★★★★★★★★★★★★
「お姉さんチョコケーキ1つ」
「姉ちゃんショート1個」
「店員さんスマイル下さい」
「あの………ゲコ太ケーキ1つ」
「はい、はい。少々お待ちを。えーと……」
神裂火織は目が回る程の忙しさの中にいた。
(あぁ、ステイルは一体何をやっているんですか!)
心中で愚痴りつつも手は止めない。
そして忙しく立ち回る神裂は、上条当麻がインデックスと待ち合わせた場所に戻ってきたものの、インデックスの姿が見当たらないことに首を傾げながら向こうに行ってしまったことに気付くことは出来なかった。
「姉ちゃんショート1個」
「店員さんスマイル下さい」
「あの………ゲコ太ケーキ1つ」
「はい、はい。少々お待ちを。えーと……」
神裂火織は目が回る程の忙しさの中にいた。
(あぁ、ステイルは一体何をやっているんですか!)
心中で愚痴りつつも手は止めない。
そして忙しく立ち回る神裂は、上条当麻がインデックスと待ち合わせた場所に戻ってきたものの、インデックスの姿が見当たらないことに首を傾げながら向こうに行ってしまったことに気付くことは出来なかった。
★★★★★★★★★★★★
「っかしーな。おい、インデックスさーん?隠れてないで出てきなさーい。そしたら上条さん奮発してケーキの1つも買ってあげるよー。…………食べ物で釣っても出てこないとは、本格的にどこかに行ったか?」
インデックスがその食べ物に釣られて消えてしまったことを知らず、暢気に呟く当麻。
すると、
「よ、お兄ちゃん」
という声が後ろから聞こえた。
「んぁ?舞夏ちゃん?」
振り返った当麻の視界に映ったのは、清掃ロボの上に座り込み移動している土御門元春の妹、土御門舞夏だった。
「どうしたんだ?こんなところに一人で、土御門はどうした?」
「そう、それが問題なのだー」
舞夏はびしりと当麻に人差し指を突き出す。
「?」
「兄貴が消えたのだー」
「消えた?土御門が?」
「クリスマスだから待ち合わせて外をラブラブ……ブラブラする予定だったんだけど、いつまで経っても待ち合わせ場所に現れない。アパートに行ってもいない。そこでこうして街まで兄貴を探しに来たのだー」
「成る程、そっちも人探しか……」
「も?」
「あぁ、実はインデックスがどっかいっちまってな」
「そうなのかー。つまり、私達は同胞ということになるだなー。よーし、ここは協力して探すというのははどうだー?」
「……ん、そうだな。一人より二人の方がいい。よろしくな舞夏ちゃん」
「了解」
そうして奇妙な二人組は捜索を開始した。
インデックスがその食べ物に釣られて消えてしまったことを知らず、暢気に呟く当麻。
すると、
「よ、お兄ちゃん」
という声が後ろから聞こえた。
「んぁ?舞夏ちゃん?」
振り返った当麻の視界に映ったのは、清掃ロボの上に座り込み移動している土御門元春の妹、土御門舞夏だった。
「どうしたんだ?こんなところに一人で、土御門はどうした?」
「そう、それが問題なのだー」
舞夏はびしりと当麻に人差し指を突き出す。
「?」
「兄貴が消えたのだー」
「消えた?土御門が?」
「クリスマスだから待ち合わせて外をラブラブ……ブラブラする予定だったんだけど、いつまで経っても待ち合わせ場所に現れない。アパートに行ってもいない。そこでこうして街まで兄貴を探しに来たのだー」
「成る程、そっちも人探しか……」
「も?」
「あぁ、実はインデックスがどっかいっちまってな」
「そうなのかー。つまり、私達は同胞ということになるだなー。よーし、ここは協力して探すというのははどうだー?」
「……ん、そうだな。一人より二人の方がいい。よろしくな舞夏ちゃん」
「了解」
そうして奇妙な二人組は捜索を開始した。
★★★★★★★★★★★★
「ブローチが……」
「初春が……」
口をあんぐり開けてゲコ太が見えなくなるまで見届けた後で、ようやく佐天とステイルは正気を取り戻した。
ステイルはまずインデックスに告げる。
「すまないインデックス。トラブルが発生した。ひとまず大通りまで連れていくから、そこで上条当麻と合流するか、暫く神裂のところに……」
「あれ?私名前言ったっけ?」
「いや、その、プレゼントの送り主を通じてだな……」
「あぁ、そういうことだったんだね」
「あ、あぁ。そういうことだったんだよ」
適当にはぐらかすと、ステイルは佐天に向き直り詰問する。
「おい、何故あの少女は攫われた?」
「そ、そんなの私にもわかりませんよ!」
「あのカエルに心当たりは?」
「ゲコ太の着ぐるみだとは思いますけど……中身が誰かなんて見当もつかないです」
「くそっ!何なんだ一体!」
ステイルは苛立ち混じりに懐から煙草の箱を取り出そうとし、
「……ちっ」
丁度切らしていたことに気付いた。
「あぁくそ、最悪だ。最悪のクリスマスだよ………」
小さく呟いてから、ステイルは再びインデックスを視界に入れる。
「はぁ……まぁいい。とりあえず行こうかインデックス」
「うん」
言ってインデックスは、
「ブローチが……」
「初春が……」
口をあんぐり開けてゲコ太が見えなくなるまで見届けた後で、ようやく佐天とステイルは正気を取り戻した。
ステイルはまずインデックスに告げる。
「すまないインデックス。トラブルが発生した。ひとまず大通りまで連れていくから、そこで上条当麻と合流するか、暫く神裂のところに……」
「あれ?私名前言ったっけ?」
「いや、その、プレゼントの送り主を通じてだな……」
「あぁ、そういうことだったんだね」
「あ、あぁ。そういうことだったんだよ」
適当にはぐらかすと、ステイルは佐天に向き直り詰問する。
「おい、何故あの少女は攫われた?」
「そ、そんなの私にもわかりませんよ!」
「あのカエルに心当たりは?」
「ゲコ太の着ぐるみだとは思いますけど……中身が誰かなんて見当もつかないです」
「くそっ!何なんだ一体!」
ステイルは苛立ち混じりに懐から煙草の箱を取り出そうとし、
「……ちっ」
丁度切らしていたことに気付いた。
「あぁくそ、最悪だ。最悪のクリスマスだよ………」
小さく呟いてから、ステイルは再びインデックスを視界に入れる。
「はぁ……まぁいい。とりあえず行こうかインデックス」
「うん」
言ってインデックスは、
ステイルの手を握った。
「~~~~~~」
「? どうしたの?」
「いや………何でもない」
(最悪のクリスマスというのは撤回しよう)
思い、ステイルはインデックスの手のひらの感触に緊張しながら大通りに出た。
一通り見回してみたが、どうやら上条当麻はいないようだ。
(仕方ない、神裂に頼もう)
ステイルはその足で神裂のいるケーキ屋へ赴く。
「ステイル、ようやく帰ってきましたか。早く手伝って……何故インデックスが一緒に?」
「緊急事態だ。暫く預かっていてくれ」
「は、はい?」
神裂が理解するより先に、ステイルはインデックスを強引に押しつけ(但し手を離すのには少し間があった)走り去ってしまった。
(な、何だと言うのですステイル!いきなりこの子と二人というのは少し困りますよ!)
神裂は突然の状況にそう考えるも
(………あ、でもこの子がいてくれたら仕事が楽に)
と思い直し
「このケーキが欲しいの?はい。お代?いらないんだよそんなの。他者に施しをするのがシスターの……」
そしてすぐに後悔した。
「? どうしたの?」
「いや………何でもない」
(最悪のクリスマスというのは撤回しよう)
思い、ステイルはインデックスの手のひらの感触に緊張しながら大通りに出た。
一通り見回してみたが、どうやら上条当麻はいないようだ。
(仕方ない、神裂に頼もう)
ステイルはその足で神裂のいるケーキ屋へ赴く。
「ステイル、ようやく帰ってきましたか。早く手伝って……何故インデックスが一緒に?」
「緊急事態だ。暫く預かっていてくれ」
「は、はい?」
神裂が理解するより先に、ステイルはインデックスを強引に押しつけ(但し手を離すのには少し間があった)走り去ってしまった。
(な、何だと言うのですステイル!いきなりこの子と二人というのは少し困りますよ!)
神裂は突然の状況にそう考えるも
(………あ、でもこの子がいてくれたら仕事が楽に)
と思い直し
「このケーキが欲しいの?はい。お代?いらないんだよそんなの。他者に施しをするのがシスターの……」
そしてすぐに後悔した。
★★★★★★★★★★★★
ステイルが大通りを突っ切っていると
「あ、あの」
と後ろから少女の声がした。
「何た?」
振り返ったステイルはそこに先程の少女――佐天の姿を認めた。
「あなたは、ゲコ太を……初春を追いかけてるんですよね」
「初春……あぁ、あの花の少女か。そのつもりだが」
「だったら」
佐天が一歩踏み出して言う。
「だったら私も一緒に行きます!」
佐天の提案にステイルは暫し思考する。
(足手まといになるかもしれないが……見たところこの少女は初春という少女と友人らしいし、得られる情報はあるかもしれないな。何のヒントもない今は連れていった方が賢明か)
「分かった。一緒に行こう。僕はステイル・マグヌス。君、名前は?」
「あ、はい。佐天、佐天涙子です」
お互いに簡単に自己紹介を済ませると、奇妙な二人組は追跡を開始した。
「あ、あの」
と後ろから少女の声がした。
「何た?」
振り返ったステイルはそこに先程の少女――佐天の姿を認めた。
「あなたは、ゲコ太を……初春を追いかけてるんですよね」
「初春……あぁ、あの花の少女か。そのつもりだが」
「だったら」
佐天が一歩踏み出して言う。
「だったら私も一緒に行きます!」
佐天の提案にステイルは暫し思考する。
(足手まといになるかもしれないが……見たところこの少女は初春という少女と友人らしいし、得られる情報はあるかもしれないな。何のヒントもない今は連れていった方が賢明か)
「分かった。一緒に行こう。僕はステイル・マグヌス。君、名前は?」
「あ、はい。佐天、佐天涙子です」
お互いに簡単に自己紹介を済ませると、奇妙な二人組は追跡を開始した。
★★★★★★★★★★★★
「お、おおお、降ろして下さいっ!」
「………」
ついに大通りに出たゲコ太に初春が抗議するも、ゲコ太は一言も応じず、一向にその足を緩めない。
「お願いですから!こ、このままだと、パ、パンツが……」
顔を真っ赤にする初春の言う通り、荷物の様に肩に担がれている初春のスカートは、ゲコ太のスピードが生み出す風によってひらりひらりとめくれあがっている。
その上パンツ見せ中学生とカエルの着ぐるみという珍妙な組み合わせに、通りを歩く人たちは何事かと視線を向けてくるため、初春の羞恥心はピークに達していた。
「…………」
するとゲコ太は一度立ち止まると、初春の身体を肩から引き下ろし、初春の肩と腰に手を回すようにして抱え直した。
「お、おおお、降ろして下さいっ!」
「………」
ついに大通りに出たゲコ太に初春が抗議するも、ゲコ太は一言も応じず、一向にその足を緩めない。
「お願いですから!こ、このままだと、パ、パンツが……」
顔を真っ赤にする初春の言う通り、荷物の様に肩に担がれている初春のスカートは、ゲコ太のスピードが生み出す風によってひらりひらりとめくれあがっている。
その上パンツ見せ中学生とカエルの着ぐるみという珍妙な組み合わせに、通りを歩く人たちは何事かと視線を向けてくるため、初春の羞恥心はピークに達していた。
「…………」
するとゲコ太は一度立ち止まると、初春の身体を肩から引き下ろし、初春の肩と腰に手を回すようにして抱え直した。
即ちお姫様だっこに。
「いやいや、それは確かにスカートはめくれ上がりませんけど、別の意味でかなり恥ずかしいと言いますか………ひゃんっ」
初春の言葉を聞かず、ゲコ太は再び走り出す。
そして通りを突っ切り、先の行き止まりになっているビルとビルとの小さな隙間に身を滑りこませると、ようやく初春を地面に下ろした。
続いてゲコ太は辺りを見回し、近くに誰もいないことを確認しだした。
「あ、あ、あの……何の御用でしょうか…」
初春がおそるおそる聞くと、周囲に人がいないことを確認したゲコ太がずんずんと初春に歩み寄り、その肩に両の手を置いた。
「ひっ……」
表情の変化のない着ぐるみというものの顔面のアップは結構心臓に悪く、思わず声をあげてしまった初春に
初春の言葉を聞かず、ゲコ太は再び走り出す。
そして通りを突っ切り、先の行き止まりになっているビルとビルとの小さな隙間に身を滑りこませると、ようやく初春を地面に下ろした。
続いてゲコ太は辺りを見回し、近くに誰もいないことを確認しだした。
「あ、あ、あの……何の御用でしょうか…」
初春がおそるおそる聞くと、周囲に人がいないことを確認したゲコ太がずんずんと初春に歩み寄り、その肩に両の手を置いた。
「ひっ……」
表情の変化のない着ぐるみというものの顔面のアップは結構心臓に悪く、思わず声をあげてしまった初春に
「頼みがある。助けてくれ」
ようやくゲコ太は口を開いた。
★★★★★★★★★★★★
「何?」
「せやから―。身分証がないと煙草は売れないんやって」
「身分証だと?何故煙草を買うのにそんなものが必要なんだい?」
ステイルは青い髪にピアスをし、クリスマスらしくサンタコスを着たコンビニ店員にニコチン不足で苛々しながら詰問する。
サンタコスの男同士がカウンターを挟んで言い合う様子は、端からはコメディにしか見えない。
「そういう規則なんやって。えーやんえーやん、お兄さんはクリスマスを一緒に過ごすロリーな彼女がおるんやもん。それ以上求めるなんて欲張りやっちゅうに。こっちはクリスマスもバイトな独り身高校生なんやで」
「……話にならんっ」
ステイルは青髪ピアスサンタ吐き捨てるように言うと、コンビニを出る。
「くそっ、何だっていうんだ本当に……」
佐天という少女と連れ去られた花の少女――初春は友人関係らしく、まず最初に初春と連絡を取ることを考えたのだが、少し外に出るだけの予定だった為に両者共に携帯電話も置いてきたという話だ。
初春が連れ去られた理由も分からず仕舞いで、追跡は早速難航していた。
「何?」
「せやから―。身分証がないと煙草は売れないんやって」
「身分証だと?何故煙草を買うのにそんなものが必要なんだい?」
ステイルは青い髪にピアスをし、クリスマスらしくサンタコスを着たコンビニ店員にニコチン不足で苛々しながら詰問する。
サンタコスの男同士がカウンターを挟んで言い合う様子は、端からはコメディにしか見えない。
「そういう規則なんやって。えーやんえーやん、お兄さんはクリスマスを一緒に過ごすロリーな彼女がおるんやもん。それ以上求めるなんて欲張りやっちゅうに。こっちはクリスマスもバイトな独り身高校生なんやで」
「……話にならんっ」
ステイルは青髪ピアスサンタ吐き捨てるように言うと、コンビニを出る。
「くそっ、何だっていうんだ本当に……」
佐天という少女と連れ去られた花の少女――初春は友人関係らしく、まず最初に初春と連絡を取ることを考えたのだが、少し外に出るだけの予定だった為に両者共に携帯電話も置いてきたという話だ。
初春が連れ去られた理由も分からず仕舞いで、追跡は早速難航していた。
「はいっ」
と、後ろから声がした。
振り返ったステイルが見たのは下からステイルに向かって腕を精一杯に伸ばしている佐天。
「何だそれは?」
ステイルが問うたのは、佐天の指の先に摘ままれ、また佐天が口にくわえている棒状のスナック菓子についてだ。
「ポッキーだよ」
佐天はフランクな口調で自分の口に含んだそれをカリカリとかじりながら言う。
先程までステイルに敬語を使っていた筈の佐天だったが、会話の中でステイルが佐天と年の差が一つしかないと知るや唐突に距離が近くなった。
「禁煙するのに別の物くわえとくとか、よく聞くし」
「禁煙……」
「未成年なんでしょ、煙草はイカンよ君。悪いことはダメ。その内自分にしっぺ返しが来るんだから」
「………」
まるで年下の子供をあやすような口調だ。
だが口淋しいのは事実なので、取り敢えず突き出されているポッキーを頂こうとして
「む……」
邪魔な付け髭に気が付き、取り去る。
と、
「へ?」
佐天が手に持っていたポッキーを取り落とした。
「どうした?」
「な、なな、なんでもないよ?」
どもる様に言って新しいポッキーを取り出そうとしている佐天の顔は心なしか赤くなっている。
「は、はいっ。どぞ」
再びポッキーを突き出され、今度こそステイルはそれを食べた。
口を伸ばし、ケースの中の煙草を口で引き出す様な動作で。
「ちょ、手!手使って!」
わたわたしながら叫ぶ佐天。
「さっきからどうしたんだ?」
「いや、だから、その………はぁ。落ち着こう私、うん。…………何ていうか、意外とイケメンだったから、ちょっとビックリしたって言うか……」
顔を背けながら言う佐天に、ステイルは軽い調子で返した。
「イケメン……………………それはどういう意味の言葉なんだ?」
と、後ろから声がした。
振り返ったステイルが見たのは下からステイルに向かって腕を精一杯に伸ばしている佐天。
「何だそれは?」
ステイルが問うたのは、佐天の指の先に摘ままれ、また佐天が口にくわえている棒状のスナック菓子についてだ。
「ポッキーだよ」
佐天はフランクな口調で自分の口に含んだそれをカリカリとかじりながら言う。
先程までステイルに敬語を使っていた筈の佐天だったが、会話の中でステイルが佐天と年の差が一つしかないと知るや唐突に距離が近くなった。
「禁煙するのに別の物くわえとくとか、よく聞くし」
「禁煙……」
「未成年なんでしょ、煙草はイカンよ君。悪いことはダメ。その内自分にしっぺ返しが来るんだから」
「………」
まるで年下の子供をあやすような口調だ。
だが口淋しいのは事実なので、取り敢えず突き出されているポッキーを頂こうとして
「む……」
邪魔な付け髭に気が付き、取り去る。
と、
「へ?」
佐天が手に持っていたポッキーを取り落とした。
「どうした?」
「な、なな、なんでもないよ?」
どもる様に言って新しいポッキーを取り出そうとしている佐天の顔は心なしか赤くなっている。
「は、はいっ。どぞ」
再びポッキーを突き出され、今度こそステイルはそれを食べた。
口を伸ばし、ケースの中の煙草を口で引き出す様な動作で。
「ちょ、手!手使って!」
わたわたしながら叫ぶ佐天。
「さっきからどうしたんだ?」
「いや、だから、その………はぁ。落ち着こう私、うん。…………何ていうか、意外とイケメンだったから、ちょっとビックリしたって言うか……」
顔を背けながら言う佐天に、ステイルは軽い調子で返した。
「イケメン……………………それはどういう意味の言葉なんだ?」
★★★★★★★★★★★★
「……成る程、わかりました」
初春はゲコ太から一通りの事情を聞いた。
発端はゲコ太――ゲコ太の中の人――の携帯に送られてきた一件のメール。
知らないアドレスから来たそれにはゲコ太の彼女(と本人は言っていた)が縄で縛られて転がされている画像が添付されており、
初春はゲコ太から一通りの事情を聞いた。
発端はゲコ太――ゲコ太の中の人――の携帯に送られてきた一件のメール。
知らないアドレスから来たそれにはゲコ太の彼女(と本人は言っていた)が縄で縛られて転がされている画像が添付されており、
『この女を返して欲しくば今日の20時、3000万を持って以下の場所まで一人で来い。』
という短い文章と第7学区にある廃ビルの住所が書かれていた。
身代金目的の誘拐、ということなのだろう。
初春は風紀委員の身として、警備員に任せることを提案したのだが、
「この場所はスキルアウト共の溜まり場だ。つまり犯人は不良学生………指定の時刻まで何もされずに無事である保証なんて1ミリたりともない」
とゲコ太は言った。
事実ゲコ太はキャンペーンをしていたとある店からゲコ太の着ぐるみを拝借して正体を隠した上で、単身その廃ビルに強襲をかけたらしい。
「だがビルはもぬけの殻。そこで裏通りを巡って不良共を殴りながら情報を集めていたんだが、どいつもこいつも知らないの一点張りだ。かと言って警備員に任せたら連中が何をしでかすか分からない。街のどこにいるかも知れない連中だ。警備員に告げ口したことが奴らの仲間にバレたら……最悪の状況だってありえる。だが手がかりがない。不良共を何人も倒したが、そんなんじゃ何にもならない。そんな時にあんたを見つけた。その花には見覚えがある。俺の記憶が正しければ、あんたは風紀委員だ。それもただの風紀委員じゃない、他人を守るために身を投げ出せるような、そんな風紀委員の鑑みたいな奴だ。だからあんたに手伝って欲しい。――――『守護神(ゴールキーパー)』の力を貸して欲しい」
「あなたは……一体…」
「悪い、今は俺の言うことを聞いてくれ。頼む」
ゲコ太はただ頭を下げる。
初春にはゲコ太の正体も何もかも分からなかった。
だがその真摯な様に、ゲコ太はきっと悪い人ではないのだろう、と思い
「分かりました。お手伝いさせてもらいます」
初春はゲコ太についていくことを決めた。
初春は風紀委員の身として、警備員に任せることを提案したのだが、
「この場所はスキルアウト共の溜まり場だ。つまり犯人は不良学生………指定の時刻まで何もされずに無事である保証なんて1ミリたりともない」
とゲコ太は言った。
事実ゲコ太はキャンペーンをしていたとある店からゲコ太の着ぐるみを拝借して正体を隠した上で、単身その廃ビルに強襲をかけたらしい。
「だがビルはもぬけの殻。そこで裏通りを巡って不良共を殴りながら情報を集めていたんだが、どいつもこいつも知らないの一点張りだ。かと言って警備員に任せたら連中が何をしでかすか分からない。街のどこにいるかも知れない連中だ。警備員に告げ口したことが奴らの仲間にバレたら……最悪の状況だってありえる。だが手がかりがない。不良共を何人も倒したが、そんなんじゃ何にもならない。そんな時にあんたを見つけた。その花には見覚えがある。俺の記憶が正しければ、あんたは風紀委員だ。それもただの風紀委員じゃない、他人を守るために身を投げ出せるような、そんな風紀委員の鑑みたいな奴だ。だからあんたに手伝って欲しい。――――『守護神(ゴールキーパー)』の力を貸して欲しい」
「あなたは……一体…」
「悪い、今は俺の言うことを聞いてくれ。頼む」
ゲコ太はただ頭を下げる。
初春にはゲコ太の正体も何もかも分からなかった。
だがその真摯な様に、ゲコ太はきっと悪い人ではないのだろう、と思い
「分かりました。お手伝いさせてもらいます」
初春はゲコ太についていくことを決めた。
★★★★★★★★★★★★
「オイ、チビ。それで用事ってのは何なンだ?わざわざこんな騒がしいトコまでよォ」
「んー、強いてあげるなら、こうしてあなたとクリスマスの街を何の目的もなくぶらぶらと散策することかも、とミサカはミサカは心持ちはしゃぎながら言ってみる」
「…………………帰る」
「えぇっ!?とミサカはミサカはあなたにしがみつきながら今の発言の撤回を求めてみたり!」
一方通行と打ち止めはクリスマスの街の中にいた。
一方通行としてはクリスマスなどという企業の戦略でしかないお祭り事に興味の欠片もありはしないのだが、打ち止めに引きずられるようにして外に出てしまったのだ。
「用事がねェンなら帰るぞ。こんな人ゴミを何を好き好んで歩かなきゃならねェンだよ」
「待って!ストップ!カムバック!とミサカはミサカは………」
と、不意に打ち止めの声が途切れた。
「おいどうした?」
「あの店のケーキクレープ……もともとスイーツであるクレープに更にケーキをトッピングするという発想には感服するしかないかも。そしてあわよくばその味をこの舌でもって確かめてみたいな、とミサカはミサカはあなたに上目遣いで頼み込んでみたり」
弾んだ声を上げ、目をきらきらと輝かせて言う打ち止め。
一方通行は大きく溜め息をついてから財布を取り出し、千円札を打ち止めに手渡しながら言う。
「それ食ったら帰るぞ」
「わぁいありがとう、とミサカはミサカはクレープ屋まで全速力で駆けながら……わぷっ!」
走り出した打ち止めが通行人にぶつかった。
「ったく……?」
一方通行はその通行人を知っていた。
「おぅ、一方通行じゃん」
「黄泉川愛穂…」
黄泉川は打ち止めの身体を立たせてやりながら一方通行に言う。
「丁度よかった。実は今ある店からゲコ太の着ぐるみが盗まれたって通報があって。しかもその着ぐるみを着た何者かは街の学生達を襲って回ってるって話じゃん。まぁ襲われてるのは言ってしまえば不良の学生なんだけど……だからって放っとけないじゃん。悪いけど、暇だったらゲコ太探しを手伝って欲しいじゃん」
「あァ?何でンな面倒なこと……大体そういうのは警備員や風紀委員のオシゴトだろうがよォ」
「んじゃ、これでいいじゃん」
言い、黄泉川は懐から風紀委員の腕章を取り出すと一方通行の腕につけた。
「おい、一体何のマネ…」
「じゃ、よろしくじゃん」
一方通行の抗議を聞かず、黄泉川は走り去ってしまう。
「ったく……」
再び大きな溜め息をつく一方通行に、クレープを買って帰ってきた打ち止めが言った。
「その腕章、あり得ない位似合ってないかも、とミサカはミサカは出来るだけあなたを傷つけないように今のあなたの外見について述べてみる」
「…………ほっとけ」
「オイ、チビ。それで用事ってのは何なンだ?わざわざこんな騒がしいトコまでよォ」
「んー、強いてあげるなら、こうしてあなたとクリスマスの街を何の目的もなくぶらぶらと散策することかも、とミサカはミサカは心持ちはしゃぎながら言ってみる」
「…………………帰る」
「えぇっ!?とミサカはミサカはあなたにしがみつきながら今の発言の撤回を求めてみたり!」
一方通行と打ち止めはクリスマスの街の中にいた。
一方通行としてはクリスマスなどという企業の戦略でしかないお祭り事に興味の欠片もありはしないのだが、打ち止めに引きずられるようにして外に出てしまったのだ。
「用事がねェンなら帰るぞ。こんな人ゴミを何を好き好んで歩かなきゃならねェンだよ」
「待って!ストップ!カムバック!とミサカはミサカは………」
と、不意に打ち止めの声が途切れた。
「おいどうした?」
「あの店のケーキクレープ……もともとスイーツであるクレープに更にケーキをトッピングするという発想には感服するしかないかも。そしてあわよくばその味をこの舌でもって確かめてみたいな、とミサカはミサカはあなたに上目遣いで頼み込んでみたり」
弾んだ声を上げ、目をきらきらと輝かせて言う打ち止め。
一方通行は大きく溜め息をついてから財布を取り出し、千円札を打ち止めに手渡しながら言う。
「それ食ったら帰るぞ」
「わぁいありがとう、とミサカはミサカはクレープ屋まで全速力で駆けながら……わぷっ!」
走り出した打ち止めが通行人にぶつかった。
「ったく……?」
一方通行はその通行人を知っていた。
「おぅ、一方通行じゃん」
「黄泉川愛穂…」
黄泉川は打ち止めの身体を立たせてやりながら一方通行に言う。
「丁度よかった。実は今ある店からゲコ太の着ぐるみが盗まれたって通報があって。しかもその着ぐるみを着た何者かは街の学生達を襲って回ってるって話じゃん。まぁ襲われてるのは言ってしまえば不良の学生なんだけど……だからって放っとけないじゃん。悪いけど、暇だったらゲコ太探しを手伝って欲しいじゃん」
「あァ?何でンな面倒なこと……大体そういうのは警備員や風紀委員のオシゴトだろうがよォ」
「んじゃ、これでいいじゃん」
言い、黄泉川は懐から風紀委員の腕章を取り出すと一方通行の腕につけた。
「おい、一体何のマネ…」
「じゃ、よろしくじゃん」
一方通行の抗議を聞かず、黄泉川は走り去ってしまう。
「ったく……」
再び大きな溜め息をつく一方通行に、クレープを買って帰ってきた打ち止めが言った。
「その腕章、あり得ない位似合ってないかも、とミサカはミサカは出来るだけあなたを傷つけないように今のあなたの外見について述べてみる」
「…………ほっとけ」
★★★★★★★★★★★★
「もしもし?風紀委員177支部ですけど………あら、初春さん」
固法美偉は177支部の固定電話を取った。
『固法先輩…あの、白井さんはいませんか?携帯に掛けても繋がらなくて。確か今日は詰所にいる筈ですよね?』
「あぁ、白井さん。さっきまでいたんだけど……なんか御坂さんから電話がかかってきたと思ったら物凄いスピードで仕事終わらせて出ていったわよ」
『そうですか……』
「何か用だった?風紀委員のことなら私でも代われると思うけど」
『あ……、いえ。大した用事じゃないんです。ありがとうございました』
「……そう。わかったわ。じゃ、メリークリスマス」
『メ、メリークリスマスです』
固法は通話の切れた受話器を戻すと
「初春さん、何の用事だったんだろう」
としばし思案したものの
「あぁ、これじゃいつまで経っても片付かない」
再びパソコンに向かう。
だが、打鍵を始めるより先に再び電話が鳴った。
今度は自分の携帯電話だ。
「もう、今度は何なのよ。…はい、もしもし…………え?」
固法美偉は177支部の固定電話を取った。
『固法先輩…あの、白井さんはいませんか?携帯に掛けても繋がらなくて。確か今日は詰所にいる筈ですよね?』
「あぁ、白井さん。さっきまでいたんだけど……なんか御坂さんから電話がかかってきたと思ったら物凄いスピードで仕事終わらせて出ていったわよ」
『そうですか……』
「何か用だった?風紀委員のことなら私でも代われると思うけど」
『あ……、いえ。大した用事じゃないんです。ありがとうございました』
「……そう。わかったわ。じゃ、メリークリスマス」
『メ、メリークリスマスです』
固法は通話の切れた受話器を戻すと
「初春さん、何の用事だったんだろう」
としばし思案したものの
「あぁ、これじゃいつまで経っても片付かない」
再びパソコンに向かう。
だが、打鍵を始めるより先に再び電話が鳴った。
今度は自分の携帯電話だ。
「もう、今度は何なのよ。…はい、もしもし…………え?」
★★★★★★★★★★★★
「……すいません、駄目でした。白井さんが協力してくれたらと思ったんですけど、連絡がつかなくて」
初春は携帯を閉じながらゲコ太に言う。
「私だけじゃ力不足かもしれませんけど……彼女さんの為にもゲコ太さんの為にも、私精一杯頑張りますので!」
「あぁ、助かる」
両手でガッツポーズを作る初春に、ゲコ太は苦笑混じりの感謝を述べる。
「では早速」
初春はとある店舗を指差した。
「ネカフェに行きましょう」
初春は携帯を閉じながらゲコ太に言う。
「私だけじゃ力不足かもしれませんけど……彼女さんの為にもゲコ太さんの為にも、私精一杯頑張りますので!」
「あぁ、助かる」
両手でガッツポーズを作る初春に、ゲコ太は苦笑混じりの感謝を述べる。
「では早速」
初春はとある店舗を指差した。
「ネカフェに行きましょう」
★★★★★★★★★★★★
「いねーなぁ。インデックスも、土御門も」
当麻は舞夏を連れて、再びインデックスと別れた大通りに戻ってきていた。
「舞夏ちゃん、土御門の居場所に心当たりとかないのか?」
「んー、兄貴に限って私との約束をすっぽかして何処かに行くとは考えられないんだがー」
「なのに待ち合わせの場所には居なかった……何か事故か事件にでも巻き込まれちまったのか……?あぁ、分からねぇ」
頭を掻きむしり視線を走らせる当麻を
「上条当麻!!」
大音声で呼ぶ声がした。
「この声……神裂か?」
果たして、神裂火織はいた。
ケーキ屋の店頭で寒そうなコスチュームに身を包んだ売り子として。
「………………えーと、神裂さん?一体それは何の罰ゲームなのでしょうか?」
「こ、これは報酬に対する正当な対価です!…………そんなことより、あなた先程インデックスとはぐれたでしょう」
「あぁ、そうそう。待ってるように言ったんだけどなぁ」
「…はぁ。あなたがそんなことだから………まぁ、いいです。ステイルが彼女を保護してくたのです。そこにいますから、どうぞ連れて帰ってください」
「あぁ、そうだったのか。サンキューな………それで、どこにいるんだ?」
「どこって、すぐそこに」
「いや、売り子やってる小萌先生しかいねーぞ?」
「まさか……」
神裂は横を振り返る。
神裂はまず先程ヘルプで駆けつけてきてくれた(様子見と言ってケーキを買いに来たところを引き込んだ)月詠小萌がビール箱を2つ積んだ上に立ち、ケーキを客に手渡しているのを視界に収める。
そこから視線を奥へ遣ったが――その向こうで大人しくケーキ(売り物)を頬張っていた筈のインデックスは、皿とフォークを残してどこかに消えてしまっていた。
当麻は舞夏を連れて、再びインデックスと別れた大通りに戻ってきていた。
「舞夏ちゃん、土御門の居場所に心当たりとかないのか?」
「んー、兄貴に限って私との約束をすっぽかして何処かに行くとは考えられないんだがー」
「なのに待ち合わせの場所には居なかった……何か事故か事件にでも巻き込まれちまったのか……?あぁ、分からねぇ」
頭を掻きむしり視線を走らせる当麻を
「上条当麻!!」
大音声で呼ぶ声がした。
「この声……神裂か?」
果たして、神裂火織はいた。
ケーキ屋の店頭で寒そうなコスチュームに身を包んだ売り子として。
「………………えーと、神裂さん?一体それは何の罰ゲームなのでしょうか?」
「こ、これは報酬に対する正当な対価です!…………そんなことより、あなた先程インデックスとはぐれたでしょう」
「あぁ、そうそう。待ってるように言ったんだけどなぁ」
「…はぁ。あなたがそんなことだから………まぁ、いいです。ステイルが彼女を保護してくたのです。そこにいますから、どうぞ連れて帰ってください」
「あぁ、そうだったのか。サンキューな………それで、どこにいるんだ?」
「どこって、すぐそこに」
「いや、売り子やってる小萌先生しかいねーぞ?」
「まさか……」
神裂は横を振り返る。
神裂はまず先程ヘルプで駆けつけてきてくれた(様子見と言ってケーキを買いに来たところを引き込んだ)月詠小萌がビール箱を2つ積んだ上に立ち、ケーキを客に手渡しているのを視界に収める。
そこから視線を奥へ遣ったが――その向こうで大人しくケーキ(売り物)を頬張っていた筈のインデックスは、皿とフォークを残してどこかに消えてしまっていた。
★★★★★★★★★★★★
「はいはい~…はいっと」
軽い調子で2分程初春が鍵打を続け、最後にポンとエンターキーを押すと、ネットカフェのパソコンの画面にこの近辺の監視カメラの映像が次々に現れた。
「詰所のコンピュータに繋いで、そこからハッキングをかけて監視カメラの映像を持ってきました」
「…………凄いな」
初春とゲコ太はネットカフェに入店していた。
受付のバイトには変な顔をされながらも何とかやりすごし、二人は狭い個室の中で大きな液晶に映る街の様子に目を向けている。
「裏通りの方の映像ですと……はいっと。んー、それっぽい様子の人たちはいますけど………」
目的の女性はどこにも見当たらない。
「……くそ、どこにいるんだ」
ゲコ太が身を乗り出して画面に目線を走らせる。
結果ゲコ太の身体は初春に乗り掛かるようになる。
(あわわ……ゲコ太さんって、男の方ですよね。それによく考えたら狭い個室に二人きり……)
初春が一人場違いな妄想を働かせて顔を赤らめていると、耳元で聞こえるゲコ太の荒い息が首筋にかかった。
「あ、ひゃん……」
着ぐるみを着用していることで温度の上がっているそれの生暖かい感触に首を竦めて抵抗する。
「? どうした?」
様子のおかしい初春の顔を覗き込むように更に体重をかけてくるゲコ太。
それによって着ぐるみの布が初春の首をくすぐり始める。
「ふ……や、ん…」
「お、おい――」
軽い調子で2分程初春が鍵打を続け、最後にポンとエンターキーを押すと、ネットカフェのパソコンの画面にこの近辺の監視カメラの映像が次々に現れた。
「詰所のコンピュータに繋いで、そこからハッキングをかけて監視カメラの映像を持ってきました」
「…………凄いな」
初春とゲコ太はネットカフェに入店していた。
受付のバイトには変な顔をされながらも何とかやりすごし、二人は狭い個室の中で大きな液晶に映る街の様子に目を向けている。
「裏通りの方の映像ですと……はいっと。んー、それっぽい様子の人たちはいますけど………」
目的の女性はどこにも見当たらない。
「……くそ、どこにいるんだ」
ゲコ太が身を乗り出して画面に目線を走らせる。
結果ゲコ太の身体は初春に乗り掛かるようになる。
(あわわ……ゲコ太さんって、男の方ですよね。それによく考えたら狭い個室に二人きり……)
初春が一人場違いな妄想を働かせて顔を赤らめていると、耳元で聞こえるゲコ太の荒い息が首筋にかかった。
「あ、ひゃん……」
着ぐるみを着用していることで温度の上がっているそれの生暖かい感触に首を竦めて抵抗する。
「? どうした?」
様子のおかしい初春の顔を覗き込むように更に体重をかけてくるゲコ太。
それによって着ぐるみの布が初春の首をくすぐり始める。
「ふ……や、ん…」
「お、おい――」
その時、ガチャリと個室の扉が開いた。
「ぬっぽぁ!」
初春はゲコ太の顎に頭突きをかまして遠ざけ、椅子を回して扉に向き直ると音の主を確認するより先に上ずった声で話し出す。
「すいません使ってます!いや、使ってるって別にいやらしい意味ではなくて!単にこの部屋を使用中だという……いえ、ですから使用っていうのはそういう意味では………!」
そこでようやく初春は音の主を見た。
「見つけたじゃん。ゲコ太の着ぐるみ」
「あなたは……警備員の……」
黄泉川愛穂は初春の言葉に答えず
「んじゃ、そこのゲコ太。ちょっと一緒に来てもらおうじゃん」
ゲコ太に手を伸ばそうとする。
が、
「なっ――」
ゲコ太はするりと身をかわすと、
「へっ?」
呆けている初春を抱っこし、立ち塞がる黄泉川をすり抜けて個室を出ると、そのまま店を後にする。
「くそっ、警備員か。こんなに早く嗅ぎ付けてくるとは……この格好、目立つのが難点だな……」
呟きつつ、人ひとりを抱えているにも関わらず物凄い速度で駆けるゲコ太を
「逃がさないじゃん!」
黄泉川もまた自慢の脚力でその後を追いかけていく。
「ぬっぽぁ!」
初春はゲコ太の顎に頭突きをかまして遠ざけ、椅子を回して扉に向き直ると音の主を確認するより先に上ずった声で話し出す。
「すいません使ってます!いや、使ってるって別にいやらしい意味ではなくて!単にこの部屋を使用中だという……いえ、ですから使用っていうのはそういう意味では………!」
そこでようやく初春は音の主を見た。
「見つけたじゃん。ゲコ太の着ぐるみ」
「あなたは……警備員の……」
黄泉川愛穂は初春の言葉に答えず
「んじゃ、そこのゲコ太。ちょっと一緒に来てもらおうじゃん」
ゲコ太に手を伸ばそうとする。
が、
「なっ――」
ゲコ太はするりと身をかわすと、
「へっ?」
呆けている初春を抱っこし、立ち塞がる黄泉川をすり抜けて個室を出ると、そのまま店を後にする。
「くそっ、警備員か。こんなに早く嗅ぎ付けてくるとは……この格好、目立つのが難点だな……」
呟きつつ、人ひとりを抱えているにも関わらず物凄い速度で駆けるゲコ太を
「逃がさないじゃん!」
黄泉川もまた自慢の脚力でその後を追いかけていく。
★★★★★★★★★★★★
「くッそ……何で俺がこんなことを………」
一方通行は毒づきながら右腕を狭い隙間の中に滑らせる。
自動販売機と地面の間にあるその隙間の奥には一枚の100円硬貨が光っている。
「あァもうウッゼェ!!」
一方通行は痺れをきらしたように叫ぶと首に巻かれたチョーカー型電極のスイッチをオンにし、能力発動モードに切り替える。
そして地面を人差し指でちょんと叩くと、触れてもいない100円硬貨が、文字通り弾かれるように隙間から飛び出してきた。
「わぁ!ありがとう風紀委員さん!」
出てきた硬貨を拾い上げた小さな女の子が、一方通行にちょこんと礼をして去っていく。
「面倒くせェ。こんなモンつけてっから……」
一方通行は風紀委員の腕章を外そうとするが、それより先に
「ねー、風船が飛んでって木の枝に引っ掛かっちゃったの。風紀委員さん。お願い、取ってください」
別の少女が一方通行の袖を引っ張る。
「知らねェよ!テメェでやれ!」
キリがないことに苛立ち叫ぶが
「見て、あの風紀委員。小さな女の子に向かって……」
「あらまぁ。風紀委員の腕章をつけてるのに、何て態度なのかしら……」
というマダム達のひそひそ声を聞き、渋々能力を使って木の枝にジャンプし、風船を取ってやる。
「風紀委員さん、ありがとうございましたっ」
礼を言うと少女は風船を手に母親の許に帰っていく。
「ッたく……」
それを見て溜め息をつく一方通行に打ち止めが声をかける。
「面倒くせェ、とかウゼェ、とか言いつつ、満更でもない顔に見えるよ、ってミサカはミサカは今のあなたの表情を客観的に述べてみたり」
「うるせェよ。つーか食ったんなら帰るぞ」
「風紀委員のお仕事は?ってミサカはミサカはにやにや顔で聞いてみる」
「知るかよ、ンなモン」
と一方通行が言った矢先、
「一方通行ァ!!そこのゲコ太を捕まえるじゃん!」
遠くから声が聞こえた。
そちらを振り返ると、何やら少女を抱えたゲコ太の着ぐるみとその後ろから二人を追う黄泉川がいた。
「だから俺は風紀委員じゃねェッてのによォ」
状況を理解した一方通行は毒づきながらも突撃してくるゲコ太に向き直る。
どうせここで逃げたら風紀委員なのにと陰口を叩かれるのだろうし、何より逃げたと思われるのが癪だ。
「来いよ三下ァ。10秒で終わらせてやるぜェ」
「くッそ……何で俺がこんなことを………」
一方通行は毒づきながら右腕を狭い隙間の中に滑らせる。
自動販売機と地面の間にあるその隙間の奥には一枚の100円硬貨が光っている。
「あァもうウッゼェ!!」
一方通行は痺れをきらしたように叫ぶと首に巻かれたチョーカー型電極のスイッチをオンにし、能力発動モードに切り替える。
そして地面を人差し指でちょんと叩くと、触れてもいない100円硬貨が、文字通り弾かれるように隙間から飛び出してきた。
「わぁ!ありがとう風紀委員さん!」
出てきた硬貨を拾い上げた小さな女の子が、一方通行にちょこんと礼をして去っていく。
「面倒くせェ。こんなモンつけてっから……」
一方通行は風紀委員の腕章を外そうとするが、それより先に
「ねー、風船が飛んでって木の枝に引っ掛かっちゃったの。風紀委員さん。お願い、取ってください」
別の少女が一方通行の袖を引っ張る。
「知らねェよ!テメェでやれ!」
キリがないことに苛立ち叫ぶが
「見て、あの風紀委員。小さな女の子に向かって……」
「あらまぁ。風紀委員の腕章をつけてるのに、何て態度なのかしら……」
というマダム達のひそひそ声を聞き、渋々能力を使って木の枝にジャンプし、風船を取ってやる。
「風紀委員さん、ありがとうございましたっ」
礼を言うと少女は風船を手に母親の許に帰っていく。
「ッたく……」
それを見て溜め息をつく一方通行に打ち止めが声をかける。
「面倒くせェ、とかウゼェ、とか言いつつ、満更でもない顔に見えるよ、ってミサカはミサカは今のあなたの表情を客観的に述べてみたり」
「うるせェよ。つーか食ったんなら帰るぞ」
「風紀委員のお仕事は?ってミサカはミサカはにやにや顔で聞いてみる」
「知るかよ、ンなモン」
と一方通行が言った矢先、
「一方通行ァ!!そこのゲコ太を捕まえるじゃん!」
遠くから声が聞こえた。
そちらを振り返ると、何やら少女を抱えたゲコ太の着ぐるみとその後ろから二人を追う黄泉川がいた。
「だから俺は風紀委員じゃねェッてのによォ」
状況を理解した一方通行は毒づきながらも突撃してくるゲコ太に向き直る。
どうせここで逃げたら風紀委員なのにと陰口を叩かれるのだろうし、何より逃げたと思われるのが癪だ。
「来いよ三下ァ。10秒で終わらせてやるぜェ」
★★★★★★★★★★★★
「一方通行か……どういう風の吹き回しかは知らないが、厄介だな」
「あれ?あの女の子って……」
追われている初春とゲコ太も、前方に立ちはだかる一方通行に気付いた。
「悪い、少しどいててくれ」
ゲコ太はそう言うと初春を降ろし、一人一方通行目掛けて突進する。
「あ、あの!大丈夫なんですか!?」
背中からの初春の声に
「心配するな、10秒で終わらせる」
ゲコ太は軽い調子で答えた。
「あれ?あの女の子って……」
追われている初春とゲコ太も、前方に立ちはだかる一方通行に気付いた。
「悪い、少しどいててくれ」
ゲコ太はそう言うと初春を降ろし、一人一方通行目掛けて突進する。
「あ、あの!大丈夫なんですか!?」
背中からの初春の声に
「心配するな、10秒で終わらせる」
ゲコ太は軽い調子で答えた。
★★★★★★★★★★★★
単身突っ込んでくるゲコ太。
「初手は譲ってやるぜェ。もっとも、俺に当てられたらだがなァ」
一方通行は構えもせずにだらりとした姿勢を取る。
ゲコ太は右腕を振りかぶり、拳を一方通行の顔面めがけて振り下ろす。
「初手は譲ってやるぜェ。もっとも、俺に当てられたらだがなァ」
一方通行は構えもせずにだらりとした姿勢を取る。
ゲコ太は右腕を振りかぶり、拳を一方通行の顔面めがけて振り下ろす。
ゴッ
という音と共に
「ガッ……?」
一方通行が吹き飛んだ。
一方通行は直ぐ様立ち上がったが、その顔は驚愕の色に染まっている。
「反射が……働かねェだと?いや、違ェ。こいつはまさか……」
「反射が……働かねェだと?いや、違ェ。こいつはまさか……」
★★★★★★★★★★★★
「ぬぅ……あれは」
「知っているのか半蔵!」
大通りで繰り広げられる戦闘。
当然のように道行く人々はギャラリーと化し、距離をおいてゲコ太と一方通行に視線を集中させている。
そんなギャラリーの中の男二人組が何やら叫んでいる。
「あぁ、あれは木原神拳……一方通行の育ての親である木原数多、通称木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!が使用した秘拳だ。一方通行の反射が通常は自動でベクトルを逆向きにしていることを逆手に取り、放った拳を寸止めの要領で反射の直前に引き戻すことで『遠ざかる拳』を内側に反射させる攻撃……ッ。原理は簡単だが、光すら反射する一方通行の能力を逆手に取るってお前最早人間じゃねぇだろ、というぶっちゃけありえなーい神の如き技だ!」
「そんな技を使いこなすとは、あのカエル……何者なんだ……ッ!?」
「ぬぅ……あれは」
「知っているのか半蔵!」
大通りで繰り広げられる戦闘。
当然のように道行く人々はギャラリーと化し、距離をおいてゲコ太と一方通行に視線を集中させている。
そんなギャラリーの中の男二人組が何やら叫んでいる。
「あぁ、あれは木原神拳……一方通行の育ての親である木原数多、通称木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!が使用した秘拳だ。一方通行の反射が通常は自動でベクトルを逆向きにしていることを逆手に取り、放った拳を寸止めの要領で反射の直前に引き戻すことで『遠ざかる拳』を内側に反射させる攻撃……ッ。原理は簡単だが、光すら反射する一方通行の能力を逆手に取るってお前最早人間じゃねぇだろ、というぶっちゃけありえなーい神の如き技だ!」
「そんな技を使いこなすとは、あのカエル……何者なんだ……ッ!?」
★★★★★★★★★★★★
「ッハ……下らねェ小細工仕掛けやがって。いいぜェ。そっちがその気なら、こっちも手加減なしだァ!」
叫び地を蹴る一方通行はベクトルを操作し、その身を弾丸の速度で飛ばす。
だが、
「何ッ!?」
ゲコ太は上半身を反らしただけで一方通行を避け、更にその腹に膝を撃ち込む。
「ぐはァッ……!?」
当然のように寸止めされたそれは一方通行自身の能力を借りてその身体を上空に舞い上がらせた。
「……ッハ、ハン!今のもハンデだ。こ、今度こそ容赦しね………」
吹き飛ばされた状態で平静を装って言う一方通行は、そこで眼下にゲコ太の姿が無いことに気付いた。
「どこいきやがっ……!」
「ッハ……下らねェ小細工仕掛けやがって。いいぜェ。そっちがその気なら、こっちも手加減なしだァ!」
叫び地を蹴る一方通行はベクトルを操作し、その身を弾丸の速度で飛ばす。
だが、
「何ッ!?」
ゲコ太は上半身を反らしただけで一方通行を避け、更にその腹に膝を撃ち込む。
「ぐはァッ……!?」
当然のように寸止めされたそれは一方通行自身の能力を借りてその身体を上空に舞い上がらせた。
「……ッハ、ハン!今のもハンデだ。こ、今度こそ容赦しね………」
吹き飛ばされた状態で平静を装って言う一方通行は、そこで眼下にゲコ太の姿が無いことに気付いた。
「どこいきやがっ……!」
果たしてゲコ太はいた。
一方通行の目の前に。
通りに建つ建物の壁面に次々に足をかけ、吹き飛んだ一方通行の高さまで一気に駆け上がったのだ。
「何モンなンだ……テメェは…………」
「……………通りすがりの、ゲコ太の着ぐるみだ。別に覚える必要はない」
言葉と共にゲコ太の寸止め頭突きが炸裂し、一方通行は地面に叩きつけられた。
「何モンなンだ……テメェは…………」
「……………通りすがりの、ゲコ太の着ぐるみだ。別に覚える必要はない」
言葉と共にゲコ太の寸止め頭突きが炸裂し、一方通行は地面に叩きつけられた。