とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-279

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匿名ユーザー

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 狭いらせん階段を上条当麻は駆け上がる。
 この先には敵――連続幼女誘拐を働いた魔術師が、
「いやがったなテメエッ!!」
 その声に部屋の中心に居た、饅頭を重ね合わせてその上から黒い布を張り付けた様なものが振り返った。
「良くここまで来れたな少年。私の罠を掻い潜るとは、どんな幸運が君の味方をしたのかな?」
「うるせえこの百貫デブッ!!」
 その言葉に男の毛虫のような眉が寄る。
「口が悪いな君は。やはり君くらいの年齢になると色々な俗世の毒に犯されてしまうのだろうな。やはり話をするなら小さな……そう、小さな女の子に限るな」
「ッ、ぶぁッかかこの変態野郎ッ!! 良いからテメエは攫った女の子たちをすぐに解放しろッ!!」
 上条が怒りと憤りをない交ぜにした叫びを男に向かってぶつけると、男はキョトンとした表情をした後、
「いや、何で少女たちを解放する必要があるのだ? そも、君に指図される覚えも無いな」
 と呟いてから右手を振るった。
 すると、何も無い空間から突如大きな体をした蛙の様なものが現れる。
「部屋を汚すと後が困るのでな。大人しく飲み込まれてしまえ」
 その一言を合図に、蛙の様なものはその体に見合った大きな口を開くと、一瞬にして上条を飲み込んでしまった。
 その結果に男は何故か不満そうに鼻を鳴らすと、もう興味は無いとばかりに蛙に背中を向けた。
 しかし――、
「おい、何余裕見せてんだテメエは?」
 背後からのその声に、男の皺の様な細い瞳がカッと見開かれる。
 そして、ぐるりと振り返った男が見たのは――目の前に迫る拳だった。
 ガツンと拳が顔面に打ち込まれて、男はたたらを踏む様に2歩、3歩と後ずさる。
「ぬぐぐ……」
 顔に当てた芋虫の様な指の間から血を滴らせて呻く男をねめつける様に立つのは、先ほど蛙に飲み込まれた筈の上条だった。
「ど、どうやって我が使い魔を退けた?」
「それを俺が簡単に教えると思うのか?」
 上条はそう言って右の腕をぐるりと回した。
「道理だな。だがその道理もすぐに覆る」
 そう言うと男は、何も無い空間を掻き毟る様に両手で薙いだ。
 すると先ほどと同じ蛙のようなものが、無数に空間に湧き出て来る。
「同じ芸で申し訳無いが、もう一度やってくれるかな?」
 再び男の言葉が合図になって、無数の蛙が上条に殺到する。
「ちぃッ!?」
 津波の様な蛙の群れに、上条は舌打ちしつつ飛びずさる。
 そこにぼとぼとぼとっと大きな蛙が音を立てて落ちて来る。
「逃げていないで君の力で何とかしたまえ」
「ふざッけんじゃねぇッ!! 誰がテメエの思い通りなんうぉッ!? おおおお――」
 男に向かって怒りをぶつけるのもそこそこに床を転げる様に蛙をかわして行く上条。
「さあ、いい加減諦めて力を見せたまえ」
「うるッせぇんだよこのクソデブッ!!」
 男に喚き散らすものの、上条は内心焦っていた。


(さっきは偶然右手が触れた瞬間にあのバケモノ蛙が消えちまったから何も無かったが、あの数は絶対マズイだろ!?)
 右手で消せる事は判っていても、右手以外に蛙が食らいついたらどうなるか、
(クソッ。他の奴らはどうしてやがんだよ!!)
 そう心の中で愚痴をこぼしながらも、右に左に体をかわして行く。
 しかし、それも長くは続かず、ついには壁際に追い詰め垂れてしまった。
「さあ、もう後は無いな。観念して戦いたまえ」
 男の言葉に、上条もついに諦めたのか拳を握り締める。
「そうだ。その調子で君の力を見せろ」
 その言葉に上条がぎりっと奥歯を噛締める。
(言われなくたって……)
 心の中で覚悟を決めた上条は、低く身構えると、
「俺の力を見せてやらああああああああああああああああああああああああ!!」
 ダンッと床を蹴りつけて、男に向かって突進した。
 そんな上条に向かって雪崩のように殺到する蛙。
 しかし、上条が右手を振るうと、蛙たちは煙のように空気の中に溶けて消えてしまう。
「おおッ!?」
 驚愕と感嘆を混ぜ合わせた様な男の叫び目指して真っ直ぐに突き進む上条。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 獣の様な雄叫びをあげて、上条の拳が男の顔面を再び捉えた――と、次の瞬間、男の姿が蛙に変わると、その蛙は煙のように空中に掻き消えた。
「なッ!?」
 ギョッとした上条の目の端に迫るのは大口を開けた無数の蛙。
 渾身の力で拳を振るった上条に、蛙をかわす術は無い。
(しまッ――)
 スローモーションのように迫る蛙を前に、身動きすら出来ずにいる上条――しかし、それらは上条に触れる事無く粉微塵に引き裂かれると、先ほどと同じように煙の様になって消えて行く。
「なんとッ!?」
 驚く男の声に、
「これ以上の抵抗はおやめなさい。さもないと、今度は貴方を斬らねばいけません」
 凛とした女性の声が部屋に響いた。
「神裂ッ!!」
「上条当麻。後はこの私に」
 振り返る上条に、神裂は油断無く刀を構えながら近づいて行く。
「その身のこなしからして……。只者ではありませんね」
「そう思うのでしたら諦めて――」
「24、5年早くお会いしたら可愛らしい女の子で会ったでしょうに、真に残念ですな」
「は?」
 男の言葉に神裂が一瞬何を言われたのかといぶかしむ様な表情を浮かべると、
「いや、神裂。さっさとその変態を斬った方がいいぞ」
 この場に居て唯一事情を知る上条が冷静に相槌を打つ。
 すると男は、
「いやはや2対1では分が悪いな。ここは一旦引かせて貰いましょうか」


 そう言って上条たちに背中を向けた。
「待てこのッ!!」
「逃がしません」
 当然の様にすぐに追いすがる2人の前に、再び無数の蛙が姿を現す。
「このッ!!」
 迫り来る蛙を気合で打ち消して行く上条と、無言で斬り伏せて行く神裂。
 それでも何処から現れて来るのか無数の蛙の前に男を追う事が出来ない。
「ッくしょお、待てこのクソデブッ!!」
「ははは。待てと言われて待つ道理も無いな」
「クソッ!! ふざけんじゃねえええええええええええ!! 子供たちを還しやがれッ!!」
 蛙の山の向こう、この部屋の出入り口に向かう男の背中に向かって上条が叫んだその時、何の前触れもなく男の目の前にあった扉が爆発四散した。
「なッ!?」
 驚愕して立ち止まる男の目の前で、扉と壁の瓦礫を蹴散らして現れたのは、人の倍ほどの背丈の土塊で出来た人型だった。
「ゴーレムか?」
 男がそう呟くと、
「正解だよ、このクソデブ。褒美に貴方をこれでもかと言うくらい丁寧にあの世に送ってあげるわ」
 ゴーレムの後ろから現れた金髪ゴスロリの女性――シェリー=クロムウェルが詰まらなそうな表情を浮かべて現れた。
「しかし、ひさっしぶりに前線出てみりゃいきなり尻ぬぐいかよ――神裂ッ!! あなた少し弛んでるんじゃないの!?」
「申し訳ありません」
 シェリーの言葉に、蛙を薙ぎ払いながら神裂が器用に頭を下げる。
 と、そんなやり取りの合間に男がゴーレムから逃げようとする。
 所が、そんな男の足もとにゴーレムの拳が杭の様に打ち込まれた。
「おかしな真似はしないでよね。思わずぶっ殺したくなるだろうが」
 しかし、
「ぶっ殺すとは中々刺激的な言葉ですな。貴女にも是非可愛らしい子供時代にお会いしたかった」
 その言葉にシェリーは顔をしかめて小さく舌打ちすると、
「気持ち悪いんだよテメエは!! エリス!! アイツを大人しくさせなッ!!」
 その言葉に従いゴーレム=エリスは床にめり込んだ拳を引き抜くと、もう片方の手も合わせて頭上に振り上げた。
 所が、そのエリスの体が腕を振り上げたまま後ろに傾いだかと思うと、そのまま轟音を立ててひっくり返ったのだ。
「エリスッ!?」
 驚いてエリスを振り返るシェリー。そんな彼女は気付かなかったが、エリスの足が有った場所には、先ほどの蛙が無数にうごめいていた。
 そして、男はニヤリと笑うとエリスとシェリーを迂回するように走り出した。
「「シェリー!?」」
「クソッ!! エリス、ぐずぐずしてんじゃねぇ!!」
 上条たちの叫びにシェリーはすぐにエリスに命令を下すが、その間にも男は別の入り口に向かって走る。
 だが、男はこの時自分が如何に天に見放されているかを知る事になる。
 入口まであと一歩とさしかかった所で、床石が炎を吹き上げたのだ。
「ぐおおおおお!?」
 迫り来る熱風を避ける様かの様に男が両手を顔にかざしながら後ずさると、そんな男を逃がすまいとするかのように、そびえ立つ炎が蛇の様になって円を描き、その中心に男を捕えた。
「くッ、くそッ!!」


 初めて男が見せる焦燥感。
 そして、男を苦しめるものが入口から姿を現す。
「真打ち登場だにゃー」
「「「土御門!!」」」
 さらには、
「何で君が誇らしげに『真打ち登場』なんて言えるのか不思議なんだけど? 大体あの炎は僕の術式じゃないか」
「「「ステイル!!」」」
「にゃー。固い事は言いっこ無しぜよ。何ならステイルも啖呵を切るといいにゃー」
 この場に相応しく無い余裕の表情を浮かべた2人の登場に、やっとメンバーが揃ったかと上条は安堵した。
「おい、お前ら。例の件は上手く言ったんだろうな?」
「誰に物を言ってるのかな君は?」
「にゃー。プロが素人に心配されちゃあお終いだにゃー」
 そのやり取りに、炎の中で右往左往していた男は、「な、何の話だ?」と、嫌な予感と共に言葉を吐き出した。
「そりゃ勿論」
「貴方が攫った少女たちを」
「助けだす為に決まってんだろうが」
「な、に?」
「この俺の力を舐めないで欲しいにゃー」
「どうして君は手柄をひとり占めする様な言い方をするのかな? そもそも隠し扉を見つけたのはこの僕だ」
 ステイルの言葉を聞いた男はガックリと床に膝をついた。
 そんな男に神裂は、
「再度申し上げます。無駄な抵抗は止めて投降して下さい。今後の処遇まではお約束できませんが、可能な限り譲歩しますから」
 その言葉に男は顔を上げると、神裂の顔をじっと見つめた。
 そして、
「優しいのだな」
「甘いと良く言われます」
 ぺこりと頭を下げた神裂。その姿をじっと見つめていた男はやおら立ち上がると、自分の腹をドンと拳で突いた。
「何をするつもりですか?」
 神裂が再び刀の柄に手を掛けると、男はそんな神裂ににぃっと不気味に笑いかけた。
 その口の中、白い歯の間に見える虹色の球を確認した瞬間、男はその球を歯でかみ砕いた。
「しまッ――」
 神裂は咄嗟に抜刀しようとした。
 その隣に居た上条は咄嗟に右手を開いて突き出した。
 シェリー、土御門、ステイルの3人は男の正面に居なかった事が災いして何の反応も出来ない。
 そして、噛砕かれた球は強い光があふれ出て、部屋と彼らを飲み込んだのだった。


 それは、永遠の様な、一瞬の様な出来事だった。
 固く目をつぶっていた上条は、ゆっくりとその目を開けると、強く瞑りすぎてぼやけてしまった目を擦った。
「クソッ、あのデブ野郎。まだ目がチカチカする……」


 やがて視界が戻って来ると、辺りの情景が改めて目に飛び込んで来た。
 そこには、床の上に崩れる様に倒れた神裂、シェリー、土御門、ステイル。そして、例の男の姿が見えた。
「か、神裂ッ!?」
 取り合えず目の前の神裂を抱き起す上条だったが、
「ん?」
 妙な手の感触に戸惑う。
 それは、
「軽、いぃッ!?」
 上条は抱き起した神裂の顔を見て改めて状況の深刻さを理解した。
 そんな上条の腕の中に居たのは、黒髪も美しい推定年齢4、5歳くらいの女の子だった。



 次回予告――。

「かみじょうとうまぁー」
「いまじんぶれーかーのおにいちゃん」
「かみやーん」
「かみじょうおにいちゃん」
「神裂とシェリーはともかく、何で土御門とステイルまで幼女になってんだよ!? クソッ!! 不幸だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」








続かないんだよ。

と言う訳で終わりです。
ここからエロ展開にしようと思っていたのですが、時間の都合でくじけました。
でわ。



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