とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-256

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匿名ユーザー

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と、そんな思考を打ち切って、そのまま独り言を続ける。
「…お前は、これらの存在を正確に知っても、これを奪うな、ということが出来るのか?当麻」
あの時の息子の顔を思い浮かべる。やはりよく覚えていないが、必死の形相だったはずだ。しかし、その表情の中にはどこか嬉しさも含まれていた気がする。
少なくとも、負の感情は一切なかった。
「…私には…私には、無理だよ。お前がこんな『世界』のために食い潰されるのを黙って見ているのなんて、な」
その精悍な顔立ちでいて、どこか理知的な顔から、一滴の雫が堕ちた。
「…ハハ。幻想守手(イマジンガードナー)が泣いていますよ、人間でもないのに」
「そう言わない言わない。同じ『神』を宿したもの同士だから、そういうことを言われるとこっちも、なんだか、ねぇ?」
現実守手(リアルガードナー)の旅掛がそういってくる。そう言われては、謝るしかない。
「…すみません。ですが、流石にこれは…」
そういって、また息子のことを考える。
「…耐えられませんよ」


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それに耐えられないから、私たちは動く。
御坂旅掛…現実守手(リアルガードナー)は、御坂美琴…現実殺し(リアルブレイカー)から、そのチカラを奪い、平凡な、ただの少女に戻ってもらうため。
そして、自分。上条刀夜…幻想守手(イマジンガードナー)は、上条当麻…幻想殺し(イマジンブレイカー)から、そのチカラを奪い、不幸でもない、普通の少年に戻ってもらうため。
そして、現実操者(リアルコントローラー)、幻想操者(イマジンコントローラー)となり、アレイスターの立てた『プラン』から、幸せになるべき自分の子供たちを守るために。
二人の父親は、今も動いている。


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「ってことでまぁ、そのフィアンマ並の魔術師相手にゃさすがの俺たちも太刀打ちできない、って話ぜよ」
「どういう話だよ。いったいどこをどうすればあのインデックスの言葉から今のお前の台詞に繋がるんだよおいちゃんと説明しやがれ猫野郎」
いきなりのわけの分からない土御門の台詞に、とりあえずまくし立ててみた上条だが、特に説明など求めていない。こんな変人なら何をやってもおかしくない――――そう土御門を捕らえているからだ。
「…なんかとりあえず俺は突っ込みましたよ的な雰囲気を造ろうとしてないかカミやん。バリバリその雰囲気がするぜぃ…」
「おお、さすが土御門、勘も鋭いな」
「…あっさり言うなよカミやん…」
本日何回目か、もはや数えるのも面倒くさくなってきたほどに失望する土御門。
「それはともかく、さっさと話を続けようぜ」
「…それはともかく、の部分に激しく反意を持つが…まぁ、カミやんの言うとおりだしな…続けよう」
気を取り直すように首を鳴らす土御門。
「…あのさ、今までの会話…全くもって理解できないんだけど?」
どうやら、今までの会話は学園都市第三位の頭脳を持ってしても理解できなかったらしい。
…いや、そもそも自分の知らない世界なんて誰も理解できないだろうが。
「お前は理解しなくて良い、というか理解されたらいろいろとまずいと思うぞ」
土御門や神裂をチラ見しながら、上条は美琴に語りかける。
「だにゃー。第三位といえども、所詮は一般人。こっちの世界を理解されるわけにはいかないぜよ」
「とかいっておきながら、さっきから隠語も何も無しに会話していたように聞こえたけど?」
「そうだが、何か問題でも?」
土御門は、お前にはどうせ素で話しても理解できないだろう、という雰囲気を放っている。
…またか、と上条は二人の仲介に入る。
「はいはいいい加減やめなさい二人とも。だからそう簡単にキレちゃいけないでしょあなた達は」
「そうですよみっともない。まだ年端もいかない女子に簡単にキレるなんて、土御門もまだまだですね」
と、上条が仲介に入った後、神裂も続いた――――のだが、それはどこからどうきいても、美琴に対する挑発にしか思えない。本人にその気は無さそうだが。
案の定、美琴は神裂に対しても睨みを利かせていた。
「…やっぱり、この面子は放すべきだろ?」
上条が、誰ともなく疲れた声で言った。


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とりあえずその場は上条が美琴を強引に魔術サイド勢から引き離し、お前もそう簡単にキレるなってあいつらには俺から後で言っといてやるからさ、と上条がどうにかして美琴をなだめ、美琴はそれで納得したようだった。
上条はそれに不信感を持ったが(超電磁砲(レールガン)の一発や二発は喰らわされる覚悟だった)、事が穏便に済む分には文句無い。今度あいつらとゴタゴタあったらお前退場な、と美琴に釘をさしてから彼女を連れて話し合いの場に戻ってきた。
「悪い、こいつには言っといたから、これで済ましてくれ。あと土御門、お前もわざわざ挑発するんじゃねぇよ」
戻ってきたか、という顔をする一同に対してこの言葉を発し、さっさと話を終わらせる方向に向けようとする上条。
「…まぁ、そういうことで良いかにゃー。じゃ、今度こそ真面目に始めるぞ」
誰のせいで今まで進まなかったんだ、という思いは心の中に留める。これを口にしたい気持ちは山々だが、口にしたらそれはそれで面倒くさいことになるだろう。
「…で、さっきは白井のことまで話したわけだが、覚えてるか?」
一気にガラリと雰囲気を変えた土御門の言葉に、皆頷いた。
「じゃあ、白井についてはそれで終いだ。次は妹達(シスターズ)と打ち止め(ラストオーダー)について」
やはり今回の話でも、美琴は眉を吊り上げた。キレて暴走しないことを祈るばかりの上条である。
土御門はそんな二人を全く気にすることなく、サクサク話を進めていく。
「彼女たちには、主に情報の入手・管理・応用を行ってもらう」
「具体的に言え」
それまでだんまりを押しぬいていた一方通行(アクセラレータ)が、もっともなことを言った。
「もとから言うつもりだよ。まず、情報の入手についてだが、いたって単純。妹達(シスターズ)を様々な場所に配置し、そこから望遠鏡やら双眼鏡やらで戦場を観察してもらって情報を入手するだけだ」
「いかにも沢山います、みたいな感じで言ってるけど、今の学園都市には妹達(シスターズ)は10人程度しかいないわよ?」
あまり妹達(シスターズ)大切に扱っているように思えない土御門の作戦に対しキレるかと思われた美琴だが、土御門に助言を出した。
「ああ、それについてはもう解決済みだ。ある程度彼女たちも回復してきたらしく、学園都市が外の機関から一時的に彼女たちを回収して検査を行うつもりだったらしい。あと十分足らずで大量の妹達(シスターズ)がこの病院に来るそうだぞ」
「…って、この病院に全員ッ!?そ、そんなの無理に決まってるでしょ!!理解できていない人間たちがパニックを起こして、戦闘云々の話どころじゃなくなるわよ!?」
「だから、それくらいも承知済みだ。10人程度の妹達(シスターズ)を選抜して、彼女たちを通して全ての妹達(シスターズ)に情報を伝達してもらうつもりだが、何か問題があるのならば指摘して欲しい」
完璧に美琴の上をいっている土御門――――いや、学園都市?――――の言葉に、美琴は不承不承…でもなく、普通に納得したらしい。スイッチ切り替えてんのか?と美琴をマジマジと観察してみる上条だが、何か出っ張ってるものなどどこにも見当たらなかった。特に性的な意味は含んでいない…はずだ。
「話を戻すぞ。その妹達(シスターズ)に情報をそうやって入手してもらい、ミサカネットワークで管理してもらう。その時に、莫大な演算能力を誇るミサカネットワークを駆使して、その情報をもとに現状況で一番有効な作戦を立ててもらうつもりだ」
今話している土御門の作戦だと、妹達(シスターズ)は今回の戦いにおいてかなり重要部分を担っているように思える。あいつらも報われたなぁ、と一人感慨深くなってしまう上条だった。


「…いいように利用するわね…」
美琴が、呆れたようにつぶやく。
しかし、上条はそこであることにハッ、と気づく。
「――――おい、待てよ。…良すぎないか?」
「何のことを言ってるんだカミやん?流石にそれじゃ伝わらないぜよ」
土御門が、理解できない上条の言葉に首を傾げる。
「タイミングだよ。あいつらの検査のタイミングと、今回の事件のタイミング…噛み合いすぎじゃないか?」
上条はそれに即答する。
「…言われてみれば…」
「ッつーか、どう考えてもその線しかなさそうだなァオイ」
美琴と一方通行(アクセラレータ)が、上条の意見に賛同する。
「学園都市についてはさほど知っているわけではないですが…このようなパターンのとき、同じようなことが『偶然』起こる場合は、限りなく少ないと思いますが」
神裂が冷静に言う。
「じゃぁ、カミやんの言葉を肯定すると――――」
そこで、一度土御門が言葉を切る。

「――――学園都市は、今回の事件を想定していた、又は故意的に起こしていた、ということになるぞ」

「…そう考えて、間違いなさそうだな」
上条がそうつぶやく。
しかし、
「だがよォ…そんなことをして、学園都市に利益あンのかァ?負けたら、ヤバいくらいの損害を被るぜェ?」
「…さあな。上層部(うえ)が考えることを全て分かるはずがない」
土御門が、首を横に振る。
「…まったくね。本当に何を考えているのか…」
美琴が言う。おそらく、妹達(シスターズ)のことを回想しているのだろうが、それでも美琴が知らない裏が、妹達(シスターズ)には存在する。
「つーかその前に、故意的に起こしていたとしたら…学園都市は、よっぽどの奇跡が起きない限り『反乱因子』に、負けるつもりはない…ってことだよな?」
「…」
上条の言葉に、全員が黙った。
「…何言ってんのよ、流石に『あの』学園都市でも、そんな戦力を即時に出せるわけ――――」
ないでしょ、と続けようとしたであろう発言を、美琴は飲み込んだ。
――――あるかもしれない、その場にいたほとんどの人間が、そう考えた。一方通行(アクセラレータ)にいたっては、あの『ドラゴン』のことを思い出し、明確に、学園都市は今すぐにでも反乱因子を潰すことが出来る、と確信した。
「…なンなンだか、俺たちの住ンでる『はず』の…『学園都市』ってェところは」
一方通行(アクセラレータ)が、思わずつぶやいた。
「…学園都市が反乱因子を今すぐにでも潰せる、と仮定すれば…何故学園都市は、俺たちに反乱因子を潰させようとするのか、という問題が出てくる。つまり、それが俺たちの『勝利条件』ってことだ。それをクリアさえすれば、ある程度の戦力である俺たちを学園都市が見放すことはない」
土御門が、サラサラっと言っていく。成績は悪いくせして、こういうところでは頭の回転速いな…いや、成績を悪く『見せてる』のか?あいつ一応スパイだし…と、上条は足らない頭で考えていたが、ふと思いついたことがあったので質問してみた。
「待てよ。その『勝利条件』は、学園都市には出来なくて、俺たちには出来ること…だろ?」
「…そうなるな」
そうでなければ、簡単に学園都市が反乱因子を制圧すれば良いだけの話だからだ。それをわざわざ、手間をかけてまで俺たちにやらせている。それほどの価値が、『勝利条件』があるからだ。
「…どんなものだよ、それって」
学園都市に出来なくて俺たちに出来ること…情けない話だが、正直そんなものは思いつかない。
「それが分かっちまえば、今回の戦いはかなり楽にやれるんだがにゃー」
土御門が、ハァ、とため息をつきながらちゃらけた口調で言う。
「分からないものを唸りながら思索しても、無駄な時間を浪費するだけです。そろそろ話題を変えましょう」
科学サイドの話ばっかりで、あまり出番がなかった神裂が、少しイラついた口調で言う。そういえば、どこぞのシスターさんに関してはまるっきり発言無しだ。
「…かにゃー。話題をもとに戻――――」
なぜか土御門の言葉が、途中で止まる。
ん?と土御門の方を見ると、
「――――前の話題って、なんだったかにゃー、カミやん?」


ということで、今まで出番が0だったどこぞの完全記憶能力の持ち主が『確か、しすたーずとかいう人が情報を管理・応用するって話だったよ』と言ったので、土御門は話を再開した。インデックスの言葉を少しも疑っていない。当たり前だが。
「戦闘の際には、妹達(シスターズ)には20人1グループで行動してもらう。そんだけ数がありゃ、早々のことじゃ倒れないはずだぜぃ」
『ねぇ、しすたーずって何?日本の修道女さん?』としきりに聞いてくるインデックスを適当にあしらっていた上条は、土御門の言葉を素直に肯定できなかった。
あんな、実験という名の大虐殺を生み出してきた学園都市だ、今更妹達(シスターズ)の命なんてなんとも思ってないだろう。そう考えてしまう。
そんな上条をよそに、土御門は話を続けた。
「で、そのグループの中で一人リーダーを決め、そいつがミサカネットワークに干渉するシステムにする。全員がミサカネットワークに干渉している状況で情報をどうしようとしても、混乱するだけだろうからな」
「だが、そンだったら情報の『応用』とやらはできねェンじゃねェのか?」
一方通行(アクセラレータ)が、土御門の言葉を聞いていった。
「大丈夫だ。ミサカネットワークは、妹達(シスターズ)全員で『構成』する。『干渉』するのは、その中から選ばれた奴だけ、って話だ。全員で作るが、使用する奴はそのうちの少数だ、ってことぜよ」
「言い方が酷い。労働なんちゃら法に引っかかりそうな言い方だぞ」
土御門の言葉を否定はしないが、批評はする上条。
「そういうことなら、問題無いんじゃないの?」
美琴がそう言うが、土御門は首を横に振る。
「これだけじゃまだだ。20人のうちの1人はリーダー…いや、『干渉者』と呼ぶか。で、それだが、それ以外にも役割はある。9人が情報の入手をする役割。6人が見張り・即時の戦闘を行う役割。1人がミサカネットワークから情報を入手し、それを干渉者伝える役割。1人が白井などに情報を伝える役割。1人が俺たちからの指示などを仰ぐ役割。1人が非常時に状況を伝える役割。数が足りなかったりした場合には、情報入手のところから人員を派遣する。何か意見があったら是非言ってくれ」
土御門がそこまでを一気に言う。それに意見する者はいない。
「それじゃ、1グループはこのようにして動いてもらう。9969が総員で、グループは498個作れる。あまりは9人いるが、そいつらは別行動だ」
「別行動?」
美琴が首を傾げる。
「それの説明の前に、まだ出てきてない妹達(シスターズ)がいないか?」
土御門はそう言いながら、少しニヤついた顔で一方通行(アクセラレータ)を見た。
「…チッ」
舌打ちをし、顔を逸らす一方通行(アクセラレータ)。
「打ち止め(ラストオーダー)だ」
一方通行(アクセラレータ)に答えてもらえなかったので、自分で答えた土御門。
「彼女には、いつもどおりミサカネットワークを管理してもらう。具体的には、情報の整理、最良の作戦の総指揮、
グループの管理、それぞれの干渉者への情報伝達を行ってもらう。彼女が書けたら不味いことになるから、あまりの9人は彼女の護衛に徹底してもらう。安心しろ、もとから彼女は比較的安全な場所に居座らせる」
後半の言葉は、一方通行(アクセラレータ)に向けて発せられたようだった。対フィアンマ戦のときに、上条も一方通行(アクセラレータ)と打ち止め(ラストオーダー)の関係には気づいているのでそう分かった。
「妹達(シスターズ)については以上のつもりだが、何か意見はあるか?」
やはり、特に意見する者はいない。
しかし、一方通行(アクセラレータ)だけは内心ほっとしていた。
(番外固体(ミサカワースト)は、今回の件に関わりはなし、か。まァ、あの性分じゃァまともな仕事は出来そうにねェからなァ)
学園都市が、一方通行(アクセラレータ)を殺すためだけに造り出された、憎悪に満ちた妹達(シスターズ)を思い浮かべる。
(…だが、あの一件以来アイツらの顔を見ねェな。…また何か企ンでやがンのかァ?)
チッ、と一人で舌打ちする一方通行(アクセラレータ)。
そんな一方通行(アクセラレータ)を横目に、上条は言った。
「で、その他の奴らは?」
滝壺と浜面、そしてインデックスのことだ。
「じゃ、そいつらの説明に移るとするか」
土御門が、首をゴキゴキ回しながら言った。



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