★★★★★★★★★★★★
「ドッカーン!!」
ステイルと土御門から見て、当麻達の向こう側にある壁が砕けた。
そこから擬声つきで現れたのは一方通行。
「みなぎってるゥ!!みなぎってるぞ俺はァ!ガスバス爆発ガスバス爆発ガスバス爆発!!ヒャハハハハハ!!!」
壊れた感じの発言を繰り返しながら、人間台風は前進する。
「ゲコ太ァくゥん!!どっこでェすかァ!?ヒャハハハハハ!!」
その進路には当麻と、そして舞夏、インデックス(と姫神)の姿があった。
「舞夏!」
「インデックス!」
土御門が地を蹴り一方通行へと突進し、ステイルがイノケンティウスを一方通行に向ける。
「アァ?誰だか知らねェがムダムダムダァ!今!俺は!超絶にみなぎって……」
「うお!何だこの風!?」
台風に一番近い場所にいた当麻は、風に巻き込まれて飛び上がった。
「うぉわ!?っと!」
当麻は咄嗟の判断ですぐ近くにある、風の影響を受けていない何かに右手で掴まった。
「ドッカーン!!」
ステイルと土御門から見て、当麻達の向こう側にある壁が砕けた。
そこから擬声つきで現れたのは一方通行。
「みなぎってるゥ!!みなぎってるぞ俺はァ!ガスバス爆発ガスバス爆発ガスバス爆発!!ヒャハハハハハ!!!」
壊れた感じの発言を繰り返しながら、人間台風は前進する。
「ゲコ太ァくゥん!!どっこでェすかァ!?ヒャハハハハハ!!」
その進路には当麻と、そして舞夏、インデックス(と姫神)の姿があった。
「舞夏!」
「インデックス!」
土御門が地を蹴り一方通行へと突進し、ステイルがイノケンティウスを一方通行に向ける。
「アァ?誰だか知らねェがムダムダムダァ!今!俺は!超絶にみなぎって……」
「うお!何だこの風!?」
台風に一番近い場所にいた当麻は、風に巻き込まれて飛び上がった。
「うぉわ!?っと!」
当麻は咄嗟の判断ですぐ近くにある、風の影響を受けていない何かに右手で掴まった。
即ち、一方通行の肩に。
バチィィン!!
という音が鳴り、
「ハ?」
能力が切れ、風の鎧を失った一方通行に、
「ウォォオォッ!?」
イノケンティウスの炎と土御門のゲコ太神拳が炸裂した。
一方通行はそのまま吹き飛び、自分で舞わせていた瓦礫の山に埋まり、静かになった。
「ハ?」
能力が切れ、風の鎧を失った一方通行に、
「ウォォオォッ!?」
イノケンティウスの炎と土御門のゲコ太神拳が炸裂した。
一方通行はそのまま吹き飛び、自分で舞わせていた瓦礫の山に埋まり、静かになった。
こうして、クリスマスの事件は今度こそ解決した。
★★★★★★★★★★★★
「どういうことだ舞夏!この写真は!?」
ステイルの炎の中でも壊れなかった学園都市製の携帯電話のディスプレイを舞夏に突きつけながら土御門が叫ぶ。
「あぁ、それ。下、下ー」
「下……?」
「下に繰るのだー」
「?」
よく分からないまま、義妹の言葉の通りに土御門がメール画面で下カーソルを押し続けていると、100行程の空白の後に
ステイルの炎の中でも壊れなかった学園都市製の携帯電話のディスプレイを舞夏に突きつけながら土御門が叫ぶ。
「あぁ、それ。下、下ー」
「下……?」
「下に繰るのだー」
「?」
よく分からないまま、義妹の言葉の通りに土御門がメール画面で下カーソルを押し続けていると、100行程の空白の後に
『なんて、嘘ぴょーん。冗談冗談ー。舞夏です。携帯変えたぞー。あ、あと今日の待ち合わせはセブンスミストの近くの喫茶店でよろしくー。』
という文があった。
「ねー」
「…………………」
「つまりは、全部君の早とちりということか」
「ぐッ!?」
溜め息をつきながらのステイルの言葉が土御門の胸に突き刺さる。
「……まぁいいけどね、今更何を言ったって変わらないし、ブローチもあの子の友人も戻ってきた。………さて、それじゃあ本来の目的に移るとしよう」
ステイルは口髭を装着し直し、ブローチの入った小箱を手にインデックスのもとへ歩いていく。
「? どうしたよステイル」
「あ、さっきのサンタさんなんだよ!」
「やぁ、遅れて申し訳ない」
ステイルは当麻(一方通行に掴まっていたものの、一方通行自身を狙っていたステイルと土御門の攻撃は直撃しなかった)を完全無視し、インデックスに話しかける。
「約束の物だ。受け取って欲しい」
「うん。…………開けていいのかな?」
「勿論」
「…………わぁ、綺麗」
中身をあらためたインデックスの感嘆の声を聞くと、
「そうか、よかった。……じゃあ、僕はこれで」
「うん、ばいばい!」
二人に背を向けて歩き去ろうとする。
「おい、そんなんでいいのかよ?何だったらもっと……」
「目的は果たした」
ステイルは当麻の言葉を遮り、背を向けたまま手を振って言う。
「メリークリスマス」
「ん、あぁ。メ、メリークリスマス……」
「ねー」
「…………………」
「つまりは、全部君の早とちりということか」
「ぐッ!?」
溜め息をつきながらのステイルの言葉が土御門の胸に突き刺さる。
「……まぁいいけどね、今更何を言ったって変わらないし、ブローチもあの子の友人も戻ってきた。………さて、それじゃあ本来の目的に移るとしよう」
ステイルは口髭を装着し直し、ブローチの入った小箱を手にインデックスのもとへ歩いていく。
「? どうしたよステイル」
「あ、さっきのサンタさんなんだよ!」
「やぁ、遅れて申し訳ない」
ステイルは当麻(一方通行に掴まっていたものの、一方通行自身を狙っていたステイルと土御門の攻撃は直撃しなかった)を完全無視し、インデックスに話しかける。
「約束の物だ。受け取って欲しい」
「うん。…………開けていいのかな?」
「勿論」
「…………わぁ、綺麗」
中身をあらためたインデックスの感嘆の声を聞くと、
「そうか、よかった。……じゃあ、僕はこれで」
「うん、ばいばい!」
二人に背を向けて歩き去ろうとする。
「おい、そんなんでいいのかよ?何だったらもっと……」
「目的は果たした」
ステイルは当麻の言葉を遮り、背を向けたまま手を振って言う。
「メリークリスマス」
「ん、あぁ。メ、メリークリスマス……」
ステイルはそのまま佐天のもとに戻ってきた。
「本当にスマン!この通りだ!」
「いいですよ、事件が起こってないなら、それが一番ですから」
「いいですよ、事件が起こってないなら、それが一番ですから」
という初春と土御門の会話を横に、佐天に告げる。
「付き合ってもらって悪かったね」
「いや、そんな!むしろこっちの方が助けられたって言うか……」
「それでも迷惑を掛けたのには違いないさ。アレは僕の同僚でもあるしね。まぁ、お礼と言ってはなんだが……」
ステイルは懐から小箱を取り出した。
「あれ?これ、さっきあの子に……」
「それとは別だよ」
「えっと……開けても?」
「どうぞ」
佐天が箱を開けると、中には小さな十字架の形をしたブローチが入っていた。
「わ、綺麗……で、でもいいの?こんな高そうなの……」
「構わないよ、それにそんなに高いものではないからね」
それは、ステイルがもともとインデックスへのクリスマス用に用意していたものだ。
煙草の量を減らし、生活費を削り、浮いた金で購入した1万5千円のブローチ。
だが、これを買った後に神裂が例のブローチの話を持ち出してきた。
ブローチというだけならまだしも、意匠まで同じものを2つ渡すのはよろしくない。
そして渡すのを止めるとしたら、それは当然純銀製でイギリスの職人の手による神裂のブローチではなく、安物の、ステイルが買ったブローチの方だろう。
そんな経緯から、ずっとステイルの懐に隠れていたブローチだったが、
「うん、ありがとうっ。大切にするねっ」
「あぁ」
(まぁ、これで良かったのかもしれないな)
そう思い、ステイルは心の中で苦笑を浮かべた。
「付き合ってもらって悪かったね」
「いや、そんな!むしろこっちの方が助けられたって言うか……」
「それでも迷惑を掛けたのには違いないさ。アレは僕の同僚でもあるしね。まぁ、お礼と言ってはなんだが……」
ステイルは懐から小箱を取り出した。
「あれ?これ、さっきあの子に……」
「それとは別だよ」
「えっと……開けても?」
「どうぞ」
佐天が箱を開けると、中には小さな十字架の形をしたブローチが入っていた。
「わ、綺麗……で、でもいいの?こんな高そうなの……」
「構わないよ、それにそんなに高いものではないからね」
それは、ステイルがもともとインデックスへのクリスマス用に用意していたものだ。
煙草の量を減らし、生活費を削り、浮いた金で購入した1万5千円のブローチ。
だが、これを買った後に神裂が例のブローチの話を持ち出してきた。
ブローチというだけならまだしも、意匠まで同じものを2つ渡すのはよろしくない。
そして渡すのを止めるとしたら、それは当然純銀製でイギリスの職人の手による神裂のブローチではなく、安物の、ステイルが買ったブローチの方だろう。
そんな経緯から、ずっとステイルの懐に隠れていたブローチだったが、
「うん、ありがとうっ。大切にするねっ」
「あぁ」
(まぁ、これで良かったのかもしれないな)
そう思い、ステイルは心の中で苦笑を浮かべた。
★★★★★★★★★★★★
「あーあ。派手にやりやがって、着ぐるみ弁償だぜよ。あれって幾らくらいするもんなのかにゃー」
マジモードから通常モードに口調を切り替えた土御門は、初春と佐天に礼と謝罪を告げた後舞夏を連れてその場から去って行った。
当麻も、インデックスと
「というか私はどうして出てきたの?」
とひとりごちる姫神を連れて消えてしまった。
そしてステイルもそれに続こうと初春と佐天に別れを告げて立ち去ろうとしたのだが、
「あの、さっ」
「ん?」
その背中に佐天が声をかけた。
「えーと、ぶっちゃけたこと聞くけど、さっきの女の子にプレゼント渡したっていうのは、やっぱりあの子のこと……好き、てことなんだよね」
「ん………まぁ、そうなるな」
ステイルはぎこちなく答える。
「じゃ、じゃああの一緒にいた男の子は?兄妹って感じには見えないし……やっぱり……」
言いにくそうにする佐天。
(そうか、端から見たら僕はまるで横恋慕の間男と同じなのだな……いや、まるでも何も、そのまんまじゃないか)
「あーあ。派手にやりやがって、着ぐるみ弁償だぜよ。あれって幾らくらいするもんなのかにゃー」
マジモードから通常モードに口調を切り替えた土御門は、初春と佐天に礼と謝罪を告げた後舞夏を連れてその場から去って行った。
当麻も、インデックスと
「というか私はどうして出てきたの?」
とひとりごちる姫神を連れて消えてしまった。
そしてステイルもそれに続こうと初春と佐天に別れを告げて立ち去ろうとしたのだが、
「あの、さっ」
「ん?」
その背中に佐天が声をかけた。
「えーと、ぶっちゃけたこと聞くけど、さっきの女の子にプレゼント渡したっていうのは、やっぱりあの子のこと……好き、てことなんだよね」
「ん………まぁ、そうなるな」
ステイルはぎこちなく答える。
「じゃ、じゃああの一緒にいた男の子は?兄妹って感じには見えないし……やっぱり……」
言いにくそうにする佐天。
(そうか、端から見たら僕はまるで横恋慕の間男と同じなのだな……いや、まるでも何も、そのまんまじゃないか)
インデックスは上条当麻と幸せに暮らしていて、
ステイルのことなど――少なくとも同胞としての、友人としてのステイルのことなど、まるで知らなくて――。
ステイルのことなど――少なくとも同胞としての、友人としてのステイルのことなど、まるで知らなくて――。
佐天も興味本位で聞いているのではないのだろう。
おそらくそんな無茶な恋愛を――少なくともそう見えることを――しているステイルを心配してのことだろう。
だが、
「いや、どうかな。恋仲ではないだろう。彼らは……何だろうな、言葉では表しにくい関係だ。あぁ、でも気にしないでくれ。多分君の考えと僕の彼女への思いとは、少し違うから」
おそらくそんな無茶な恋愛を――少なくともそう見えることを――しているステイルを心配してのことだろう。
だが、
「いや、どうかな。恋仲ではないだろう。彼らは……何だろうな、言葉では表しにくい関係だ。あぁ、でも気にしないでくれ。多分君の考えと僕の彼女への思いとは、少し違うから」
そう、これは恋愛感情ではない。
例えそうだとしても、ただそれだけではない。
これは――誓い。
ただ自分が自分の為に立てた誓い。
見返りを求めない、必要としない、一方的な約束事。
故にそこに彼女の意志は関係ないし、彼女への思いも関係ない。
誓いを守り、彼女を護る。
それだけがステイル・マグヌスという人間の全てなのだ――。
例えそうだとしても、ただそれだけではない。
これは――誓い。
ただ自分が自分の為に立てた誓い。
見返りを求めない、必要としない、一方的な約束事。
故にそこに彼女の意志は関係ないし、彼女への思いも関係ない。
誓いを守り、彼女を護る。
それだけがステイル・マグヌスという人間の全てなのだ――。
「えっと……じゃあ私、今凄く場違いなこと言っちゃった?」
「………いいや、ありがとう。君は優しいね」
「へっ?」
「それじゃあ、さようなら。――涙子」
「え、さ、ささ、さようならっ」
何故か顔を赤らめる佐天に背を向け、ステイルは今度こそその場を後にした。
「………いいや、ありがとう。君は優しいね」
「へっ?」
「それじゃあ、さようなら。――涙子」
「え、さ、ささ、さようならっ」
何故か顔を赤らめる佐天に背を向け、ステイルは今度こそその場を後にした。
★★★★★★★★★★★★
「………佐天さん」
ステイルを見送った後、初春が佐天にずい、と顔を近づけて問いかける。
「あの男の方、一緒に行動してたり、プレゼントもらってたり……佐天さん、まさか……まさか……」
「え?いやいや違うよっ!?初春を探すの手伝ってくれただけで……」
慌てて弁解する佐天だったが、
「顔も良いし、背も高いし、申し分のない感じの方ですしね……はぁ」
初春はその言葉を聞かず勝手に落ち込みため息をつく。
「違うって!そんなんじゃ全然なくて……」
「あぁ、私は冗談で言いましたけど、佐天さんの方にはもうお相手がいらっしゃったんですね……」
「だから、私は初春のことが……」
そこで佐天ははた、と気付いた。
初春が含み笑いで佐天を見上げていることに。
「私のことが、何ですか?」
「あぅ、あぅあ……」
またもからかわれたことに、顔を真っ赤にして恥ずかしがる佐天。
「何なんですかぁ?」
「…………ば、ばーかばーか!初春のばーか!」
「ふふふ、佐天さんは可愛いですねぇ」
ステイルを見送った後、初春が佐天にずい、と顔を近づけて問いかける。
「あの男の方、一緒に行動してたり、プレゼントもらってたり……佐天さん、まさか……まさか……」
「え?いやいや違うよっ!?初春を探すの手伝ってくれただけで……」
慌てて弁解する佐天だったが、
「顔も良いし、背も高いし、申し分のない感じの方ですしね……はぁ」
初春はその言葉を聞かず勝手に落ち込みため息をつく。
「違うって!そんなんじゃ全然なくて……」
「あぁ、私は冗談で言いましたけど、佐天さんの方にはもうお相手がいらっしゃったんですね……」
「だから、私は初春のことが……」
そこで佐天ははた、と気付いた。
初春が含み笑いで佐天を見上げていることに。
「私のことが、何ですか?」
「あぅ、あぅあ……」
またもからかわれたことに、顔を真っ赤にして恥ずかしがる佐天。
「何なんですかぁ?」
「…………ば、ばーかばーか!初春のばーか!」
「ふふふ、佐天さんは可愛いですねぇ」
★★★★★★★★★★★★
「さて。派手にやってしまった分、後片付けも大変だな」
ステイルは初春と佐天が言い合っている路地の近くにある5階建てのビルの屋上にいた。
事件自体は何でもなかったとは言え、派手にイノケンティウスを暴れさせてしまったのだ。
辺りには未だに焦げカスが転がっているし、ルーンのカードもあちこちに張り付けたまま。
更には一方通行によって破壊された瓦礫もある。
この状況を誰かに見られたら、色々と面倒くさいことになるだろう。
ステイルはビルの縁にテープでつけたルーンのカードを剥がして回収すると、続いて懐から煙草を取り出す。
「む……」
だが出てきたのは煙草ではなくポッキーの箱。
あの後佐天から箱ごと残りを貰ったのだ。
「あぁ」
そこにきて、ようやく煙草を切らしていたことに気付いたステイルは
「まぁ、いいか」
とポッキーを一本取り出して口にくわえた。
「ふむ……甘いのも、悪くはないね」
「おや、貴方にしては随分可愛らしい物をくわえているんですね」
ふと後ろから声がかかった。
振り返らなくとも声の主は分かる。
ステイルの同僚、神裂火織だ。
「わざわざ済まないね、人払いなんてさせて」
上条当麻の右手によって、ステイルの張った人払いのルーンの効果は切れてしまっていた。
だがその後、インデックスを探して駆けつけてきた神裂が代わりに人払いの結界を張ってくれたおかげで、この現場はまだ人の目に触れないままでいられるのである。「大したことではありませんよ」
「店は?」
「あの少女の外見の教師に任せてきてしまいました」
「そうか、悪いことをしたな」
ステイルはくわえたポッキーを煙草のように揺らしながら言う。
「……禁煙ですか?」
そう聞く神裂はしかし、おそらく全て知っているのだろう。
当麻が来た辺りから神裂の気配はあった。
それからずっとステイル達の様子を窺っていたならば、ステイルが佐天にブローチを渡したところも見ていただろう。
例え遠くにいたとしても――視力8.0の彼女のことだ――そのブローチがインデックスにあげたものに似ていることも分かっただろう。
そしてそこから推測して、佐天にあげたブローチはステイルがインデックスの為に用意したものだということも理解しているのだろう。
それでもそう聞いてくれるのは、ステイルの面目の為だ。
「あぁ、そんな感じだ」
肯定の返事をした後、するとこれからしばらく神裂の前で煙草を吸えないな、と気付く。
(まぁ……しばらくは代わりにスナック菓子でもいいか)
ポッキーをくわえたまま、ふとステイルは眼下の二人を見た。
そして周囲にある未回収のルーンのカードを確認すると、
「メリークリスマス」
新しいポッキーを取り出し、それをまるで魔法のステッキのように振った。
「さて。派手にやってしまった分、後片付けも大変だな」
ステイルは初春と佐天が言い合っている路地の近くにある5階建てのビルの屋上にいた。
事件自体は何でもなかったとは言え、派手にイノケンティウスを暴れさせてしまったのだ。
辺りには未だに焦げカスが転がっているし、ルーンのカードもあちこちに張り付けたまま。
更には一方通行によって破壊された瓦礫もある。
この状況を誰かに見られたら、色々と面倒くさいことになるだろう。
ステイルはビルの縁にテープでつけたルーンのカードを剥がして回収すると、続いて懐から煙草を取り出す。
「む……」
だが出てきたのは煙草ではなくポッキーの箱。
あの後佐天から箱ごと残りを貰ったのだ。
「あぁ」
そこにきて、ようやく煙草を切らしていたことに気付いたステイルは
「まぁ、いいか」
とポッキーを一本取り出して口にくわえた。
「ふむ……甘いのも、悪くはないね」
「おや、貴方にしては随分可愛らしい物をくわえているんですね」
ふと後ろから声がかかった。
振り返らなくとも声の主は分かる。
ステイルの同僚、神裂火織だ。
「わざわざ済まないね、人払いなんてさせて」
上条当麻の右手によって、ステイルの張った人払いのルーンの効果は切れてしまっていた。
だがその後、インデックスを探して駆けつけてきた神裂が代わりに人払いの結界を張ってくれたおかげで、この現場はまだ人の目に触れないままでいられるのである。「大したことではありませんよ」
「店は?」
「あの少女の外見の教師に任せてきてしまいました」
「そうか、悪いことをしたな」
ステイルはくわえたポッキーを煙草のように揺らしながら言う。
「……禁煙ですか?」
そう聞く神裂はしかし、おそらく全て知っているのだろう。
当麻が来た辺りから神裂の気配はあった。
それからずっとステイル達の様子を窺っていたならば、ステイルが佐天にブローチを渡したところも見ていただろう。
例え遠くにいたとしても――視力8.0の彼女のことだ――そのブローチがインデックスにあげたものに似ていることも分かっただろう。
そしてそこから推測して、佐天にあげたブローチはステイルがインデックスの為に用意したものだということも理解しているのだろう。
それでもそう聞いてくれるのは、ステイルの面目の為だ。
「あぁ、そんな感じだ」
肯定の返事をした後、するとこれからしばらく神裂の前で煙草を吸えないな、と気付く。
(まぁ……しばらくは代わりにスナック菓子でもいいか)
ポッキーをくわえたまま、ふとステイルは眼下の二人を見た。
そして周囲にある未回収のルーンのカードを確認すると、
「メリークリスマス」
新しいポッキーを取り出し、それをまるで魔法のステッキのように振った。
★★★★★★★★★★★★
「……雪?」
佐天は頭上から静かに舞い降りてくる小さな粒を見つけて言葉を止めた。
「本当ですか?予報では降らないって話でしたけど……」
初春もそれにつられて上を見上げる。
だが彼女達が空の中に見つけたのは冷たい粉雪ではなく、
「あったかい…」
ステイルの魔術によって生み出された火の粉だった。
自ら明らむその舞い姿は空の漆黒の中にあってより一層映え、低温に調節されたそれは触れればその肌に僅かな温かみを残して溶けるように消える。
「綺麗ですね……」
初春が感嘆の声を漏らす。
「うん…」
佐天もその言葉に頷く。
ひとしきりの沈黙。
その後、初春は手袋をはめていない手で、同じく片手袋の佐天の裸の手を握った。
「どうですか、佐天さん。今度はちゃんと温かいですよね?」
「え?……あ、ホントだ」
確かに初春の手からはカイロを握っているかのような温かみが感じられた。
「あ、そっか。初春の能力……」
触れている物の温度を一定に保つ能力。
炎の雪の温かみが残っているということなのだろう。
「はい。……あんまり役に立ちませんけどね」
苦笑しながら言う初春に
「ううん」
佐天は首を横に振って答える。
「役に立ってるよ」
「そうですか?」
「だって……」
佐天は握る手に力を込める。
「だって、こんなに温かい」
「それだけですよ?」
「それだけで十分だよ」
「そう、でしょうか…」
「うん」
「なら良かったです」
「ん…………ねぇ、初春」
「何ですか?」
「私は初春のこと、大好きだよ」
「……はい。私も、佐天さんのこと大好きですよ」
そして二人は炎の雪が降り止むまでその場に止まり、幻想的な光の風景を見上げ続けた。
「……雪?」
佐天は頭上から静かに舞い降りてくる小さな粒を見つけて言葉を止めた。
「本当ですか?予報では降らないって話でしたけど……」
初春もそれにつられて上を見上げる。
だが彼女達が空の中に見つけたのは冷たい粉雪ではなく、
「あったかい…」
ステイルの魔術によって生み出された火の粉だった。
自ら明らむその舞い姿は空の漆黒の中にあってより一層映え、低温に調節されたそれは触れればその肌に僅かな温かみを残して溶けるように消える。
「綺麗ですね……」
初春が感嘆の声を漏らす。
「うん…」
佐天もその言葉に頷く。
ひとしきりの沈黙。
その後、初春は手袋をはめていない手で、同じく片手袋の佐天の裸の手を握った。
「どうですか、佐天さん。今度はちゃんと温かいですよね?」
「え?……あ、ホントだ」
確かに初春の手からはカイロを握っているかのような温かみが感じられた。
「あ、そっか。初春の能力……」
触れている物の温度を一定に保つ能力。
炎の雪の温かみが残っているということなのだろう。
「はい。……あんまり役に立ちませんけどね」
苦笑しながら言う初春に
「ううん」
佐天は首を横に振って答える。
「役に立ってるよ」
「そうですか?」
「だって……」
佐天は握る手に力を込める。
「だって、こんなに温かい」
「それだけですよ?」
「それだけで十分だよ」
「そう、でしょうか…」
「うん」
「なら良かったです」
「ん…………ねぇ、初春」
「何ですか?」
「私は初春のこと、大好きだよ」
「……はい。私も、佐天さんのこと大好きですよ」
そして二人は炎の雪が降り止むまでその場に止まり、幻想的な光の風景を見上げ続けた。
★★★★★★★★★★★★
「随分と興のあることをするのですね、ステイル。まるで道化のようですよ?」
「今更何を言っているんだい神裂。僕はずっと昔から、インデックスのための道化だよ」
「随分と興のあることをするのですね、ステイル。まるで道化のようですよ?」
「今更何を言っているんだい神裂。僕はずっと昔から、インデックスのための道化だよ」
★★★★★★★★★★★★
「おじさん、生一丁!」
「へい」
高架下の屋台で、月詠小萌は一杯ひっかけていた。
その隣には当然の様に黄泉川愛穂と鉄装綴がいた。
「いやー、ステイルちゃん達がどこかへ行ってしまって大変でしたけど、何故かやたらと繁盛してステイルちゃんの目標金額を軽く越えるお金が入ったので、その余剰分を拝借してこうして飲み会が出来るんですから、結果オーライなのですよ~」
「ゲコ太事件も解決したって連絡があったし、財布も心配しなくていいから、今日はじゃんじゃん飲むじゃん」
「あの………私って、必要ですか?」
そんな三人の隣で
「オイ、オヤジ。缶コーヒーおかわり」
「ヘイ」
一方通行は缶コーヒーで酔い潰れていた。
「何なんだよ、俺は学園都市最強のレベル5だぞ……」
「まぁまぁ、過ぎたことを言ってもしょうがありません、飲んで忘れちゃいうのが一番ですよー」
「そうじゃん一方通行。じゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食うじゃん。今日は私らの驕りじゃん。あ、でもアルコールは駄目じゃん」
「私って、一話かけて掘り下げる必要ありましたか?」
そんな四人の隣で
「おじさんチョコレートパフェってミサカはミサカはおよそ屋台になさそうなものを注文してみたり」
「ヘイ」
打ち止めがニコニコ顔でパフェを頼んでいた。
「ほれ打ち止め。お前も何か言ってやるじゃん」
「うーん、あなたが凹んででいる状況って中々ないから、見ていて結構楽しいかもってミサカはミサカは本心を述べてみたり」
「あっはっは!酷い言われ様じゃん」
「今日は賑やかでいいですねぇ」
「私………この仕事向いてないかも」
「おじさん、生一丁!」
「へい」
高架下の屋台で、月詠小萌は一杯ひっかけていた。
その隣には当然の様に黄泉川愛穂と鉄装綴がいた。
「いやー、ステイルちゃん達がどこかへ行ってしまって大変でしたけど、何故かやたらと繁盛してステイルちゃんの目標金額を軽く越えるお金が入ったので、その余剰分を拝借してこうして飲み会が出来るんですから、結果オーライなのですよ~」
「ゲコ太事件も解決したって連絡があったし、財布も心配しなくていいから、今日はじゃんじゃん飲むじゃん」
「あの………私って、必要ですか?」
そんな三人の隣で
「オイ、オヤジ。缶コーヒーおかわり」
「ヘイ」
一方通行は缶コーヒーで酔い潰れていた。
「何なんだよ、俺は学園都市最強のレベル5だぞ……」
「まぁまぁ、過ぎたことを言ってもしょうがありません、飲んで忘れちゃいうのが一番ですよー」
「そうじゃん一方通行。じゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食うじゃん。今日は私らの驕りじゃん。あ、でもアルコールは駄目じゃん」
「私って、一話かけて掘り下げる必要ありましたか?」
そんな四人の隣で
「おじさんチョコレートパフェってミサカはミサカはおよそ屋台になさそうなものを注文してみたり」
「ヘイ」
打ち止めがニコニコ顔でパフェを頼んでいた。
「ほれ打ち止め。お前も何か言ってやるじゃん」
「うーん、あなたが凹んででいる状況って中々ないから、見ていて結構楽しいかもってミサカはミサカは本心を述べてみたり」
「あっはっは!酷い言われ様じゃん」
「今日は賑やかでいいですねぇ」
「私………この仕事向いてないかも」
こうして、クリスマスの夜は更けていく。
「お姉様ぁ!私、お姉様の為にプレゼントを用意しましたの!それは、このわ・た・く………ひでふっ!」
「下着姿で不気味なダンスを踊りながら近寄ってくんな!この変態黒子!」
「変態じゃないんですの!仮に変態だとしても、私は変態という名の淑女ですの!」
「下着姿で不気味なダンスを踊りながら近寄ってくんな!この変態黒子!」
「変態じゃないんですの!仮に変態だとしても、私は変態という名の淑女ですの!」
伝えられない思いを抱く人にも
「はぁ、大吾先生……」
気持ちの通じ合った二人にも
「どうも、お世話になりました」
「もう帰って来るなよ、黒妻。…あぁ、そういや迎えを呼んでおいたぞ」
「迎え………?」
「お久しぶりです、先輩」
「……美偉」
「もう帰って来るなよ、黒妻。…あぁ、そういや迎えを呼んでおいたぞ」
「迎え………?」
「お久しぶりです、先輩」
「……美偉」
存在感が臼井さんにも
「来年から。本気出す」
いつも通りの連中にも
「千円!せめて千円貸してくれ浜面!」
「知らん。こっちだって厳しいんだ」
「浜面ー。なんで待ち合わせ場所にいないんですか。超探しましたよ」
「はまづら、つかれた」
「あ、スマン滝壺、絹旗。そこでこの馬鹿と会ってよ……」
「お!超おいしそうなケーキですね。浜面にしては気のきいたことをするじゃないですか」
「は?いや違うぞワンピ少女。これは俺が全財産をはたいて買った……」
「何を言ってるのか超わかりませんが。あなたは浜面の物は私の物、浜面の知り合いの物も須く私の物という絶対のルールを超知らないようですね」
「いやそんなルール俺も初耳だぞ!?ってか範囲広すぎだろっ!」
「え?浜面ってそんなに友達がいるんですか!?超驚きです!」
「うわっ!この女ひでぇ!」
「知らん。こっちだって厳しいんだ」
「浜面ー。なんで待ち合わせ場所にいないんですか。超探しましたよ」
「はまづら、つかれた」
「あ、スマン滝壺、絹旗。そこでこの馬鹿と会ってよ……」
「お!超おいしそうなケーキですね。浜面にしては気のきいたことをするじゃないですか」
「は?いや違うぞワンピ少女。これは俺が全財産をはたいて買った……」
「何を言ってるのか超わかりませんが。あなたは浜面の物は私の物、浜面の知り合いの物も須く私の物という絶対のルールを超知らないようですね」
「いやそんなルール俺も初耳だぞ!?ってか範囲広すぎだろっ!」
「え?浜面ってそんなに友達がいるんですか!?超驚きです!」
「うわっ!この女ひでぇ!」
そして、薄幸な主人公にも
「インデックスはね、とうまのことが大好きなんだよ」
「はいはいそうですね。さて、今日の晩飯は……」
「うー!真面目な話なの!軽く流さないでほしいんだよ!」
「ま、クリスマスだし。ちょっと奮発して鶏でも買うか、インデックス」
「わー!やった!一月ぶりのお肉なんだよ!」
「はいはいそうですね。さて、今日の晩飯は……」
「うー!真面目な話なの!軽く流さないでほしいんだよ!」
「ま、クリスマスだし。ちょっと奮発して鶏でも買うか、インデックス」
「わー!やった!一月ぶりのお肉なんだよ!」
全ての人に
――メリー・クリスマス。