♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
9月26日。
大覇星祭終了日の翌日ということで、学校も休みであるその日の朝。
学園都市内のショッピングモールの一角で。
「あっちゃぁ、時間間違えちゃったか…」
佐天涙子は携帯のディスプレイに表示された現在時刻を確認してため息をつく。
今日は初春と買い物をする約束をしているのだが、待ち合わせの時間よりも一時間以上も早い。
寝坊したと思って慌てて支度をして部屋を飛び出したのだが、どうやら勘違いしてしまっていたらしい。
「しまったなぁ。どっか暇潰すところとかあればいいんだけど…」
急いでいたとは言え朝は適当に食べてきたので喫茶店に入る気にもなれない。
どこか一時間程の小暇を潰せるところはないかと思って辺りを見回していた佐天は、
「おっ」
通りの隅に小さな映画館の存在を認めた。
どうやらメジャーな長編映画ではなく、マイナーなショートフィルムを扱っているらしい。
(あ。あのタイトル知ってる。何でだっけ……あぁ、アメリカで別れ際にビバリーさんが言ってたやつだ)
9月26日。
大覇星祭終了日の翌日ということで、学校も休みであるその日の朝。
学園都市内のショッピングモールの一角で。
「あっちゃぁ、時間間違えちゃったか…」
佐天涙子は携帯のディスプレイに表示された現在時刻を確認してため息をつく。
今日は初春と買い物をする約束をしているのだが、待ち合わせの時間よりも一時間以上も早い。
寝坊したと思って慌てて支度をして部屋を飛び出したのだが、どうやら勘違いしてしまっていたらしい。
「しまったなぁ。どっか暇潰すところとかあればいいんだけど…」
急いでいたとは言え朝は適当に食べてきたので喫茶店に入る気にもなれない。
どこか一時間程の小暇を潰せるところはないかと思って辺りを見回していた佐天は、
「おっ」
通りの隅に小さな映画館の存在を認めた。
どうやらメジャーな長編映画ではなく、マイナーなショートフィルムを扱っているらしい。
(あ。あのタイトル知ってる。何でだっけ……あぁ、アメリカで別れ際にビバリーさんが言ってたやつだ)
予定より早く終わった広域社会学習。
そこで知り合ったのがビバリー・シースルーという若手の映画監督である。
彼女はもともとハリウッドで賞を取るようなメジャーな作品を撮っていたのだが、学芸都市での騒動に懲りてこれからはヨーロッパで活動するつもりだとこぼしていた。
その内ショートフィルムでも撮るから学園都市に流れたら見てくれ、と言っていたが、目の前にあるタイトルはそれではない。
ビバリーが映画作りで是非参考にしたい、と列挙していたショートフィルムのタイトルの内の一つである。
(30分のフィルムか……料金も安いみたいだし、暇つぶしにはもってこいか)
佐天はそう思うと、小さな映画館の中へ入っていった。
そこで知り合ったのがビバリー・シースルーという若手の映画監督である。
彼女はもともとハリウッドで賞を取るようなメジャーな作品を撮っていたのだが、学芸都市での騒動に懲りてこれからはヨーロッパで活動するつもりだとこぼしていた。
その内ショートフィルムでも撮るから学園都市に流れたら見てくれ、と言っていたが、目の前にあるタイトルはそれではない。
ビバリーが映画作りで是非参考にしたい、と列挙していたショートフィルムのタイトルの内の一つである。
(30分のフィルムか……料金も安いみたいだし、暇つぶしにはもってこいか)
佐天はそう思うと、小さな映画館の中へ入っていった。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「むぅ、これは超失敗でしたね…」
絹旗最愛はエンドロールが流れ始めたスクリーンから目を離すと、溜め息をついた。
ここは学園都市内にある映画館のひとつ。
他の劇場ではやっていないよなマイナー作品を上映している、小さな、そして変わりものの劇場である。
当然と言ってしまっていいのかはわからないが、そんな酔狂な映画館の中にいるのは、現在絹旗最愛ただ一人しかいなかった。
「タイトルからは当たりの匂いが超していたのですが……、まぁ、たまにはこういうこともないとC級映画は楽しめませんからね。次の良作のための未来投資だと思うことにしましょう」
絹旗はそう呟くと映画館のシートから立ち上がり、クーっと両腕を突き上げて大きく伸びをする。
そんなことをしてもほぼセーターにしか見えない極ミニワンピースの下からショーツが顔を出すことがないのは、流石と言うべきだろうか。
「今度は誰か付き合わせてやりましょうかね。あーでもアイテムの方々は誰も彼も無理そうですからね。強権発動で超自由に使える小間使いとか欲しいものです」
そう呟いて絹旗が席を立ちかけると、エンドロールを流し終えたスクリーンに再び鮮やかな色が灯った。
「……あぁ、そういえば抱き合わせでもう一本あるんでしたっけ。んー、あまり期待はできませんが、今日は超暇ですしね。見ていきましょうか」
絹旗はすとん、と椅子に座り直す。
「むぅ、これは超失敗でしたね…」
絹旗最愛はエンドロールが流れ始めたスクリーンから目を離すと、溜め息をついた。
ここは学園都市内にある映画館のひとつ。
他の劇場ではやっていないよなマイナー作品を上映している、小さな、そして変わりものの劇場である。
当然と言ってしまっていいのかはわからないが、そんな酔狂な映画館の中にいるのは、現在絹旗最愛ただ一人しかいなかった。
「タイトルからは当たりの匂いが超していたのですが……、まぁ、たまにはこういうこともないとC級映画は楽しめませんからね。次の良作のための未来投資だと思うことにしましょう」
絹旗はそう呟くと映画館のシートから立ち上がり、クーっと両腕を突き上げて大きく伸びをする。
そんなことをしてもほぼセーターにしか見えない極ミニワンピースの下からショーツが顔を出すことがないのは、流石と言うべきだろうか。
「今度は誰か付き合わせてやりましょうかね。あーでもアイテムの方々は誰も彼も無理そうですからね。強権発動で超自由に使える小間使いとか欲しいものです」
そう呟いて絹旗が席を立ちかけると、エンドロールを流し終えたスクリーンに再び鮮やかな色が灯った。
「……あぁ、そういえば抱き合わせでもう一本あるんでしたっけ。んー、あまり期待はできませんが、今日は超暇ですしね。見ていきましょうか」
絹旗はすとん、と椅子に座り直す。
と、
「わっ、始まってる!」
後方の重たい扉が開き、劇場内に光が漏れてきた。
(おや、珍しいこともあるものですね。こんな超マイナー劇場に足を運ぶ人間がいるなんて)
自分のことは完全に棚に上げてそんなことを思った絹旗だったが、そこまで気にするでもなく、早速展開し出したスクリーンに思考を集中させていった。
「わっ、始まってる!」
後方の重たい扉が開き、劇場内に光が漏れてきた。
(おや、珍しいこともあるものですね。こんな超マイナー劇場に足を運ぶ人間がいるなんて)
自分のことは完全に棚に上げてそんなことを思った絹旗だったが、そこまで気にするでもなく、早速展開し出したスクリーンに思考を集中させていった。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
30分後。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再びエンドロールが流れ始めた劇場内に、二つの雄叫びが上がっていた。
当然その主は二人しかいない観客達である。
「やばい!超やばいです!こんな超すばらしいフィルムが存在していたなんて!」
絹旗が大声を上げると、
「ですよねですよね!ビックリしました!」
先ほど入ってきた子だろう、後ろの席から身を乗り出してきた少女が興奮気味に同意する。
「いやぁあの主人公の少年の機転の効き様!次に使用されるパーツを予測してそれだけに爆薬を仕掛ける……流石の私でもそこまでは考えられませんでした!」
「主人公が不敵に笑う背後で爆発して倒壊する巨大オブジェクト……!すごい画でしたね!」
二人はペチャクチャと今のフィルムの感想を言い合う。
二人の勢いは止まらず、気がついたらエンドロールも終了してスクリーンの幕が閉じており、劇場内に清掃員らしきおじさんが入ってきた。
小劇場で抱き合わせとは言え入れ替え制はあるのだろう、迷惑そうにこちらを見るおじさん。
そこで絹旗は少女に提案する。
「この後時間ありますよね!」
すると少女は
「はい!もちろん!」
一瞬の躊躇なくそう答えた。
30分後。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再びエンドロールが流れ始めた劇場内に、二つの雄叫びが上がっていた。
当然その主は二人しかいない観客達である。
「やばい!超やばいです!こんな超すばらしいフィルムが存在していたなんて!」
絹旗が大声を上げると、
「ですよねですよね!ビックリしました!」
先ほど入ってきた子だろう、後ろの席から身を乗り出してきた少女が興奮気味に同意する。
「いやぁあの主人公の少年の機転の効き様!次に使用されるパーツを予測してそれだけに爆薬を仕掛ける……流石の私でもそこまでは考えられませんでした!」
「主人公が不敵に笑う背後で爆発して倒壊する巨大オブジェクト……!すごい画でしたね!」
二人はペチャクチャと今のフィルムの感想を言い合う。
二人の勢いは止まらず、気がついたらエンドロールも終了してスクリーンの幕が閉じており、劇場内に清掃員らしきおじさんが入ってきた。
小劇場で抱き合わせとは言え入れ替え制はあるのだろう、迷惑そうにこちらを見るおじさん。
そこで絹旗は少女に提案する。
「この後時間ありますよね!」
すると少女は
「はい!もちろん!」
一瞬の躊躇なくそう答えた。
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『お掛けになった番号は、現在電波が届かないところか……』
「繋がらない……佐天さん電源切っちゃってるんでしょうか」
初春飾利は佐天との待ち合わせ場所で途方に暮れる。
待ち合わせの時間から30分も経っているのに佐天は姿を現さない。
その上なぜか携帯も繋がらない。
「映画館にでも入らない限り携帯の電源を切るような人じゃないと思うんですが……寝坊ですかねぇ」
とりあえず初春はもう少しだけ待ってみることにした。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ヒロインの子も超可憐でしたね!そしてエロスを忘れない精神も超見事でした!」
「あのベルトが締まりすぎちゃった辺りだよね!確かにあれはエロス!でも私はむしろ主人公の上司の巨乳っぷりがヤバかったかな!」
「あぁ、あれは超反則でしたね!あれで20超えてないってのは絶対嘘です!」
「あ、でも知り合いにあれよりおっぱい大きい未成年がいるよ」
「なんと!本当ですか佐天さん!」
佐天涙子と絹旗最愛は映画館近くの喫茶店で顔を突き合わせて先ほどの映画の感想を言い合っていた。
互いに自己紹介を済ませ、年が近いことから佐天はタメ口をきくようになったが、絹旗は性格故か敬語を使って会話している。
「てかその人がこの映画紹介してくれたんだけど。ビバリー・シースルーって知らない?映画監督の」
「あー、メジャーの方?ですとあまりチェックしていないのでわかりませんね。しかし超眼識のあるお方だと確信しました。今度確認しておきます」
話の流れでそう言ったものの、白熱していたが故に絹旗はすぐにビバリーのことを忘れてしまった。
絹旗は後日そのことを猛烈に後悔することになる。
「まぁでも本人はあんまりドンパチしてるのは好きじゃないみたいだったけど。話の展開とかがいいって言ってました。私も展開はすげーって思ったな。ただ、オブジェクトの性能やパーツの説明を主人公達がくどくど説明するあたりは少し気になったかなぁ」
「あれは監督の特色なんですよ。さっき思い出しましたが、あのカマーティ監督ってマニアの間じゃ科学的考証好きで有名な方で、他にも何本か似たようなの撮ってるんですよ。まぁ時々超ぶっ飛んだ描写もあるんですけど。ハイジャック事件の映画があるんですが、その中で主人公のトゥーマ・カミージョの放った『熱膨張って知ってるか?』という迷台詞があってですね……あ、そろそろお腹減ってきません?」
「あぁ確かに。何か頼もうか。すいませーん、注文いいですか?」
『お掛けになった番号は、現在電波が届かないところか……』
「繋がらない……佐天さん電源切っちゃってるんでしょうか」
初春飾利は佐天との待ち合わせ場所で途方に暮れる。
待ち合わせの時間から30分も経っているのに佐天は姿を現さない。
その上なぜか携帯も繋がらない。
「映画館にでも入らない限り携帯の電源を切るような人じゃないと思うんですが……寝坊ですかねぇ」
とりあえず初春はもう少しだけ待ってみることにした。
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「ヒロインの子も超可憐でしたね!そしてエロスを忘れない精神も超見事でした!」
「あのベルトが締まりすぎちゃった辺りだよね!確かにあれはエロス!でも私はむしろ主人公の上司の巨乳っぷりがヤバかったかな!」
「あぁ、あれは超反則でしたね!あれで20超えてないってのは絶対嘘です!」
「あ、でも知り合いにあれよりおっぱい大きい未成年がいるよ」
「なんと!本当ですか佐天さん!」
佐天涙子と絹旗最愛は映画館近くの喫茶店で顔を突き合わせて先ほどの映画の感想を言い合っていた。
互いに自己紹介を済ませ、年が近いことから佐天はタメ口をきくようになったが、絹旗は性格故か敬語を使って会話している。
「てかその人がこの映画紹介してくれたんだけど。ビバリー・シースルーって知らない?映画監督の」
「あー、メジャーの方?ですとあまりチェックしていないのでわかりませんね。しかし超眼識のあるお方だと確信しました。今度確認しておきます」
話の流れでそう言ったものの、白熱していたが故に絹旗はすぐにビバリーのことを忘れてしまった。
絹旗は後日そのことを猛烈に後悔することになる。
「まぁでも本人はあんまりドンパチしてるのは好きじゃないみたいだったけど。話の展開とかがいいって言ってました。私も展開はすげーって思ったな。ただ、オブジェクトの性能やパーツの説明を主人公達がくどくど説明するあたりは少し気になったかなぁ」
「あれは監督の特色なんですよ。さっき思い出しましたが、あのカマーティ監督ってマニアの間じゃ科学的考証好きで有名な方で、他にも何本か似たようなの撮ってるんですよ。まぁ時々超ぶっ飛んだ描写もあるんですけど。ハイジャック事件の映画があるんですが、その中で主人公のトゥーマ・カミージョの放った『熱膨張って知ってるか?』という迷台詞があってですね……あ、そろそろお腹減ってきません?」
「あぁ確かに。何か頼もうか。すいませーん、注文いいですか?」
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『おかけになった番号は……』
「佐天さーん……?」
『おかけになった番号は……』
「佐天さーん……?」
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「へー、メジャーの方ではそういう映画があるんですか。マイナーどころばかり見てきましたが、たまにはメジャー映画も見てみましょうかね」
「私はマイナーものに興味がわいてきたなぁ。何か面白いのあったら教えてよ」
「じゃあ今度一緒に映画巡りでもしましょうか……あ、すいませんコーヒーおかわりです」
「へー、メジャーの方ではそういう映画があるんですか。マイナーどころばかり見てきましたが、たまにはメジャー映画も見てみましょうかね」
「私はマイナーものに興味がわいてきたなぁ。何か面白いのあったら教えてよ」
「じゃあ今度一緒に映画巡りでもしましょうか……あ、すいませんコーヒーおかわりです」
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『おかけになった番号は……』
「……………………………………」
『おかけになった番号は……』
「……………………………………」
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「いやー今日は楽しかったよ」
「こちらこそ、超よい休日を過ごさせてもらいました」
二人がようやく喫茶店の椅子から腰を上げた時、空はオレンジ色に染まり始めていた。
最終下校時刻ギリギリである。
「それじゃね、絹旗ー」
「はい、佐天さん。予定決まったらメールしますから」
二人は互いに手を振り合って別れた。
「いやー今日は楽しかったよ」
「こちらこそ、超よい休日を過ごさせてもらいました」
二人がようやく喫茶店の椅子から腰を上げた時、空はオレンジ色に染まり始めていた。
最終下校時刻ギリギリである。
「それじゃね、絹旗ー」
「はい、佐天さん。予定決まったらメールしますから」
二人は互いに手を振り合って別れた。
「いやー、今日は充実した1日だったなぁ」
佐天は歩きながら一人ごちる。
「あ、そういやバスの時間は……と、携帯電源切りっぱなしだった」
ポケットから携帯を取り出し、電源を入れる佐天。
すると――
佐天は歩きながら一人ごちる。
「あ、そういやバスの時間は……と、携帯電源切りっぱなしだった」
ポケットから携帯を取り出し、電源を入れる佐天。
すると――
「ちょ、なにこれ!?着信履歴67件、留守電24件、メール108通!?一体誰から……って初春!?何か緊急の用事でも…………あ」
佐天は思わず立ち止まる。
わざわざ朝っぱらから街へ出てきた目的をここに来てようやく思い出したのだ。
わざわざ朝っぱらから街へ出てきた目的をここに来てようやく思い出したのだ。
「うっわー……しまったぁ…」
明日学校で会うことになるであろう親友の顔を思い浮かべて、佐天は苦い顔をして頭を抱えた。
明日学校で会うことになるであろう親友の顔を思い浮かべて、佐天は苦い顔をして頭を抱えた。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「ごめんって。ね、初春。機嫌なおしてよ」
「い・や・で・す。今度という今度は絶対に許しません」
翌日。
柵川中学の教室にて佐天は初春に向かって手を合わせて謝っていた。
「えー、じゃあ帰りに何か奢るからさ。クレープとかケーキとか何でも」
すると初春の身体がピクリと震えた。
「そ、そんなんじゃ許してあげませんから」
動揺を隠そうと言葉を続ける初春に佐天は追い討ちをかける。
「そっかー、セブンスミストんとこに出来た新しいクレープ屋さんのクレープ、初春は要らないのか」
「そっ、それは!えっと…」
「んー?」
「………………今回は許してあげますが、今後は気をつけてくださいね」
「はいはい」
佐天はにやにやと笑いながら答える。
500円で初春の機嫌が直るのなら安いものだ。
「それで、どちら様でしたっけ。佐天さんにわざわざ付き合って下さったという物好きな方は」
「物好きって……絹旗だよ。絹旗最愛。すこいんだよ。ワンピース着てるんだけどこれがもう超短くて。でも全然中が見えないんだよねー。いつかあのスカートもめくってやるんだから」
「あの、佐天さん。常々思っていたんですがスカートめくりはセクハラですよ」
「えっっっ!?!?」
「当たり前ですっ!」
初春はもう、と親友の奇癖にため息をつきながら告げる。
「で、どうします?お買い物、昨日行けませんでしたけど、他の日に改めて行きますか?」
「ん、そうだよね。いつがいいかな。休日がいいよね。あー10月入っちゃうけど、6日とかどう?」
「はい、それでいいと思いますよ。あ、でもその日、朝10時くらいまでは予定が入っちゃってるんですよ。その後でもいいでしょうか?」
「別に構わないけど、風紀委員の仕事?」
佐天の疑問に、初春は鞄からプリントを取り出しながら答える。
「はい、親船最中さんって御存知ですか?統括理事会の方なんですけど、その方が講演を行う予定があって。その会場設営が風紀委員に任されているんです」
初春の取り出したプリントには『学園都市に住む子ども達のために』という表題とやさしそうなおばさんの写真が載っていた。
彼女が親船最中なのだろう。
「へー。大変だねー。……あ、この公演場所のビルって最近できたショッピングモールの近くだよね」
「本当ですね。そういえばあのショッピングモールってまだ行ったことありませんでしたね」
「よし、じゃあそこで買い物しようよ。丁度初春の仕事が終わるくらいにショッピングモールの着くようにするから、現地集合でさ」
「そうですね。一度くらい行ってみたかったですし」
「じゃ、6日にね」
話が終わるとほぼ同時に教師が教室に入ってくる。
身体を戻して前を向いた佐天の背中を見ながら
(絹旗……どこかで見た名前なんですけど、どこでしたっけ?)
初春は心の中で疑問符を浮かべた。
「ごめんって。ね、初春。機嫌なおしてよ」
「い・や・で・す。今度という今度は絶対に許しません」
翌日。
柵川中学の教室にて佐天は初春に向かって手を合わせて謝っていた。
「えー、じゃあ帰りに何か奢るからさ。クレープとかケーキとか何でも」
すると初春の身体がピクリと震えた。
「そ、そんなんじゃ許してあげませんから」
動揺を隠そうと言葉を続ける初春に佐天は追い討ちをかける。
「そっかー、セブンスミストんとこに出来た新しいクレープ屋さんのクレープ、初春は要らないのか」
「そっ、それは!えっと…」
「んー?」
「………………今回は許してあげますが、今後は気をつけてくださいね」
「はいはい」
佐天はにやにやと笑いながら答える。
500円で初春の機嫌が直るのなら安いものだ。
「それで、どちら様でしたっけ。佐天さんにわざわざ付き合って下さったという物好きな方は」
「物好きって……絹旗だよ。絹旗最愛。すこいんだよ。ワンピース着てるんだけどこれがもう超短くて。でも全然中が見えないんだよねー。いつかあのスカートもめくってやるんだから」
「あの、佐天さん。常々思っていたんですがスカートめくりはセクハラですよ」
「えっっっ!?!?」
「当たり前ですっ!」
初春はもう、と親友の奇癖にため息をつきながら告げる。
「で、どうします?お買い物、昨日行けませんでしたけど、他の日に改めて行きますか?」
「ん、そうだよね。いつがいいかな。休日がいいよね。あー10月入っちゃうけど、6日とかどう?」
「はい、それでいいと思いますよ。あ、でもその日、朝10時くらいまでは予定が入っちゃってるんですよ。その後でもいいでしょうか?」
「別に構わないけど、風紀委員の仕事?」
佐天の疑問に、初春は鞄からプリントを取り出しながら答える。
「はい、親船最中さんって御存知ですか?統括理事会の方なんですけど、その方が講演を行う予定があって。その会場設営が風紀委員に任されているんです」
初春の取り出したプリントには『学園都市に住む子ども達のために』という表題とやさしそうなおばさんの写真が載っていた。
彼女が親船最中なのだろう。
「へー。大変だねー。……あ、この公演場所のビルって最近できたショッピングモールの近くだよね」
「本当ですね。そういえばあのショッピングモールってまだ行ったことありませんでしたね」
「よし、じゃあそこで買い物しようよ。丁度初春の仕事が終わるくらいにショッピングモールの着くようにするから、現地集合でさ」
「そうですね。一度くらい行ってみたかったですし」
「じゃ、6日にね」
話が終わるとほぼ同時に教師が教室に入ってくる。
身体を戻して前を向いた佐天の背中を見ながら
(絹旗……どこかで見た名前なんですけど、どこでしたっけ?)
初春は心の中で疑問符を浮かべた。
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「親船最中。そのお人好しのババアが明日開く講演会で、『スクール』の連中が暗殺を企ててるんだって。目標はモチロン親船最中」
麦野沈利はファミリーレストランの一角を占拠している『アイテム』の一員プラス一名に語りかける。
「暗殺と言うからには多分相手は『スクール』の狙撃手よ。見つけ出してぶっ殺せばそれでいいわ」
麦野が適当な調子で言う。
『アイテム』の構成員達もまた、映画のパンフレットを眺めたり缶詰めを空けたり天井を見上げてぼーっとしたりなどまるで聞いている様子がないが、異議を挟んでこないということは了解であると判断して、麦野は話を進めようとする。
だが
「おい、ちょっと待てよ」
何者かが口を挟んできた。
それは、プラス一名の男。
「なぁに?浜面」
浜面仕上。
ごく最近『アイテム』の小間使いとして派遣されてきた元スキルアウトの少年だ。
浜面は言葉を続ける。
「暗殺計画をあらかじめ嗅ぎつけてんなら、事件が起こる前に本人達に直接通告してやったらいいだろ。そうすれば…」
「殺さなくてもいい、って?」
「……そうだよ」
「言っとくけどね、警告なら散々してきたのよ。こういう計画の存在に気づく度にね。でも連中は警告に従わない。だったらここらでお灸を据える意味で構成員の一人でも血祭りに上げた方がいいとは思わない?」
「でもよ…」
「あのね、学園都市の暗部っていうのはそんなに甘いものじゃないのよ。警備員なんて表の組織とじゃれ合ってるスキルアウトと、同じ次元でモノを考えられても困るの。分かるかしら?浜面」
「……………っ」
麦野の言葉に黙り込んでしまう浜面。
自らが仮とはいえリーダーを努めていたスキルアウトを馬鹿にされたことを怒っているのだろうが、数日前にそれを壊滅に追いやってしまったこと、それなのに自分はその責任も取らずにこうして『アイテム』のパシリになっていること、何よりツンツン頭の少年に言われた言葉が、浜面が口を開くことを阻んでいるようだ。
「親船最中。そのお人好しのババアが明日開く講演会で、『スクール』の連中が暗殺を企ててるんだって。目標はモチロン親船最中」
麦野沈利はファミリーレストランの一角を占拠している『アイテム』の一員プラス一名に語りかける。
「暗殺と言うからには多分相手は『スクール』の狙撃手よ。見つけ出してぶっ殺せばそれでいいわ」
麦野が適当な調子で言う。
『アイテム』の構成員達もまた、映画のパンフレットを眺めたり缶詰めを空けたり天井を見上げてぼーっとしたりなどまるで聞いている様子がないが、異議を挟んでこないということは了解であると判断して、麦野は話を進めようとする。
だが
「おい、ちょっと待てよ」
何者かが口を挟んできた。
それは、プラス一名の男。
「なぁに?浜面」
浜面仕上。
ごく最近『アイテム』の小間使いとして派遣されてきた元スキルアウトの少年だ。
浜面は言葉を続ける。
「暗殺計画をあらかじめ嗅ぎつけてんなら、事件が起こる前に本人達に直接通告してやったらいいだろ。そうすれば…」
「殺さなくてもいい、って?」
「……そうだよ」
「言っとくけどね、警告なら散々してきたのよ。こういう計画の存在に気づく度にね。でも連中は警告に従わない。だったらここらでお灸を据える意味で構成員の一人でも血祭りに上げた方がいいとは思わない?」
「でもよ…」
「あのね、学園都市の暗部っていうのはそんなに甘いものじゃないのよ。警備員なんて表の組織とじゃれ合ってるスキルアウトと、同じ次元でモノを考えられても困るの。分かるかしら?浜面」
「……………っ」
麦野の言葉に黙り込んでしまう浜面。
自らが仮とはいえリーダーを努めていたスキルアウトを馬鹿にされたことを怒っているのだろうが、数日前にそれを壊滅に追いやってしまったこと、それなのに自分はその責任も取らずにこうして『アイテム』のパシリになっていること、何よりツンツン頭の少年に言われた言葉が、浜面が口を開くことを阻んでいるようだ。
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そんな浜面の様子を絹旗は映画のパンフレット越しに見ていた。
(元スキルアウトというものですから、てっきりチンピラみたいなのが送られてくるかと思ってましたが、やはり薄っぺらなロクデナシというわけではないようですね)
小間使いというのならば、そういう『ただ言われたことをやって駄賃を貰って満足する人物』の方が都合がよいだろう。
だが、絹旗は彼のような存在を望んでいた。
この組織を変革する起爆剤になり得る存在を。
そんな浜面の様子を絹旗は映画のパンフレット越しに見ていた。
(元スキルアウトというものですから、てっきりチンピラみたいなのが送られてくるかと思ってましたが、やはり薄っぺらなロクデナシというわけではないようですね)
小間使いというのならば、そういう『ただ言われたことをやって駄賃を貰って満足する人物』の方が都合がよいだろう。
だが、絹旗は彼のような存在を望んでいた。
この組織を変革する起爆剤になり得る存在を。
実質上のリーダーである麦野に意見する。
そういう人物は今までの『アイテム』には存在しなかった。
麦野はああ言っていたが、実際はただ『スクール』のリーダーである学園都市第二位、垣根帝督を打ち倒して自らの力を誇示したいだけなのだ。
『スクール』への警告は彼女の言った通り再三してきたが決してそれが無駄であったわけではなく、凶行に及ばせないだけの力は持っていたし、まだもうしばらくは押さえつけていられる筈である。
それをせずに強行をかけるというのは、つまり『スクール』の狙撃手を殺すことで垣根帝督を挑発し、戦いに引っ張り出そうという魂胆なのだろう。
麦野はああ言っていたが、実際はただ『スクール』のリーダーである学園都市第二位、垣根帝督を打ち倒して自らの力を誇示したいだけなのだ。
『スクール』への警告は彼女の言った通り再三してきたが決してそれが無駄であったわけではなく、凶行に及ばせないだけの力は持っていたし、まだもうしばらくは押さえつけていられる筈である。
それをせずに強行をかけるというのは、つまり『スクール』の狙撃手を殺すことで垣根帝督を挑発し、戦いに引っ張り出そうという魂胆なのだろう。
そんな女に付き従っている者達もまたまともではない。
フレンダは力への依存が異常に大きい。
今はこのチーム唯一のレベル5である麦野に絶対的な信頼と忠誠を持って従っている。
だがそれは麦野へではなく学園都市第四位の能力者への従属であって、仮に麦野よりも力の強い者が現れたならフレンダは即座にそちらに鞍替えするのではないかという疑念を絹旗は持っていた。
今はこのチーム唯一のレベル5である麦野に絶対的な信頼と忠誠を持って従っている。
だがそれは麦野へではなく学園都市第四位の能力者への従属であって、仮に麦野よりも力の強い者が現れたならフレンダは即座にそちらに鞍替えするのではないかという疑念を絹旗は持っていた。
また、滝壺理后は意志を見せない。
『アイテム』に任される汚れ仕事をただ沈黙したまま遂行する。
もともとそうであった可能性もあるが、原因の一端には能力体結晶の存在があるのだろう。
能力を暴走、強化させるためにそれを使う度、滝壺の意志は薄弱としていく様に感じられる。
特に一月程前に支給された能力体結晶の完成版だという体晶を使用し始めてからは、彼女の崩壊は加速している。
他の二人は望んで―――過去にそうせざるを得ない状況があったとしても、少なくとも現在は――闇に身を置いている。
それらに比べると、抗う意志さえ奪われた滝壺は不憫に思われた。
『アイテム』に任される汚れ仕事をただ沈黙したまま遂行する。
もともとそうであった可能性もあるが、原因の一端には能力体結晶の存在があるのだろう。
能力を暴走、強化させるためにそれを使う度、滝壺の意志は薄弱としていく様に感じられる。
特に一月程前に支給された能力体結晶の完成版だという体晶を使用し始めてからは、彼女の崩壊は加速している。
他の二人は望んで―――過去にそうせざるを得ない状況があったとしても、少なくとも現在は――闇に身を置いている。
それらに比べると、抗う意志さえ奪われた滝壺は不憫に思われた。
いや、
(私にそんなことを思う権利は超ありませんね…)
(私にそんなことを思う権利は超ありませんね…)
この組織で一番のロクデナシは絹旗最愛である。
少なくとも絹旗自身はそう思っていた。
麦野やフレンダの様に自ら意志を持って戦うのではなく、滝壺の様に意志を奪われて戦うのでもなく。
絹旗は与えられた仕事だからという言い訳のもとに戦っている。
学園都市に来て、置き去りにされて、そんな自分の元に白衣の男達が現れて。
絹旗は段々と自分が闇の領域へ招き寄せられていくのを感じていた。
麦野やフレンダの様に自ら意志を持って戦うのではなく、滝壺の様に意志を奪われて戦うのでもなく。
絹旗は与えられた仕事だからという言い訳のもとに戦っている。
学園都市に来て、置き去りにされて、そんな自分の元に白衣の男達が現れて。
絹旗は段々と自分が闇の領域へ招き寄せられていくのを感じていた。
感じていて、それに抵抗しなかった。
抵抗した時に何をされるのかわからないという恐怖。
そんなものもあったのだろう、兎に角絹旗は今まで決して流れに逆らってこなかった。
その結果。
そんなものもあったのだろう、兎に角絹旗は今まで決して流れに逆らってこなかった。
その結果。
絹旗最愛は人殺し集団の一員になっていた。
どこかで一度でも抵抗を見せていれば、こんな場所に来ることは無かったのではないか。
そんな後悔を、常に絹旗は持っていた。
あるいは安っぽいC級映画に惹かれるのは、その『流れに逆らって我が道を行く』姿勢に憧れているからかもしれない。
そんな後悔を、常に絹旗は持っていた。
あるいは安っぽいC級映画に惹かれるのは、その『流れに逆らって我が道を行く』姿勢に憧れているからかもしれない。
だが。
この少年は。
浜面仕上は、その流れに逆らおうとした。
もともとそういう気質だったのか――いや、そうだったとしたらスキルアウトなんてやっていないだろう。
おそらくそういう資質があって、それが何かをキッカケにして覚醒しかけているのだ。
彼なら、この腐った組織を変えてくれるかもしれない。
事実、滝壺は浜面が来てから多少口数が増えてきた。
浜面と話していると、時折楽しげな雰囲気さえ見せる様になった。
だから、
この少年は。
浜面仕上は、その流れに逆らおうとした。
もともとそういう気質だったのか――いや、そうだったとしたらスキルアウトなんてやっていないだろう。
おそらくそういう資質があって、それが何かをキッカケにして覚醒しかけているのだ。
彼なら、この腐った組織を変えてくれるかもしれない。
事実、滝壺は浜面が来てから多少口数が増えてきた。
浜面と話していると、時折楽しげな雰囲気さえ見せる様になった。
だから、
(超お願いしますよ、浜面)
さっさと勇者にレベルアップして、せめて彼女のことくらいは救ってあげてください。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
『『スクール』の連中が学園都市の要人の暗殺計画を企てています』
学園都市内のとあるオープンカフェに奇妙な一団があった。
テーブルに腰を下ろしているのは、何処かの学校の赤いセーラー服を着た十代の少女。
その目の前には白衣を着た初老の男が、その隣には機械で出来た動物のような形の四足歩行型のロボット、そして彼女の後ろにはダウンジャケットを着こんだ少年が立っていた。
先ほどの声はロボットから発せられているようだ。
「それで、私達が出るのか?」
ロボットの声に答えるのは白衣の男だ。
「いいえ、博士。『アイテム』が処理を任されているようです」
「そうか、ならば今回も静観ということになるが……君は行くのか?」
博士が問いかけたのは赤いセーラー服の少女に対してだ。
「はい。『グループ』が動かない可能性もないとは言えませんから」
「そうか、ならついでに両陣の情報も後で報告してくれ。もっとも、このオジギソウの前にはレベル5と言えど敵ではないがな」
博士は手元のリモコンのようなものをいじりながら言う。
『『スクール』の連中が学園都市の要人の暗殺計画を企てています』
学園都市内のとあるオープンカフェに奇妙な一団があった。
テーブルに腰を下ろしているのは、何処かの学校の赤いセーラー服を着た十代の少女。
その目の前には白衣を着た初老の男が、その隣には機械で出来た動物のような形の四足歩行型のロボット、そして彼女の後ろにはダウンジャケットを着こんだ少年が立っていた。
先ほどの声はロボットから発せられているようだ。
「それで、私達が出るのか?」
ロボットの声に答えるのは白衣の男だ。
「いいえ、博士。『アイテム』が処理を任されているようです」
「そうか、ならば今回も静観ということになるが……君は行くのか?」
博士が問いかけたのは赤いセーラー服の少女に対してだ。
「はい。『グループ』が動かない可能性もないとは言えませんから」
「そうか、ならついでに両陣の情報も後で報告してくれ。もっとも、このオジギソウの前にはレベル5と言えど敵ではないがな」
博士は手元のリモコンのようなものをいじりながら言う。
実際には、情報ならば現地に赴かずとも馬場―――ロボットの操り手が収集してくれる。
それでも少女が現地に赴くのは、『グループ』に身を置いているという少女の組織の裏切り者の始末を任されているかららしい。
先日『グループ』が断崖大学にて大きく動いたという報告があったのだが、その時は事後報告であったため彼女の任務が果たされることはなかった。
断崖大学での事件は事前に耳に入ってきてはいたが、その処理に『グループ』が当たるということは聞いていなかったのだ。
それから少女は裏の事件の匂いをかぎつける度に現場に赴くことにしたようだ。
そうすれば組織の裏切り者を発見できる確率が高まるということだろう。
それでも少女が現地に赴くのは、『グループ』に身を置いているという少女の組織の裏切り者の始末を任されているかららしい。
先日『グループ』が断崖大学にて大きく動いたという報告があったのだが、その時は事後報告であったため彼女の任務が果たされることはなかった。
断崖大学での事件は事前に耳に入ってきてはいたが、その処理に『グループ』が当たるということは聞いていなかったのだ。
それから少女は裏の事件の匂いをかぎつける度に現場に赴くことにしたようだ。
そうすれば組織の裏切り者を発見できる確率が高まるということだろう。
――どうであれ自身には関係のないことだ、と博士は思う。
魔術という神秘に興味を持ちはしたが、それでも数式の魅力に勝ることは無かった。
博士の目的は数式という最高の美の追求のみ。
故に例え同じ組織の人間が他の組織の人間を殺そうとしていても止めはしないし、また手助けもしない。
魔術という神秘に興味を持ちはしたが、それでも数式の魅力に勝ることは無かった。
博士の目的は数式という最高の美の追求のみ。
故に例え同じ組織の人間が他の組織の人間を殺そうとしていても止めはしないし、また手助けもしない。
自らの中でそのように議論を帰結させた博士の正面で、件の少女――ショチトルは、翌日の暗殺計画の行われる場所を確認していた。
「……親船最中の講演会、か」
「……親船最中の講演会、か」
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
「じゃ、浜面は明日来なくていいわ」
麦野が切り捨てるように言う。
どうやら考え事をしている内に話が進んでいたようだ。
「レベル0のパシリなんて、いるだけ邪魔だもの。流れ弾で死んでもいいっていうんなら止めないけど」
「………」
沈黙する浜面。
どうやら明日の作戦に浜面が同行しないことが決定したらしい。
「じゃ、浜面は明日来なくていいわ」
麦野が切り捨てるように言う。
どうやら考え事をしている内に話が進んでいたようだ。
「レベル0のパシリなんて、いるだけ邪魔だもの。流れ弾で死んでもいいっていうんなら止めないけど」
「………」
沈黙する浜面。
どうやら明日の作戦に浜面が同行しないことが決定したらしい。
(その方がいいですよ。実際仕事の段階になってまで麦野のケチをつければ、気分だけでぶち殺されるかもしれません。浜面みたいなレベル0が、レベル5なんて化け物と戦える訳もないんですから、そうなったら間違いなく超死にますよ)
そう考えたところで、ふと思う。
果たして自分は浜面が麦野に殺されそうになった時どうするだろうか、と。
そう考えたところで、ふと思う。
果たして自分は浜面が麦野に殺されそうになった時どうするだろうか、と。
―――やはり、静観を決め込むのか。
(反吐が出ますね)
心の中で吐き捨てて、目線を下に下げる。
と、絹旗は散らかされたパンフレットの中にあるものを見つけた。
心の中で吐き捨てて、目線を下に下げる。
と、絹旗は散らかされたパンフレットの中にあるものを見つけた。
(カマーティ監督の最新作……この前佐天さんと見たやつの続編じゃないですか!今度の舞台は油田……海上を走行する巨大オブジェクト!超そそる内容ですね!早速佐天さんに連絡して今度一緒に…)
携帯を取りだそうとして、絹旗は止まった。
どの道明日は仕事。
映画に行く暇はない。
だったら仕事が終わってから約束をしよう。
どの道明日は仕事。
映画に行く暇はない。
だったら仕事が終わってから約束をしよう。
佐天涙子。
暗部とは何の関係もない、本当に純粋な意味での友達。
そんな少女に闇の仕事を控えたままで約束を取り付けるのは、なんだが嫌な感じがしたのだ。
暗部とは何の関係もない、本当に純粋な意味での友達。
そんな少女に闇の仕事を控えたままで約束を取り付けるのは、なんだが嫌な感じがしたのだ。
携帯をしまい直す絹旗。
彼女は知らない。
自分が次の日に期せずして佐天涙子と出会うことになるのを。
それも、およそ考え得る限り最悪の形を以て――
彼女は知らない。
自分が次の日に期せずして佐天涙子と出会うことになるのを。
それも、およそ考え得る限り最悪の形を以て――