機械の受け答えを予想したのか、忌々しそうにつぶやく。
「垣根聖督は、これほどの戦力を持っても強行突破をしようとしませんでした。まだ、学園都市には届かない…そう判断したのでしょう。そして、その学園都市を出し抜くために、まずは斥候として超能力者(レベル5)をよこした――――昨日の戦闘は、つまりは情報採取のためのものです」
「超能力者(レベル5)を斥候扱い…良い身分ですこと」
もう殆ど興味無さそうにしている鏡子。まぁ、そうなっても仕方がないといえる。
「ってことは、昨日のはお膳立て…ってことかい?」
それまで、全くの発言をしていなかったステイルが、唐突に発言する。
「はい。そうなります」
珍しく、機械が質問に答えた。そのときに説明していて、簡潔に答えられる質問だったからだろうか…?
「どんだけ、だよ…」
ステイルとは、おそらく違う意味で発言していなかった浜面が、ポツリとつぶやいた。なぜかその声は、浜面自身は部屋の墨にいるのに部屋全体に響き渡る。
「続けます」
機械的な音が、浜面の言葉をかき消す。
「昨日の戦闘で、おそらく戦闘不能に陥った超能力者(レベル5)は4人。ほかの超能力者(レベル5)は無傷です。その無傷の超能力者(レベル5)のうち、一人は精神系能力者であることが判明。能力名は、『精神操作(メンタルコントロール)』…対象を取った人物の精神を、ほとんど自在に操作できる能力、と言っていましたが、真実かは不明。その能力は、『一方通行(アクセラレータ)』の能力である程度『反射』できるものであることが判明しています。その他の超能力者(レベル5)の能力などに関しては、全く未判明です」
「待て」
そこで、一方通行(アクセラレータ)がストップをかける。
「あの女の能力…精神操作(メンタルコントロール)は、一度本人の精神に干渉し、そこから干渉できる精神を拡大させていき、さらに拡大した行動範囲内にて、相手の精神を自在に操る…ざっとこンな能力だ」
一方通行(アクセラレータ)が、一気にまくし立てるようにいった。
「根拠はおありでしょうか?」
機械が、単なる質問時とは異なる応えを示す。
「こっちは学園都市第1位の能力者だぞ。しかも、そいつの能力を一度喰らってンだ。これを信じねェってのほうが、おかしいンじゃねェか?」
一方通行(アクセラレータ)が、ふんと鼻をならして言った。
機械は数秒黙り込み、そして、
「信憑性は90%を越すものと判断。よって、一方通行(アクセラレータ)の意見を正式なものとして取り入れます」
機械が言った。
そのまま、機械は続ける。
「話を戻します。超能力者(レベル5)の戦闘能力などについては、先程述べたとおりです。絶対能力者(レベル6)については、全く予想できません。その能力は、今まで発祥し得なかった能力である、ということは予想できます」
「発祥し得なかった能力、か…」
上条は、自分の右手を見る。
おそらく、そんな能力でもあっさりと打ち消してしまうであろう、自分の力を。
「垣根聖督自身は、単なる人間です。能力者でもありません。よって、垣根聖督本人は戦力のうちに計算されておりません。結果として、『反乱因子』の戦闘能力は、最低で小国一国をつぶせる程度のものであり、最高でローマ正教の3分の2を潰せるもの、と判断されます」
「…ローマ正教…」
神裂が、一人つぶやく。
「3分の2をつぶせる1部隊、ね…」
ステイルが、煙草の煙とともに吐息を漏らす。
「では次に、昨日の戦闘について、ご本人たちから説明をもらいます」
「はい?」
予想できなかった機械の言葉に、思わずそんな言葉を漏らす上条。
「われわれは今回、『反乱因子』を破らなければ学園都市が多大な被害を受ける、と予想しました。よって今回『反乱因子』と戦闘を行ってもらうことになったのは、『上条勢力』の主要人物と、科学サイドの主要能力者たち、ということに決定されました。なので、互いに戦闘を振り返ることにより、今後の戦闘を有利に進めることができるものと思われますので、一つ一つの戦闘を振り返らせてもらいます。その中でも、今までなしえなかった技などを繰り出した人物もいますので、その点についてご本人から説明をもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
前半が説明、後半が頼みになっている機械の言葉。
それに、
「決定しました、だァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、思いっきり不満の表情を浮かべて言う。
「何勝手に決めてんだクソ野郎ども。俺のことは俺が決めさせてもらうぞ」
「わたしもね。学園都市がどうなろうと知ったこっちゃないわよ」
隣の女も、薄ら笑いを浮かべながら言った。
ほかの面々も、大体同じ感想らしい。
しかし、機械はその反論を、たった一言で打ちのめした。
予想できなかった機械の言葉に、思わずそんな言葉を漏らす上条。
「われわれは今回、『反乱因子』を破らなければ学園都市が多大な被害を受ける、と予想しました。よって今回『反乱因子』と戦闘を行ってもらうことになったのは、『上条勢力』の主要人物と、科学サイドの主要能力者たち、ということに決定されました。なので、互いに戦闘を振り返ることにより、今後の戦闘を有利に進めることができるものと思われますので、一つ一つの戦闘を振り返らせてもらいます。その中でも、今までなしえなかった技などを繰り出した人物もいますので、その点についてご本人から説明をもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
前半が説明、後半が頼みになっている機械の言葉。
それに、
「決定しました、だァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、思いっきり不満の表情を浮かべて言う。
「何勝手に決めてんだクソ野郎ども。俺のことは俺が決めさせてもらうぞ」
「わたしもね。学園都市がどうなろうと知ったこっちゃないわよ」
隣の女も、薄ら笑いを浮かべながら言った。
ほかの面々も、大体同じ感想らしい。
しかし、機械はその反論を、たった一言で打ちのめした。
「あなたたちが、学園都市自体を敵に回してでも今回の戦闘に協力しない、というならば…こちらも策を練らせてもらいますが」
「…」
一同が、いっせいに黙り込む。
「協力してもらえるでしょうか?」
機械が、やはり単調な音で言った。しかし、その音にはなぜか有無を言わせない強さがあった。
そして、やはり誰も何も言えなかった。
「協力してもらえる、と受け取ってもよろしいでしょうか?」
機械が、確認を取る。
「…俺は、別になんだって良いけどな」
上条が、無神経そうに言った。
「はン。このごろ鈍ってきたからなァ、能力の方は。…勝手にしやがれ」
一方通行(アクセラレータ)は、適当な調子で言う。
ほかの面々も、さっきと同じく同じ意見らしい。
「ご協力、感謝いたします」
全く変わらず、無感情な声で言う機械。
「では、まずは――――」
一同が、いっせいに黙り込む。
「協力してもらえるでしょうか?」
機械が、やはり単調な音で言った。しかし、その音にはなぜか有無を言わせない強さがあった。
そして、やはり誰も何も言えなかった。
「協力してもらえる、と受け取ってもよろしいでしょうか?」
機械が、確認を取る。
「…俺は、別になんだって良いけどな」
上条が、無神経そうに言った。
「はン。このごろ鈍ってきたからなァ、能力の方は。…勝手にしやがれ」
一方通行(アクセラレータ)は、適当な調子で言う。
ほかの面々も、さっきと同じく同じ意見らしい。
「ご協力、感謝いたします」
全く変わらず、無感情な声で言う機械。
「では、まずは――――」
と、いうことで。
大体の戦闘は、おおよそ理解できるものだからほとんどはスルーしてきた『仲間』たち。
と、そこで、
「…ん?おいステイル、これなんだ?」
上条が、超能力者(レベル5)の発火能力者(パイロキネシスト)と戦っているステイルを見て言う。
「?…ああ、このときか」
このとき、というのはステイルの身体能力が異様に上がっていたときである(2章 Ⅱ×Ⅹ Ⅶ時)。
そのときの映像を見たステイルは、
「あれは簡単なものだよ。自分の足の裏あたりに小さな炎剣を作り出し、即座に爆破させる。その爆風をうまく足の裏に集中させれば、一気に加速が出来る、ってわけさ。まぁ、扱いが難しいから普段はあんまり使わなかったものだけど」
面倒くさそうに言うステイル。
普段はあまり使わない――――その発言から見るに、その発火能力者(パイロキネシスト)はその技を使うに値する者だったのだろう。
「そんなことが出来たんですか」
感心したように言う神裂。
「…どうやっても、聖人様の身体能力には全く及ばないけどね」
苦笑いしながら言うステイル。
その後も戦闘の様子を見ていたわけだが、取立て不思議なところはなかったようだ。
あるとすれば、
「全然、浜面と滝壺が移ってないんだけど」
「ぐッ!?こ、こっちもこっちで忙しかったんだッ!」
全力で言い訳する浜面。
「忙しかったって…まさか…」
「ぜってー違う!上条、今お前が考えてるようなことはぜってーしてねぇと思うぞっ!したかったけどな!!」
上条のいかがわしそうな表情を見た浜面が、否定&肯定、という究極の答えを導き出す。
「あー、そういえば」
またぎゃあぎゃあ騒いでいる浜面を無視し、美琴が言う。
「戦闘…じゃないと思うんだけど、私たちの身体が浮いた『あれ』はなんだったわけよ?」
「…あ、そんなのもあったなぁ?」
上条が、今ようやく思い出した、という顔になる。
「身体が浮いた…?」
不思議そうな顔をする建宮。
「あー、そりゃ多分俺だ」
大体の戦闘は、おおよそ理解できるものだからほとんどはスルーしてきた『仲間』たち。
と、そこで、
「…ん?おいステイル、これなんだ?」
上条が、超能力者(レベル5)の発火能力者(パイロキネシスト)と戦っているステイルを見て言う。
「?…ああ、このときか」
このとき、というのはステイルの身体能力が異様に上がっていたときである(2章 Ⅱ×Ⅹ Ⅶ時)。
そのときの映像を見たステイルは、
「あれは簡単なものだよ。自分の足の裏あたりに小さな炎剣を作り出し、即座に爆破させる。その爆風をうまく足の裏に集中させれば、一気に加速が出来る、ってわけさ。まぁ、扱いが難しいから普段はあんまり使わなかったものだけど」
面倒くさそうに言うステイル。
普段はあまり使わない――――その発言から見るに、その発火能力者(パイロキネシスト)はその技を使うに値する者だったのだろう。
「そんなことが出来たんですか」
感心したように言う神裂。
「…どうやっても、聖人様の身体能力には全く及ばないけどね」
苦笑いしながら言うステイル。
その後も戦闘の様子を見ていたわけだが、取立て不思議なところはなかったようだ。
あるとすれば、
「全然、浜面と滝壺が移ってないんだけど」
「ぐッ!?こ、こっちもこっちで忙しかったんだッ!」
全力で言い訳する浜面。
「忙しかったって…まさか…」
「ぜってー違う!上条、今お前が考えてるようなことはぜってーしてねぇと思うぞっ!したかったけどな!!」
上条のいかがわしそうな表情を見た浜面が、否定&肯定、という究極の答えを導き出す。
「あー、そういえば」
またぎゃあぎゃあ騒いでいる浜面を無視し、美琴が言う。
「戦闘…じゃないと思うんだけど、私たちの身体が浮いた『あれ』はなんだったわけよ?」
「…あ、そんなのもあったなぁ?」
上条が、今ようやく思い出した、という顔になる。
「身体が浮いた…?」
不思議そうな顔をする建宮。
「あー、そりゃ多分俺だ」
適当に言う一方通行(アクセラレータ)。
「…で?その理由と、方法は?」
美琴が、一方通行(アクセラレータ)をにらみつけながら言った。
「理由は言うまでもねェだろ。超電磁砲(レールガン)の方は、今後戦力になりそうだったからなァ。それに、俺自身の強化にもつながりそうだったから、生かしておいた。上条の方は…」
そこまで言った一方通行(アクセラレータ)が、極悪な笑みを浮かべて、
「…こいつを殺すのは、俺だけの特権だ」
「やめましょうよ一方通行(アクセラレータ)さんっ!いい加減、倒される→怒り→戦闘、の無限ループから脱しませんか!?」
「ンじゃァ、さっさと俺に殺されろ」
「んな要求のめるかぁぁ!!」
当然の反論をする上条。
だが、一方通行(アクセラレータ)は気にも留めていないらしく、
「そういうことだ。こいつらに火の粉が降りかかったら、結果として俺のマイナスにつながる可能性があった。だからわざわざ炎から遠ざけてやったンだよ。なンか文句あっか」
そういい、無関心そうに目をそむける一方通行(アクセラレータ)。
そこに、また美琴が質問する。
「動機は分かった。方法はどうやったのよ」
「…チッ。めんどっちィな…あの時、助けるんじゃなかったか…?」
一方通行(アクセラレータ)は、真剣に考え込む前に、美琴が自分をにらんでいることに気づいたようで、ため息をついてから話し始める。
「空気のベクトルを操作した」
「具体的に言いなさい」
簡潔に説明しようとしたのか、それしか言わなかった一方通行(アクセラレータ)にやはり噛み付く美琴。
「…ベクトル操作した空気を、テメェらのところまで送っただけだ。その空気は俺の干渉を受けてるから、自在に操れた。こいつの右手に触れないようにするまで、繊細にな」
そこまで言うと、もう文句はねェだろ、と小さく言い、腕を組んで目を閉じる一方通行(アクセラレータ)。
美琴の方もそれで納得したのか、何も言わなかった。
「…あのー。じゃあ、『あの声』もお前のものでいいのか?」
と、そこに上条がさらに追撃をかける。
「…」
心底忌々しそうな目を上条に向ける一方通行(アクセラレータ)だったが、
「そうだ」
その一言だけ言い、また同じように目を閉じてしまった。
「では、戦闘報告についてはこれでよろしいでしょうか?」
なんか機械が勝手に、『戦闘報告』なんて物騒な呼び方をしている。実際そうなのだろうが。
無言の会議室の中、機械は次の音声を発する。
「それでは、次は今後戦闘に協力してもらう方々の紹介に移らせてもらいます」
「…で?その理由と、方法は?」
美琴が、一方通行(アクセラレータ)をにらみつけながら言った。
「理由は言うまでもねェだろ。超電磁砲(レールガン)の方は、今後戦力になりそうだったからなァ。それに、俺自身の強化にもつながりそうだったから、生かしておいた。上条の方は…」
そこまで言った一方通行(アクセラレータ)が、極悪な笑みを浮かべて、
「…こいつを殺すのは、俺だけの特権だ」
「やめましょうよ一方通行(アクセラレータ)さんっ!いい加減、倒される→怒り→戦闘、の無限ループから脱しませんか!?」
「ンじゃァ、さっさと俺に殺されろ」
「んな要求のめるかぁぁ!!」
当然の反論をする上条。
だが、一方通行(アクセラレータ)は気にも留めていないらしく、
「そういうことだ。こいつらに火の粉が降りかかったら、結果として俺のマイナスにつながる可能性があった。だからわざわざ炎から遠ざけてやったンだよ。なンか文句あっか」
そういい、無関心そうに目をそむける一方通行(アクセラレータ)。
そこに、また美琴が質問する。
「動機は分かった。方法はどうやったのよ」
「…チッ。めんどっちィな…あの時、助けるんじゃなかったか…?」
一方通行(アクセラレータ)は、真剣に考え込む前に、美琴が自分をにらんでいることに気づいたようで、ため息をついてから話し始める。
「空気のベクトルを操作した」
「具体的に言いなさい」
簡潔に説明しようとしたのか、それしか言わなかった一方通行(アクセラレータ)にやはり噛み付く美琴。
「…ベクトル操作した空気を、テメェらのところまで送っただけだ。その空気は俺の干渉を受けてるから、自在に操れた。こいつの右手に触れないようにするまで、繊細にな」
そこまで言うと、もう文句はねェだろ、と小さく言い、腕を組んで目を閉じる一方通行(アクセラレータ)。
美琴の方もそれで納得したのか、何も言わなかった。
「…あのー。じゃあ、『あの声』もお前のものでいいのか?」
と、そこに上条がさらに追撃をかける。
「…」
心底忌々しそうな目を上条に向ける一方通行(アクセラレータ)だったが、
「そうだ」
その一言だけ言い、また同じように目を閉じてしまった。
「では、戦闘報告についてはこれでよろしいでしょうか?」
なんか機械が勝手に、『戦闘報告』なんて物騒な呼び方をしている。実際そうなのだろうが。
無言の会議室の中、機械は次の音声を発する。
「それでは、次は今後戦闘に協力してもらう方々の紹介に移らせてもらいます」