とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-247

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匿名ユーザー

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突然、目の前に炎が現れた。
「はぁぃっ!?」
とっさに…というか、慣れというか、自分の右手を突き出す。
すると、すの右手にぶち当たった瞬間、変な音を立てながら消える炎。
「チッ。今ので炭になれば良いものを。…変なところで運が良い奴だな」
「いや意味分かりませんよステイルッ!?いきなり炎たぁどういう了見だ!」
「どうもこうも。君が目を覚まさないから、もういっそ一生目覚めないようにしてやろうかと」
「意味わかんねえよ。テメェは人が寝てるところを―――――って、あ?」
と、そこで上条は馬鹿との会話を打ち切り、周りを見回す。
そこは、見慣れた病室。
上条が何かのトラブルに巻き込まれたりして、(最近は上条を中心としてトラブルが起こったりもするのだが、とりあえず)怪我を負ったときになぜか毎回あてがわれる病室。
そこは、さっきまで自分がいた空間とは違うはずだ。
そして、上条にはあの『会議室』とやらからここまで来た覚えはない。
「…何がおきた?」
「さあ。魔術の類ではないね」
不機嫌そうに言うステイル。
とそこで、一方通行(アクセラレータ)が上条に近づいてきた。
「お前も、理解できてねェか」
「…『も』かよ」
はぁ、とため息をつく上条だが、
「無能力者(レベル0)の落ちこぼれと一緒にすンじゃねェぞ。大体は把握できている」
「…その落ちこぼれにぶっ飛ばされたおま…冗談です冗談!だから口元を吊り上げながらこっちに手を差し伸べないで!?」
近づいてくる一方通行(アクセラレータ)の華奢な手を右手で振り払いながら後ずさりする上条。
「…まァ、とにかく。お前が起きたンならとっとと説明でもしますかァ」
「…って、えー…?まさか一番俺が寝てたとか?」
「それだけ疲れがたまってるんでしょ。少しは休んどきなさいよ、体持たないわよ?」
と、少しショックを受けた上条のフォローに回ってくれたのは、なんと『あの』美琴だった。
「…不幸な予感がする」
「凄く偏見と差別に満ちた視線を感じるんだけど。…だけど、本気で言ってるんだからね?少しは自分の事も考えてよ…」
上条は、そんな事を言えば超電磁砲(レールガン)の一つや二つでもぶっ飛ばされるかと思っていたのだが、返ってきた言葉はものすごく意外な言葉だった。
…ということでやっぱり、
「不幸な予感がする」
誰にも聞こえない程度の声で、上条は言った。


「おいそこ、何やってんだよ」
と、上条がとてつもなく不幸な予感を感じている最中に、浜面がなんか言ってきた。
「何って…こっちが聞きたいところなんですけど」
「意味わかんねえ。勝手にラヴコメして勝手にとぼけやがって」
「いや、こっちのほうが意味わかんねえから。何がラヴコメだ。俺は命を懸けてまでそういうことには興味ないんだよ」
「黙れカミやん。無自覚なのはもう承知のうえだから、とりあえず黙ってくれ。そうじゃなきゃ、今の土御門さんはお前のことを瞬殺しそうだにゃー」
「だから意味が――――分かんないけどはいとりあえず分かりました黙りますッ!!!だから折り紙を取り出すなッ!?」
土御門が勝手に話に混じってきて、そのうえ無表情な顔でポケットから赤色の折り紙を取り出したのを見てしまった上条は、やはり右手をつきだしながら言った。
と、とりあえずは土御門の危機は去ったのだが。
今度は、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)では対応できない事態が起こってしまった。
つまり、
「…と―――――――――う―――――――――ま――――――――っ!!!!」
「もう噛み付きモード突入ですかインデックスさんっ!!さっきまでの空腹と混合しちゃってる怒りをどうか不幸なわたくしめに向けないでぇぇぇ――――――――ッ!!!」
とか何とか言いながら逃げる上条だが、聖人を越すのではないだろうか、という速さで迫ってきたインデックスに頭を結局噛み付かれる上条。

そんな馬鹿馬鹿しい光景を見ずに、一方通行(アクセラレータ)は言った。
「…あの馬鹿どもは、こんな説明聞く必要もねェか。ンじゃ、今回起きた事象について話し合うぞ」

そういった一方通行(アクセラレータ)の目の前には、結構な人数の人間がいた。
まぁ、別に全員体育座りしているようなわけではないが、基本的に一方通行(アクセラレータ)が説明する役回りだろう。
「まず、俺たちがさっきまでいた空間について。あれはおそらく、上層部が保管している、簡単に情報が漏れちゃ困る部屋、だろォな」
「それの理由は思い当たりませんが。どう説明する気ですか?」
早くも神裂に問題を提示される一方通行(アクセラレータ)。
「おそらくは、あのウザったらしい『機械』だ。上が秘密裏に開発したシロモノなンだろ」
「…」
一方通行(アクセラレータ)の話を聞いている者全てが黙り込んだ。
一方通行(アクセラレータ)の発言には証拠がない。しかし、それでも一同は一方通行(アクセラレータ)の言葉を信じた。あの『機械』が、どこかおかしいのは全員が気づいていたからだ。
「そもそも、俺らはあの機械の姿を見ていない。多分、天井にでも設置されてたンだろォが、そンなもンは、この学園都市でもかなり希少な物だ。下手に情報が漏れても困ンだろ」
そう言われると、証拠はないが一方通行(アクセラレータ)の言葉を全て信じそうになる。
「ってなわけで、上層部はあの部屋を公開するわけにはいかなかった。だが、緊急事態が起こる。『反乱因子』どもだ」
周囲を見回しながら言う一方通行(アクセラレータ)。何かを確認しているようだが、おそらくは監視カメラなどの類だろう。聞かれては困るはずだ、一方通行(アクセラレータ)の話が正しいのなら。


「反乱因子どもが暴れやがったおかげで、上はあの『機械』を使わなければならなくなっちまった。即急に事を解決しなきゃだからな。
だが、やはりあの機械のことを外に漏らすわけにはいかない。しかし、あの機械のことを少しはさらさなければならない。…まぁ、板ばさみって奴か?」
一方通行(アクセラレータ)はそこで、なぜか美琴にも電撃を飛ばされている、頭にインデックスをつけた上条のことを見ながらいった。
「…情報は、証拠がなければ重要度は上がらない。一大事なことならある程度マスコミも取り上げるだろォが、別にこの機械はそこまでって事でもねェ。だが、証拠があってマスコミに取り上げられても厄介。
こォいう状況なら、奴らならこう考えるはずだ。
『あいつらにある程度情報を漏らすことになるが、証拠を隠してしまえば問題ない』ってなァ」
「つまり、私たちは証拠をうやむやにするための細工を受けていた、ということですか?」
上条のほうを見てそわそわしている五和が、一方通行(アクセラレータ)の方も見ずに言った。
「そォいうことだ。だが、どンな手を使われたのかは…」
そんな五和を気にすることなく一方通行(アクセラレータ)は言うが、最後の方で口ごもってしまった。
「…分からないんですか。所詮学園都市最強も科学サイドですね」
アニェーゼが言うが、正直何を言いたいのか、一同には伝わらなかった。
「…『あの』上条にもそいつは有効だった。そこが引っかかる…」
「つーか、あいつ…本当に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なんて無茶苦茶な能力持ってんのか?一応説明は受けたがよ、信じらんねぇ」
「かなり真実味はあるわよ。…私の心理掌握(メンタルアウト)も効かなかったことだし」
「学園都市第5位の能力が効かない、か…その能力、まんざら嘘でもなさそうだな」
超能力者(レベル5)が口々に言う。まぁ、誰も取り合ってくれないのだが。
「この能力、嘘じゃないんですっ!!嘘であって欲しいんだけどね、不幸になっちゃうからほら今みたいにッ!」
「とうまの不幸はとうま自身が悪いかもっ!!」
「つーか、まずどこが不幸なのか説明して欲しいわねっ!!」
ぎゃーとりあえずやめてくださいうるさいかもがりがりびりびりどがーん!!
…そんな、コメディに聞こえる効果音だが、実際にその光景を目にしたら瞬間的に顔を背けるであろう状況を、上条は不幸だーっ!!と叫びながら疾走して行く。
「…チッ。もう、どうだって良いか…?」
一方通行(アクセラレータ)がそう呟きながら、その場を立ち去ろうとする。
「あ、ちょっと待ってどこ行くの!ってミサカはミサカはあなたについていこうとしてみる」
「うっとォしィ。ガキはさっさと寝てろ」
「流石に早すぎるかも、そしてミサカはガキじゃないっ!ってミサカはミサカは当然の反論をしてみたりッ!」
「…オイ、そこの妹達(シスターズ)。こいつを引き取れ」
まとわりついてくる打ち止め(ラストオーダー)を睨みながら、一方通行(アクセラレータ)は御坂妹に命令口調で物事を頼む。
「…ミサカには、それを実行しなければならない正当な理由は―――――」
と、そこまで言った御坂妹は、一方通行(アクセラレータ)の目を見て言葉をとめた。
「―――――さあ、あなたは通常のミサカたちよりも上位なのですから、これくらいのことは出来てもらわないと困るんですよ、とミサカは強引に上位固体を引き剥がします」
「ちょ、痛たたたたたた!?ま、待つんだ10032!司令官であるこのミサカを強引に引き剥がすとはどういう了見だっ!ってミサカはミサカは上位固体の特権を行使してみる!」
「…ハァ、とミサカはできそこないの上司を直視したOLのようなため息をついてしまいます」
「ミサカはできそこないじゃないっ!ってミサカはミサカはちょっとイラっとしながら言ってみる!ミサカができそこないだったら、それより下位個体のミサカたちはどうなるのッ!?ってミサカはミサカは心配もしていない部下たちの事を話題に出してみたり!」
「あなたに心配される筋合いはありません、とミサカは――――」
…なんか不毛でミサカばっかりが出てくる会話の途中で、一方通行(アクセラレータ)は少し御坂妹の方を見てから、
少し、本当に少しだけだが、
頭を下げた。


―――――何があったんでしょうか―――――
と、御坂妹がそんなことを考えてる間もなく、一方通行(アクセラレータ)はベクトル変換を実行してその場をありえないほどのスピードで去ってしまった。
「あああああああああっ!!逃げられたっ!ってミサカはミサカはとりあえずあの人を追いかけ――――」
「―――――ようとしている上位個体の肩を、ミサカは力を込めて掴みます」
「だから痛いっ!?あ、あなたそれでも女!?握力が…ギュギャッ!?」




一方通行(アクセラレータ)は、そんな光景を背後に上条を掴みかかりに行った。
…のだが、
「…あ、頭からの出血多量で上条当麻はあと30分で亡き人になるでしょう…」
「なーにー馬鹿なこと言ってるのかなとうまはッ!?こんなんで死ぬんだったら、当麻はもう100回は死んでるよっ!!」
「だ、だからといって噛み付き度合いを高めるなインデックス!そしてなぜかイライラしているような顔で超電磁砲(レールガン)を連発するな美琴!!普通にお前の超電磁砲(レールガン)のほうが危険だから!?」
「うるっさいわよっ!どうせその右手で無効化されるんだったら、危険も何もないじゃない!?」
「いや、超電磁砲(レールガン)が少しでもそれたら多分俺死にますよ御坂さん!そこら辺ご理解してるんでせうかッ!?」
「狙って右手に当てれば良いだけの話だけよ!」
「それだったら無効化されるんだから打つ必要性ないだろ美琴ッ!?そして何故お前の噛み付きも増しているインデックスッ!?」

こいつはもう、俺が殺した方が良いんじゃないか?
真面目に一方通行(アクセラレータ)はそう思った。




「ねーちん」
「…分かってます、土御門。ですが、動くタイミングも計らなければ」
「それくらい、聖人と陰陽博士が気にすることじゃないにゃー。さっさといくぜぃ」
と、土御門はそんなことを言いながらポケットから白い折り紙を取り出し、
「人ガ行ク道ヲ指シ示シ(おまえらのミライをおしえてやるから)、ソノ道ノ先ヲ我ハ行ク(すこしのチカラをおれのためにつかえ)!」
そう唱え、折り紙を中へと放った。
すると、キュイン、という音を立て――――
――――何も起こらない。
「…何をしているんですか、土御門?何も起こらないのですが」
「何も起こんなくて正解だぜぃねーちん。あんな声を出したのに、誰も俺の事を見ないなんて普通じゃない」
言われてみれば、結構な声を出した土御門のほうを見ている人間は一人もいない。
「白ノ式は、使用者に対する意識を操る術式ぜよ。少し高度なのを使えば、これくらい難しくないぜぃ。ねーちんの分もやってあるから、ほら行く行く」
そう言いながら、土御門はさっさと行ってしまった。女性とはいえ、聖人の神裂に対して気配りはいらない、と考えているのだろう。
(…やはり、あの者も相当の使い手ですね…)
今この場でその術式を受けているのは、軽く10人を超すだろう。
そして、10人以上の人間の意識を特定の二人に全く向けさせない、なんていう魔術は相当レベルが高い。
それをあっさりと発動させてしまった彼は、
「…侮れませんね、土御門元春」
そう呟きながら、神裂はその場を、一方通行(アクセラレータ)と同じようにありえない速度で去っていった。


「お、落ち着け一方通行(アクセラレータ)っ!!もうあんな昔のことなんて捨てて、未来のことを考えようッ!?」
「昔のこと、ねェ…フィアンマの時の『あれ』は、もう昔のことなのかァ?」
「ぐっ!?ってか、だからっていきなり殺そうとしてんじゃねぇ!!」
「…いちいち説明すンの面倒だからよォ…抵抗してんじゃねェ」
かなり面倒くさそうな状況に置かれている上条を、いやいやながらも連れ出そうとした一方通行(アクセラレータ)だったのだが…やはり面倒くさかった、まとわりついている奴らも含めて。
「なっ!?何やろうとしてんのよ一方通行(アクセラレータ)っ!!」
「何って…こいつを連れて行こうとしているだけなンだけどよォ」
「連れてって何するつもりかしら!?今のアンタとなら、私が勝つって事ぐらい理解できないの!!??」
「…面倒くせェ…」
やっぱりこいつもこいつで面倒だから、もういっそこいつらにも説明するか?…とか思っていた一方通行(アクセラレータ)なのだが、
「………………………………………………………………………………………………………………………」
とんでもない視線を受けていることに気づいた。
振り返ってみると、ただの暴食シスターだと思っていたけど実は結構重要キャラであることが対フィアンマ戦のときに発覚した、インデックスが凄い視線を送ってきていた。
「…なンのつもりだ」
「とうまの毒牙が、もしかして男の人にも向いたのか、と思って」
「何だよ俺の毒牙って!?蛇扱いですか俺は!!」
「…」
やっぱり、上条だけを無理矢理引っ張っていこう、こいつらに説明してもなンか理由をつけて反論してくるだけだろォし、と一方通行(アクセラレータ)が強引に上条を連れ出そうとしたとき、

「…こいつに関わんのは結構大変だろ、一方通行(アクセラレータ)」
後ろから、野太い男の声が聞こえた。
「…ンだよ、来ンのかよ…だったら、今までのは無駄ってわけかァ…?」
「まっ、カミやんの日常を勉強できた、って事で良いだろう?」
良いわけあるか、そもそもこんな奴の日常なンて知ったこっちゃねェ、と一方通行(アクセラレータ)は思ったのだが、また面倒くさいことになったら能力を使用してしまうかもしれないのでとりあえず黙っておく。
「ってことで、全員そろったんだから、はじめようぜぃ」
瞬間的に土御門の横に現れた(としか表現できない)神裂のことを横目で確認し、土御門は言った。






「って、はじめるって、何をよ?」
第一声が、これだった。
やっぱりこいつはいらないンじゃねェのか、と一方通行(アクセラレータ)は思っていることだろう。
「…カミやン。面倒だしイライラしてくるからとりあえずインデックスたちをどっかにやって、お前の口から説明してくれ」
珍しく口調が普通になっている土御門の言葉から何かを感じ取ってしまった上条は、土御門の言うとおりにしようとインデックスたちを元の場所に戻そうとしたのだが、
「どうせとうまたちは、これからの相談をするんでしょ?だったら私たちがいても良いと思うんだよ?魔術的なことも少しは含まれるはずだから、役に立つと思う」
「私だって、一応副リーダーとか無理矢理任された身だし。聞く権利くらいはあるわよね?」
「…って言っているんですが。どうすればいいんでせう?」
「何をやろうとしていたのか分かってたくせしやがって俺の邪魔をしやがってたのかテメェら後で覚えてやがれ」
なんか一方通行(アクセラレータ)からのラヴコール(殺すぜ宣言)を受けてしまったインデックスと美琴。
しかし、当の本人たちは全くといって良いほど気にしていない。通常の人間なら聞いただけでショック死しそうな言葉を聞いても、だ。
「だって、本気で殺そうなんて思ってるんなら、今ここで私たちのことを殺しているはずだよ」
「どっちにしろ、今の一方通行(アクセラレータ)に負けるはずないから私には関係ないんだけどね」
「…お前ら、頭のネジ全部ぶっ飛んでるだろ…インデックスの言い分はある程度通るとして、美琴の場合はちょっと無理があるぞ」
え?何で?と美琴が聞いてくるのだが、本格的にほかの人間(主に学園都市最強な人と妹最高な人と世界で20人未満な聖人な人)がイラつき始めているので、後でな、と適当に話を切って一方通行(アクセラレータ)たちのほうを向く上条。

「…で、何始めるんだ?」

瞬間。
ズガァゴシャアキュインザシュシュシュシュチュドーンバガッドガドガドゴドゴグシャッズドォォォォッ!!!!!!
という愉快な破壊音が響き、
不幸だぁぁぁぁぁぁぁ、という叫びを上げる暇もなくブチギレた3人にぶっ飛ばされた上条が意識を失った。


「…とは言うものの、相手は絶対能力者(レベル6)だろ?どう考えたって勝てないんだからさ、もはやそのときの運任せじゃね?」
「テメェはマゾですかァもう一回あの破壊音を聞いて快楽に浸りたいっつゥンならお手伝いしてやるぜェ」
「…すみませんでした…」
ブチギレた事にはブチギレたが、まだ不快感が残る一方通行(アクセラレータ)がまたキレかけるのを防ぐために、一応謝っておく上条。
あの惨劇(なんて生易しいものではない出来事)を、なぜか意識を失うだけでやり過ごしてしまったトンデモ上条さんは、あの惨劇を生み出してもまだイライラが募る一同にたたき起こされ、今回のことを話されたわけである。
まぁ、今回のこととは、
「でも、何もしないよりはマシでしょう」
「そうだぜぃカミやん。今後の動きの予想、戦闘について、個人の役割、グループの使命…これくらい話し合わなきゃ、本気絶対能力者(レベル6)なんて相手できない」
そういうことだそうだ。
「そんなことを言うってことは、お前は絶対能力者(レベル6)と本気で殴りあうつもりなのね…」
土御門の脳思考回路はもはや妹(バグ)で埋め尽くされているのではないか、と不安がる上条。
その上条を横目に、土御門は言う。
「ってことなんで…やっぱり出来るだけ、インデックスたちには席をはずしてもらいたいのだが」
「だから、何でいちゃいけないの?少しは魔術の話もするでしょ、それだったら私がいたほうがいいに決まってるんだよ?」
「私だって、単体でも戦力になるし、いざとなったら…ミサかネットワークを動かす事だって、出来るかもしれない、のよ?」
インデックスの方は特に考え無しにいったらしいが、美琴のほうは…少し口ごもった。
「……仕方ないにゃー。ねーちん、一方通行(アクセラレータ)、それでいいか?」
「本人たちは譲る気がないそうですからね…やはり、仕方ないでしょう」
「かわりに、ウザいことになったら容赦なく叩きのめす」
神裂は快く…でもないが引き受けてくれたが、一方通行(アクセラレータ)のほうはなにやら物騒なことを言ってる。
「んじゃ、さっさと話し合ってもらうぜぃ」
やっとか、という感じで土御門が言った。




「まずは、今回グループに所属していない人員についてだ」
この話し合いの進行役みたいなのは、土御門が勤めるらしい。
「あ…そういえば、そんなのがいたな」
思い出したように言う上条。
「そいつらを全員今から言っていく。聞き漏らすなよ」
土御門は、そういってから一つ間を空ける。
「白井黒子、妹達(シスターズ)、打ち止め(ラストオーダー)、浜面仕上、滝壺理后、インデックス、だ」
「オイオイ、結構多いンじゃねェのかァ?上層部(うえ)は何考えてやがる」
一方通行(アクセラレータ)が呆れたように言った。上条も概ね賛成である。
「ですが、全員が全員真正面からぶつかったところで、それは単なる『喧嘩』としか言いようがありません。本当の『戦い』とは、裏で様々な駆け引きや情報操作が行われているんですよ」
「ねーちんの言うとおりぜよ。おそらく学園都市もそういったことはしているはずだ、しかし、今回の戦闘に関する情報は学園都市側は把握できていない。始まってないから当たり前だが」
神裂と土御門は、しかしそれを否定した。
上条と一方通行(アクセラレータ)は黙る。神裂たちのほうが、そういう経験は数倍豊富だ。
「だから、最新の戦闘情報や、欠けた人員補充などは、俺たちで行う。そのための役割配分を、さっき言った奴らでやる。いいか?」
土御門が聞いてくる。誰も反対しなかった。


「まず白井黒子だが…一番重要なポジションをやってもらう。情報伝達だ。あいつに空間移動(テレポート)を使ってもらい、役割をこなしてもらう」
土御門が言うと、意味もなく美琴が驚いたような表情を造る。
「伝達する情報については、後で説明する。白井には情報伝達以外に、臨時の戦闘要員、応援の移動を平行して行ってもらうつもりだ。かなり能力の使用回数が高いだろうから、後々の能力使用については、ただでさえ人がうようよいるところに空間移動(テレポート)してもらうんだから気をつけるように俺から言っておく。間違って味方の体内に空間移動(テレポート)しちゃいましたー、なんてことになったら笑い事で済まされないからな」
そこまで一気に言う土御門。
「おい、相手だって間抜けじゃねェだろ。白井がそんなことをやっていることに気づけば、相手だってさっさと妨害してくるはずだ。その時はどォする?」
一方通行(アクセラレータ)が、もっともなことを言う。
「そんときは白井の能力で逃げ切ってもらうしかない。白井はその役割上、戦況を常時把握してもらっているから、相手とばったり遭遇するようなへまは早々しないだろうし、その状況に立っても一瞬あれば逃げれるだろう」
「実際には、そんなに使い勝手がいい能力じゃないわよ。ちょっとした精神の揺れで使えなくなることだって普通にあるくらいだし、絶対能力者(レベル6)と遭遇したら能力使えなくなってもおかしくないわ」
美琴が冷静に言うが、
「その時は、どこかの超能力者(レベル5)第3位が駆けつけてくれるんじゃないか?」
「…超能力者(レベル5)に易々と喧嘩売る奴は、始めてみたわね…当麻を除いて」
最後にボソッと言い、美琴は土御門を睨みつけながら続ける。
「あんたら魔術師のことはよく分からない。でも、超能力者(レベル5)をなめてもらっちゃ困るわよ」
「その、なめてもらっちゃ困る超能力者(レベル5)を圧倒する奴らを倒す計画を練ってるんだけどなぁ…」
土御門が苦笑まじりに言い、やはり続けた。
「…こっちだって、なめてもらっちゃ困る。そこらの超能力者(レベル5)に負けをさらす気なんて早々ないぞ?」
「超電磁砲(レールガン)って、あんたらでも分かるかしら?それを何発ぐらい打てば、あんたは死ぬと思う?」
「数千発打ってもらわなきゃ、まず話にならんな」
その言葉が、完全に引き金になった。
美琴がスカートのポケットからメダルゲームのコインを取り出し、構える。
対し土御門はもう魔術名は名乗っているので、折り紙を取り出した。
そして、

バギィィッンッ!!

それだけの音が響いた。
その直後、
「だから!何でお前らはそう簡単に喧嘩始めちゃうわけ!?しかも両者とも本気でやりあえば人地区くらいぶっ飛ばせる力持ってるっつーのに!!」
上条が、美琴と土御門の間に右手を突っ込んでいた。
「まぁ、当たり前か(よね)」
土御門と美琴の声が重なった。
「…意味わかんねぇから。妙なとこで共感しあってんじゃねぇ。そして土御門と神裂!テメェらには聞きたいことがあるんだよッ!!」
「あん?なんなんだカミやん、聞きたいことって?」
「それは土御門、あれのことでしょう?あの不可解な魔術を吹っ飛ばすために使った魔術について」
「あれ?とうま、あれのことに気づいてたのッ!?」
「当たり前だろ!?流石の俺でも気づくわ、あんなことやられちゃッ!」
「で、カミやんはその魔術行使について、説明を求めている、と?そういうことかにゃー??」
「だから、あ・た・り・ま・え・だっ!!!!」
今度は上条がキレる番らしかった。


上条が程よくキレた後、土御門がダメージを感じさせない口調でこう言った。

「いやー、実は俺たちにもよく分からんぜよww」

「…お前は、これ以上俺に無駄な力を使わせるつもりか…?」
お説教が足りないようだな、と指の関節を鳴らす上条。
「違いますよ少年、土御門が言っているのは、私たちが魔術を駆使しなければならなくなった原因の発生についてです」
「…ちゃんと説明してから、そういう分かってる人にしか伝わんない言葉は使おうぜ」
げんなりしながら、神裂に力なく言葉を返す上条。
「まぁ、説明といっても…」
「じゃあ、俺が簡単に説明するにゃー」
そういうことに慣れていないであろう神裂に変わり、土御門が進み出た。
「①、よく分からないが、とりあえずよくはなさそうな魔術が俺たちを対象に発動されていた。
②、それにいち早く気づいたインデックスが、天草式の連中にそれを伝え、魔術師たちにその事実を伝えるように頼んだ。
③、天草式が何気ない素振りで魔術を発動し、俺たちにそれを伝えてくれた。
④、じゃあ、それをどうにかして無効化しよう、という話になった。
⑤、しかし、堂々と魔術を使うわけにはいかないから、どうにかして気づかれないように工作する必要があった。
⑥、それで、俺とねーちんが喧嘩を装ってでかい魔術を使うことにした。
⑦、ねーちんの攻撃と俺の魔術が衝突した瞬間、ほかの魔術師たちも魔術を発動させて、そのよく分からない魔術を無効化させることに成功した。
…とまぁ、こんなもんだにゃー」
とりあえず、説明が終わるまで突っ込みを我慢していた上条だが、ようやく突っ込めるタイミングが来たらしいのでそれを実行した。
「待て。まず、インデックスはどうやって天草式の連中に『それ』を伝えたんだよ?」
「まずだな、伝えようとしている連中は、『あの』天草式ぜよ、カミやん。日常的に行われる行為に魔術的意味を見出し、誰にも気づかせずに魔術を発動させる連中…そんな連中に『魔術が試用されている』なんて伝えるのは、そう造作もないにゃー?それに、伝えているのは、やっぱり、『あの』インデックスだぜぃ?素人に感づかれずに情報を交換することくらい簡単だにゃー」
結構キツい突込みだと上条は思っていたのだが、あっさり土御門に返されてしまった。
「ぐ…じゃ、じゃあ、どうやってその魔術を無効化させたんだよ?あの瞬間に魔術を発動させるなんて出来んのか?」
「あんな、周りの人間の脳が全然回ってない状況で、素人に気づかれずに魔術を発動させられないはずがないぜよ。あくまで俺たちは『プロ』なんだぜぃ?カミやんはそれを今まで倒してきたが、それはカミやんがイレギュラーすぎるからだ。あんまり俺たち(魔術師)を甘く見るんじゃないぜよ」
やはり、この突っ込みもあっさりと返されてしまった。
「…分かった、じゃあ、最後に聞くけどさ…」
そういった上条には、少しだがまだ消化されていない謎があった。
「その魔術は、いったい何なんだ?」
「…」
今度は、流石にすぐには応えられなかったらしい。
土御門に代わり、インデックスと神裂が応えた。
「とりあえず、普通の魔術じゃないね…少なくとも、私の10万3000冊にも載ってなかったし、似ているような魔術も一つもなかったんだよ」
「らしいです。彼女が言うから間違いはあるはずないでしょうし、それにその魔術は、厳密には『無効』にしたのではなく、『吹き飛ばした』わけですので…無効化する魔術が見つからなかったんです、彼女がいる状況でも」
「…」
上条は、その言葉を聞き、黙る。
…前にも、あの時、そんなことが…
上条はそんなことを考えていたのだが、それを確証付けるようにインデックスが言った。

「あれは…フィアンマの魔術と似ていた、様な気がする…」



「へー…気づけるんだな、今のインデックスにも、私の魔術が」
「っておいおい、何あっさり言ってくれちゃってんのよ。逆探とかされたらどうする気だ?」
「流石に、今のあの娘にはそこまでされる気はないですよ」
そう言った人間は、隣にいる人間に微笑みかける。
隣にいるのは、日本人にしてはなかなかの身長と、それなりに整った顔立ちをした、明らかに裏通りが似合う身なりの良い30代半ば辺りに見える男性。
御坂旅掛。
御坂美琴嬢の父親で、御坂美鈴嬢の夫に当たる存在。
そして、自分にとっては…本来ならば、敵対関係にあり、正反対の位置に立ち、互いを潰しあっている筈の存在。
だが、二人にとってそんな『世界』の事情など知ったことではないらしい。
互いに共通する目的を持ち、共通する敵を持ち、そして共通する『チカラ』を持つならば、もう一緒に戦っていいと思う、その『目的』のために。
御坂旅掛の目的、それは娘である御坂美琴を、『世界』から守ること。
そのために、この男は娘を、あの学園都市第三位にまで押し上げてしまったのだ。本人が望んでいるのかも聞かずに。
そのせいで美琴は、自分のDNAマップを採取されてクローンを造られたりしたりするのだが、結果的に上条当麻という存在に出会えることが出来たから良いだろう。
…と旅掛が思っていたのもつかの間、その上条当麻を旅掛が調べてみたところ、なんと『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を内包していることが分かってしまった。同じく、自分が御坂美琴のことを調べてみると、『現実殺し(リアルブレイカー)』であることが発覚してしまった。
これは大問題である。
『現実殺し(リアルブレイカー)』と『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。本来ならば、やはり敵対関係にある二つの存在が、目の前にいるのに無視するどころか、片方はもう片方に好意を抱き、片方はもう片方の命を救ったりするのだ。これで異変が起こらないほうがおかしい。
まぁ、その『異変』は、学園都市統括理事長、『人間』アレイスター=クロウリーには予想の範囲だったらしく、『プラン』にはさほどの影響を与えていないらしいのだが。
その事実を考えると、やはり自分たちの『敵』が化け物じみているのを改めて実感させられる。自分たちも十分化け物であるのにもかかわらず。
と、そこまで考えていた私に、旅掛さんが話しかけてきた。
「…それに、あんたの息子さんも気づいているようだぜ、あんたの魔術に」
「…息子の成長を、素直に喜べない父親というのも…哀しいものですね」
「…」
旅掛さんの言葉を、何気なく返したつもりだったのだが、そちらは思い言葉として受け止めてしまったらしい。何か重々しい雰囲気が私たちを包んだ。
…いや、この成長は…
と、息子のことを考えていた私の脳裏を、とある予感が駆け巡る。
…まさかと思うが、もう神浄の討魔が…?または、幻想殺し(イマジンブレイカー)がなりふりかまわなくなってきたか…
ふぅ、と思わずため息をついてしまう。
何で、自分の息子に限ってここまで不幸なんだ。
以前、その『不幸』を誰かに押し付けて息子を幸せにするために、大規模魔術を発動させたこともあったが…
そのとき、息子はこう言っていた。
『こんなにも幸せな不幸を、俺から奪わないでくれ』
…実のことを言うと、その時のことはよく覚えていないので、そっくりそのまんまこれを息子が発したのかは自信がない。
だが、同じような意味を持つ言葉を、息子が発したのは間違いない。自分は、その言葉に影響されて土御門君に抵抗しなかったのだから。
しかし、やはり今考えてみると、我ながら何を考えていたんだ、と思う。
「…お前は、自分が背負っているものの重さが、まだ分かっていないんだよ」
?と旅掛さんがこちらを見てくるが、私は気にせずに続けた。
「神浄の討魔、幻想殺し(イマジンブレイカー)、竜王滅相(ドラゴンキラー)…」
おそらく、旅掛さんはこのワードで私が何を考えているのかを察したらしい。さすが世界を相手にする企業戦士、といったところか…いや、企業戦士でもない気もするが。


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